こんにちは、こさか歯科クリニックです。
小児の患者さんの、口腔機能についてのトピックです。
ご家庭でお食事される時、ふとした時、
「よく見たらうちの子、食事中の癖が強いな」
「いつも口がポカンって開いてる」
「舌がよく出てる」
「食事でよく噛めてないようで、時間がかかる」
「他のお友達と比べて、永久歯の生え変わりが進んでないな」
と気づかれることがあるかもしれません。
実は、それらはお口の発達不全につながっているのです。
リットレメーター
お口がよく開いているお子さんの、口唇閉鎖機能を検査するリットレメーター:マウスピースを唇で保持してもらい、どのくらいまで引っ張れるかテストをします。診断の一つの根拠になります。実は口が常に開いていると、口臭がキツくなる、虫歯や歯肉炎が悪化しやすい、アレルギーになりやすいなどよくないことにつながります。
⚫️食べることの問題
—噛まない—
①歯は生えそろっているか?
食べ物を噛んで食べるには、臼歯の咬み合わせが重要です。摂食機能の発達から事例をみると,通常2歳であれば咀嚼機能は獲得されていますが,歯の萌出状態によっては繊維の多い野菜や肉、かまぼこなどの練り製品は咀嚼しきれずに口の中に残ってしまう場合があります。そうすると,丸のみや口から出してしまうといった行動につながりやすくなります。萌出前の歯肉しかない時期や生えはじめの時期、また永久歯への交換の時期には、食事のメニューの選択の配慮が必要です。
②弱い力でもすりつぶせるか?
咀嚼機能の発達にも個人差があり、2歳でもまだ十分に機能が育っていない可能性があります。口の動きを観察し、「左右の口角は非対称に動いているか」「噛んでいる顎のほうに、口唇や顎は引っ張られているか」「舌は横に動いているか」を確認します。
これらができていなければ、まだ咀嚼機能が十分に育っていない可能性があります。
小児の方に、というわけではないですが、咀嚼能力を検査する機器がこちらです。検査用のグミを噛んでもらい、どの程度噛み砕けたか、センサーで確認できるものです。歯を失って機能に影響が出ている方の診断と、治療後の咀嚼機能を評価する基準に用いられます。
③かじりとりはできるか?
咀嚼するためには、まず自分の前歯で自分の口に合った一口量をかじりとることが大切です。それによって、前歯の歯根膜に食べ物の感覚が伝わり、口に入る食べ物の固さや量を感知し、その後の咀嚼運動へとつながっていきます。逆に、前歯でかじらず口の奥にポーンと放り込むような食べ方をしていると,口の中の感覚情報が得られず、咀嚼運動が引き出されにくくなります。
④食べることを急かされていないか?
咀嚼しないことの弊害は、「丸のみ」につながることです、臼歯が生えそろい、咀嚼機能が獲得されているにもかかわらずあまり噛まない場合。環境に原因があることも多いようです。「急いで食べなさい」などと急かされていたり、あるいは兄弟や姉妹と争うように食べていたりなど、早食いせざるをえないような環境にあるのかもしれません。早食いが定着すると窒息事故にもつながる恐れがあります。心身ともにリラックスして食事ができる環境を整えてあげることが大切です。
また。食べるのが速い。噛む回数が少ないことは、肥満の原因となります。よく噛むことは食べ物のおいしさを引き出し。消化吸収を助け、満腹中枢に作用して満腹感を得ることにつながります。子どものころからしっかり噛んで食べる習慣をつけ、生活習慣病にならないように指導しましょう。
※正常な咀嚼機能の見方
①咀嚼しているほうへ口唇.顎.舌が寄るのがみ
られる。
②歯の上の食べ物を舌と頬で支えている。
—口に溜めて飲み込まない—
①口の機能の発育段階と食べ物の形・固さは合っているか?
「食べる意欲はありそうなのに、口に溜めたまま飲み込まない」…..そのような場合は、食べ物の形・固さが摂食機能の発達段階に合っていない可能性があります。たとえば、小学校入学前の6歳では、咀嚼機能も十分に育ち、第一乳臼歯の萌出とともに咀嚼の力は強くなりますが、まだ大人と同じくらいの力までは身についておらず、固い食べ物を何でも食べられるわけではありません。同時に、前歯の交換も始まるため、前歯が動揺していたり、抜けていたりすることから、かじりとりができない時期でもあります。その結果として、口の中の食べ物をうまく飲み込めずに、口に溜めたままになってしまうことも考えられます。このような時期に摂食機能に合わない固い食べ物ばかり食べさせていると、口に溜めたままになってしまうか,あるいは無理に丸のみする癖がついてしまいます。子どものそのときどきの口の環境や摂食機能の状態に合わせて、食べられる形・固さの食べ物を与え、すこしずつ機能を伸ばしていくようにします。
※摂食機能の発育段階に適さない形・固さの食べ物を与えると、正常な摂食が困難になってしまいます。
②食べる意欲はあるか?生活は乱れていないか?
子どもは同じ年齢でも個人差が大きく、食欲もまちまちです。食欲旺盛な子もいれば、小食の子もいます。子どもが小食の場合,親は「ちゃんと栄養が摂れているのかしら?」と心配しがちです。そうすると。「もっと食べなさい」と食事の量を増やしたり、追いかけ回して食べさせようとしたりしてしまい。子どもにとっては食事が苦しいものになっている可能性があります。また,間食(おやつ)やジュースを摂る量が多くなっている場合は、つねに満腹で食べる意欲も育ちません。それでも食べなくてはいけない状況になると,結果的に「口に溜めたまま飲み込まない」ということになってしまいます。
外遊びや友だちとの遊びをとおして適度に運動をさせ、自然に空腹感を味わえるような生活リズムをつくることも大切です。
—食べるときに舌がいつも出る—
①嚥下はきちんとできているか?
口が開きっぱなしで,の嚥下時に舌が出るということは、まだ「乳児の下」をしていると考えられます。通常、離乳食が開始された5~6カ月ころには、口を閉じての下する「成人の下」が獲得されますが、哺乳を継続しているお子さんだと、舌の使い方が哺乳のときのまま残ってしまうことがあります。その場合,まずは哺乳瓶をやめて、水分をスプーンやコップから飲むように促していきます。もし、哺乳瓶の使用をやめてしばらく経っても乳児嚥下が改善されなければ、成人嚥下を覚えてもらう練習が必要かもしれません。その場合,口唇と顎をしっかり閉じた状態での嚥下できるよう、お母さんなどの指で、口唇を閉じる介助を試みるようにします。
②口唇の力はあるか? いつも口が開いたままか?
咀嚼の動きはできているようなので、幼児食程度の固さのものでも食べられるかもしれません。しかし,口を閉じるための筋肉,特に口輪筋が低緊張であるといつも口が開きっぱなしになり、そのためにの下時に舌が出てしまう可能性もあります。また、鼻炎などで鼻から呼吸ができない場合は口呼吸となりますので、やはり口が開きっぱなしとなり、安静時の筋肉の緊張度にも影響が出てしまいます。
「うちの子、いつも口開いてるんです」というお話は、診療室でよく聞きます。お口や顔面の成長は、生まれた時からの授乳をどうしていくか、から考える必要があります。母乳が可能な場合は、赤ちゃんが顔を真っ赤にしておっぱいを飲む、この行為自体に非常に意味があります。一生懸命吸っていくことにより、骨が正常に成長していきます。
よくないのは、小さい力で飲みやすいようにと哺乳瓶の吸い口を大きくすることです。楽に飲めるようにと考慮されたものかもしれませんが、発育にとっては逆効果のものなので、使用されない方が良いです。
③食べ物は咀幅機能に合っているか?
「咀嚼はできるけれど舌を出しての下してしまう」・・・・・・このような場合、いったいどのような食べ物が合っているのでしょうか、ここで大切なのは「咀嚼の動きがどこまでできているのか」ということです。咀嚼の動きというのは、顎や舌が側方に動くことだけを指すのではありません。顎や舌とともに口唇や頰も上手に協調させながら、奥歯で食べ物を十分にすりつぶし,唾液と混ぜ、そして舌の上で一塊にすることができなければ、上手には飲み込めません。したがって、咀嚼しきれない食べ物を飲み込もうとするために、舌が出てしまっている可能性が考えられます.そのような場合は、咀嚼機能に食べ物が合っていない (食べ物が固すぎる)可能性が高いので、咀嚼できる軟らかいものに変えていくようにしましょう同時に、舌を出さずに嚥下する機能を獲得するためにのアプローチを行っていきます。
摂食機能の発達には、ある程度順番があります。しかしときには,この順番が違ってしまうこともあります。本人の発達段階に合わせて摂食機能を促すことが原則ですが、安全面を考慮しながら、獲得している咀嚼機能を大切に育てていくことも考えていくようにしましょう。
ほかにも、食行動の問題は、齲蝕など口腔内の痛みが原因のことも考えられます。まずは口腔内にこうした器質的な問題がないかをチェックし、そのうえで機能面の対応をしていきましょう。
小児の口腔機能発達不全の診断基準
○離乳前 以下の2つ以上該当する
・お口ポカン
・小帯付着異常
・授乳時間、回数のムラ
・スプーンを押し出す癖
・離乳がすすまない
○離乳後 Aから1つ以上、Bから2つ以上該当する
A:歯の萌出の遅れ、歯列不正、偏咀嚼、虫歯があって咀嚼に影響ある、強く噛みしめられない、咀嚼時間が長すぎる
B:舌突出癖、口唇閉鎖不全、小帯の異常、舌や口唇、指吸いなどの癖あり、食べる量や回数のムラあり、構音の異常。
口腔機能発達不全に対する検査、筋機能訓練、生活習慣指導は、保険診療でも認められております。
お子さんのお口が気になったら、こちらからお気軽にご相談ください。