こんにちは、こさか歯科クリニックです。
お子さんのお口周りの発達についてのトピックです。
口周りの癖が原因で治療対象となったケース
上唇を噛む癖があるお子さん:上唇を口の中に巻き込むように遊ぶ癖があったために、上の前歯が内側へ傾斜して受け口になっています。
小児矯正と口周りの筋機能訓練を行います。親御さんにも、矯正治療のマウスピースの取り扱い、お子さんのフォローをお願いしながらすすめます。
4ヶ月で正常咬合に変わりました。
⚫️子どもの口腔機能の発達
—離乳の準備期—
●原始反射
乳児は、出生直後からみられる原始反射によむて哺乳を行うことで栄養を摂取します。また、原始反射が出現している時期では、口唇、舌、顎などの口腔諸器官の一体動作により哺乳動作が行なわれています。これらは乳児自身の意思とは関係なく、不随運動で行われます。
乳児の時期は、口を開口させて乳首を取り込み、舌を下唇の上に置きながら舌の蠕動様の動きで乳汁を摂り取り込む、このときの口蓋には、「吸啜窩」という乳首がちょうど安定するようなくぼみがある。
・原始反射・・・乳児に備わっている、特有の刺激に応えて示す中枢神経系由来の反射行動。
●指しゃぶり・おもちゃしゃぶり
多くの乳児は,生後2カ月ごろから随意的に指しゃりを始めますが。手指の発達によって徐々にしゃぶりは減少していきます。さらに,4カ月ごろこなると上肢と手指の発達に伴い,おもちゃなどをロこもっていく行動(おもちゃしゃぶり)がみられはじめます。指しゃぶりやおもちゃしゃぶりによりさまざまな物性が口腔内に入ることで、口唇,舌,顎を随意的に動かすようになり、「原始反射を消失させて離乳食を開始するための準備運動」としても重要な行動と考えられています。そのため,離乳食開始時期に保護者から「離乳食をベロで押し出して食べてくれないんです」「うまく食べ物を喉のほうにもっていけないみたいなんです」というような質問があったときには,原始反射の残存を確認したり、指しゃぶりやおもちゃしゃぶりをしているか(あるいは,していたか)を確認しています。
—離乳期以降—
原始反射は、おおよそ離乳食を開始する5〜6カ月ごろには消失していきます。このころから身体の成長、発育が著しくなるとともに、摂食機能の獲得にもさまざまな変化がみられるため。
問診,観察を細かく行う必要性があります。離乳食が始まったら、歯の萌出程度と併せて口腔の形態、口腔機能の獲得をみていきます。
いずれの段階においても発達の程度には個人差が大きく、子どものもつ意欲によっても左右される場合があります。発達を促すためには、次に獲得する機能がすこしみえはじめた時点で次のステップにチャレンジし、学習するということも重要です。
しかし、あまり急ぎすぎても子どもがついていけなくなるため、保護者こ方は「自分の子はほかの子より遅れている」という不安になると思いますが、子どもの口腔発達には個人差があること忘れずに急がず発達段階を踏まえたアプローチをしていきましょう 。
⚫️子どもの口腔習癖
—指しゃぶり—
「指しゃぶり」は、授乳期の乳児には大切な行為であり,幼児期になってもおよそ20~40%にみられる生理的なものです、この指しゃぶりは、お母さんのお腹の中にいる胎生15〜20週から始まっています。そして、乳児は出生後。2~3カ月かけて自分の指を口にもっていけるようになり。盛んに指しゃぶりを行うようになります。このころは原始反射である哺乳反射が優位ですので,指しゃぶりも反射の動きで行われています。しかし,やがて大脳上位の発達がなされるとともに、哺乳反射が消えていくため。
徐々に随意的な動きに変わっていきます。また、哺乳反射の消失に伴い、5~6カ月ごろには哺乳機能から摂食機能へ移行していきます。
指しゃぶりは哺乳に通じる行為であり、心理的満足感や情緒の安定にもつながると考えられています。乳児は、はじめのうちは感覚の発達した器官である口への刺激として指しゃぶりを盛んに行っていますが、やがて1歳を過ぎてひとり歩きができるようになると、ほかに興味が広がり、徐々に指しゃぶりがなくなっていくことが多いようです.
これらのことを考えると、5カ月ぐらいのお子さんの指しゃぶりはまだやめさせる必要はありません。むしろ、口の機能や情緒の発達にとっては大切な行為ですから。無理にやめさせるのは逆効果になる恐れがあります。指しゃぶりが歯並びに影響してくるのは乳歯が萌出してからであり、遅くとも4歳までにやめれば後の歯並びに影響はないというのが一般的な見解です。
もし4歳以降~学童期にかけても指しゃぶりを行っている場合には、口腔機能や顎顔面の形態への影響が深刻になります。しかし、この時期においても指しゃぶりを行っているということは、生活環境や社会環境などの影響。心理的な問題など、多くの要素が関係していると考えられます.その行為だけに目を向けても解決することは難しく、小児科医や小児歯科医、矯正歯科医,言語聴覚士,臨床心理士など、専門職からの支援が必要です。
・哺乳反射・・・一連の乳汁摂取のために反射運動、胎生期の後半には獲得される原始反射であり、探索反射.口唇反射.呼吸反射.咬反射がある。
—口呼吸—
口呼吸の関連因子は多様ですが、幼少時の指しゃぶりが長期化することにより上顎前突や開咬が引き起こされ、その結果として口唇閉鎖不全が起こり、口呼吸となる可能性も指摘されています。全身への影響としては、鼻腔を通じた加温・加湿や防塵機能が働かないため呼吸器系の粘膜保護が作用せず、風邪などの感染症に罹りやすくなります。また、口呼吸の子どもでは下顎と舌が下行して顔面が上向きになり、頭部が前へ出るような不良姿勢になりやすいという報告もあります 。
このように、口呼吸は口腔顔面のみならず全身にも影響を及ぼす可能性がありますが、どのように対応したらよいでしょうか?耳鼻科疾患がある場合は、まずその治療が最優先でしょう.鼻呼吸を促すためにも,鼻孔の通過をよくしておく必要があります。もし、耳鼻科疾患がなく、ほかに口唇閉鎖を阻害する因子(筋緊張を低下させるような薬の服用等)がなけれは、口唇閉鎖力をつけるトレーニングや、鼻呼吸を促すトレーニングを行いましょう。
「口を閉じて!」と注意することも必要ですが、あまり言いすぎるとかえって逆効果になることがあります。すでに上顎前突になってしまっていたり。口輪筋の筋力が弱かったりする場合には、「口で言われて頭でわかっていてもできない!」という状況だからです。本人の負担にならないよう自覚させながら。楽しんでできるトレーニングプログラムを立てていきましょう!
—離乳食を嫌がる—
●離乳食開始の時期
離乳食は、首の座りがしっかりしている,支えてあげると座れる、食べ物に興味を示す、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなるなど、子どもの育ちをみて開始します。離乳食を始めてみたものの。まだ身体や口や心の準備が整っていなしために食べることを嫌がってしまうことがあります。
●食べる機能の育ちと離乳食の固さのずれ
舌や顎の動かし方の発達に伴って、食べることのできる固さが変わってきます。そのため、食べる機能の育ちと食べ物の固さがずれていると,離乳食を嫌がる原因になることがあります。保護者には、調理した離乳食を子どもに食べさせる前に,自身の舌を使って試食するようにしてみましょう。さらに,子どもが食べているときの口元の動きを観察し、発達とそれに合った離乳食の固さにしましょう。食べる機能の育ちに合った固さにすることで食べやすくねります。
●食への興味を伸ばす
何にでも興味津々の子どもは、食べることにもワクワクしています。見た目や匂いに興味をもつだけでなく、”触ってみたい”とも感じていますが、手が器用になる以前の、微妙な力加減が難しい時期には、ほとんどの食材はグチャ、とつぶれてしまいます。そこでテーブルや服や床が汚れてしまうため、保護者がつい先まわりして食べ物に触れないように手の届かないところに避けたり、汚さないよう注意したりしてしまうことがあります.手づかみでのかじりとりは自食のスタートとして、手の経験だけでなく、手と口の動きの連動を学習するためにも必要であることですので、触れるための食材を準備するなど、十分に手づかみ食べを経験させるようにしましょう。
—あまり食べない—
保護者のなかには、「子どもが離乳食をあまり食べない」という悩みをもっている方がいますがまずは、食べる機能と食べ物の形態が合っているかを確認しましょう 。
食欲や食べる量の差は、体格.性格.体力などによる個人差もあります。そのときの体調(眠い.空腹でない.便秘.疲れているなど)、好き嫌い(新しいものが苦手、味,形態など)などさまざまな要因が考えられます。特に、離乳食の時期は、本人が気持ちを言葉で伝えることはできないので、なぜ食べないのかがわからず保護者が悩んでしまうことも多くあるでしょう。量だけにとらわれず、総合的な判断が必要です。
子どもの身体的な発育については成長曲線を確認し、問題がないようであれば、焦らず見守るようにしましょう。
お子さんの気になるお口についての相談はお気軽にこちらからお願いいたします。