Author Archives: kosaka-shika

ホワイトニングの仕組みについて

2024年7月6日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、ホワイトニングの薬剤がどのようにして歯に作用し、白くしていくのか説明していきます。

 

ホワイトニング施術写真


ホワイトニング術前写真


オフィスホワイトニングでは、薬剤を歯面に塗布した後、このように専用のライトを照射します。


オフィスホワイトニング術後写真。

過酸化水素・過酸化尿素によるホワイトニングの仕組み

・フリーラジカルによる作用

ホワイトニング剤に含まれる過酸化水素(HP)・過酸化尿素(CP)を歯面に塗布すると、口腔内で分解され、フリーラジカルを発生します。
このとき、熱を加えるとより反応が促進されるので、オフィスホワイトニングでは専用のライト照射を行なっています。
過酸化尿素は過酸化水素と尿素が弱く結合した物質であり、唾液中の水分との接触と温度により、尿素と過酸化水素水に分解します。
これらの色素分子が、歯の着色の原因となっている色素分子と結合して、無色透明にさせることで歯が白くなります。このうち、過酸化水素の方が過酸化尿素より分解が早く、効果は早くあらわれるがなくなるのも早いという特徴があります。このため、オフィスホワイトニングでよく使用されます。逆に、過酸化尿素はホームホワイトニングに配合されていることが多いです。

 

・マスキング効果

ホワイトニングシステムによりますが、使用薬剤の成分により一時的に歯のカルシウム成分が溶け出して、エナメル質の表面が凸凹になる現象が起きます。その結果、光の乱反射がしょうじ、内部の象牙質の色が見えにくくなる「すりガラス状」になり、歯が白く見えるのがマスキング効果と呼ばれます。しかし、数時間のうちにカルシウムが元に戻るため、マスキング効果は一時的なものです。

・歯の乾燥+ペリクルが剥がれることによるもの
ホワイトニング直後は歯のペリクル(タンパク質の保護膜)が一時的に剥がれ、歯が乾燥しているため表面が白っぽく見える現象があります。ペリクルが再生する24時間程度で元に戻ります。

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ホワイトニング剤の成分

 

歯科用ホワイトニング剤は各社から出されていますが、基本的に以下のような成分で構成されています。

・有効成分

過酸化水素
過酸化尿素

 

・基剤:マトリックスキャリア

 

過酸化水素・過酸化尿素を含ませる、ベースとなる材料のことです。ホワイトニング剤の性状は、歯面に塗布した時を考えると、適度な流動性を持ち、尚且つ塗布しやすいことが重要です。歯肉に流れてしまうようなフローが良い状態は望ましくありません。シリカ、グリセリン、ポリアクリル酸などが挙げられます。

 

・知覚過敏抑制剤

硝酸カルシウム、酸化アルミニウムなどです。ホワイトニング施術による知覚過敏を抑制する効果があります。

・その他の成分
炭酸水素ナトリウム、クエン酸、香料、中性フッ化ナトリウムなど。

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ホワイトニング効果を上げるために必要なこと

以下のような点が大切です。

・歯のクリーニング

薬剤の有効成分を十分作用させるため、事前のクリーニングを徹底的に行います。

 

・過酸化水素、過酸化尿素

 

これらの有効成分の濃度を高めることは重要です。一般的に高濃度は効果が高いですが、そのかわりしみやすい副作用があります。

 

・作用時間

 

時間が長いほど反応は進みます。ただし、分解が終わるとそれ以上は反応しません。メーカー推奨の使用時間が効果的であり、延長すれば良いというわけではないようです。

 

・アルカリ性の環境

 

ホワイトニング剤が反応するpHは、アルカリ性の方が反応がよく、効果が期待できます。このため、水酸化カルシウムなどのアルカリ性薬剤を歯面に塗っておく方法もあります。

 

・加熱

 

熱により反応スピードが上がります。10℃上がると2倍のスピードになると考えられています。オフィスホワイトニングで専用ライトを照射し、お口周りをタオルでカバーしますが、加熱効果を期待しています。照射のライトがまぶしいため、目隠しのゴーグルやタオルもします。ライトで熱を加え過ぎると痛みも出やすくなるため、注意が必要です。オフィスホワイトニング直前に、薬剤のジェルは熱湯につけて温めて使用します。


オフィスホワイトニングで、薬剤を歯面に塗布する直前までこのように沸騰したお湯に薬剤をつけています。

 

・密閉環境

 

ホワイトニングは、フリーラジカルがいかに歯質に多く入り込むかで効果が決まります。密閉環境の方が、分解したフリーラジカルが大気中に飛ばずに、歯質内に入り込む確率が高まります。そのため、ホームホワイトニングの場合はマウスピースで空気に触れにくくできますので密閉効果が期待できます。オフィスホワイトニングでは、密閉することができません。


オフィスホワイトニングはこのように歯面に薬剤を塗布しますので、解放されています。


ホームホワイトニングはマウスピース内部にジェルを入れて、歯に密接するように作用させますので、密閉された効果が大きいです。

 

・消費期限

 

ホワイトニングジェルは、時間が経つと効果が弱まります。成分が分解するためです。標準的な保存期間は約1年半ですが、メーカーにより異なります。

私たちが使用しているポリリン酸ホワイトニングのジェルは、このような個別包装になっており、保存期間よりも前に使い切れます。

また、保管温度にも影響を受けます。冷暗所が望ましいので、冷蔵庫に保管をしています。ホワイトニングに限らず、歯科材料には適正な室内温度があるため、それぞれの材料の特性を活かすためには、添付文書に記載されている事項に注意して取り扱うのが間違いないです。歯科材料でよくあるのが、粉と液、A液とB液を混和し、使用することです。目分量で使用するのはダメですね。

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オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの違い

 

 

・オフィスホワイトニング

 

歯科有資格者の管理下で行われる安全なホワイトニングです。30〜35%の過酸化水素配合ジェルとライトを使用します。

✳︎メリット
即効性が高い
1回の来院である程度白くできる
自分で管理しなくて良い
✳︎デメリット
効果の持続が3〜6ヶ月と、ホームホワイトニングよりも短い
奥歯は白くできない
白さの限界がB1シェード

 

・ホームホワイトニング

 

10〜15%の過酸化尿素、または過酸化水素のジェルをマウスピースに入れ、自宅で行なってもらう方法です。
✳︎メリット
効果が長持ちする。半年から1年程度。
色むらが取れ、つやや透明感が出る。
通院回数が少ない
白さの限界値がオフィスのみより高い。
✳︎デメリット
自分で管理しなければならない。
効果が出るまで時間がかかる。

 

・デュアルホワイトニング

 

オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する方法です。クリーニングを同時に行うことで、さらに効果が高まります。オフィスホワイトニング、ホームホワイトニング両方のデメリットを補える最良の方法と考えられます。目標達成率も高いです。
効果が持続しやすいですし、クリニックで専門的な管理のもとで行えるメリットが大きいです。

ホワイトニングは気軽に始められるものですが、歯の状態によっては事前の清掃や病気があった場合の治療が必要かもしれませんので、
まずはお問合せしていただき、口腔内の診察からさせていただきます。

ホワイトニングの基礎知識

2024年7月4日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

歯の色が気になるというご相談は多いです。
今回は、歯の色がどのように変化するかというトピックです。

 

症例写真

 


変色を気にされている患者さんの初診時の口腔内写真。実は歯の色の変化には様々な要因があります。
こちらの方はホワイトニングでこのように色調改善しました。

オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを組み合わせて背術を行いました。

さて、このようにホワイトニングで改善できるケースは多いですが、適応のケースとそうでないケースがございます。
一体、歯はどのような原因で色が気になるようになるのでしょうか?

 

歯が着色する原因とは

歯が着色する原因には、大きく分けて外部由来のものと内部由来のものがあります。

 

○外部由来のもの

 

・飲食物による着色 → 歯のクリーニングで対応

 

コーヒー、お茶、ワインなどのタンニン系化合物を含んだ飲み物が特につきやすいです。コーヒーなどは、アイスよりもホットの方がつきやすいようです。ミルクを入れるとマシになります。

コーヒー   カフェインの取りすぎは良くありませんが、身体に良い効果も多く、適量を楽しみたいですね。着色したくない方は、アイスをストローで飲むと、歯の表側につきにくいのではないでしょうか。

 

・喫煙による着色 → 歯のクリーニング、ホワイトニングで対応

 

タバコのニコチン(ヤニ)の大半が歯の表面のエナメル質に沈着しますが、クリーニングで除去します。長期間にわたる喫煙では、歯質の内部に浸透しており、ホワイトニングが効果的です。

 

・虫歯による着色 → 虫歯治療、ホワイトニングで対応

 

虫歯は、お口の中の虫歯の原因菌による感染症です。糖を虫歯が取り込み、その代謝産物として酸が放出されます。酸によって歯が溶けているのが虫歯の穴となっているのです。虫歯のイメージは歯に穴が開く、欠けると言ったものですね。しかし、いきなり大きな穴が開くわけではなく、虫歯のなりかけの状態というのがあります。これは、歯の表面のエナメル質の脱灰と言います。酸でダメージを受けてはいますが、まだ穴はあいていない状態で、見た目は白濁しています。ホワイトスポットと呼ばれています。脱灰した歯質に、着色しやすい飲食物などが浸透し、さらに色が変わっていく現象が起きます。


虫歯で歯の色が変わっていますね。

見た目のインパクトはありますが、これだけわかりやすく黒く穴があいていても、痛みがないことも多いです。

 

・口腔清掃不良による着色  → 歯のクリーニング、ホワイトニングで対応

 

色素を生成する菌がお口に存在しますので、清掃不良により歯の表面が緑色、黒色に変わっていきます。


汚れが多く、歯の表面正常がザラザラ、ヌルヌルしています。


汚れで歯の形も変わってしまうほど、沈着が多いです。

 

 

・薬剤による着色  → 歯のクリーニング、ホワイトニング、セラミック治療で対応

 

ヨード系うがい薬(イソジンなど)、銀イオンなど金属イオン配合の口腔ケア用品、クロルヘキシジン系洗口剤(リステリン、コンクールなども金属イオンが含まれています)

コンクール  着色するほど使っているとしたら、量的な問題もあると思われます。

 

 

・金属の詰め物、被せ物による着色 → セラミック治療で対応

 

合金の土台(メタルコア)、アマルガム、合金の被せ物、部分的な詰め物など、保険診療で認められている合金は口腔内で腐食しますので、金属イオンが溶け出し、歯肉や歯質が変色することが多いです。

メタルタトゥー :歯も歯肉にも黒ずみが出てくることがほとんどです。歯肉にも金属イオンによる黒ずみが目立つ状態。外科的に切除します。

 

 

・光重合型コンポジットレジン  → 再修復、セラミック治療で対応

 

樹脂の詰め物のことです。光重合触媒として配合されているアミン系化合物により、経年的に変色します。研磨などで光沢感を戻すことは可能です。ホワイトニングは適応でなく、再修復が必要です。

詰め物の縁が目立つようになると、穴はあいていなくても詰め物やりかえを希望される方が多いです。

 

 

○内部由来のもの

 

・加齢による歯の着色  → ホワイトニングで対応

 

加齢によりエナメル質がすり減って薄くなると、象牙質は歯髄を守るため第二象牙質という組織を作ります。象牙質の厚みが増し、その結果、黄色い色が透けて黄ばみが目立つようになります。
元々の象牙質の色は決まっていますので、下顎前歯でエナメル質が薄いような場合は注意が必要です。また、エナメル質はほとんど無機質で構成されていますが、その隙間に着色物質が入り込み、歯の変色としてあらわれることもあります。

 

・エナメル質形成不全症 → CR充填、セラミック治療で対応

 

生まれつきエナメル質の一部に線条や白濁が見られたり、重度の場合は象牙質が露出し歯が褐色となります。

 

 

・先天性ポルフィリン症 → セラミック治療で対応

 

象牙質のカルシウムにポルフィリンが沈着し、歯冠がピンク〜赤褐色に変色します。

 

・低フォスファターゼ血症 → セラミック治療で対応

 

カルシウムーリン代謝が阻害され、歯が黒褐色に変色します。

 

・失活歯 → ウォーキングブリーチ、セラミック治療で対応

 

失活歯というのは、根管治療すみの歯のことです。元々あった歯髄は治療により除去されている状態なのですが、その血液や歯髄組織の変性物が象牙質の構造に入り込み、緑色・灰色・黒色などに変色すると考えられています。

 

・内部吸収 → 根管治療で対応

 

外傷による出血や感染により、歯髄側から肉芽組織が増殖し、象牙質が吸収されている状態。外から見ると、内部の吸収している様子は見えません。レントゲンで歯の根の中から穴があいてくるような所見になります。

内部吸収のレントゲン写真。歯の根の中央に黒い影が認められます。

 

 

・斑状歯 → 変色が強い場合はセラミック治療

 

エナメル質表面に不定形の白濁、褐色の色調変化が生じます。

 

 

・テトラサイクリン  → 複数回のホワイトニング、セラミック治療で対応

 

出生児〜6歳くらいまでの歯の形成期に、テトラサイクリン系抗生剤を投与されている場合、歯にグレー系〜黒色の強い変色が生じます。左右対称に発現する特徴があります。
『 ファインマンのテトラサイクリン変色の分類』
F1 淡い黄色、褐色、灰色で歯冠全体が一様に着色されていて、縞模様は見られない。
F2  F1よりかは濃く、歯冠全体が一様に着色されていて、縞模様は見られない。
F3  濃い灰色、青みがかった灰色で縞模様を伴うもの。
F4  着色が強く、縞模様も著明なもの。

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○歯科医院でなくてもホワイトニングできる?

 

現在、ホワイトニングには様々なシステムが使用されていますが、基本的に歯の内部から白くなるのは 、過酸化水素・過酸化尿素が含まれたホワイトニングです。こちらは医薬品ですので、日本では歯科医院でしか使用が認められていません。エステ店、セルフホワイトニング店で行われているホワイトニングの効果が弱いのは、このような取り扱えるシステムの差があるからです。

私たちのホワイトニング治療の説明動画です。
現在はポリリン酸ホワイトニングを行っており、より白く、明るくなる効果がたかいシステムを採用しています。

ホワイトニングを検討されている方へ

2024年7月4日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

歯科関係でネット検索するとき、世間の人々が気になる順で言うと、
・歯の色、白さ
・口臭
が必ず上位にきます。

今回は気になる歯の色調と、ホワイトニングについてのトピックです。


私たちのホワイトニングの機器、オフィスホワイトニング専用の照射機です。

ホワイトニングの流れ
まずは、ホワイトニングのきっかけや一番気になる項目を確認します。これは、一人ひとり気になる歯の部位や目指したい色調が異なるため、そのことを確認するのはとても重要なのです。ホワイトニングをご希望される方で、歯を白くしたいけれどこんなことが気になるんだよなぁという項目は以下のような事項が挙げられます。

 

一度で結果が出て欲しい。
痛みなく、丁寧に施術してほしい。
歯がしみるのは避けたい。
食事、飲み物の制限がない方がいい。
施術を受けながらリラックスできたらいいな。
良心的な価格設定であって欲しい。
メニューの押し付けがないのがいい。
こちらの話を聞いてもらいたい。
わかりやすく説明を受けたい。

ネット上の様々な情報を調べた上で来院される方もいらっしゃいますので、
実際のホワイトニングの正しい情報提供と、
一人ひとりのご希望に応えるため、最初のカウンセリングをしっかり行っております。

 

・5W

 

When いつから気になりますか?
いつまでに白くしたいですか?
Where 具体的にどの歯の色が気になりますか?
Who 誰と比較して?
例えば理想となる芸能人の白さはありませんか?
What ホームケアでホワイトニング効果のあるものは使っていますか?
Why なぜ白くしたいですか?

 

・1H

 

How どんな風な白さになりたいですか?
今までホワイトニング体験ある方は、どんなシステムで効果はどうでしたか?

数々のホワイトニングシステムがありますので、既往歴もとても重要ですね。

 

・体調の確認

 

ホワイトニングが可能が判断するため、妊娠、授乳中の確認をします。オフィスホワイトニングは、専用のライト照射の時間、同じ姿勢で施術台を倒しておく必要があります。

 

・飲み物の確認

 

当院のホワイトニングの特徴として、飲み物の制限がないことをお伝えします。嗜好品は人それぞれですので、特に着色しやすい習慣がないかチェックをします。コーヒー、喫煙などです。意外かもしれませんが、最も着色しやすい飲み物は赤ワイン、2番目が紅茶、3番目がお茶、4番目がコーヒーなのです。
ポリリン酸ホワイトニングは、他のホワイトニングのシステムと異なり、食事制限はございません。上記の飲み物を常飲されているような場合、茶渋のような着色はつきやすいため、ホワイトニング効果の高い歯磨きペーストを併用すると良いと考えられます。


私たちがケアでおすすめする歯磨きペースト、GCルシェロホワイト。ホワイトニング後に白さを保つのに最も効果的です!歯にダメージを与える研磨剤が含まれていないこともおすすめポイントです。

 

・視診

 

嗜好品のうち、着色しやすいものを日常的に摂取されていると、特に歯の裏側に着色汚れが目立ってきます。また、歯の黄ばみの原因が嗜好品であるのか、歯の内部が原因なのか確認をします。虫歯や歯周病は、ホワイトニング施術までに問題を解決しておきます。
前歯の修復治療がある場合、ホワイトニングでご希望の色調になった後、その白さに合わせて修復すると、仕上がり良いです。

 

・黄ばみの原因と状況確認

 

①着色がある場合

 

お茶、コーヒーの着色が強く付着している場合、まず全体を清掃する必要があります。超音波の機械、またはパウダーを吹きつけて着色除去をする機械をよく用います。表面の汚れを取らないと、汚れがついた状態でホワイトニングの薬剤を作用させても効果的に白くできません。

 

②歯の内部の黄ばみ

 

まず歯の構造がどうなっているかについて説明します。私たちが見えている歯の表面は、エナメル質と言って半透明、乳白色をしています。ガラスやセラミックのように透けて中が見えるような組織です。その内側に象牙質があります。象牙質の色調は黄色いので、歯の内部の黄ばみというのは、象牙質が透けて見えて黄色い色調になっているということです。例えて言うなら、黄色い肌着の上に白いTシャツを着ているイメージです。これは、遺伝や年齢によってあります。20歳くらいが一番白く見えるようです。徐々に加齢と共に歯の色調が白くなくなっていく現象が起こりますが、食事や歯磨きなど何十年も時が経つにつれ、表面のエナメル質は摩耗し、中の象牙質が歯の中の歯髄を守ろうと分厚い組織に変化していくためです。

 

③歯周病の場合

 

歯石や細菌がバイオフィルムを形成している状態ですので、歯周病治療を行い、感染源を除去します。歯石は軽石のような構造をしており、その中に歯周病の原因菌をとどめておきやすい状況になっています。それに、歯石やバイオフィルムの上からホワイトニングの薬剤を作用させても効果が得られません。ですので、徹底的に歯周病治療を行い、状態を良くしてからホワイトニングをスタートさせます。


歯周病治療で用いる歯石除去用の器具。歯根の表面に固く付着した感染源を除去し、滑沢な性状にしてバイオフィルム形成されにくいようにします。

 

・シェードチェック

 

歯の色調について、現状と目標を決めます。患者さんに手鏡を持ってもらい、シェードガイド(色見本)とご自身の歯の現時点での色調を確認します。この時、患者さんご自身が一番黄色いと感じるところがどのシェードか見てもらいます。16段階の明るさがあり、その中で言うと日本人の平均はA2というシェードです。患者さんがシェードガイドを見てもらった時に、このくらいが白いと感じるシェードを選んでいただきます。大体A1~B1くらいだと、周りの人から歯が白いと気づかれます。
シェードガイドの中にはブリーチカラーという段階があります。これら4つの色調は明らかに白いですので、人から歯が特に白いと褒められることになるでしょう。その人によって、また年齢、肌の色、シェードの微妙な違いで似合う、似合わないが変わります。例えば、黒人の方は特別歯が白いわけではありませんが、肌とのコントラストにより特に歯が白く見えます。BL1くらい真っ白だと、新庄さんや清原さんのように歯だけ浮いてしまい、周りの人に違和感を与えてしまいます。
ここで一旦目標設定を「このくらいのシェードを目指したい!」という感じで行います。現在のシェードとのギャップがありますから、その目標に達するまでの期間をお伝えします。

 

オフィス・ホームの2つのホワイトニング

 

オフィスホワイトニングは、クリニックで行います。薬剤を歯の表面に塗布し、専用のライトを照射して歯を白くします。即効性があるのが特徴です。目標とするシェードと現在の状態のギャップが大きい場合、ホームホワイトニングと併用して行うことがほとんどです。これは、ご自身の歯型にジェルを入れて、1日30分から40分程度はめていただくというやり方です。オフィスホワイトニングは早めに白さが実感できます。後戻り防止と、内部の白くする目的でホームホワイトニングを同時期に行います。相乗効果で白くなり、早期の目標達成が期待できます。私たちはホワイトニング施術の様々なケースの実績がありますので、施術する歯科衛生士から、どのくらいの期間で目標達成できそうか案内するようにしています。
ホワイトニングできる状態になったとして、ホームホワイトニングは開始する前に一旦お口の歯型をとる必要があります。その次に来院された時、ホワイトニング用のトレーと、ホームホワイトニング用ジェル(シリンジに入っています)をお渡しするという流れです。


ホームホワイトニング用のシリンジです。1本で約2週間分です。

私たちのホワイトニングの施術は
こちら
の動画をご覧ください。

ご予約はWEBで可能です。

お子さんの食べ方、気になることはありませんか?

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

小児の患者さんの、口腔機能についてのトピックです。
ご家庭でお食事される時、ふとした時、
「よく見たらうちの子、食事中の癖が強いな」
「いつも口がポカンって開いてる」
「舌がよく出てる」
「食事でよく噛めてないようで、時間がかかる」
「他のお友達と比べて、永久歯の生え変わりが進んでないな」
と気づかれることがあるかもしれません。
実は、それらはお口の発達不全につながっているのです。

 

リットレメーター

 


お口がよく開いているお子さんの、口唇閉鎖機能を検査するリットレメーター:マウスピースを唇で保持してもらい、どのくらいまで引っ張れるかテストをします。診断の一つの根拠になります。実は口が常に開いていると、口臭がキツくなる、虫歯や歯肉炎が悪化しやすい、アレルギーになりやすいなどよくないことにつながります。

 

⚫️食べることの問題

 

—噛まない—
①歯は生えそろっているか?

 

食べ物を噛んで食べるには、臼歯の咬み合わせが重要です。摂食機能の発達から事例をみると,通常2歳であれば咀嚼機能は獲得されていますが,歯の萌出状態によっては繊維の多い野菜や肉、かまぼこなどの練り製品は咀嚼しきれずに口の中に残ってしまう場合があります。そうすると,丸のみや口から出してしまうといった行動につながりやすくなります。萌出前の歯肉しかない時期や生えはじめの時期、また永久歯への交換の時期には、食事のメニューの選択の配慮が必要です。

 

②弱い力でもすりつぶせるか?

 

咀嚼機能の発達にも個人差があり、2歳でもまだ十分に機能が育っていない可能性があります。口の動きを観察し、「左右の口角は非対称に動いているか」「噛んでいる顎のほうに、口唇や顎は引っ張られているか」「舌は横に動いているか」を確認します。
これらができていなければ、まだ咀嚼機能が十分に育っていない可能性があります。


小児の方に、というわけではないですが、咀嚼能力を検査する機器がこちらです。検査用のグミを噛んでもらい、どの程度噛み砕けたか、センサーで確認できるものです。歯を失って機能に影響が出ている方の診断と、治療後の咀嚼機能を評価する基準に用いられます。

 

③かじりとりはできるか?

 

咀嚼するためには、まず自分の前歯で自分の口に合った一口量をかじりとることが大切です。それによって、前歯の歯根膜に食べ物の感覚が伝わり、口に入る食べ物の固さや量を感知し、その後の咀嚼運動へとつながっていきます。逆に、前歯でかじらず口の奥にポーンと放り込むような食べ方をしていると,口の中の感覚情報が得られず、咀嚼運動が引き出されにくくなります。

 

④食べることを急かされていないか?

 

咀嚼しないことの弊害は、「丸のみ」につながることです、臼歯が生えそろい、咀嚼機能が獲得されているにもかかわらずあまり噛まない場合。環境に原因があることも多いようです。「急いで食べなさい」などと急かされていたり、あるいは兄弟や姉妹と争うように食べていたりなど、早食いせざるをえないような環境にあるのかもしれません。早食いが定着すると窒息事故にもつながる恐れがあります。心身ともにリラックスして食事ができる環境を整えてあげることが大切です。
また。食べるのが速い。噛む回数が少ないことは、肥満の原因となります。よく噛むことは食べ物のおいしさを引き出し。消化吸収を助け、満腹中枢に作用して満腹感を得ることにつながります。子どものころからしっかり噛んで食べる習慣をつけ、生活習慣病にならないように指導しましょう。
※正常な咀嚼機能の見方
①咀嚼しているほうへ口唇.顎.舌が寄るのがみ
られる。
②歯の上の食べ物を舌と頬で支えている。

 

—口に溜めて飲み込まない—
①口の機能の発育段階と食べ物の形・固さは合っているか?

 

「食べる意欲はありそうなのに、口に溜めたまま飲み込まない」…..そのような場合は、食べ物の形・固さが摂食機能の発達段階に合っていない可能性があります。たとえば、小学校入学前の6歳では、咀嚼機能も十分に育ち、第一乳臼歯の萌出とともに咀嚼の力は強くなりますが、まだ大人と同じくらいの力までは身についておらず、固い食べ物を何でも食べられるわけではありません。同時に、前歯の交換も始まるため、前歯が動揺していたり、抜けていたりすることから、かじりとりができない時期でもあります。その結果として、口の中の食べ物をうまく飲み込めずに、口に溜めたままになってしまうことも考えられます。このような時期に摂食機能に合わない固い食べ物ばかり食べさせていると、口に溜めたままになってしまうか,あるいは無理に丸のみする癖がついてしまいます。子どものそのときどきの口の環境や摂食機能の状態に合わせて、食べられる形・固さの食べ物を与え、すこしずつ機能を伸ばしていくようにします。
※摂食機能の発育段階に適さない形・固さの食べ物を与えると、正常な摂食が困難になってしまいます。

 

②食べる意欲はあるか?生活は乱れていないか?

 

子どもは同じ年齢でも個人差が大きく、食欲もまちまちです。食欲旺盛な子もいれば、小食の子もいます。子どもが小食の場合,親は「ちゃんと栄養が摂れているのかしら?」と心配しがちです。そうすると。「もっと食べなさい」と食事の量を増やしたり、追いかけ回して食べさせようとしたりしてしまい。子どもにとっては食事が苦しいものになっている可能性があります。また,間食(おやつ)やジュースを摂る量が多くなっている場合は、つねに満腹で食べる意欲も育ちません。それでも食べなくてはいけない状況になると,結果的に「口に溜めたまま飲み込まない」ということになってしまいます。
外遊びや友だちとの遊びをとおして適度に運動をさせ、自然に空腹感を味わえるような生活リズムをつくることも大切です。

 

—食べるときに舌がいつも出る—
①嚥下はきちんとできているか?

 

口が開きっぱなしで,の嚥下時に舌が出るということは、まだ「乳児の下」をしていると考えられます。通常、離乳食が開始された5~6カ月ころには、口を閉じての下する「成人の下」が獲得されますが、哺乳を継続しているお子さんだと、舌の使い方が哺乳のときのまま残ってしまうことがあります。その場合,まずは哺乳瓶をやめて、水分をスプーンやコップから飲むように促していきます。もし、哺乳瓶の使用をやめてしばらく経っても乳児嚥下が改善されなければ、成人嚥下を覚えてもらう練習が必要かもしれません。その場合,口唇と顎をしっかり閉じた状態での嚥下できるよう、お母さんなどの指で、口唇を閉じる介助を試みるようにします。

 

②口唇の力はあるか? いつも口が開いたままか?

 

咀嚼の動きはできているようなので、幼児食程度の固さのものでも食べられるかもしれません。しかし,口を閉じるための筋肉,特に口輪筋が低緊張であるといつも口が開きっぱなしになり、そのためにの下時に舌が出てしまう可能性もあります。また、鼻炎などで鼻から呼吸ができない場合は口呼吸となりますので、やはり口が開きっぱなしとなり、安静時の筋肉の緊張度にも影響が出てしまいます。


「うちの子、いつも口開いてるんです」というお話は、診療室でよく聞きます。お口や顔面の成長は、生まれた時からの授乳をどうしていくか、から考える必要があります。母乳が可能な場合は、赤ちゃんが顔を真っ赤にしておっぱいを飲む、この行為自体に非常に意味があります。一生懸命吸っていくことにより、骨が正常に成長していきます。
よくないのは、小さい力で飲みやすいようにと哺乳瓶の吸い口を大きくすることです。楽に飲めるようにと考慮されたものかもしれませんが、発育にとっては逆効果のものなので、使用されない方が良いです。

 

③食べ物は咀幅機能に合っているか?

 

「咀嚼はできるけれど舌を出しての下してしまう」・・・・・・このような場合、いったいどのような食べ物が合っているのでしょうか、ここで大切なのは「咀嚼の動きがどこまでできているのか」ということです。咀嚼の動きというのは、顎や舌が側方に動くことだけを指すのではありません。顎や舌とともに口唇や頰も上手に協調させながら、奥歯で食べ物を十分にすりつぶし,唾液と混ぜ、そして舌の上で一塊にすることができなければ、上手には飲み込めません。したがって、咀嚼しきれない食べ物を飲み込もうとするために、舌が出てしまっている可能性が考えられます.そのような場合は、咀嚼機能に食べ物が合っていない (食べ物が固すぎる)可能性が高いので、咀嚼できる軟らかいものに変えていくようにしましょう同時に、舌を出さずに嚥下する機能を獲得するためにのアプローチを行っていきます。
摂食機能の発達には、ある程度順番があります。しかしときには,この順番が違ってしまうこともあります。本人の発達段階に合わせて摂食機能を促すことが原則ですが、安全面を考慮しながら、獲得している咀嚼機能を大切に育てていくことも考えていくようにしましょう。
ほかにも、食行動の問題は、齲蝕など口腔内の痛みが原因のことも考えられます。まずは口腔内にこうした器質的な問題がないかをチェックし、そのうえで機能面の対応をしていきましょう。

 

小児の口腔機能発達不全の診断基準

 

○離乳前    以下の2つ以上該当する
・お口ポカン
・小帯付着異常
・授乳時間、回数のムラ
・スプーンを押し出す癖
・離乳がすすまない

○離乳後    Aから1つ以上、Bから2つ以上該当する
A:歯の萌出の遅れ、歯列不正、偏咀嚼、虫歯があって咀嚼に影響ある、強く噛みしめられない、咀嚼時間が長すぎる
B:舌突出癖、口唇閉鎖不全、小帯の異常、舌や口唇、指吸いなどの癖あり、食べる量や回数のムラあり、構音の異常。

口腔機能発達不全に対する検査、筋機能訓練、生活習慣指導は、保険診療でも認められております。
お子さんのお口が気になったら、こちらからお気軽にご相談ください。

お口のメンテナンスについて

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

虫歯や歯周病、歯がないところを補う治療を行い、
一旦治療が終了しました!となったら、
良い状態を保っていくためにメンテナンスを開始します。

 

予防の味方 V7ブラシ

 


ケア用品の一つ、V7歯ブラシ:歯周病、虫歯が始まりやすい歯と歯の間に毛先が入っていく、つまようじ法という磨き方に特化した歯ブラシです。大人の方のメンテナンスに用いています。他の歯ブラシと動かし方が違い、コツが要りますが、軽く動かしても歯と歯の間の歯肉がマッサージされ、清掃効果の高さを感じます。なんと言ってもめちゃくちゃ気持ち良くスッキリできます。

 

◼️メンテナンスの分類

 

①予防的メインテナンス
(preventive maintenance)
②治療後メインテナンス
(post-treatment maintenance)
③試行的メインテナンス
(trial maintenance)
④妥協的メインテナンス
(compromised maintenance)

▪️予防的メインテナンスでは、まだほとんど特異的な歯周病菌の感染の経験もなく、したがって歯周組織の破壊もほとんど認められません。歯肉炎を認めることはありますが、プラークの非特異的蓄積によるものでプラークコントロールにより改善します。
メインテナンスプログラムの中心はセルフケアの強化と歯肉縁上のプロケアとなります。
▪️治療後メインテナンスでは、歯周病菌の感染による破壊の既往があって、それに対して歯周治療を行った患者さんに対するメインテナンスということになります。動的治療によってどれだけ改善し、どれだけ問題が残ったかによってメインテナンスプログラムが変わってきます。
▪️試行的メインテナンスでも歯周病菌の感染と破壊の既往があるのですが、望ましい歯周治療を行わず、より侵襲の少ない次善の治療でメインテナンスに移行している場合になります。問題を抱えていますのでトラブルが起こるようでしたら用意している次のオプションに移行することになります。
それに対して妥協的メインテナンスでは、さまざまな理由で積極的な動的治療が行えずメインテナンスに移行していますので、もっともリスクの高い状態になっています。
それでは次項より順を追って各メインテナンスについて詳しく解説をしていきましょう。

歯周病の進行は見た目ではわかりにくいこともあります。歯の周りの顎の骨が、炎症により溶けていくのが歯周病です。

 

●予防的メンテナンスの特徴

 

予防的メインテナンスの患者さんは、今までに歯周病菌の感染の経験がほとんどありません。そのため歯周組織の破壊もほとんどなく、炎症があっても歯肉炎程度です。その炎症は可逆的ですので歯周動的治療で健康な状態に戻りやすいわけです。もちろん歯石が沈着していたり、患者さんのプラークコントロールに問題があったりしますので、動的治療では歯肉縁上、歯肉縁下の両方に治療介入が必要になる場合もあるでしょうが、メインテナンスに移行してからのケアの中心は歯肉縁上になります。治療後のメインテナンスと違う点は動的治療におけるわれわれの介入が最小限であるということです。つまり元々リスクが低い患者さんで、その低いリスクを維持していくのが予防的メインテナンスということになります。
動的治療中の歯肉溝は仮性ポケット(pseudo-pocket)といわれるような形態をとっています。必要に応じて根面デブライドメントとセルフケアの強化を行うことにより、それらのポケットはシャローサルカス(shallow sulcus)になります。エックス線写真診断では骨吸収はほとんど認められず、隣接面における骨頂は CEJ(セメントエナメル境)から1~2mm離れたところにあります。動的治療前のポケットも4、5mm程度にとどまることが多く、炎症の程度によってBOP が認められます。動的治療により歯肉
溝は3mm以下に収まり、BOPもかなり軽減しますので、セルフケアレベルの向上を確認のうえ予防的メインテナンスに移行することになります。
予防的メインテナンス患者さんの歯肉溝のほとんどはシャローサルカスです(Schallhorn
RG. 歯周治療成功への道歯周外科をどう考えるか。1990年国際歯学学術会議10周年記念講演より)。これは本来その患者さんの持つ健康な歯肉溝で、プロービング値は3mm以下、上皮性付着の幅は約1mm、BOP や排膿がなく、骨頂から歯肉頂までの距離つまり歯肉の厚みが最低限になっていますので、歯肉退縮のリスクも少ないといわれています。なぜなら歯肉はそれ以上薄くなれないわけですから、さらに歯肉退縮を起こそうと思えば骨吸収が起こることが条件になりますが、浅い歯肉溝には骨吸収の元凶である歯周病菌がほとんど住み着いていないため、いったんできあがったシャローサルカスは歯肉退縮を起こしにくいわけです。
メインテナンスに移行するときに歯肉溝がシャローサルカスになっているのはもっとも望ましいことで、患者さんのセルフケアもわれわれの行うプロケアも容易です。そのため予防的メインテナンスは、もっともリスクの低いメインテナンスといえるでしょう。つまり究極のゴールに近い動的治療のゴールを切っているわけです。メインテナンス中は歯周病菌の定着、感染を起こさないよう歯肉縁上を中心にケアしていくことになります。

メンテナンスで清掃し、歯面を滑沢に、プラークが再形成されにくい状態にします。

 

●予防的メインメンテナスにおけるメインテナンスプログラム

 

予防的メインテナンス患者さんは歯肉縁下にはほとんど問題がありませんので、セルフケアのチェックと歯肉縁上のバイオフィルム破壊、PMTC を中心としたメインテナンスプログラムになります。治療時間ももっとも短く済ませることができるでしょう。
まずプラークの残っているところやBOPを認めるところを中心にケアしていきますが、これはいわゆるアンダーブラッシングのチェックということになります。もちろん見た目で炎症が起こっているところもこれに含まれます。


メンテナンスの患者さんの口腔内写真:歯肉は引き締まっており、ピンク色で健康的です。

予防的メインテナンス患者さんの口腔内は、非常にケアの行き届いている場合もよくあります。歯面はピカピカでプロービングしても出血もしないし、すべて3mm以下です。このような口腔内であればブラッシングの指導なんてまったく必要ないと思ってしまいます。しかしここに大きな落とし穴があります。そうです。このような場合は往々にして患者さんはオーバーブラッシングに陥っていることがあるのです。その初期症状をいかに察知するかも非常に大切なことになります。歯肉退縮が進んでいるようなところはないか、知覚過敏が起こっているところや歯肉に傷があるようなところがないか、注意深く観察する必要があります。歯ブラシの毛はどれくらいで開いてくるかとか、歯ブラシの種類が硬いものに変わっていないか、持ち方や動かし方が変わっていないかもチェックしましょう。もしブラッシング圧に不安があるようでしたら、術者磨きをすることで患者さんに正しいブラッシング圧を体験してもらうのもいい方法です。このように見た目パーフェクトでわれわれのかかわれるようなところがないように感じる患者さんでも、必ずどこかにチェックするべきところがあるはずです。
プロケアとして行う細菌バイオフィルム破壊も歯肉縁上を中心に行います。BOP が続いているような部位があれば、歯肉縁下歯石の取り残しがないかどうか確認する必要があるでしょう。PMTCもオーバーPMTCにならないように注意しなければなりません。着色の強いような患者さんは別ですが、そうでなければ研磨性の低いペーストで回転数、側方圧をコントロールしながら、気持ちの良い PMICを心がけています。
知覚過敏を起こしている患者さんや、オーバーブラッシングの結果歯肉退縮を起こしている患者さんの場合、最後にフッ化物歯面塗布を行います。う蝕のリスクの高い患者さんの場合は、フッ化物歯面塗布は必須です。

 

●予防的メインテナンスのリコール間隔

 

歯周病菌もほとんどいなくて、歯周組織の環境も整っている予防的メインテナンスは、もっともリスクが低いため、リコール間隔はもっとも長く設定できます。おそらく半年や1年という間隔でも健康を維持できる可能性は高いと思われます。ただし、私個人の意見としては、予防的メインテナンスであってもできれば3ヵ月か4ヵ月に一度は定期健診をしたいところです。というのも予防的メインテナンスでは、患者さんのセルフケアのウェイトが大部分を占めますので、そのセルフケアのレベルがうまく維持できているのかどうかをこまめにチェックしたいからです。あまり期間をあけ過ぎると、いつのまにかもとのブラッシングに戻っていてがっかりということもあります。このあたりは、その患者さんの生活の中でどれだけセルフケアが習慣にまで変容しているかということにかかってぎすので、いきなり長いリコール間隔に設定するのではなく、安定していれば少しずつ間隔を伸ばしていく方が無難でしょう。

基本的に3ヶ月ごとの来院で問題ない方が多いです。

 

●予防的メインテナンスにおける悪化

 

予防的メインテナンスであっても悪化することはあります。ただしいきなり骨吸収を起こして深い垂直性骨欠損ができることはありません。まずは歯肉炎が起こることから始まります。この時点ですぐに対処すれば元の健康な歯肉溝、つまりシャローサルカスに戻ります。プロービング値が大きくなったり、プロービング時に出血するようなところをていねいに細菌バイオフィルム破壊を行い、セルフケアの再強化をしましょう。場合によっては少しリコール間隔を短くして、安定を確認してから元のリコール間隔に戻すことも必要かもしれません。
また歯肉退縮が進む場合もあるでしょう。どちらかというとこちらの方が可能性が高いかもしれません。予防的メインテナンスで定期的におみえになる患者さんは、完璧主義者が多いように感じるからです。磨きすぎによる弊害が起こってきていることをお伝えして、その原因を患者さんと一緒に考えていきます。硬い市販の歯ブラシに換えていたり、ブラッシング圧やブラッシング時間が変わっていないかなど具体的な原因を探し、それに対する指導をするように心がけます。

定期健診ご希望の方が多く来院されています。お問い合わせはお気軽にこちらからお願いいたします。

子供の口腔機能の発達

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お子さんのお口周りの発達についてのトピックです。

 

口周りの癖が原因で治療対象となったケース

 

 


上唇を噛む癖があるお子さん:上唇を口の中に巻き込むように遊ぶ癖があったために、上の前歯が内側へ傾斜して受け口になっています。



小児矯正と口周りの筋機能訓練を行います。親御さんにも、矯正治療のマウスピースの取り扱い、お子さんのフォローをお願いしながらすすめます。


4ヶ月で正常咬合に変わりました。

 

⚫️子どもの口腔機能の発達

 

—離乳の準備期—
●原始反射

 

乳児は、出生直後からみられる原始反射によむて哺乳を行うことで栄養を摂取します。また、原始反射が出現している時期では、口唇、舌、顎などの口腔諸器官の一体動作により哺乳動作が行なわれています。これらは乳児自身の意思とは関係なく、不随運動で行われます。
乳児の時期は、口を開口させて乳首を取り込み、舌を下唇の上に置きながら舌の蠕動様の動きで乳汁を摂り取り込む、このときの口蓋には、「吸啜窩」という乳首がちょうど安定するようなくぼみがある。

・原始反射・・・乳児に備わっている、特有の刺激に応えて示す中枢神経系由来の反射行動。

 

●指しゃぶり・おもちゃしゃぶり

 

多くの乳児は,生後2カ月ごろから随意的に指しゃりを始めますが。手指の発達によって徐々にしゃぶりは減少していきます。さらに,4カ月ごろこなると上肢と手指の発達に伴い,おもちゃなどをロこもっていく行動(おもちゃしゃぶり)がみられはじめます。指しゃぶりやおもちゃしゃぶりによりさまざまな物性が口腔内に入ることで、口唇,舌,顎を随意的に動かすようになり、「原始反射を消失させて離乳食を開始するための準備運動」としても重要な行動と考えられています。そのため,離乳食開始時期に保護者から「離乳食をベロで押し出して食べてくれないんです」「うまく食べ物を喉のほうにもっていけないみたいなんです」というような質問があったときには,原始反射の残存を確認したり、指しゃぶりやおもちゃしゃぶりをしているか(あるいは,していたか)を確認しています。

 

 

—離乳期以降—

 

原始反射は、おおよそ離乳食を開始する5〜6カ月ごろには消失していきます。このころから身体の成長、発育が著しくなるとともに、摂食機能の獲得にもさまざまな変化がみられるため。
問診,観察を細かく行う必要性があります。離乳食が始まったら、歯の萌出程度と併せて口腔の形態、口腔機能の獲得をみていきます。
いずれの段階においても発達の程度には個人差が大きく、子どものもつ意欲によっても左右される場合があります。発達を促すためには、次に獲得する機能がすこしみえはじめた時点で次のステップにチャレンジし、学習するということも重要です。
しかし、あまり急ぎすぎても子どもがついていけなくなるため、保護者こ方は「自分の子はほかの子より遅れている」という不安になると思いますが、子どもの口腔発達には個人差があること忘れずに急がず発達段階を踏まえたアプローチをしていきましょう 。

 

⚫️子どもの口腔習癖
—指しゃぶり—

 

「指しゃぶり」は、授乳期の乳児には大切な行為であり,幼児期になってもおよそ20~40%にみられる生理的なものです、この指しゃぶりは、お母さんのお腹の中にいる胎生15〜20週から始まっています。そして、乳児は出生後。2~3カ月かけて自分の指を口にもっていけるようになり。盛んに指しゃぶりを行うようになります。このころは原始反射である哺乳反射が優位ですので,指しゃぶりも反射の動きで行われています。しかし,やがて大脳上位の発達がなされるとともに、哺乳反射が消えていくため。
徐々に随意的な動きに変わっていきます。また、哺乳反射の消失に伴い、5~6カ月ごろには哺乳機能から摂食機能へ移行していきます。
指しゃぶりは哺乳に通じる行為であり、心理的満足感や情緒の安定にもつながると考えられています。乳児は、はじめのうちは感覚の発達した器官である口への刺激として指しゃぶりを盛んに行っていますが、やがて1歳を過ぎてひとり歩きができるようになると、ほかに興味が広がり、徐々に指しゃぶりがなくなっていくことが多いようです.
これらのことを考えると、5カ月ぐらいのお子さんの指しゃぶりはまだやめさせる必要はありません。むしろ、口の機能や情緒の発達にとっては大切な行為ですから。無理にやめさせるのは逆効果になる恐れがあります。指しゃぶりが歯並びに影響してくるのは乳歯が萌出してからであり、遅くとも4歳までにやめれば後の歯並びに影響はないというのが一般的な見解です。
もし4歳以降~学童期にかけても指しゃぶりを行っている場合には、口腔機能や顎顔面の形態への影響が深刻になります。しかし、この時期においても指しゃぶりを行っているということは、生活環境や社会環境などの影響。心理的な問題など、多くの要素が関係していると考えられます.その行為だけに目を向けても解決することは難しく、小児科医や小児歯科医、矯正歯科医,言語聴覚士,臨床心理士など、専門職からの支援が必要です。

・哺乳反射・・・一連の乳汁摂取のために反射運動、胎生期の後半には獲得される原始反射であり、探索反射.口唇反射.呼吸反射.咬反射がある。

 

—口呼吸—

 

口呼吸の関連因子は多様ですが、幼少時の指しゃぶりが長期化することにより上顎前突や開咬が引き起こされ、その結果として口唇閉鎖不全が起こり、口呼吸となる可能性も指摘されています。全身への影響としては、鼻腔を通じた加温・加湿や防塵機能が働かないため呼吸器系の粘膜保護が作用せず、風邪などの感染症に罹りやすくなります。また、口呼吸の子どもでは下顎と舌が下行して顔面が上向きになり、頭部が前へ出るような不良姿勢になりやすいという報告もあります 。
このように、口呼吸は口腔顔面のみならず全身にも影響を及ぼす可能性がありますが、どのように対応したらよいでしょうか?耳鼻科疾患がある場合は、まずその治療が最優先でしょう.鼻呼吸を促すためにも,鼻孔の通過をよくしておく必要があります。もし、耳鼻科疾患がなく、ほかに口唇閉鎖を阻害する因子(筋緊張を低下させるような薬の服用等)がなけれは、口唇閉鎖力をつけるトレーニングや、鼻呼吸を促すトレーニングを行いましょう。
「口を閉じて!」と注意することも必要ですが、あまり言いすぎるとかえって逆効果になることがあります。すでに上顎前突になってしまっていたり。口輪筋の筋力が弱かったりする場合には、「口で言われて頭でわかっていてもできない!」という状況だからです。本人の負担にならないよう自覚させながら。楽しんでできるトレーニングプログラムを立てていきましょう!

 

—離乳食を嫌がる—
●離乳食開始の時期

 

離乳食は、首の座りがしっかりしている,支えてあげると座れる、食べ物に興味を示す、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなるなど、子どもの育ちをみて開始します。離乳食を始めてみたものの。まだ身体や口や心の準備が整っていなしために食べることを嫌がってしまうことがあります。

 

●食べる機能の育ちと離乳食の固さのずれ

 

舌や顎の動かし方の発達に伴って、食べることのできる固さが変わってきます。そのため、食べる機能の育ちと食べ物の固さがずれていると,離乳食を嫌がる原因になることがあります。保護者には、調理した離乳食を子どもに食べさせる前に,自身の舌を使って試食するようにしてみましょう。さらに,子どもが食べているときの口元の動きを観察し、発達とそれに合った離乳食の固さにしましょう。食べる機能の育ちに合った固さにすることで食べやすくねります。

 

 

●食への興味を伸ばす

 

何にでも興味津々の子どもは、食べることにもワクワクしています。見た目や匂いに興味をもつだけでなく、”触ってみたい”とも感じていますが、手が器用になる以前の、微妙な力加減が難しい時期には、ほとんどの食材はグチャ、とつぶれてしまいます。そこでテーブルや服や床が汚れてしまうため、保護者がつい先まわりして食べ物に触れないように手の届かないところに避けたり、汚さないよう注意したりしてしまうことがあります.手づかみでのかじりとりは自食のスタートとして、手の経験だけでなく、手と口の動きの連動を学習するためにも必要であることですので、触れるための食材を準備するなど、十分に手づかみ食べを経験させるようにしましょう。

 

—あまり食べない—

 

保護者のなかには、「子どもが離乳食をあまり食べない」という悩みをもっている方がいますがまずは、食べる機能と食べ物の形態が合っているかを確認しましょう 。
食欲や食べる量の差は、体格.性格.体力などによる個人差もあります。そのときの体調(眠い.空腹でない.便秘.疲れているなど)、好き嫌い(新しいものが苦手、味,形態など)などさまざまな要因が考えられます。特に、離乳食の時期は、本人が気持ちを言葉で伝えることはできないので、なぜ食べないのかがわからず保護者が悩んでしまうことも多くあるでしょう。量だけにとらわれず、総合的な判断が必要です。
子どもの身体的な発育については成長曲線を確認し、問題がないようであれば、焦らず見守るようにしましょう。

お子さんの気になるお口についての相談はお気軽にこちらからお願いいたします。

口腔機能、その成り立ち

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

なぜ、歯科診療室で口腔機能をみることが重要なのか?
ヒトは、どのように口腔機能を発達させるのか?
についてのお話です。


下の前歯の方が上の前歯よりも出ている、逆被蓋の状態。不正咬合の一種。

 

⚫️ヒトの口腔の発達は母胎内から始まる!

 

口は、「呼吸」と「嚥下」という,ヒトが生きていくうえでなくてはならない2つの機能を担う器官です。そのため、これらの機能は胎生期のかなり初期から発達しています。
受精後,胎児は胎生24週には吸啜の動きが出現し,28週ころには吸啜との下が同期するようになります。吸啜の動きを自分の指で繰り返し練習することで、出生後すぐに哺乳を行い。栄養を摂取することができるのです。このように、胎児の吸啜・嚥下運動は、母胎内ですでに感覚・運動系の発達として獲得されています。そして,出生後の食べる機能(摂食嚥下機能)もまた,感覚・運動系の発達としてなされていきます。
この機能は、口腔と咽頭の形態発育との関連がとても深いのです。ヒトの哺乳期の口腔や咽頭は,吸啜(哺乳)を行うのに適した形態をしていますが、その後離乳が始まり、固形の食べ物が食べられるようになるにしたがって口や顎が成長し、ものを噛んで食べるのにふさわしい形態に発達していくのです。

 

●成長・発達による口・喉の変化(嚥下時)

 

①乳児のころ(乳児嚥下)
哺乳期の舌は前後の動きが主であり、喉の位置(気管と食道の入り口)は高い。
②離乳食が始まったころ
舌は上下に動いて食べ物をつぶすようになり、下唇が内側にめくれ込む動きもみられる。
③乳歯が生えはじめたころ
舌のさらに複雑な動きができるようになり、下唇のめくれ込みはみられなくなる。また、喉の位置も下がり、発声のための音をつくる空間ができていく。

 

●”食べる機能”発達の原則

 

食べる機能(摂食嚥下機能)の発達には、原則があるとされます。それは、「個体と環境の相互作用」です。子ども本人の「発達する力」と、周りを取り巻く「環境」からの刺激がバランスよく働きかけあうことで,感覚・運動の統合がなされ、食べるために必要な機能の発達が促進されます。また、食べる機能の発達には適切な時期があり、年齢が低いほど内発的な力が旺盛です。しかし、最適な時期を過ぎたとしても,時間がかかるかもしれませんが食べる機能の獲得はなされていくと考えられており、何歳になってもあきらめるべきではありません。

乳歯列から成長し、生え替わりの途中の時期。このように乳歯の間の隙間が目立ってきます。永久歯への生え変わりに向けて、顎が成長していきます。

 

●“食べる機能”の発達の順序とは?

 

食べる機能はある一定の順番で発達していきます。全身の姿勢や運動に関連する粗大運動の発達では、じめに頸定し(首がすわり),座位がとれるようにり、つかまり立ちをし,一人歩きをする,といった番がありますが、食べる機能も同様で、哺乳からしなり咀嚼機能が獲得されるわけではなく、口唇を閉たり、舌が前後から上下,左右へと動いたりするこができるようになりながら咀の動きが獲得されてきます。そして、その動きには”予行性”があることもいわれています。これは、「獲得された動きを十分に経験することで、次の段階の機能が獲得されやすくなる」ということです。つまり、そのとき食べられる形、軟らかさの食事を十分に食べているうちに、次の段階の機能が自然と引き出されてくるということなのです.

 

●口腔機能の発達はヒトそれぞれ

 

機能の発達は、日々順調に進んでいくわけではありません。階段を上がったり降りたり、あるいは螺旋階段を登るように遠まわりしながら伸びていく場合もあります。ヒトほど個人差の大きい動物はいないといわれるほど、食べる機能の発達過程にも個人差があります.これは機能面のみならず、歯の萌出時期や口腔形態の違い,個人の性格や家庭環境による違いなど、さまざまな要因が影響するためです。したがって、同じ月齢,年齢で比較することは意味がないばかりか、かえって弊害を招くことが多くなります。
このように、ヒトは自分のもっている力に加え、実にさまざまな要因の影響を受けながら口の機能を発達させていきます。このことは、健康な子どもも発達に遅れのある子どもも、変わりはないのです。


下の前歯が見えないほど深く噛み込んでいる、過蓋咬合の状態。顎の成長に影響があります。

 

⚫️人は、どのように老いるのか?
●いま来院している高齢者はいずれ通院不可能となる

 

日本人はどのように老いていくのでしょうか?全国の高齢者を20年間追跡調査し(N=5717),高齢者の自立度の変化パターンを調べた報告があります。その調査によると、男性では
60歳代前半から一気に自立度を低下させるパターンは19%で、脳血管疾患への罹患など全身疾患がその原因となります。一方で,75歳以降に徐々に身体機能の低下を示すのは約70%であり、加齢とともにその発症率を増すさまざまな疾患に加え、低栄養に伴う筋力の低下などが原因と考えられます。
高齢者の多くが憧れる“ぴんぴんころり (亡くなる直前まで元気に生活すること)”は10%程度にすぎず、多くの高齢者が徐々に身体機能・認知機能を低下させ、自立度を低下させていることがわかります。手段的日常生活動作について援助が必要。加えて基礎的日常生活動作についても援助を必要とする。
「手段日常生活動作」とは、買い物や洗濯などの家事や、交通機関を利用した外出や服薬管理、金銭の管理など高次の生活機能を維持するために必要な能力です。一方、「基礎的日常生活動作」は、食事や着替え、就寝・起床、入浴やトイレに行くなどの基本的な生活動作を示しています。つまり、70%の人が80歳を前にして、齲蝕や歯周病の予防が可能な口腔衛生管理ができなくなる恐れがあり,80歳代前半には外来受診が困難になるといえます。また、晩年まで自立を維持できる10%の人を除いて、期間の長短はあるにしろほぼすべての人が自立した生活が困難な時期を過ごすことになり、歯科医院への通院が不可能となることを示しています。
60歳代前半から一気に自立度を低下させる19%の多くは、病気などで一気に通院が困難になった方たちで,皆さんが診療室に勤めている限りはお会いすることはないかもしれません。一方で、いま、元気に来院してくれている高齢者のなかには、もうすぐに、約70%のコースに乗っている人たちも多くいるはずです。
つまり、高齢者についてはある意味,ほぼすべての人が通院不可能になることを考えて,歯科治療の計画を立てる必要があります。次のリコールやメインテナンスの際には、もしかしたら体調を崩して診療室に来ることが困難になっているかもしれませんし,「次の診療の機会は訪問診療で…」ということになる可能性もおおいにあるのです。

 

●口腔機能は低下する〜診療室でも早めの対応を!

 

すべての人の口腔機能は低下します。70歳の患者さんも80歳の患者さんもいつまでも口だけが健康というわけにはいきません。誰もが老いたくはありませんし、いつまでも若いままでいることを望みます。しかし、残念ながらすべての人に老いは訪れ、身体機能。認知機能の低下に伴って口腔機能も低下し。口腔衛生管理が徐々に困難になってきます。手を細かく動かすことが困難になり、口腔器官の運動能が低下することで自浄作用も低下し、口腔内が不潔になりがちになります。
つまり、高齢者の口の機能の低下に気づき、早い段階で改善・予防することができれば、齲蝕や歯周病の予防となるだけではなく、その後の口腔機能をできる限り維持し、最期まで自分の口で食事を楽しむことにもつながってくるのです。

 

●運動障害性咀嚼障害とは?

 

咀嚼障害は、その原因から「器質性咀嚼障害」と「運動障害性咀嚼障害」に分けることができます。器質性咀嚼障害とは、歯をはじめとする咀嚼器官の欠損によって起こる咀嚼障害です。この器質性咀嚼障害に対しては、義歯などの補綴治療による咬合回復が咀い機能改善のための唯一の方法となります。
一方,避けては通れない生理的老化により身体機能は低下を示し、また、依然日本人の死亡原因の上位を占める脳血管疾患などによっても身体機能は障害されます。これら身体機能の低下や障害は、口腔にも及んで咀嚼障害を引き起こし、これを「運動障害性咀嚼障害」とよびます。この場合には、一般的な歯科治療による咬合回復に加えて,筋肉に負荷を与え運動機能の回復を目指すレジスタンス訓練や,巧緻性の訓練の実施も必須となり、歯科診療室においても「器質性咀噂障害」と「運動障害性咀嚼障害」の両面からアプローチしていくことが求められています。
このように、社会が高齢化し、歯科においても齲蝕・歯周病などの口腔疾患だけではなく「口腔機能」にもアプローチすることが重要視されています。

口腔機能の発達や、機能障害を回復するリハビリなど、お問い合わせはお気軽にこちらからお願いします。

メンテナンスの始まり

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


メンテナンスで用いる機材の一部:手前の小さいブラシは超音波で汚れを除去するサスブラシです。


エアフロー:審美的にも清掃効果を感じやすい機器です。パウダーを吹き付けて着色除去します。

 

◼️治療後メインテナンスの始まり

 

 

●治療後メインテナンスとは?

 

歯周動的治療をして歯周病の進行リスク、再発リスクを下げたうえでメインテナンスに移行するのが、歯周治療の原則です。ということは基本的にはすべて動的治療をするわけですから、わざわざ「治療後メインテナンス」というメインテナンスを設ける必要はないような気がします。歯周病のメインテナンスのすべてが治療後メインテナンスなわけですから。では、なぜ設けるのでしょうか。
メインテナンスに移行するときのリスクの程度は患者さんによってさまざまです。動的治療のゴールの設定にはある幅があって、その幅があるためにメインテナンスにも幅が出てきます。この幅の中に現れるのが治療後メインテナンスというもので厳密な言葉の使い方にこだわると、メインテナンスはすべて治療後メインテナンスということになってしまいますので注意が必要です。
予防的メインテナンスの患者さんは元々初診時にリスクが低いわけですから、動的治療のゴールも究極のゴールになっていて、場合によってはほとんど自力でそのすばらしいゴールを切られる患者さんもいらっしゃいます。動的治療における私たちの関与がもっとも少ないメインテナンスです。それに対して治療後メインテナンスでは最初はリスクが高く、それを動的治療によりリスクを下げた後に行うメインテナンスということになります。その場合の動的治療は、その患者さんにとって望ましいと思われるような治療オプションを採用しています。同じようにリスクの高い患者さんに動的治療をする場合でも、次善の策をしている試行的メインテナンスやほとんど手をつけていな(手をつけられない)妥協的メインテナンスとはリスクの下がり方が異なってきます。
このように治療後メインテナンスは初診時にリスクの高い患者さんに対して動的治療をしっかり行った後のメインテナンスということになりますので、どのような症例に対してどのような動的治療を行ったかによって、リスクの程度や治療のポイント、メインテナンスプログラムの内容などに違いが出てきます。そこで動的治療の内容によってこの治療後メインテナンスも分類していきます。

 

●歯周動的治療の分類

 

メインテナンスの話の途中ですが動的治療に逆戻りしてみましょう。それは、動的治療を理解していないと治療後メインテナンスが理解できないからです。歯周動的治療の分類にもいくつかあります。
歯周治療では、ポケットをいかに浅くしていくかという大きなテーマがあります。そして病的歯肉溝(ポケット、pocket)から健康歯肉溝(サルカス、sulcus)にする場合、サルカスにはシャローサルカス(shallow sulcus)とディープサルカス(deepsulcus)の2種類があって、そのどちらを目指すのかというテーマもあります。この2つのテーマを同時に考えることで動的治療の理解を深めてみましょう。
ポケットが浅くなる!つまりプローピング値が小さくなるときには、大きく分けて2つの治り方があります。1つが歯肉退縮(gingival recession)で、もう1つが付着の獲得(attachment gain)です。プロービング値というのは歯肉頂からプロープ先端までの距離ですから、歯肉頂が下がるかプロープ先端が入らなくなるかすれば、プロービング値が小さくなります。前者が歯肉退縮、後者が付着の獲得となるわけです。付着の獲得というのは軟組織による付着が治療後に起こるということで、上皮性の付着による獲得と結合組織性付着による獲得の2種類がありますが、多くは上皮性の付着による付着の獲得が起こります。
この場合、通常は1mm程度の長さの上皮性付着が数mmと長く付着しますので、長い接合上皮(longjunctional epithelium、LJE)による治癒といわれます。
さて、歯肉退縮と付着の獲得という治癒の経過をとるとどのような治癒形態となるでしょうか?結論をいいますと、歯肉退縮ではシャローサルカス、付着の組ではデープサルカスンというパターンで考えればいいでしょう。これで先に述べた2つのテーマが結びつきました。
さて、一般論を理解したところで各論に移りましょう。歯周動的治療は、非外科療法と外科療法に大きく分かれます。まずは非外科療法から見ていきます。
非外科療法は根面デブライドメントを中心にした治療になります。動的治療における根面デブライドメントは従来のSRPとなりますので、ここではSRPという言葉を使うことにします。このSRPを行うとどのような治癒が起こるのでしょうか?実は非常に多様な治癒の仕方をしますので一言では表現できません。シャローサルカス、ディープサルカス両方の可能性があるのです。詳細は後述しますが、浮腫性の歯肉や水平性骨欠損の症例ですとシャローサルカス、線維性の歯肉や垂直性骨欠損の症例ですとディープサルカスができやすいという傾向があります。もちろんあまり深いポケットでは、ちゃんと治癒せずポケットの残存ということもあります。
では外科療法ではどうでしょう?外科療法には切除療法、組織付着療法、再生療法、歯周形成外科療法の4種類がありますので、順を追って見ていきます。
まず切除療法はどうでしょう?これは歯肉弁根尖側移動術に代表される歯周外科ですが、これらの治療法を採用すると歯肉退縮が起こり、術後シャローサルカスができます。通常骨整形により骨を生理的な形態に修正し、フラップ断端を骨頂に位置づけることによりもっとも浅い歯肉溝、つまりシャローサルカスができあがります。
改良型ウィッドマンフラップに代表される組織付着療法では逆に付着の獲得で治りますので、術後はディープサルカスによる治癒が起こります。この場合骨整形は行わず、SRPをしっかり行った後フラップをできるだけ元の根面上に戻すようにすることにより、長い接合上皮による治癒が起こるわけです。
再生療法では垂直性骨欠損部に膜や骨移植材、エムドゲインなどを適用して新たに組織を誘導してきますので、主に付着の獲得による治癒となります。ただ前述の組織付着療法と違って結合組織性付着ができる可能性が高くなっています。再生療法単独ではある程度上皮の埋入などがあってディープサルカスとして治ることが多いように思いますが、仕上げに切除療法をすることにより、組織が再生したうえにシャローサルカスができます。
最後に歯周形成外科療法ですが、これもいくつか種類があるので、結合組織移植術を用いた根面被覆術だけに絞って話をします。歯肉退縮を起こした根面に結合組織移植をすることで歯肉を元に戻そうという治療法ですが、移植片と根面は多くの場合長い接合上皮で治癒しているようです。つまり上皮性付着による付着の獲得が起こり、その結果できあがる歯肉溝はディープサルカスということになります。
このように動的治療と一言でいっても内容は多岐に渡りそれぞれによって治癒の仕方が違うわけですから、それを治療後メインテナンスとしてメインテナンスしていく場合も単純ではありません。つまり非外科療法後の治療後メインテナンスや外科療法後の治療後メインテナンスがあって、外科療法も4種類分かれるわけですから、切除療法後、組織付着療法後、再生療法後、歯周形成外科後の治療後メインテナンスが存在することになります。


超音波で歯石を除去する機器:外科療法、非外科療法ともに用います。外科というとたいそうな手術を想像されるかもしれませんが、実際は歯肉に隠れた感染源を除去する目的の小規模な手術です。歯科領域の虫歯治療、歯周病治療とは、原因を除去する外科の部分が多いと感じます。

 

●治療後メインテナンスの特徴

 

治療後メインテナンスを受ける患者さんの初診時は歯周病菌が繁殖し、すでに歯周組織の破壊が進んでいます。付着の喪失や骨の喪失、場合によっては歯の喪失をされていることもあるでしょう。つまり予防的メインテナンスに比べて初診時のリスクがかなり高いということになります。そのため積極的な動的治療が必要になり、その動的治療も症例によっていろいろ使い分けていくことになります。
動的治療後の治癒形態は多岐にわたります。動的治療で採用したオプションによってももちろん異なりますし、思い通りに治らないことがあるというのも臨床です。もちろん同じ口腔内でもさまざまな治癒形態が混在するわけです。予防的メインテナンスの患者さんの口腔内はシャローサルカスがほとんどと考えていいでしょうが、治療後メインテナンスの患者さんではシャローサルカスとディープサルカスが混在します。試行的メインテナンスや妥協的メインテナンスの患者さんに比べてポケットの残存は少ないのですが、理想的に事が進まないことも経験します。このように治療後メインテナンスでは、動的治療でどれだけ改善できたかによってメインテナンス移行時のリスクが異なってくることになります。


染め出し液、清掃用ペースト:歯科受診時に汚れを染め出したりされていますか?私たちはよほど小さなお子さんでない限り、基本的に染め出しを行います。理由は、患者さん自ら効果的に清掃できるようにサポートしていきたいからです。メンテナンスも汚れが付着しやすい部位が視覚的にわかりますので、やりやすいです。

 

●治療後メインテナンスのリコール間隔

 

通常、治療後メインテナンスのリコール間隔の基本は、3ヵ月といわれています。3ヵ月に一度というメインテナンスをしていれば、動的治療の内容にかかわらず悪化を防ぐことができたという論文が発表されています。この場合、動的治療の内容にかかわらずというところがミソで、これにより治療後メインテナンスのリコール間隔は3ヵ月ということになるわけです。
もちろん動的治療も理想どおりにできないこともあるわけですし、そのような場合は3ヵ月よりも短くする方が無難でしょう。また動的治療終了後いきなり3ヵ月リコールに移行するのではなく、最初は1ヵ月など、短めに設定する方が良いです。

私たちは、定期健診の施術時間を60分とり、歯肉も歯もスッキリ気持ち良い施術を行なっております。
お問い合わせはこちらからお願いいたします。

インプラントの手術、1回で終わりにできる?

2024年7月1日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


左下臼歯部にインプラント埋入された状態のCT画像。

 

⚫️インプラント治療には、一次手術と二次手術と2回の手術を行う「2回法」と、1回の手術ですませる「1回法」があります。

 

2回法は、インプラントを埋入後にいったん歯ぐきを閉じてインプラント体とあごの骨の結合を待ち、その後2度目の手術をしてインプラントの頭を出し、アバットメントを取りつけます。それに対して、1回法はインプラント埋入と同時にアバットメントをつける方法で、手術が一度ですみ、2回法にくらべて治療期間を短縮することができます。
適用症例が広いのは2回法で、より慎重に治療を進めたい場合に用いられます。前歯の審美治療、再生療法が必要なかた、持病のあるかた、タバコを吸うかたなどは、通常2回法が適用されます。1回法は、比較的治療条件のよいケースで選択されるのが一般的です。

 

⚫️予備治療

 

インプラントを埋入する準備のために行う予備治療は、すべてのかたに必要なわけではありません。炎症がなく骨量も十分で、条件的に問題がなければ、予備治療が必要ない患者さんもなかにはおられます。
ただ、歯を失うに至った原因によっては、インプラント治療を不利にする状況がお口のなかに生じていることが少なくなく、予備治療が必要になるケースはめずらしくありません。
たとえば、歯周病で歯を失った場合、その周りの歯にも大なり小なり歯周病の炎症が起きています。そこで、まず歯周病をしっかりと治療し炎症を止めなければなりません。周りに細菌感染があっては、インプラントを埋入しても今度はその細菌がインプラントの周りの骨に感染しかねません。もしも感染が起きれば、インプラントとあごの骨は結合せず、どんなに巧みな術者でも、治療を成功させることは難しいのです。
また、歯を失うほど歯周病が進行したかたのあごの骨は、炎症によって減ってしまっています。インプラントを安定させるための骨が足りない場合は、再生療法を行い骨を増やす必要があります。こうした予備治療は、インプラント治療を成功させるカギを握っているといっても過言ではありません。
予備治療が必要と診断されたかたは、予備治療の期間を含めた治療計画についてじっくり説明を受け、気がかりなことは遠慮なく質問して治寮について発しましょう。

●歯を失うと、その周りの骨は「歯を支える」という役割を失ってしまうため自然と減ってしまいます。入れ歯、ブリッジ、インプラント治療のいずれを選ぶ場合も治療に不利になりますので、歯を失ったら早めに歯科医院で相談しましょう。
●インプラントは、いったんあごの骨と結合すると、がっちり固定して動きません。インプラントを入れた後は矯正治療ができなくなってしまいますので、矯正治療をご希望のかたは、インプラント埋入前に必ずご相談ください。

 

⚫️治療を受ける前に知っておきましょう。

 

インプラント治療を受ける前にぜひ知っておいていただきたいことや、患者さんからよくある質問をまとめてみました。

 

●なぜ治療に時間がかかるの?

 

インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに(多くの因子・条件に左右されますが)おおむね1~4ヵ月かかります。インプラントの改良により、この期間は徐々に短縮してきていますが、それでもこれだけ時間がかかるのにはわけがあります。
インプラント治療は、チタン製のインプラント体とあごの骨がガッチリと結合してはじめて機能しますが、この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるものなのです。つまり、インプラント治療を成功させるには、骨の自然治癒力を見守りじっくりと待つことが不可欠。治療に時間がかかるのはそのためです。

歯がないところにインプラント埋入し、骨と結合する治癒期間をおきます。

 

●タバコを吸ってるけど大丈夫?

 

喫煙はインプラント治療の大敵です。
インプラントを入れると決めたらぜひ禁煙しましょう。「禁煙はどうしても無理」というかたは、せめて術前・術後の数週間、喫煙本数を可能な限り減らしてください。喫煙は、歯ぐきの傷の治りを遅らせ感染のリスクを高めるばかりか、骨の結合を遅らせて治療の邪魔をします。ぜひご協力をお願いします。

 

●治療に不適応なケースとは?

 

▪️成長過程にあるかた
▪️免疫不全症のかた
▪️抗がん剤で治療中のかた
▪️放射線療法を受けているかた
▪️ホルモン療法を受けているかた
▪️チタンアレルギーのかた
▪️骨粗しょう症のお薬を多量、長期にお使いの
かた
▪️また、全身疾患の病状を良好な状態にコント
ロールできていないかたなどはインプラント
治療に不適応な場合があります。なお、全身
疾患のある患者さんの場合、歯科医師が主治
医と連絡をとり、治療が可能かどうかを確認
して進めさせていただきます。

 

●手術後の痛みや腫れは?

 

痛みの感じかたは個人差があるので一概には言えないのですが、再生療法などをしていない通常のインプラント治療であれば、術後1日ほど軽く痛む程度でしょう。免疫応答がさかんな若い人ほど腫れやすいですが、腫れが引くのも早く、年齢が高いほど腫れは少ないー方、腫れが引くのは遅くなります。しかし、痛みが治まってきていれば心配いりません。痛みが増すようでしたら、治療を受けた歯科医院で診てもらいましょう。

術後の痛みや腫れについては、かなり個人差があるように思います。複数本を埋入し、同時に大規模な骨造成をするような手術の方が、一般的には術後の不快症状が出やすいと考えられます。しかし、施術を受けられた方で、「あまり痛くなかったし、ハイキングしてきた」とへっちゃらな方もいらっしゃいました。一方で、1本のみの埋入手術で、不快感を強く感じられるケースもありました。

 

●インプラントが壊れたら?

 

インプラントの構造でいちばん壊れやすいのは、上部構造(被せ物)です。
インプラントで強く噛めるようになるうえ、天然歯のときにはあった噛む力を感じる歯根膜がないため、噛む力の加減が働かず、上部構造が欠けたり割れたりしやすいのです。インプラント体が壊れたわけではないので、上部構造だけの修理・交換で対応できます。ご安心ください。

 

●手術後の食事はどうする?

 

そっとしておくために、食事は反対側の歯で食べてください。とくに抜糸するまでの1~2週間は手術したところの絶対安静期間なので噛まないようにお願いします。なかでも再生療法を受けたかたは、歯ぐきで食べられる軟らかな食事を。治療の成功にかかわる重要なお願いなので、しばらく不自由をおかけしますがご
協力をお願いいたします。

 

●治療期間中に仮歯は入れられるの?

 

これはケースバイケースです。患者さんがお困りにならないようさまざまな工夫をさせていただきますが、難症例の場合、治療を成功させるために、入れ歯も仮菌も使わずにそっとしておく期間もあるからです。入れ歯や仮歯を使えない期間があるかどうかについても説明を受け、それも含めインプラント治療を選択するかをお考えいただければと思います。

 

●インプラントが結合しなかった?

 

しっかりとした検査と診断、予備治療を終えて治療をしているのであれば、もし結合しなかった場合でも、早期に抜いて再治療をすることができます。あごの骨の穴は数カ月でもとどおりにふさがりますので、それを待って再埋入を行います。順調に結合が進むよう、「手術したところで噛まない」などの歯科からのお願いごとに注意してお過ごしください。

 

メンテナスでお会いしましょう!

 

インプラント治療が終わったら、定期的にメンテナンスを受けて検診とクリーニングでよい状態を長持ちさせていきましょう。
⚫️インプラントは人工の歯だから、「もうこれでむし歯にも歯周病にもならないと思っているたもおられるかもしれません。たしかに、インプラントはむし歯にはりません。でも歯周病にはなります。放っておくと、歯周病とそっくりの病気、「インプラント周囲炎」という病気になってしまうのです。
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えるあごの骨に炎症が起きる病気。天然歯のときと同様、インプラントの周りに歯石がついて、プラークがたまることによって起きます。そこで、インプラント治療が終わったら、今度は治療のためでなくメインテナンスのために、ぜひ歯科医院に定期的においでください。
メインテナンスでは、毎日の歯みがきやフロスでプラークがきちんと取れているかのチェックや、ご自分に合った歯みがきの仕方を教わることができます。インプラントにプラークや歯石がこびりつかないように、クリーニングも受けられます。
また、インプラントが入ると、つい強い力で噛んでしまうので、もしも噛み合わせが悪くなっていると、上部構造の欠けやネジのゆるみにつながりやすいのです。噛み合わせのチェックをすることで、そうしたリスクの軽減ができます。
インプラント治療は、入れたら終わりではありません。快適に使い続けるには、むしろ入れてからのお手入れが重要です。放っておいてインプラントの周りがプラークや歯石だらけになると、今度はインプラントの周りに炎症が起き、あごの骨との結合が失われて、せっかくの治療が機能しなくなってしまいます。
治療が終わったら、今度はメインテナンスでお会いしましょう。歯科医院とのお付き合いを予防中心に変えると、インプラントの快適な状態を長く維持できるだけでなく、残っている周りの歯の健康も、歯科のプロフェッショナルといっしょに守ることができます。

≪7月 休診日のお知らせ≫

2024年6月26日

7/11(木)・7/18(木)は終日休診とさせていただきます。
ご迷惑をお掛けいたしますが、よろしくお願いいたします