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歯科治療に関係大アリ?骨粗鬆症

2024年2月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

全身疾患と歯科の関連のトピックです。
●骨粗鬆症とは、どんな病気でしょうか?

 1993年,「骨粗鬆症は、低骨量で、かつ骨組織の微細構造が変化し、そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態」と定義されました。
すなわち、1990年代になり、高い精度、低被曝量,短時間での骨密度測定装置が実用化され、広く普及したことによる骨密度を重視した診断でした。
 しかし、1990年代後半頃より、骨粗鬆症の進行に伴う骨折は、骨密度だけで、予測できず、骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善には、少なくとも、1年が必要となることなど、骨密度だけに偏重した評後の問題点が指摘されてきました。その後,生化学代謝マーカーによる骨代謝回転の評価により、骨密度としての変化があらわれる前段階での早期で迅速な判定が可能になってきました。
 そこで、骨密度が低くないのに発生する骨折の問題や骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善例と変化のない例での骨折リスクの抑制率に主要がないことなどの報告から、現在は、以下のように考えられています。
 すなわち、2000年の米国国立公衆衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のコンセンサス会議で、
「骨粗鬆症は、骨強度(骨密度と骨の質)の低下によって骨折リスクが高くなる骨格の疾患」と定義されました。この骨強度は、従来から重視されていた骨密度と骨質の双方を総合的に評価して決定されるものです。


歯科でのパノラマX線写真で、皮質骨の厚みから骨粗鬆症のスクリーニングをすることができます。
骨粗鬆症の治療中の方で、投薬状況によっては抜歯などの外科処置を避けるよう、注意が必要です。

1. 骨粗鬆症の特徴を理解する
 骨粗鬆症には、閉経期以降の女性や高年齢の男性に多くみられる原発性骨粗鬆症や、若い人でも、栄養不良や運動不足、副腎ステロイド剤などの影響で罹患する続発性骨粗鬆症があります。いずれも、日常のライフスタイルが大きく影響することから,歯周病と同様に、生活習慣病の一つと考えられています。
 す。
骨は20~40歳ごろをピークに、加齢とともに生理的に骨量が減少します。特に、女性では、閉経後5~10年の間に年間骨量減少率3%以上の,急速な骨量減少が起こり、10年間の平均骨量減少率は、20%を越えると報告されています。各年代の推定人口から算出した40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2000年783万人から2001年819万人へと増加していることが推定されています。
 一方、わが国の人口は、2004年11月現在,約1億2.771万人を超え、そのうち、65歳以上の高齢者は、2.493万人(19%)、また、75歳以上の後期高齢者は、1,100万人(8.7%)で、ますます超高齢化が進んできています。そのような高齢化に伴い。骨粗鬆症患者は増加し、しかも、無自覚に進行することから、骨折(特に、大腿骨頸部骨折、推計2002年約117,900人)が急増し、寝たきり老人の大きな一因になっています。寝たきりの原因は、脳卒中、老衰に次いで、第3位が骨粗鬆症による骨折です。そして、骨折後は、40%は退院できず寝たきりになったり、骨折後1年以内に、10~20%が死亡するなど、不可逆的に、患者の自立度(ADL:activities ofdaily living)と満足度(QOL:quality of life)が著しく低下し、老人性痴呆などの合併症を生じさせます。したがって、発育期に十分に骨量を増加させ、その後は、骨粗鬆症発症前の骨量減少者を早期に識別し,ライフスタイルの改善や骨粗鬆症の薬物治療などの予防策を講じることにより、その発症・進行を予防する必要性が強調されてきています。

 2. 骨粗鬆症の症状を理解する一特徴的な「圧迫骨折」を知ろう!
 骨粗鬆症は、単なる「骨の老化現象」ではなく、骨の病的変化を主とする疾患ですが、病状が進行するまで顕著な自覚症状がない「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」といわれ、ゆっくりと静かに進行し、腰や背中が痛くなったり(腰痛),背中が曲がったり(身長低下)して自覚するようになります。
 その後、さらに放置し進行すると、背中や腰の激しい痛みで寝込んでしまったり、ちょっと転んだだけで手首や足の付け根(好発部位:橈骨末端,上腕骨近位部、大腿骨頸部)の骨折を起こして寝たきりの原因になります。
 また、背中や腰が痛むのは、骨粗鬆症化(スカスカになった状態)した脊椎に体重などの負荷がかかることにより、脊椎が潰れてしまうからです。ポキッと折れることだけが骨折ではなく、このような骨折が、「圧迫骨折」といわれ、経時的にゆっくり進行します。圧迫骨折を起こすため、背中が曲がったり、身長が短縮します。一般的に,閉経後2cm以上の身長低下は、骨粗鬆症の存在を示唆する所見であると同時に、脊椎変形に伴う満足度低下の重要な指標にもなるといわれています。

 3. 骨粗鬆症の診断はどうやっているのでしょうか
 従来は、脊椎✕像で骨量減少が認められ、脊椎圧迫骨折のある症例が骨粗鬆症と診断されていました。しかし、脊椎圧迫骨折のない段階での早期診断により、本症の予防や早期治療が可能になることから、1994年 WHO研究班は、骨密度を指標とした新しい診断基準を提唱しました。すなわち、骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の2.5SD 以下の症例を、原発性骨粗鬆症と診断しました。しかし、この診断基準では、白人の骨醤度が指標となることから、1996年日本骨代謝学会では、骨粗鬆症の診療や研究に従事している整形外科、内科(老人科,老年科),婦人科、放射線科およびスポーツ医学から、日本人における包括的な診断基準を作成し、その後2000年にさらに、改訂を加えました。新しく設けられた原発性骨粗鬆症の診断基準は、従訂を加えましたる。
産の診動基準は、従来の診断基準とは異なり、骨折が生じていなくても、設定された骨折閾値以下に骨量減少をきたした病態までも骨粗鬆症に包括しています。すなわち、骨密度と脊椎X線像の2つの指標を用いた点、若年基準値からの変化率を用いた点、さらに鑑別診断の重要性を強調した点が特徴です。
 
4.骨密度測定にはどんな方法があるのでしょうか
骨密度測定は、骨粗鬆症の診断,治療効果の判
・骨折リスクの予知のため、現在、中手骨に対して,MD法(microdensitometry),改良型MD法[DIP i (digital image processing) , CXD 法
(computed X-ray densitometry)], 橈骨や踵骨に対して、単一エネルギーX線吸収法(single energy X-ray absorptiometry : SXA),全身骨,橈骨,腰椎,大腿骨に対して,二重エネルギーX線吸収測法定 (dual energy X-ray :DXA)
橈骨や腰椎の海綿骨には、定量的CT 法(quantitativecomputed tomography: QCT),さらに、踵骨に対して,定量的超音波法(ultrasound bone densitometry: QUS)など、種々の骨量測定装置が開発され、市販されています。
現在の原発性骨粗鬆症の診断基準に準じると、骨密度測定は、DXA 法による腰椎骨密度が第
1選択になります。しかし、高齢者で,脊椎変形などのため腰椎骨密度が適切でない場合は、DXA 法による大腿骨頚部骨密度を測定します。また、検診などでの骨粗鬆症のスクリーニングには、CXD 法や定量的超音波法が適用されています。一方、男性では、大腿骨頸部骨密度の方が、腰椎骨密度より骨折の判別に有用とされているので、DXA法による腰椎に加え、同時に大腿骨頸部骨密度を測定します。
 5.骨粗鬆症の治療は、どんなことをするのでしょうか
 骨粗鬆症の予防と治療の目標は、前述のように骨折の防止です。骨粗鬆症では、まず、日常生活の中で骨量を増やす努力をすることが大切です。予防法でもある3原則「食事、運動。日光浴」は、治療の段階でも重要になります。初期の骨量減少であれば、予防を心がけることで骨量が増える可能性があります。しかし、さらに骨量減少が進むと薬物療法が必要になります。その場合でも、3原則に留意しないと薬の効果がみられません。どんな薬を選んで、いつから薬物療法を始めるかは、年齢や症状の進み具合により総合的に判断されます現在使われている薬は。骨吸収抑制薬(骨の吸収を抑在使われている薬は、骨吸収抑制薬(骨の吸収抑える薬),骨形成促進薬(骨の形成を促進する薬),骨の吸収と形成の骨代謝を調節する薬の3つに大別されます。

 6. 骨粗鬆症をまとめると
 前述のように、40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2001年819万人と試算されています。しかし,大多数を占める閉経後骨粗鬆症患者は、骨折を起こすまで自覚症状がないため、医科を受診する機会が少なく、骨粗鬆症治療を受けている患者数は、200万人に満たないといわれています。いいかえれば、歯科疾患の治療のために歯科を受診する潜在的骨粗鬆症患者は、決して少なくないと考えられます。
 女性の身体は、初潮を迎えたあと、周期的に女性ホルモンが分泌され、その後、更年期(閉経前後の約10年間,45~55歳頃),閉経を迎え、女性ホルモンの分泌量が激減し,急激な骨量低下を来します。この時に現れる不快症状の集合が、「更年期障害」とされています。したがって、更年期障害の典型的な症状やその後の骨粗鬆症に関する前兆を見極めて、そのリスクを軽減させるようにアドバイスし、歯周組織の健康と同時に、骨の健康を促すことが必要です。

≪3月 休診日のお知らせ≫

2024年2月19日

3/9(土)は終日休診とさせていただきます。
ご迷惑をお掛けいたしますが、よろしくお願いいたします。

インプラント治療を行うにあたっての全身的な注意点

2024年2月11日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


上顎に4本インプラント埋入し、入れ歯を組み合わせる治療例の写真

インプラント治療を行う際、特別注意が必要なことがあります。
全身疾患についても注意が必要なことの一つです。
治療の際の臨床検査の意義としては以下のことが挙げられます。
①リスクの明確化
②リスクを反映した治療計画、治療精度の向上
③患者さんによる自己管理の徹底と維持→治療後の長期安定
④加齢、病的変化への対応
特に治療に対する安全性に加えて、治療後のリスクを軽減する意味でも、臨床検査とその共有が重要です。

全ての患者さんの術前スクリーニング的な検査として、
・血液、尿検査
・デンタル、パノラマX線写真撮影
・CTによる3次元的画像診断
があります。

さらに、一部の患者さんを対象として、
・骨代謝マーカー
・歯の喪失原因の検査:細菌検査、力学的検査
・アレルギー検査:パッチテスト
があります。

インプラント治療を行うにあたっては、血液検査、ヘモグロビンA1c(HbAic)が6.5%未満、
空腹時血糖值13m/L未満にコントロールされていることが必要です。
これは、インプラント手術時だけではなく、メインテナンス時も同様です。そのため、メインテナンス時、定期的に血液検査データのHbAic値を確認することが重
要となります。

ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白で、身体のすみずみまで酸素を運ぶ役割があります。
このヘモグロビン(血色素)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンですが、
グリコヘモグロビンについて、その1つのヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病と関係しています。
赤血球の寿命は約120日(4ヵ月)なので、すなわち、血糖値は血液検査時の全身状態を示しています
一方、HbAIC値は血液検査の日から1〜2ヵ月前の血糖の状態を示し、糖尿病の状態を知るのに重要な検査値です。

骨粗鬆症
骨粗鬆症による全身の骨量減少と歯槽骨吸収との関連性については不明ですが、
骨粗鬆症の既往をもつ場合には、顎骨の骨量減少も考慮してインプラント手術やメインテナンスを進めていく必要があります。

一方、骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート(BP)系薬剤の投与を受けている患者さんで、
抜歯などの外科的侵襲により、顎骨壊死、顎骨骨髄炎の発症が近年報告され、問題となっています。

BP系薬剤には注射剤と経口剤があり、注射剤で顎骨壊死、顎骨骨髄炎が多く報告されていますが、
経口剤においても同様な報告があるので注意が必要です。
BP系薬剤による、顎骨壊死、顎骨骨髄炎のリスクファクターとしては、外科的侵襲のある歯科治療(抜歯、インプラント手術など)や
不適合な義歯だけではなく、口腔の不衛生も報告されています。
そのため、インプラントのメインテナンスに際し、服用している薬剤などの十分な問診とその知識が必要です。

・精神神経症
医療面接が不可能な精神的疾患のある患者さんには、治療内容を十分に理解していただくことが困難なため、
インプラント治療は難しいと思われます。また、不定愁訴や異常に不安感がある患者においても、
メインテナンス時にインプラント周囲炎などの問題を生じる可能性があるため、歯科医師だけではなく、
歯科衛生士も慎重にインフォームド・コンセントを行う必要があります。

生活習慣
1.喫煙
喫煙は、インプラントの長期経過に大きな影響を与えるリスクファクターの1つです。
なぜなら、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質により、末梢血管障害や免疫障害を起こし、
インプラント周囲炎に影響を与えるからです。
そのため、インプラント治療を開始する際は、喫煙の有無、喫煙歴について問診し、禁煙指導が重要となります。

インプラント手術時においては、埋入されたインプラント部の骨結合不良や創部治癒不全などの
問題が起きないようにするため、禁煙を徹底させます。

一般的な手術時禁煙プロトコールは、インプラント手術に際して、喫煙者にインプラント手術前3週間、手術後8週間の禁煙を指示しています。
期間設定は、喫煙による頭蓋顔面での手術創傷治癒への影響についての研究結果がいくつか報告されているからです。
実際、喫煙者にとってこれだけの期間の禁煙は変難しいことですが、手術前後の禁煙が成ことで継続的に断煙できるようになり、
「インプラント手術をきっかけにタバコを止められた」
という患者も少なくありません。
しかし、手術に際して禁煙した患者でも、喫煙を再開してしまうこともあります。
歯科医師、歯科衛生士はメインテナンス時にも、禁煙(喫煙)状況を確認して、必要に応じて禁煙の再指導を行う必要があります。

当院でのインプラント治療における禁煙指導の流れとして、まず、喫煙がインプラント治療のリスクファクターであることを十分に説明します。
禁煙指導の際には、喫煙によるインプラントの予後への影響をデータで具体的に説明し、禁煙を促します。

また、製薬会社のホームページなども利用し、禁煙意識を高めることも1つの方法です。
具体的な禁煙の方法として、ニコチンガムやニコチンパッチなどの禁煙補助薬を用いた禁煙方法であるニコチン代替療法があげられます。

このように禁煙指導を行っても、インプラント治療中からメインテナンスの時期まで一貫して禁煙できない患者さんは、
大きなリスクがあると考えられます。
その場合、非喫煙者よりもインプラント周囲炎を起こす可能性が高いことを十分に説明し、理解してもらい、
リコール間隔を短くするなど、早期に炎症性変化を発見できるようにすることが重要です。

・ストレス
ストレスがインプラント治療に悪影響を及ぼす明らかな報告はありません。しかし、ストレスが歯周炎に何らかの影響を及ぼしていることは知られています。
とくに、ストレスが直接的および間接的に歯周組織に影響を与えていることが報告されています。
まず、直接的な要因としては、ストレスなど精神的な原因による顎の動きです。つまり、就寝時のブラキシズムなどの悪習癖は、
直接的に歯周組織、とくに歯槽骨に破壊的な影響を及ぼします。
インプラント周囲組織においても、同様な現象生じることが予想されます。
また、間接的な要因として、代表的なものをあげます。
1つ目は、ストレスにより副腎皮ホルモンの分泌が高まり、免疫応答として白血球の作用が減弱することで、
歯周組織の持つ抵抗力が低下することです。この現象は、インプラント周囲組織の血液供給量が、歯織と比較して少ないことを考えると、
インプラント周囲炎のリスクといえます。

インプラント周囲組織は歯周組織よりも不利な条件であることが容易に想像できます。
2つ目は、ストレスにより自律神経系の交感神経が優位となるため、血液循環量が低下し、唾液分泌量も低下することです。
このことから、口腔内の洗浄、抗菌作用が低下し、歯周炎およびインプラント周囲炎を生じる可能性があります。
以上のことから、ストレスがインプラント周囲組織に悪影響を与える可能性が高いことが想定されます。
私たち歯科医療従事者は、メインテナンス時にインプラント周囲炎や歯周炎の原因の一つとして、
これら精神的な原因もあることを忘れずに、的確な目で口腔内組織を診ることが重要です。

口腔内に発現する力により、歯や歯周組織、筋肉や関節にも良くない影響が生じることがあります。
私たちの社会にはさまざまな程度のストレスがあり、感受性は人それぞれです。
インプラント治療においても、あまりストレスが強く感じられる方にとっては、
リスクとなってしまいますので、あまり溜め込みすぎないよう、
上手にストレス管理ができると良いでしょう。
噛み締め、食いしばり対策として、私たちはメディセルの施術を行っています。
これは、誰でも無意識のうちに行っている、噛み締め、食いしばりの運動を
筋肉の緊張を緩めることで解消していく療法です。
治療の案内はこちらです。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

インプラントと入れ歯を組み合わせた治療

2024年2月11日

⚫️オーバーデンチャーを用いた下顎無歯顎症例へのインプラント治療

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、歯がない下顎に対して、インプラントと入れ歯を組み合わせた治療=インプラントオーバーデンチャーについてです。
最初に、インプラントオーバーデンチャーについての、学術的な裏付けについてです。

「2本のインプラントによるオーバーデンチャーが今後、下顎無歯顎の補綴治療の第一選択となる」
 2002年のカナダのMcGilのコンセンサスレポートにはこのように述べられています、Feine らは、このレポートのエビデンスとなる無歯顎に対するインプラントオーバーデンチャー治療に関する多数の調査・報告を「Implant Overdentures - The Standard of Care for Edentulous Patients」と題する著書のなかで行っています。
 オトガイ孔間に埋入した2~4本のインプラントの予知性については、良好な結果が多数報告され、特に長期間総義歯を装着し顎堤が吸収し義歯の不調に悩む患者さんに対し,インプラントオーバーデンチャーの使用による咀嚼能力、義歯の安定性の改善に伴うQOLの向上、栄養改善が報告されています。またボーンアンカードブリッジとインプラントオーバーデンチャーの比較において、その清掃性、発音、審美性の優位性から、インプラントオーバーデンチャーを最終的に選択した被験者さんが多かったとも報告されています。
固定性のインプラント補綴装置と、取り外し式のインプラントオーバーデンチャー、それらの優劣については、以下のような研究論文が発表されています。

・下顎におけるバーアタッチメントによるインプラントオーバーデンチャーと固定式インプラント義歯の比較:de Grandmont P 1994年
予想を覆して、インプラントオーバーデンチャーは決して機能的には固定式インプラント補綴装置には劣らない、また難性食品を除けば、一般的には概ね両者とも患者満足度は同等である、そして高齢になる程最終的に取り外し式の入れ歯を好むという結果を示しました。

バー➕インプラント4本支持のインプラントオーバーデンチャーと、2本支持のものの比較:Tangら 1997年
4本支持は安定感、快適さ、噛みやすさが優れるものの、その他大半の評価項目には同等の結果を示しました。この研究では、2本支持の下顎のインプラントオーバーデンチャーを正当化する一つの根拠となります。

上顎のインプラントオーバーデンチャーに関する患者評価:de Albuquerque Junior RF 2000年
下顎と異なり、上顎の無歯顎に対しては、インプラントオーバーデンチャーが必ずしも第一選択とならないという結果を示しています。ですので、上顎に関してはインプラントと取り外し式の義歯を組み合わせることに関しては、今のところ絶対的評価はありません。

McGillコンセンサス 2002年
下顎無歯顎の第一選択はインプラントオーバーデンチャーが最良であるという論文。

インプラント領域における社会経済学的コスト分析の先駆け論文:Takahashi Y2002年
下顎インプラントオーバーデンチャーは、生活の質の改善に大きく寄与することを多数示しています。

栄養状態の改善がなされるのか検討:Morais JA 2003年
下顎インプラントオーバーデンチャーの使用により、栄養状態の改善が見られるのか調べた論文です。アルブミン、ヘモグロビン、B12に有意差が見られたとされています。

受容する患者さんの性差に注目した研究:Pan S 2008年
女性に対する義歯作製、リハビリの困難さは多く報告されていますが、インプラントオーバーデンチャーはその差を帳消しにするほどの大きな改善をもたらすことを意味しています。従来の総義歯治療に関しては、女性の満足度は決して高くありません。インプラントオーバーデンチャーにした場合の性差はなく、満足度は向上しました。

8編の論文を包含した分析:Emami E 2009年
これまでを振り返った研究。改めて、インプラントオーバーデンチャーは、従来の総義歯治療と比較して生活の質の向上に寄与することが示唆されました。一方で、対象となるメインの年齢層の高齢者には、同治療を助け入れない場合もあることもわかりました。

社会心理学的研究:Esfandiari 2009年
インプラントオーバーデンチャーは、インプラントによる固定式補綴装置と比較すると安価にはなりますが、それでも治療費用が受療を阻害していることも事実であります。さらに、他の主要因としては、老化による痛みへの恐れ、術後の偶発症が挙げられました。

下顎にインプラントと入れ歯を組み合わせた治療例

歯がない顎に対して、インプラントを2本埋入し、その上には入れ歯をとめる「ロケーター」というパーツが取り付けられています。

ロケーターとは?
ロケーターとは商品名で、Zest Anchors社から発売されているシステムです。簡単にいうと、シャツのボタン的な構造を想像してもらったら良いと思います。入れ歯の内側に弾性のあるパーツが組み込まれ、インプラント側にスタッド型のメタルパーツが設置されます。現在、国内では、私たちが採用しているノーベルバイオケア社、その他ストローマン社、白鵬社からそれぞれ自社インプラント用アタッチメントとして正規輸入販売されています。
他のアタッチメントのシステムとの比較について、患者さんの主観的評価の調査の報告があります。他のシステム、ボール型のアタッチメント、バー型アタッチメントに対し、有意差がないという結果の論文もあれば、QOLが向上したという論文もあり、一致はしていません。しかし、決して劣るシステムではないようです。
利点はいくつかあります。
①従来のバー型、ボール型アタッチメントよりもパーツの高さが低く設置できること。専門的な話ですが、これはとても重要な要素で、高さのあるアタッチメントの場合、どうしても入れ歯の構造に薄く強度の低い部分ができてしまいます。そのため、低いパーツが選択できるロケーターの場合、インプラントの位置付けや、入れ歯の設計に自由度が大きくなります。入れ歯の強度不足による破損などの偶発症に関しても、リスクを下げることができます。
②ボール型、マグネット型よりも安価である。
③1mm違いのサイズ展開があること。インプラント埋入深度や歯肉の厚みが何ミリであっても、その状況に応じてサイズ選択が可能であり、治療がやりやすいメリットがあります。
④維持力のバリエーション。通常ラインナップでは、0.7kg,1.4kg,2.3kgが選択できること。患者さんの取り扱いのしやすいキツさを選択できるわけです。
✳︎使用上の注意点:インプラントオペの計画に関することになりますが、ロケーターをつけるインプラント同士の角度が、可能な限り平行であることが求められます。これが20度以下に抑えられていることが望ましいです。これ以上の角度になると、急速に維持力の低下があります。つまり、フリーハンドや目測でのオペではなく、コンピューター支援のガイドオペを併用し、インプラント間の角度をコントロールする計画を立てる必要があります。


義歯を装着した状態の口腔内写真。着脱方向を間違えて強引に行ってしまったり、しっかりはまっていない状態で噛み込んで入れ歯を入れるような使用法は、アタッチメントの維持パーツの早期交換に繋がりますので、事前の患者さんへの指導を注意深く行う必要があります。


下顎骨両側の小臼歯部には、オトガイ孔という穴が空いています。オトガイ孔間には歯を失った後でも骨量が残っていることが多く、その部位に対して平行な角度にインプラント埋入をします。

これらのようなアタッチメントの利点をしっかり把握した上で、治療計画を立て、義歯装着後のフォローを行っております。

気になる口臭&歯周病が妊娠へ与える影響について

2024年2月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お口の中で気になることといえば、
歯の色と口臭が挙げられます。常にネットの検索上位にあります。
今回は、口臭について先にお話しします。

気になる口臭、どこから来てる?
原因を胃腸の不調であると思われるかもしれませんが、口臭の原因は約9割がお口にあり、
特に歯周病は独特の嫌な臭いがします。
フリスクなどの強烈なミントもありますが、それば一時しのぎですので、
歯周病治療とセルフケアで改善したいですね。
なかなかご自身では気付きにくいですし、周りの人もデリケートな話題のため指摘しづらいです。

口臭には種類があります

プラーク、歯石がたくさんついていて、歯周病が進行している口腔内。


歯周病の独特の口臭があります。
この写真の口腔内のようだったら、歯周病など口の中の病気が原因の口臭が不快に感じられるようになります。
実は、口臭には他にも種類があります。
まず、健康な人でも生理的口臭があります。緊張したり、寝起きなどは唾液分泌量が少ないため少し臭いがありますが、
これはすぐに元に戻りますので気にすることはありません。

次に、食事によるものです。具体的にはニンニクやお酒などによるものです。
身体の病気が原因の口臭は、内臓の重篤な疾患によるものです。その病気によって発生した臭い物質が身体をめぐって呼気として出ていることになりますので、
口臭以前にその重篤な疾患に対しての治療が優先となります。

つまり、圧倒的に多いのは歯周病による口臭であり、それは治療とケアで改善可能です。
「しばらく歯石をとってないな」
「最近歯ブラシで血が出る」
といったことはありませんか?定期的に歯科受診し、口臭をスッキリさせましょう。

⚫️本当はコワイ、妊娠初期の歯周病
歯周病と早産・低体重児出産の関連性

◼️はじめに
 お口の中の疾患である歯周病が、糖尿病,肺炎。心臓の病気などに関連するかもしれないということは、最近知られてきています。しかし,お口から遠く離れた産婦人科領域の疾患,しかも妊娠に関連する病気にも影響する可能性があるということは、あまり知らない人が多いのではないでしょうか。
 その,歯周病と関係する産科領域の疾患として挙げられているのが早期低体重児出産です。

⚫️歯周病と関係するといわれている早期低体重児出産とは何でしょうか?
 早期低体重児出産とは、分娩時期より早い、妊娠22週以降37週未満で出産する“早産”と、2,500g未満の小さい赤ちゃんを出産する“低体重児出産”のことです。早産で産まれた赤ちゃんは、低体重児であることが多いとされています。その理由は、おなかの赤ちゃんの体重が2,500gまで成長するのは平均妊娠34週程度といわれているためです。
 日本では、厚生労働省の平成16年の人口動態調査から分かるように、低体重児の出生率年々のびてきています。これは医療技術の発達によるものだと思われます。以前なら助かる確率が低かった低体重児出産の赤ちゃんの多くが、現代の医療技術により救われていることは非常にすばらしいことです。しかし、低体重児出産の赤ちゃんは、おなかにいた期間が短いほど未熟性が強くなり、産まれた後に特別な管理が必要なことが多いとされています。また、成長していく過程においても、さまざまな疾患に対するリスクが高いこともいわれています。
そのため、できるだけ長くおなかの中で育てることが、赤ちゃんにとって望ましいことだと思われます。
 早産・低体重児出産の原因は、頸管無力症,絨毛羊膜炎、妊娠中毒症などの疾患が挙げられています。また、危険因子としては、年齢,喫煙、アルコール、ドラッグ、人種,早産の既往等があります。しかし、これらの疾患や危険因子が全く見あたらない、原因不明の妊婦さんも数多く存在します。

⚫️歯周病と早期低体重児の関連性に関する報告
▪️歯周病の治療が早期低体重児出産の防止に効果がある!!
 2002年以降には、歯周病の治療をすることで早産・低体重児出産が少なくなったという報告がいくつか存在します。
 最新のものでは、2005年に Lopezらが、870名の妊婦さんを対象に、妊娠中に歯周病治療を行ったグループ(553名)と行わなかったグループ(281名)それぞれで、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率を調べました。その結果、歯周病治療を行わなかったグループと比較し、行ったグループでは、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率が、早産では5.65%から1.42%へ(p=0.001),低体重児出産では1.15%から0.71%へ(p=0.79),早期低体重児出産では6.71から2.14%へ(p=0.002)と減少したことが示されました。
 これらの報告により,歯周病が早期低体重児出産に大きく関わることだけではなく、歯周病の治療が出産によい効果をもたらす可能性も示されました。

妊産婦さんが歯周病にかかっていると、歯周病でない妊産婦さんの7.5倍〜7.9倍もの確率で早期、低体重児出産が起こる危険率は、上がるという報告がありました。
 炎症物質が子宮に到達すると、刺激を受けて子宮が出産予定日より前に子宮収縮を引き起こし早産、低体重児出産になると言われています。
これまで歯周病と早期低体重児出産との関連性に関して過去に発表された論文等を詳しくみてきました。そこからも分かるように、日本におけるその関連性はまだ確立されているわけではありません。しかし、最近の世界各国からの報告では、歯周病は早産に対しては2.3倍,早期低体重児出産に対しては、5.3倍の危険率があることが明らかにされました。このことからも、歯周病が早期低体重児出産に関連している可能性はあるとわれわれは考えています。
 妊娠・出産は、女性にとって人生の大きなイベントの1つです。母子ともに健康な状態で出産を終えることは、母親だけでなくその家族、地域社会の願いでもあります。そのため、妊婦さんは少しでも異常妊娠,異常出産の危険性を減らしたいと思っているはずです。歯周病は予防可能な、そして妊娠中も治療可能な病気です。実際、外国からの報告でも歯周治療が出産によい効果を与える可能性も示されています。
 しかし、残念なことにこのような歯周病と早期低体重児出産の関連性に関しては、歯科医療従事者の間でもよく知られていないのが現状です。今後は、歯周病が早期低体重児出産の危険因子となりうる可能性を、多くの妊婦さんに伝えていくことはもちろんのこと、歯科医療従事者、医療従事者、行政にも知ってもらうことが大切になってくるのではないでしょうか。
 妊婦さんのお口の状態を良くすることは、母親本人だけでなく,生まれてくる子供、社会の口腔内健康状態の向上につながる可能性があります。その意味でも、将来,より多くの報告により、歯周病と早期体重児出産の関連性が確立され、広く知られるようになることが望まれます。
 
●妊産婦の口腔ケアの重要性について
 妊娠すれば、タバコやアルコール、夜更かしなどの悪習慣を改め、食事にも気を配るなど、誰でも良い親になろうと努力します。妊娠そして育児期は健康に対するモチベーションが非常に高まる時期であり、自分自身のこれまでの生活や食習慣を改善することができる絶好の時期であるといえます。妊娠を契機として、母親が歯科をはじめ各種疾病に関する正しい予防知識と好ましい健康観を獲得することができれば,自分自身のみならず、生まれ来る子どもや家族の生涯にわたる健康と幸せづくりに繋がることが期待できるのです。

肺炎と口腔内の清掃の関係とは?

2024年2月7日

口腔の健康は Air Way からみてもこんなに重要です
歯周病と誤嚥性肺炎
⚫️高齢者の健康を脅かす肺炎
 国の統計資料によると肺炎は日本人における死因の第4位です。そして肺炎の発症率は加齢とともに増加し、肺炎で死亡する人の大部分は65歳以上の高齢者であり、年々増加傾向にあります。また、肺炎のために入院を余儀なくされ、長期の安静臥床を続ける間に廃用症候群が進行し、さまざまな合併症を引き起こし、結果的に要介護状態となる危険もはらんでいます。同時に、病院や施設入所患者の直接の死因としても頻度が高く、障害者や衰弱者の合併症として大きな危険性があります。すなわち、肺炎は高齢者の罹病率や死亡率を上昇させ、医療費や介護費用を増大させる原因の大きな要因であるといえます。したがって、肺炎の予防はわが国の医療・福祉行政の上で大きな課題です。
 高齢者の肺炎の重症化や肺炎による死亡の原因には、心不全,肺疾患,腎不全,糖尿病等の基礎疾患の存在とともに、繰り返す誤照(誤って食塊や唾液が喉頭、肺に流入してしまうこと)が挙げられます。肺炎を発症した高齢者の多くは、嚥下反射(食塊や唾液を嚥下する能力)や咳反射(気道に誤って流入(誤嚥)した食塊や唾液を排除する能力)が潜在的に低下しており、食事のときにむせこんだり、食べ物が喉につかえたりするという症状がなくとも、夜間睡眠中に唾液を下気道や肺に不顕性に誤嚥(むせこみや咳がみられない誤嚥)していることがわかっています。日頃は不顕性誤嚥を繰り返して肺炎にならない人でも、全身状態の悪化や風邪や気管支炎等の呼吸器感染を起こしたとき、あるいは口腔疾患等で口腔内の細菌が増えたときには肺炎を発症します。肺炎になると。栄養や免疫機能がさらに低下し,繰り返す不顕性誤嚥ために肺炎が反復,重症化し,ついには死にいたることも稀ではありません。

⚫️口腔ケアは認知機能に影響を与える
 研究より、誤無性肺炎を予防する以外にも口腔ケアは身体的,精神的活動の維持や改善をもたらす効果が示されました。とくに認知機能を表す指標(痴呆の進行度を示す)である MMS(Mini mental State Examination)について口腔ケアグループにおいてその低下が有意に抑制されました。実際、現場では、口腔ケアを始めてから施設利用者の顔が目にみえて明るくなったという数多くの朗報を得ています。また、日常の生活リズムの中で敏感な口腔を注意深くケアすることによって、固く閉ざされた心が開く可能性があります。誤嚥性肺炎の背景には全身の抵抗力の低下がありますが、口腔ケアによってこの抵抗性の低下につながる落ち込みなどを予防できる可能性もあり、将来,精神・神経的な疾病や障害に対して口腔ケアは有効な手段の一つになる可能性があります。

歯の欠損、噛めないことも認知症につながる
口腔内に歯の欠損があり、放置されているような場合、咀嚼障害が徐々に起こります。口腔内の環境を悪化させないように、インプラントや入れ歯、ブリッジなどの欠損補綴治療があります。これらは、欠損歯列による障害を予防する意味合いも大きいです。
欠損がある場合、多くの患者さんは、今のお口の状況が一番悪いと思われています。適切でない治療や欠損の放置により、噛み合わせが崩壊していくと、全身のバランスが取れなくなる、栄養状態が悪化し虚弱になる悪循環に陥ってしまいます。


歯の欠損が進むと、顎に一本も歯がない状態、無歯顎となります。上顎が無歯顎となった方のパノラマX線写真。


歯茎だけの上顎。


年季の入った総義歯。噛みあとがついています。その方の噛みかた、かむ力、生活習慣などにより摩耗の程度は異なります。


慣れておられる義歯で、食事を工夫して摂取されておられるようです。義歯に向いている食品、そうでない食品があります。
食品アンケートによる咀嚼能力難易度検査もあります。これは、朝倉の分類から抽出した4種類、ゆで卵、茹でた千切りキャベツ1口サイズ、ロングパスタ1口サイズ、スライスハムです。摂食してから嚥下するまでの所要時間を計測し、各食品を片咀嚼してもらい計測するという内容です。
特別な器具を必要とせず、良いのですが、ご家族の協力が不可欠であり、万能というわけではありませんが、咀嚼の評価をする一つの指標として参考になります。

⚫️ブラッシングはこの嚥下反射に影響を与える
 ブラッシング(毎食後に歯・歯肉・歯と歯肉の間を1箇所あたり10回ずつ)、そのものが口腔内の知覚神経を刺激し、嚥下反射や咳反射を惹起することで(神経伝達物質であるサブスタンスPの関与の可能性),摂食・臙下機能の訓練としての効果をもたらし、嚥下機能を改善させて結果として ADL(日常生活動作、日常的な生活動作と活動性をあらわす指標)を向上させることが実証されたといえます。
 
⚫️低栄養・脱水の予防と肺炎予防
 加齢にともなう摂食・嚥下機能の低下に加えて、肺炎を起こした高齢者では、無症候性脳梗塞を生じており、燃下反射にや咳反射の低下を生じており、食事摂取に際して不利な状況です。
 栄養状態不良者に対して、栄養を付加する群と、栄養付加に加えて口腔清掃(口腔ケア)を併せて行う群を比較したところ、4カ月後には、口腔清掃を併せて行う群の方で血清アルブミン値が上昇し、栄養状態が改善したことが認められました。口腔清掃による肺炎の予防効果や前述の嚥下機能や味覚機能の向上により、食物摂取量が増加し、栄養状態が改善したものと考えられます。

▪️…おわりに…
健やかな人生のために歯周病の予防と肺炎の予防

 健康に生活している時は誰も口腔の大切さに気づきませんが、いったん病床の身になり全身の抵抗力が低下し、口腔の清掃ができない。あるいは口腔ケアがほとんど受けられない状況になると、細菌で満たされた口腔が呼吸器の入り口であるということが無視できなくなります。つまり、生死に関係することすらあるのです。とくに高齢者の場合、劣悪な口腔衛生状態、進行した歯周病、呼吸器の機能低下、摂食・嚥下機能の低下、感染に対する抵抗力,ADL低下の観点から、呼吸器の入り口としての口腔に目が向けられないことは重大な結果を引き起こす可能性があります。一方、口から食物を摂取できない高齢者が急激に増えていますが、口からの摂取が制限されたその日から、全身の活力が低下していくケースにたびたび遭遇します。これは、口から食べられなくなり、口腔の廃用性の変化によって全身の代謝のメカニズムがペースダウンしてしまった上に、精神的なダメージが大きく影響するためと思われます。このように、口腔と肉体的,精神的健康は密接に関係するといっても過言ではありません。
 気道感染のひとつである誤嚥性肺炎の予防には、
① 感染源ともいえる口腔咽頭細菌叢の除去(コントロール)
② 感染経路対策としての嚥下反射,咳嗽反射の改善
③ 感受性宿主対策として栄養改善による免疫能の改善
④ 潜在化している摂食・無下機能の障害の早期発
などが必要です。そして,何より、誤嚥性肺炎の原因と目される歯周ポケット内の細菌のコントロールは、非常に重要になってきます。口腔内の衛生状態を良好に雑持するとともに、口腔機能の要となる歯を喪失しないようにする歯周病対策は、肺炎予防の基本でもあるのです。

歯周病と心疾患について

2024年1月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

歯周病は多くの方が感染している病気です。
今回は他の病気との関連についてのお話です。


歯周病の患者さんの口腔内写真。

歯を支えている顎の骨の吸収が進んでいます。

歯周病と心臓病の関連について
 歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなります。この歯周ポケットの中で細菌群が歯肉組織に侵入し、生体はこれを異物、抗原と認識して、炎症・免疫応答が起こります。この際,炎症性組織となっている歯肉には豊富な新生血管があり、そこから歯周病関連細菌、細菌産生物、あるいは生体側で産生されるサイトカインと呼ばれる炎症性物質が血管内に入り込んでいき、血液を介して全身の臓器に運ばれ、さまざまな悪影響をもたらすことが考えられます。
 
歯周病と心臓病との関連性に関する疫学的調査により、歯周病に罹患している人は、心臓病に罹患する人、あるいはそれが原因で命を亡くされる人が多いという報告がある一方、両者の間には関連性がないという報告もあり、現段階ではまだはっきりと断定はできません。それでも近年,基礎研究領域では,歯周病から心臓病に影響を与える因子、経路に関する研究結果がいろいろ報告されるようになってきました。

①そもそも心臓病って?
 心臓病とは、心臓に発症する疾患の総称で心疾患とも呼ばれており、虚血性心疾患、心内膜炎,心筋炎、心臓弁膜症、心膜炎が主だったものです。
 厚生労働省の死因順位別死亡数の年次推移
2004年(平成16年)度死因順位推定値
第1位 男女ともに悪性新生物
第2位は心疾患
第3位は脳血管疾患であす。
 さらに、心臓病で死亡する人は毎年約15万人を超えており、徐々に増加する傾向にあります。虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に栄養や酸素を運んでいる血管(冠状動脈)に動脈硬化が起こり、血流が悪くなって起こる疾患で、代表的なものに狭心症と心筋梗塞があります。

②虚血性心疾患の原因
 虚血性心疾患は、血管の動脈硬化が元になって発症します。この疾患は、アテローム(粥腫)性動脈硬化症,中膜硬化症(メンケベルグ型動脈硬化),細動脈硬化症に分類されますが、虚血性心疾患の原因としては、大,中等大の動脈に多発するアテローム性動脈硬化症が主体となっていると考えられます。
 一般にアテローム性動脈硬化症は、長年にわたる不適切な食生活や運動不足,ストレスなどの生活習慣が大きく関わる生活習慣病です。多くの欧米諸国で死因の第1位が心臓病であることを考えると、日本人も食生活をはじめライフスタイルが欧米化し、その結果として、心臓病患者が増加したと考えられます。最近では高齢者ばかりでなく、30,40歳台でも虚血性心疾患に罹患する人が増えており、20歳台の男性でも動脈硬化が増加しています。
 近年では内臓脂肪蓄積が出発点となって、肥満、糖尿病,高脂血症,高血圧が相互に関係して悪化することが明らかとなり、メタボリックシンドロームという名称で国際的にも非常に注目されています。これらの疾患は、どれもがアテローム性動脈硬化症のリスクファクターですが、これらのうち2つ併せ持つ人は、まったく持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3~4つ併せ持つ人では、31倍にもなることが報告されており、脂肪細胞の機能の解明,なかでもアディポサイトカインの研究から、各病気の間の機序についていろいろなことがわかってきています。

③アテローム性動脈硬化症と炎症
 アテローム性動脈硬化症は炎症性疾患であるといえます。この過程が進行してアテロームが増大すると血管内腔は狭くなり、狭心症の状態になります。さらに、Tリンパ球や炎症性物質は、血管内皮の傷害、透過性の亢進,血栓の形成,内膜の肥厚をきたし,完全冠状動脈が閉塞して心筋梗塞となります。
 以上のような、傷害反応説は、マクロファージが活性化することから、炎症性疾患として歯周病の病因とも重複する部分が多く、部位は離れていますが、血流に乗って影響を及ぼしていることが推察されます。

④歯周病が心臓に影響する可能性としての機序
1.細菌あるいは細菌産生物による直接作用
 歯周病関連細菌のPorphyromonas gingivalis (Pg)が、アテローム性動脈硬化症に特異的な病原微生物として挙げられています。さらに、その他の歯周病関連細菌(Bacteroides forsythus, Actinobacillus actinomycetemcomitans, Prevotella intermedia)もアテローム中から検出されています。また,グラム陰性細菌の細胞壁構成成分のLPSは、直接血管内皮細胞を傷害すると同時に、炎症性サイトカインの産生を高めることにより、間接的に血管内皮細胞に作用すると考えられています。

2. 歯周病局所で産生された炎症性サイトカインによる直接作用

3. 歯周病局所の炎症性因子刺激により産生される急性期蛋白による間接作用
 敗血症等の急性炎症において、主として肝臓でC反応性タンパク(CRP),フィブリノーゲン、血清アミロイドAタンパク(SAA)等の急性期蛋白が産生されます。これらのタンパクは本来,抗炎症効果のために産生されますが、慢性的で持続的な炎症性刺激が加わると、炎症を助長する作用があります。すなわち、CRP は炎症局所へ移行し、炎症性サイトカインの誘導、補体の活性化により二次的な損傷を誘導します。フィブリノーゲンやフィブリンは、ヒト単球と結合して、サイトカインの発現を誘導します。また,SAAは脂質代謝産物との相互作用によりアテロームへの脂質の沈着を促進します。
 これらの急性期タンパクの増加は、心筋梗塞や心臓関連死と関連することが報告されていると同時に、歯周病や歯周病関連細菌とも関連のあることが確認されています。

4. 熱ショックタンパク
 熱ショックタンパク(heat shock protein: Hsp)は、環境、および代謝ストレスに反応して細胞内で産生されるタンパクです。その中で、Hsp60ファミリーは熱や炎症などの刺激でその発現が増強されます。このタンパクは、種を超えてアミノ酸配列の相同性が高いと同時に、免疫原性も高いという特徴をもちます。酸化低比重りポ蛋白、LPS,炎症性サイトカインは、血管内皮細胞のHsp60発現を増強します。歯周病関連細菌に感染して、体内に細菌由来のHSp60抗体が産生されますと、交叉反応性により,前述の血管内皮細胞に発現しているヒトHSP60と結合してしまいます。そして、このような抗原抗体反応が成立すると、血管内皮細胞の傷害,マクロファージ、T細胞の活性化が起こりその結果産生される炎症性サイトカインにより、さらに炎症が進展するという悪循環に陥ることが報告されています。実際、歯周病をもつ患者さんの血清中には高レベルのPgのHSP60抗体が検出されたという報告があります。

5.遺伝子多型
 一部の遺伝子が変異した遺伝子多型は,産生される分子の発現量や形に影響を与えることがあり、組胞の応答性を規定する可能性があります。たとえば、IL-1は歯周病および冠状動脈疾患の両疾患で、その病因に関与していますが、IL-1遺伝子群の多型性は、重度の歯周炎やアテロームとの関連性が示唆されています。このため、炎症に関連する因子の遺伝子多型が、歯周病と心臓血管疾患を結びつける生物学的背景である可能性があります。
 
まとめ
 歯周病と心臓病との関連性が示唆される報告についてその機序を中心に述べましたが、確実にその因果関係が証明されたものはありません。しかしながら、病態から想定されたメタボリックシンドロームの疾患概念が、脂肪細胞の肥大化によるアディポサイトカインを通して解明されつつあり、炎症反応を中心として解明されてきたアテローム性動脈硬化症との共通項が見つかりそうな雰囲気です。さらに心臓病は歯周病の病態とも共通項があり、これらの絡み合った経路を一つ一つ解きほぐしながら、病態の本質が解明され、治療法に至る研究が発展していくことが期待されます。

インプラント治療後のメンテナス その2

2024年1月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回もインプラントのメンテナンスについての内容ですが、
インプラントの上部構造とその周囲の状況を具体的に考えた上で、
どのようにケアを続けていくとよいかを説明します。

上部構造装着直後のブラッシング指導の重要性
上部構造装着直後、患者さんはインプラントで歯を補われた歯列に慣れていないため、
ブラッシング不良になりやすく注意が必要です。

とくに全く歯がない状態で長期にわたり総義歯を装着されていた患者さんの場合、
歯ブラシで歯を磨く習慣を忘れてしまっているため、
歯科衛生士が時間をかけてブラッシング指導をする必要があります。

また、インプラントは顎骨の幅や高さにより埋入する位置や長さが決定されるため、
上部構造の形態は顎骨の量や形態により清掃性の面で理想的な形態を付与できない場合があります。

左下奥にインプラントが埋入された状態のCT画像。天然の歯と比較すると、根の幅が大きく異なります。
この症例では、あまり骨の高さの差はありませんが、
このように整った条件ばかりではありません。

したがって、上部構造装着直後に患者にブラッシング指導をする際には、顎骨および上部構造の形態を説明し、
形態的に磨きにくい部位があることを理解していただくこと、
インプラント歯列のブラッシングに慣れていただくよう指導することが重要です。

インプラントの上部構造装着後、定期健診の重要性、インプラントを含めた歯磨きの方法等を説明しています。
患者さんが選んできた歯ブラシ等が、必ずしもインプラント周囲組織に適した製品ではない場合もあります。
私たちは、上部構造の装着直後に、インプラントに適した清掃用具およびブラッシング方法の説明を行っております。

バイオタイプによるセルフケアの注意点
バイオタイプというのは、歯茎の粘膜の質のことです。
インプラント周囲粘膜の形態は、
厚い(thick-fat)タイプと薄い(thin-scalloped)タイプの2つに大別されます。
また、歯周組織についてはlaynardらにより軟組織や骨の厚みの関係から
4つのバイオタイプに分類されます。

角化歯肉の幅や厚みが、インプラント周囲組織の安定に必要か否かの見解の一致は得られていません。
しかし、歯周組織において歯肉が薄く角化歯肉が不足している部位では、
臨床的にブラシや食物による擦過などの機械的刺激やプラークに対する抵抗性が低く、
炎症による歯肉退縮を起こしやすいことがわかっています。
インブラント周囲粘膜においても、粘膜がインプラント上部構造頭部に近接し角化歯肉の幅が不足している部位や、
薄い組織の部位において、ケアを行う際には十分な注意が必要です。

とくに前歯部においては、唇側粘膜の厚い(thick-1at)タイプ
では、粘膜の退縮は少なく、審美的問題も少ないでしょう。
一方、薄い(thin-scalloped)タイプでは、経時的な粘膜の退縮が生じやすく、
とくに強圧や間違った方向へのブラッシングを行った場合、粘膜退縮は大きくなり、
審美的問題を生じやすくなります。

セルフケアの指導は、バイオタイプを評価したうえで指導方法を選択する必要があります。
Thick-Alatタイプの場合は、通常のブラッシング指導を行い、
過度なブラッシング圧による粘膜損傷を起こさせないような指導が重要です。

一方、thin-scallopedタイプの場合、ブラッシングによる粘膜退縮を予防することが重要であり、
軟らかい毛質のブラシを選択し、ブラッシング圧を弱め、唇側面に直角に当てるようなブラッシング指導を厳密に行う必要があります。
セルフケアに使用する各種清掃用具は、天然歯とは異なる形態を呈しやすいインプラント上部構造は、清掃性が悪くなる部位があるため、
歯ブラシだけでは磨き残しやすいことも多くなります。
そのため、補助ブラシなどインプラント周囲組織と 上部構造の形態や材質に適した清掃用具の選択が重要となります。
①ワンタフトブラシ
豊隆が大きい部分やインプラントブリッジの鼓形空隙などは、通常の歯ブラシでは毛先が届かず磨き残しやすいため、
歯ブラシで磨いた後に補助的にワンタフトブラシを使用するよう指導します。
②歯間ブラシ
インプラント周囲粘膜は瘢痕状態であり、歯間ブラシの誤った使用方法により、容易に付着をしてしまうこともあります。
ブラシの使用を開始する際には、必ずサイズ確認を行い、挿入方向に十分注意するよう指導することが重要です。

歯間ブラシのサイズは、天然歯の歯間部に適合するサイズよりもワンサイズ小さいものを選択し、
歯肉を押し広げないように注意する必要があります。
筆者は、歯間ブラシのサイズSが抵抗なく挿入できる鼓形空隙より狭い部位には、
歯間ブラシの使用は避け、ワンタフトブラシでの清掃を中心に指導しています。

また、歯間ブラシの金属のワイヤーによって、チタン面やセラミックス表面を傷つけないために、
ワイヤーがナイロンやプラスチックコーティングされている歯間ブラシを使用することも重要です。

③軟毛ブラシ
可動粘膜がインプラント上部構造頸部に近接しており、ブラッシング時の擦過によって傷つきやすい部位や、
即時荷重インプラント治療において手術直後に暫間的補綴物を装着した部位など、
粘膜が脆弱な場合には、軟毛ブラシを選択します。

④音波振動歯ブラシ
音波の作用により効率的に磨くことができるため、とくに全顎無歯顎症例でインプラント治療された患者さんにおいて、
音波振動歯ブラシでのブラッシングは有効です。また、ブラッシング圧をコントロールできない患者においては、
とくに音波振動歯ブラシを勧めることが必要です。
なぜなら、インブラント周囲粘膜は瘢痕組織であるため過剰な圧のブラッシングによって粘膜を傷つけないためにも、
一定の振動で磨ける音波振動歯ブラシを選択することが重要だからです。

⑤電動歯ブラシ
電動歯ブラシの毛先の動きは、歯周組織と比較して粘膜が脆弱であると考えられるインプラント周囲組織に対して、
ブラッシング圧が強すぎる場合もあるため、なるべく使用を避けるように指導しています。

⑥歯磨剤
研磨剤が多く配合されている歯磨剤は、上部構造を摩耗させるため、インプラントのみならず天然歯に対しても使用を避けるべきです。
セラミックスや金属などインプラント上部構造の材質にかかわらず、研磨剤によって傷ついた表面はバイオフィルム、プラークの沈着を招きます。
また、審美的にも、研磨剤によって摩耗した細かい傷により、セラミックスの艶や輝きを失わせます。
低研磨性または研磨剤無配合の歯磨剤が望ましいと考えます。
インプラントの形態的特徴から、歯ブラシによるセルフケアでは磨き残しやすい部位を、含嗽剂による化学的清掃法で補うことも必要です。
とくに、インプラント上部構造装着直後は、インプラントで補綴された歯列形態でのブラッシングに慣れていないため、
化学的清掃によりプラークコントロールを行うことが重要となります。
うがい薬としておすすめなのは、エピオスです。
塩と精製水を電気分解した機能水で、院内の機械で製造しています。
殺菌作用は高く、生体には優しい性質で、口腔ケアにも適しています。

定期的な受診/strong>
インプラント治療での失敗の大多数は、2次手術より1年以内に起こるという報告があります。
したがって、インプラント上部構造装着後の1年間のメインテナンスはとくに重要となります。

ケア用品のフッ化物濃度
チタンは酸性下でフッ素イオンが存在すると耐食性が低下する2ため、
フッ化物局所応用として使用する製品は中性のものを選択しなければなりません。
口腔内において、粘膜などが炎症を起こすとpHが低くなり、酸性に傾きやすくなるため、
アバットメントなど露出しているチタン面が存在する場合は、
とくにpHとフッ素イオン濃度に注意することが重要です。
一般的にはインプラントが存在する口腔内において使用するフッ化物は、
pHが中性でフッ素イオン濃度は1,000ppm以下が望ましいとされています。

インプラントのメンテナンス

2023年12月31日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

インプラント治療に関して、メンテナンスを気にされている患者さんは多いと思います。
実際、診療室でもよく質問があります。
インプラントは全て人工物ですから、虫歯は関係ないわけですが、
周りの歯茎は天然歯にも、インプラントにもあります。
多くのインプラント症例では、天然歯とインプラントが混在している状況ですので、
それぞれの成り立ちと、どのような違いがあるのかをみてみましょう。

インプラント周囲組織と歯周組織
まず、異なる点として
・天然歯は自己、インプラントは非自己
・インプラント周囲組織は非自己である物体との間で代謝を繰り返している
ということです。
そして、インプラント周囲組織には、次のような大きな特徴があります。
①結合組織中のコラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ない。
歯科インプラントは、ある意味特殊な環境にあります。顎の骨に植立された非自己であるインプラントが、
骨膜、粘膜を貫通して口腔内に突出しています。口腔内の粘膜に、骨まで達する傷口を存在させているのです。
ちょうど、傷口が治っている瘢痕組織というのですが、傷が治る硬い組織の状態です。
瘢痕組織の状態であるインプラント周囲組織は、コラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ないのです。
また、インプラント周囲粘膜上皮の増殖力は、天然歯の付着上皮と比較すると数分の1程度であり、
天然歯の周囲粘膜よりも代謝が劣っていることが考えられます。
一旦、周囲に炎症が生じたら、天然歯と比較して治りがよくないと言えます。

②血液供給量が少ない。
天然歯においては、歯槽突起側方の骨膜上血管、歯根膜の血管の2方向から血液供給があります。
しかし、インプラント周囲組織においては、骨からの血液供給のみです。なぜならインプラントには歯根膜がないからです。
したがって、歯周組織と比較すると、インプラント周囲組織の血流は少ないため、
血液の免疫作用及び再生能力が不十分になりやすいです。
この点でも、周囲に炎症が生じたら、治りがよくないことが考えられます。

③コラーゲン繊維の走行。
天然歯ではコラーゲン繊維の走行は歯根に対して垂直及び平行になっています。
インプラント周囲においては、コラーゲン繊維は骨から垂直に存在し、
インプラントと平行に走行しています。
そのため、インプラント周囲粘膜は、外からの侵襲に対し防御機能が低いことが考えられます。

これらのことから、インプラントのメンテナンスにおいては、
早期に炎症の変化を見つけることが重要であります。

全身的なリスクファクター
口腔内だけでなく、生活習慣や全身疾患を把握しておくのが重要です。
医科歯科連携をとること、患者さんに対しても、定期的な血液検査などを確認しておきます。
全身的因子には以下のようなことが挙げられます。
①虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)
②血液異常(高血圧など)
これらは、インプラントの動的治療中のリスクでもあります。インプラント埋入手術、2次手術は外科処置ですので、
循環器系疾患がしっかりコントロールされていることが必須です。内服している薬の情報も重要です。
とくにワーファリンなどのワーファリンなどの抗血栓薬を服用されている場合、主治医の先生と事前に連携して臨みます。
近年では、 PT-INR値を検査し、抗凝固薬の服用量を調整することにより、
歯科での口腔外科処置、インプラント手術においても、
特に休薬することなく治療を進めることが主流です。

✴︎PT-INR:プロトロンビン時間
以前は、抗凝固薬の作用を検査する項目として、PT、APTTが広く使用されていました。
これらの検査値は、検査時に使用する試薬などにより値が大きく異なるため、
施設により検査値にばらつきが生じ、正確な診断に役立てることができませんでした。
これらのデータを国際標準比とすることにより、各施設共通の共通の値となり
現在では正確な診断ができるようになりました。

もちろん、手術の止血は注意して行います。

③糖尿病
糖尿病により末梢血管の循環障害、免疫系の機能障害により、
インプラント手術後の治癒不全、感染、インプラント周囲炎への影響が考えられます。
インプラント治療を行うにあたっては、血液検査で重要となる項目として、
HbA1cが6.5%未満、空腹時血糖值13m/L未満にコントロールされていることが必要です。
これは、インプラント手術時だけではなく、メインテナンス時も同様です。

ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白で、
身体のすみずみまで酸素を運ぶ役割があります。
このヘモグロビン(血色素)とブドウ糖が結合ものがグリコヘモグロビンですが、
グリコヘモグロビンにいて、その1つのヘモグロビンA1c(HbA1c)は、
糖尿病と密接な関係があります。
赤血球の寿命は約120日(4ヵ月)なので、血液中のHbA1c値は、
赤血球の寿命の半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映しています。
すなわち、血糖値は血液検査時の全身状態を示しているのに対して、
HbAIC値は血液検査の日から1〜2ヵ月前の血糖の状態を推定できる
ので、糖尿病の状態を知るのに重要な検査値です。

3)骨粗鬆症
骨粗鬆症による全身の骨量減少と歯槽骨吸収との関連性については不明ですが、
骨粗鬆症の既往をもつ場合には、顎骨の骨量減少も考慮してインプラント手術やメインテナンスを進めていく必要があります。
一方、骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート(BP)系薬剤の投与を受けている患者で、
抜歯などの外科的侵襲により、顎骨壊死、顎骨骨髄炎の発症が近年報告され、問題となっています。

BP系薬剤には注射剤と経口剤があり、注射剤で顎骨壊死、顎骨骨髄炎が多く報告されていますが、
経口剤においても同様な報告があるので注意が必要です。
BP系薬剤による、顎骨壊死、顎骨骨髄炎のリスクファクターとしては、
外科的侵襲のある歯科治療(抜歯、インプラント手術など)や不適合な義歯だけではなく、
口腔の不衛生も報告されています。

4)精神神経症
医療面接が不可能な精神的疾患のある患者には、治療内容を十分に理解していただくことが困難なため、
インプラント治療は難しいと思われます。
また、不定愁訴や異常に不安感がある患者においても、同様です。


生活習慣

1.喫煙
喫煙は、インプラントの長期経過に大きな影響を与えるリスクファクターの1つです。
なぜなら、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質により、末梢血管障害や免疫障害を起こし、
インプラント周囲炎に影響を与えるからです。
そのため、インプラント治療を開始する際は、喫煙の有無、喫煙歴について問診し、禁煙指導が重要となります。

インプラント手術時においては、埋入されたインプラント部の骨結合不良や創部治癒不全などの
問題が起きないようにするため、禁煙を徹底する必要があります。

インプラント手術に際して、喫煙者にインプラント手術前3週間、手術後8週間の禁煙というやり方があります。
期間設定は、喫煙による頭蓋顔面での手術創傷治癒への影響についての研究結果がいくつか報告されているからです。

ただ、喫煙者にとってこれだけの期間の禁煙は難しいでしょう。
笑い話のようですが、
診療室で「〇〇さん、今回の手術後にタバコを吸うと、
骨を作ったところがうまく治らず、台無しになってしまいますので、
タバコはNGですよ」
とお話しした直後、クリニックの帰り道にタバコを吸っている患者さんをみてしまった
というエピソードを聞いたことがあります。

私自身の経験では、3年間喫煙歴がありましたが、ある時、「禁煙セラピー」と言う本を読んで、
ピタッとやめることができました。
何かきっかけがあれば禁煙の成功が期待できます。
ニコチンガムやニコチンパッチを使用している方で、
上手く行った人も、そうでない人も両方見てきました。

このように禁煙指導を行っても、インプラント治療中からメインテナンスの時期まで一貫して禁煙できない患者は、
大きなリスクがあります。
その場合、非喫煙者よりもインプラント周囲炎を起こす可能性が高いことを十分に説明し、理解してもらい、
リコール間隔を短くするなど、早期に炎症性変化を発見できるようにすることが重要です。

2.ストレス
ストレスがインプラント治療に悪影響を及ぼす明らかな報告はありません。
しかし、ストレスが歯周炎に何らかの影響を及ぼしていることは知られています。
まず、直接的な要因としては、ストレスなど精神的な原因による顎の動きです。
所謂、食いしばり、歯軋りの増加です。
歯槽骨に破壊的な影響を及ぼします。

2つ目は、ストレスにより自律神経系の交感神経が優位となるため、血液循環量が低下し、
唾液分泌量も低下することです。
このことから、口腔内の洗浄、抗菌作用が低下し、歯周炎およびインプラント周囲炎を生じる可能性があります。

歯周病の原因、生活習慣

2023年12月31日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は歯周病の原因についてのお話です。

歯周病の原因って?

歯周病は歯肉に炎症が起こることから始まります。
歯肉に炎症が起こると,歯肉が赤くなったり,腫れたり出血したりします。

では,何が原因で炎症が起こるのでしょうか?
それは歯の表面に付いた細菌の集団によるものです。

この細菌の集団のことをブラークと呼びます。
このブラークは歯の表面にしっかりとしがみついていて,うがいなどでは決して落ちることがありません。
ですから,ブラークはいわゆる食べ物のカスなどとは全く違うものです。

これらプラーク中の細菌が出すさまざまな物質によって歯肉に炎症が起きるのです。
このことは,実験的にも証明されており,歯磨きを中止して口の中にブラークが増えると,
歯肉に炎症がみられるようになり,歯座きを再開すると,炎症はひいていきます。

歯石が歯周病の原因ではないかと認識されている方もいらっしゃいます。
歯石を定期的に除去しているのに,いっこうに歯周病が改善しないこともあります。
実は歯石はプラークが石灰化(石のように固くなる)したもので,
歯肉に炎症を引き起こす病原性はプラークよりずっと低く,歯や歯根の表面がざらつき不整になるために,
プラーク付着因子(プラークが歯や歯根の表面につきやすくなること)として考えられています。
歯石は軽石のような質感で、プラークが付着しやすいです。
歯石自体に毒性はありません。
したがって,いくら歯石を除去してもプラークが付着する環境では,歯肉の炎症が改善しません。
プラーク以外にも噛み合わせ,歯ぎしりに代表される習癖、全身疾患など,原因とされるものは他にも多くありますが,
それら単独では歯周病は発症することはなく,プラークが最大の原因であります。

歯周病は生活習慣病?
歯周病の主たる原因は,口の中のプラークつまり細菌であるとご説明しました。
細菌が原因であると聞くと,風邪と同じ外からやってくる感染性の病気のように思われるかもしれませんが,
歯周病は,高血圧・肥満・糖尿病・高脂血症と同じ”生活習慣病”とされています。
生活習慣病とは普段の生活習慣により体の健康に歪みが生じて発症する病気です。

プラークが一番の原因ですが,その細菌は健康な方の口の中にも存在していますし,
個々の食生活やブラッシング習慣、個人の感染に対する抵抗力により大きく異なります。
口の中のプラークが歯周組織を破壊するかどうかは,その人の生活習慣によっても大きく異なっています。

生活習慣病は以前「成人病」とも言われていましたが,厚生労働省は呼び方が正確でないということで,
1996年に生活習慣病と呼び換えました。
生活習慣病の大きな特徴は,生活習慣の歪みを是正することにより,その発症を予防できるということです。

言い換えると生活習慣病は,生活習慣を改善せずして医者や歯医者に通うだけでは決して治らない,ということです。
糖尿病の改善に食事療法や運動療法が非常に重要であることはよく知られています。
また,生活習慣病の多くがサイレントディジーズ(静かな病気)と言われ,普段はほとんど症状もなく進んでいく病気であることがその特徴です。

歯周病の多くは普段からのブラッシングにより予防可能ですし,歯周病の検査はお近くの歯医者さんでできます。
残念ながらすでに歯周病と言われてしまった方は,普段の食生活と特にブラッシング習慣について見直しと改善が必要で,
それが一番の治療となります.

歯石除去の器具
この改善の指導とチェックは,歯周病専門医や一般の歯科医師や歯科衛生士が行います。

歯周治療の実際
では,歯周治療はどのように進められるかを簡単に解説したいと思います。
まず,すべての歯と歯肉の間にできた隙間(歯周ポケット)の深さと歯周組織の炎症の状態や破壊の程度を調べる検査を行います。
実は病名としては歯周病とひとことでまとめられますが,その程度の差によって治療の方法,難易度,予後の予測が大きく異なります。
したがって,ここでいう検査は特に歯周病の程度を把握するスクリーニングの意味があります。

軽度な場合、生活の改善と原因となるプラークを除去するためのプラークコントロール(ブラッシング習慣や方法の改善)で
ほぼ正常な歯周組織にもどすことが可能です。

中程度進行した歯周炎ではプラークコントロールしたのち,歯周ポケット内のプラークと歯石除去を行います。
歯石は,表面がざらざらしておりプラークが付きやすいため,通常は手用スケーラーまたは超音波スケーラーと呼ばれる歯石除
去のための専用器具で,機械的に除去します。
さらに歯石を除去後,プラークで汚染された歯根の一層を除去し,平滑にして歯肉に対して物理的な刺激をなくすことで,
歯肉の炎症を抑えます.こうした一連の器具操作をスケーリング・ルートプレーニングと呼びます。

歯石が歯の根の表面に多量に付着している状態。

歯周病が進行したケースでは,この歯石除去に時間をかけ,徹底して行います。
しかし,歯石のついている部位によっては,徹底した除去が困難な場合もあります。
そうしたケースや高度に進行した歯周炎の部位に対しては歯周外科や内科的な除菌を行います。

以上が歯周治療の流れですが,歯周病の治療がおおよそ終了しても再発しないよう,
ブラッシングという生活習慣を定期的にチェックし管理していくメインテナンスを継続することが,
歯周組織の健康を長期にわたり保つために重要となります。

全身疾患と歯周病について
歯周病の原因がプラークであることをお話ししましたが,
実際はプラークが歯に多量に付着していてもさほど歯周病が進行していない場合や,
逆にプラークは肉眼的に非常に少ないのに歯周病が進行している患者さんにしばしば遭遇します。
生体の抵抗性や感受性などが影響し,
さらに,遺伝的因子や環境因子などが関与していると考えられています。

現在のところ,最も調査や研究が進み,歯周病に関与する危険因子と言われているのは,喫煙と糖尿病の2つです。
喫煙と糖尿病は歯周病の発症や進行に関与しますが、その逆に,歯周病が糖尿病の悪化に関与することは考えられないか? と想定されます。

そこで,双方の影響を調べる大規模な研究がアメリカで行われました。
その結果,全身疾患(冠動脈疾患,呼吸器疾患,糖尿病,早産や低体重児出産,骨粗鬆症など)が歯周組織の健康や歯周病
に影響を及ぼすことはもちろんですが,歯周病がこれら全身の健康状態に強い影響を与えていることが報告されました。

歯周病と糖尿病の関連のメカニズム

糖尿病の合併症の一つである微小循環障害による歯周組織の創傷治癒遅延や、血糖値の上昇に伴うコラーゲンの代謝能力の低下、
歯根膜線維芽細胞の組織修復能力の低下などが考えられていました。
1990年代後半からは、コラーゲンを含めてタンパク質が非酵素的に糖化反応を繰り返すことで作られるAGEという物質の関与が
提唱されました。

糖尿病患者への歯周病治療
歯科治療上、重要なことは、糖尿病の血糖コントロール状態や、使用薬剤、合併症の有無などを
医科歯科連携をしっかりとり、情報共有することです。

糖尿病の血糖コントロールが良好であれば、歯周病治療にも良い反応が得られると考えられます。
逆に不良な場合、歯周病治療のみを頑張って続けていったとしても、
歯周病の悪化や再発やしやすいことがわかっています。
また、重度の歯周病の方は、インスリン抵抗性が悪化します。
つまり、血糖コントロールが不良な場合は、先に内科的な治療が優先されます。
なぜなら積極的な歯周治療が不可能であるからです。
プラークコントロールは、いつでもスタート可能ですので、
非外科的なアプローチを取りつつ、患者さんご自身でしっかりプラークコントロールができるよう、
歯科医院でサポートをしていくことが重要です。