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肥満と歯周病についてラスト

2024年5月14日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

肥満と歯周病の関連のお話をしてきましたが、今回がラストです。


下の奥歯のレントゲン写真:歯周病が進行し、歯を支える骨が吸収してなくなってきています。奥歯は根が二股に分かれていたりしますが、支える骨がなくなってくるとこのように歯の根の分岐部のところがトンネル状になってきます。分岐部病変と呼ばれます。この状態になると、歯周病治療のスケーラーなどの器具が、トンネル状のところに到達しないため、歯周病が進行しやすい状態になってしまいます。

●肥満症とは
 日本肥満学会は「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態」を肥満症と定義し疾患として位置づけしました。ここでいう健康障害とは10の疾患群、すなわち、2型糖尿病・耐糖能障害,脂質代謝異常,高血圧,高尿酸血症・痛風,冠動脈性疾患,脳梗塞,睡眠時無呼吸症候群,脂肪肝、整形外科的疾患,月経異常です。これらはいずれも減量による病態の改善が望まれるものばかりです。肥満症はこれらの健康障害の有無や、BMI,ウエスト値,腹部CT検査によって診断されます。

●肥満の現状
 米国の1988〜94年の調査ではBMI30以上の肥満者の割合は男性で20%,女性で24.9%と非常に多かったのですが、さらに12年前と比べたところ男女ともおよそ8%も増加していました。喫煙対策が進んだ米国において、肥満は健康上最も深刻な問題であるとされています。その後,米国疾病対策センターは、BMI 30を超える肥満者の割合を州別に調査し、過去18年間にわたる分布図を作成しインターネットで公表していますが、これを見る限り中東部を中心に始まった肥満者の「蔓延」は全米に広がり深刻です。急速に広まる伝染病のアウトブレイクのように、肥満は全米で急増しています。
 イギリスでも1980年から1995年の間に、肥満者は8%から15%に増加したと報告されています。肥満は先進国に限らず、多くの途上国、アジアや太平洋の島々でも増加しています。幸い日本では約15万人を対象にした大規模調査でBMI 30以上の肥満者の割合は男性1.86%,女性1.98%と欧米に比常に少ないようです。しかし肥満と最も関連の強い糖尿病の発病率は米国と同程度なのです。そこで肥満の基準値を BMI25以上とするとその割合は男性27.5%,女性18.9%となり、欧米と同程度になることから日本人では25が基準値として提唱されています。また国民栄養調査によると1980年以降、男性ではすべての年齢層においてBMIは増加しています。女性では高齢者で増加していますが、逆に中年期より前では痩せが増加しています。われわれの関与する福岡県久山町における疫学調査では、1961年以降、BMI 25以上の肥満者の割合は40歳以降で男女とも増加しています。BMI 25以上ではさまざまな疾患のリスクが上昇することや、糖尿病やその予備軍が急増していることから、やはり日本でも肥満は健康上の重要な問題となりつつあるといわれています。

●肥満が危険因子となる生活習慣病
 肥満になると糖尿病,高血圧,高脂血症,動脈硬化,心疾患などになりやすくなります。これらの疾患のうち2型糖尿病へ及ぼす影響は特に強いのです。日本人の場合、前述のようにBMI 30を超える肥満は2%で、20%を超える米国にくらべ非常に少ないのですが、糖尿病人口は米国白人が7~15%であるのに対し日本人は4~12%と大きな差はありません。つまり日本人は軽度の肥満でも病気になりやすいようです。
肥満と心疾患に関する米国の大規模な調査です。
 肥満と心疾患に関する米国の大規模な調査で成人の死亡率が最も低かったのはBMI 19〜21.9でした。面白いことに肥満の影響は若いほど強く 30~44歳の男性ではBMIが1増加する毎に虚血性心疾患(冠動脈疾患)による死亡率が10%増加していました。虚血性心疾患や脳血管障害の多くは動脈硬化によりますが、動脈硬化は肥満を始めとするいくつかの危険因子が関与しています。これらの危険因子(たとえば肥満,高血圧、高脂血症など)をひとつの集合体としてとらえるものとして、シンドロームX,インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、内臓脂肪症候群、などが提唱されてきましたが、これらは近年,糖代謝異常,脂質代謝異常,高血圧,中心性肥満(内臓脂肪の蓄積)などの組み合わせによって定義されるメタボリックシンドローム(metabolicsyndrome)として統一されつうあります。
 また2003年に米国で報告された大規模調査で肥満は癌による死亡率も高めていることが明らかなりました。16年間の追跡調査で90万人中 6万人弱が癌で死亡していたのですが、肥満はあらゆる部位の癌による死亡と有意に関連していました。

●肥満と歯周病
 肥満は2型糖尿病の最大の危険因子ですが、糖尿病が歯周病を増悪させることは古くから知られていますので、肥満→糖尿病→歯周病という図式ができ上がります。では肥満が歯周病に直接影響するのでしょうか。1977年に動物実験で高血圧を伴う肥満ラットでは歯周病が悪化しやすいことが報告されていますが、20年以上たって初めて、ヒトにおいても肥満と歯周病が関連していることが福岡市健康づくりセンターにおける健診結果から明らかになりました。
 この報告では肥満の指標としてはBMIと体脂肪率が、歯周病の指標としてはWHOのCPI
(community periodontal index)が用いられました。その結果、特に疾患のない20~59歳の成人において BMIが高いほど歯周病の有病率が増加していました。さらに、歯周病の危険因子と考えられている年齢,性別,口腔清掃習慣,喫煙の影響を調整した分析でも、BMIが20未満の痩せている人を基準とした場合、BMIが高くなると何倍も歯周病の危険度が上がっていました。同様の分析を体脂肪率について行ったところ、体脂肪率が5%上がるごとに歯周病の危険度は30%増加していました。この報告には明らかな糖尿病の方などは含まれていないことから、特に疾患はなくても肥満に関連した全身の状態、たとえば前述のメタボリックシンドロームなどの状態によって歯周病が悪化している可能性が指摘されました。
 さらに種々の運動能力テストの結果と歯周病との関連を調べたところ、日常の運動量保存則と強い関連を示す最大酸素摂取量が歯周病と関連しており、運動面からも肥満と歯周病との関連が支持されました。その後の調査で同センターはウエスト/ヒップ比と歯周病との関連を報告しています。それによると643人を対象に詳細な分析を行ったところ、BMIL,体脂防率,ウエスト/ヒップ比いずれについても、その値が高いほど深い歯周ポケットをもつ者の割合が多いことがわかりました。さらにウエスト/ヒップ比を用いて、対象者を上半身肥満とそうでない
グループに分けた分析を行ったところ、ウエスト/ヒップの高い上半身肥満のグループでのみ
BMIが高いほど歯周病のリスクが有意に上昇していました。体脂肪率でも同様の結果が得られたことから、歯周病が上半身肥満と関連していることが示され、内臓脂肪の蓄積との関連が予測されています。
 その後,肥満と歯周病との関連を示す報告が徐々に増えてきました。米国の国民健康栄養調査(NHANES II)の結果から、アタッチメントロスと肥満の各指標が有意に関連していることが示されました。同じくNHANES Ⅲの結果から、特に18〜34歳の若いグループにおいて、BMIやウエスト値が歯周病と有意に関連していることが明らかとなりました。別の調査では、40歳未満の肥満者では歯槽骨吸収が大きいことが報告されています。逆に50歳以上を対象として歯周病の危険因子を調べたタイの報告では、BMIもウエスト値も歯周病と関連していませんでした。これらの報告は、肥満が心疾患や死亡率に及ぼす影響は若いほど強いという前述の報告とも一致していて、たいへん興味深いと思います。日本からは、喫煙が歯周病の最大の危険因子で次に大きいのが肥満であると報告されています。私たちの最近の結果ですが、糖尿病の診断基準となる糖負荷試験を行い、歯周病の危険因子として肥満と糖尿病を女性について同時に分析した結果、肥満と歯周病は有意に関連していましたが、糖尿病と歯周病との関係は有意ではありませんでした。つまり,糖尿病が歯周病に及ぼす影響とは別のメカニズムで、肥満が歯周病に影響している可能性があるのです.


歯周病と肥満が合わさっているケース:お顔や全身状態のお写真は掲載できませんが、肥満体型で歯周病もかなり全体が進行している患者さんです。レントゲンで、歯を支える顎の骨が全体なくなっているのがわかります。

●かぜ肥満は歯周病と関連しているのか?
 現時点で、肥満と歯周病を関連づけるメカニズムについての報告はほとんどありませんが、多くの医学論文からさまざまなことが予測されます。低栄養が免疫能に及ぼす影響については古くから調べられてきましたが、肥満については、1980年代にさまざまな疾患の危険因子として注目されるようになってから、免疫との関連を示す報告が増えてきました。肥満者では単球の殺菌能の低下、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性や免疫グロブリンの低下、Bリンパ球やTリンパ球の機能低下、またB型肝炎ワクチンによる抗体ができにくいことなど、さまざまな報告がなされてきましたが、統一した見解は見当たりませんでした。
 その後1994年に、脂肪細胞から分泌されるレプチンが発見され、食欲の抑制やエネルギー消費を増大させることが明らかとなり、「ダイエット新薬」の開発が期待され脚光を浴びました。それをきっかけに脂肪細胞の研究が盛んになり、脂肪細胞からは種々の生理活性物質が分泌され,全身へさまざまな影響を及ぼしていることがわかってきました。
 このように、脂肪細胞はレプチン以外にもTNE-a,アディポネクチン、PAI-1 (plasminogenactivator inhibitor-1),性ホルモン、アディプシンなど、さまざまな生理活性物質を産生しますので、肥満になればなるほど巨大な内分泌器官となり影響も大きいのです。そして脂肪細胞はエネルギー貯蔵以外に、善悪いずれにおいても重要な役割を持っていると考えられるようになってきました。
 そこで、これらの物質と歯周病との関連について述べてみます。歯周炎によって歯周局所には TNF-a が発現し、歯槽骨吸収を引き起こすことがわかっています。TNF-aは肥満者の脂肪組織からも多量に分泌されますので、歯周局所における歯槽骨吸収を促進する可能性があります。実際、若年の肥満者では、歯肉溝浸出液中のTNF-aの濃度がBMIと相関していることが報告されています 。肥満のマウスやラットでは、肝臓におけるLPS(菌体内毒素)の感受性が強くなることが報生されています。つまり、肥満によって肝臓にあるマイクロファージ(クッパー細胞)の機能が低下したり、肝細胞の素)の感受性が強くなることが報告されています
191.つまり、肥満によって肝臓にあるマクロファージ(クッパー細胞)の機能が低下したり、肝細胞のTNE-aに対する感受性が増強するのではないかと推測されています。歯周組織においても肥満がマクロファージの機能低下やTNE-a 感受性の上昇を引き起こすとすれば、歯周病が悪化しやすいと考えられます.
 糖尿病は血管や神経組織に障害を及ぼします。糖尿病の前段階である肥満や高脂血症などの状態で血管に何らかの悪影響があるとすれば、歯周局所にも影響を及ぼしている可能性が考えられます。血液凝固を促進し虚血性心疾患を起こしやすくする PAI-1は、脂肪組織から分泌されますので、な血中にPAI-1が増加すると歯周組織の微細な血管にも血液循環障害が生じる可能性があります。実際、歯肉の炎症において、プラスミノーゲンの活性化が何らかの役割をもつことが報告されています。肥満者では血管内膜でマクロファージが泡沫化しアテローム動脈硬化症となりやすいのですが、歯周局所においても同様にマクロファージや単球が影響されているかもしれません。また,脂肪組織は補体活性因子を分泌しますので、これも歯周炎と関連しているかもしれません。このように脂肪組織からはさまざまな物質が分泌され複雑なネットワークを形成していますので、歯周病との関連があきらかになるにはしばらくかかるでしょう。

◼️おわりに
 WHOによると2005年現在,世界人口60億人のうち10億人がBMI25を超えており、このまま増加傾向が続くと2015年には15億人に達すると推計されています。一方、地球上には肥満者とほぼ同じ数の人が飢餓にさらされています。この不均衡は私たちの社会が解決していかなければなりません。食べる量を少し減らしてその分を最貧国へ回せればいいのですが、なかなかそう簡単にはいきません。喫煙については医療費や税金など経済的な視点から、すでに多方面にわたる検討が進んでいます。健康づくりにつながる肥満対策は医療費の削減にもつながるでしょう.そう考えると、そろそろ社会経済的な取り組みをしていかなければならない時期ではないでしょうか.歯周病と肥満との関連はまだまだ不明な点が多いのですが、食に直接関連した歯科医院での助言や指導が、患者さんの肥満解消のモチベーションにつながればと思います。

お口の健康に乳酸菌が効く?!

2024年5月14日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、手軽にお口の健康に役立つケア用品の案内です。

むし歯予防に。歯周病予防に。
お口に効く!プロバイオテイクス

 「プロバイオティクス」って近ごろ話題ですね。
善玉菌を摂ると、それが腸のなかで働いて体調管理に役立つことが知られているのでヨーグルトやぬか漬けなどの発酵食品を毎日食べているかたも多いかと思います。
この「プロバイオティクス」、お口にも効くってご存知でしたか?
じつは、ある種の乳酸菌を摂るとそれがむし歯や歯周病の予防に役立つことがわかってきているんです。

◼️プロバイオティクスってなんのこと?
●役立つ細菌のことです!
 「プロバイオティクス」とは、腸などの「細菌のバランスを改善」して、私たちのからだによい効果をもたらす生きた細菌のことで、ヨーグルトやキムチ、ぬか漬け、納豆などの発酵食品に含まれます。こうした食品を摂ることによって、私たちは「プロバイオティクス」という言葉が生まれるはるか昔から、プロバイオティクスの恩恵を受けてきました。
●重要なのはバランスの改善。
「細菌のバランスの改善」とはなんのことでしょう?これは、善玉菌(有益菌)と悪玉菌(有害菌)の勢力のバランスのことなのです。たとえば私たちの腸のなかには、約100兆個の細菌がいるといわれています。そのなかには善玉菌、悪玉菌もいますが、じつはそのどちらにも属していない日和見菌がもっとも多数派です。
 日和見菌は、おだやかで目立たない性質ですが、周囲に影響されやすく、腸のなかで悪玉菌が増えると、悪玉菌に加勢し悪さをはじめてしまうのです。善玉菌を増やし細菌のバランスが改善すると、日和見菌はおとなしくなり悪玉菌の活動を応援しなくなります。すると便秘や下痢の改善はもちろん、腸からの免疫物質の分泌がスムーズになり、免疫力が回復して感染やアレルギー、アトピーを起こしにくくなるというわけです。


私たちが取り扱っている、「プロデンティス」は、手軽にプロバイオティクスが取れるおすすめケア用品です。このタイプはミントが強めの風味に仕上がっています。歯科では、このようなプロバイオティクスを歯周病治療の内科的アプローチとして用いています。

●むし歯菌や歯周病の活動を抑えたい!
 プロバイオティクスの効果として、「腸の細菌叢(細菌の群れ)のバランスの改善」はよく知られていますが、それではお口についてはどうなのでしょう?じつはこうした着眼点で進められてきた研究によって、腸と同じくお口のなかでも、プロバイオティクスの効果が見込めることが明らかになってきています。お口のなかには約1000億個の細菌がすみついており、お口に問題を起こすむし歯菌や歯周病菌は、ふだんはおとなしい日和見菌ですので、プロバイオティクスによって細菌のバランスを改善できれば、その活動を抑えこめるのです。
 ※日和見菌とは善玉菌、悪玉菌のどちらの影響も受けやすい細菌のこと。むし歯菌や歯周病菌も日和見菌の仲間です。

⚫️人生の伴奏者、最近を味方に!
◼️プロバイオティクスとは、抗生物質で細菌をやっつけるのではなく細菌とおだやかに共生しながら細菌叢(細菌の群れ)の性質をコントロールして悪玉菌を抑え病気を減らそうという方法です。
速効性はありませんが、副作用がないのでどなたにも安心して続けていただけます。

▪️「感染症を防ぐ」「悪い細菌の勢いを抑える」と聞くと、みなさんはどんな方法を思い浮かべますか?おそらく抗生物質を飲んで細菌をやっつける方法を思い浮かべるのではないでしょうか。感染症に対抗するとき、現在の医療でもっとも一般的に用いられているのが、この抗生物質を使った治療です。
 抗生物質は、いまや私たちにとってなくてはならない重要な薬です。医療の歴史は、この薬の誕生によって大きく前進し、支えられてきたと言っても過言ではありません。
 しかし一方で、抗生物質の使い過ぎは、私
たちにとって非常にリスキーだということもわかってきました。細菌をやっつけようと強い薬を使ったがために、細菌が生き残りをかけて変異し、抗生物質の効かない非常に感染力の強い細菌になってしまうことがあるからです。このような耐性菌の問題は、院内感染などのニュースでもときどき取り上げられるので、ご存知のかたも多いことでしょう。
 じつは抗生物質で細菌をやっつけて病気を治す方法は、「プロバイオティクス」とは対極にあり、「アンチバイオティクス」と呼ばれています。
それでは、プロバイオティクスとはどういうことを目指し、なにをする方法なのでしょうか?
 プロバイオティクスとは、もともとは、からだによい作用をする細菌のことを言います。
最近では、からだによい細菌を使って、人が細菌とおだやかに共生し、そのことによって「からだによい効果を生もう」という方法そのものを指す言葉としても使われています。
 「細菌と共生するってどういうことだろう?」と思うかもしれませんね。私たちのからだのなかには、たくさんの細菌(微生物)がすんでいます。腸には約100兆個、口のなかには約1000億個がいますが、こうした細菌たちは常在菌といって、その名のとおり、つねに私たちとともにある細菌です。こうした細菌たちは常在菌といって、その名のとおり、つねに私たちとともにある細菌です。こえした細菌たちを敵に回すのではなく、味方につけてからだのなかで育て、外から入ってくる有害な細菌やウイルスから守ったり、からだのなかで悪玉菌が増殖するのを抑えよう、というわけです。
 この方法には副作用がなく、赤ちゃんから高齢者まで安心して使えるというのが大きなメリットです。ただし、善玉菌を摂ればすぐに効くというものではなく、毎日摂り続ける必要があり、効果を感じはじめるまでに3、4日~1ヵ月ほど、体内でしっかり育菌できて安定的に効果が発揮されるまでに1~3カ月ほどかかります。
 それでは、プロバイオティクスはなぜ効くのか、そしてお口の健康にどんな効果が期待できるのかについて、順を追ってご説明して行きましょう。

⚫️細菌のバランス、改善するとなぜよい?
 「細菌のバランスを改善するといい」とよく聞くのですが、そもそも「細菌のバランス」ってなんのことでしょう?
 それは、悪玉菌と善玉菌のバランスのことです。ストレスや服薬、食生活の乱れなどが加わると悪玉菌が元気になり、善玉菌とのバランスが崩れ免疫機能の作用が弱まります。
すると日和見菌(むし歯菌や歯周病菌もこの仲間)もドッと悪玉菌の味方について暴れはじめるので、善玉菌のために、助っ人の善玉菌(プロバイオティクス)を送りこみ勢力のバランスを保とう、というわけです。
▪️「プロバイオティクス」の説として、よく「プロバイオティクスで細菌のバランスを改善しましょう」ということが言われます。たしかに、「細菌のバランス」と聞いても、プロバイオティクスの働きをイメージするのは難しいかもしれません。もう少し詳しくご説明しましょう。
腸やお口のなかにいる細菌は、大きく3つに分けられます。善玉菌(有益菌)と悪玉菌(有害菌)、そして日和見菌です。
 善玉菌はお腹の調子を整えてくれたり、からだの免疫力を強くしてくれたりする、役に立つ細菌です。さまざまな乳酸菌、そしてビフィズス菌もよく知られていますね。
 悪玉菌としては、ウェルシュ菌(下痢の原因)、黄色ブドウ球菌(下痢やニキビの原因)などがよく知られていて、これらは健康な人のからだのなかにも存在している細菌です。
 日和見菌とは、その名のとおり、善玉菌と悪玉菌が均衡を保っているあいだは静かなのですが、悪玉菌が優勢になると、それに乗じて暴れる困った性質の細菌のことです。大腸菌やむし歯菌、歯周病菌がこれに属します。 
 善玉菌と悪玉菌、日和見菌の比率は、(健康な人の場合)ほぼ一定に保たれています。善玉菌と悪玉菌は、それぞれが勢力を拡大しようとつねに競争しており、その結果、一定の均衡が保たれているのです。
 しかし、ストレスや服薬、食生活の乱れ(大きくは生活習慣の乱れ)などが加わると、悪玉菌が活発に活動を開始し増殖をはじめます。すると、日和見菌も影響を受けて元気になります。こうなると善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、からだに悪さをする勢力が力を増し、下痢や風邪、むし歯や歯周病、ニキビなど、さまじまな感染症になりやすくなってしまうのです。
 そこで役に立つのがプロバイオティクスです。善玉菌の味方をする助っ人の善玉菌を送り込んで補ってやると、からだのなかの善玉菌と悪玉菌のバランスを取り戻すことができます。その結果、ふたたび善玉菌が力を盛り返し、悪玉菌の勢力拡大を防いで、日和見菌の悪玉化を防ぐことができるというわけです。
 また、ふだんからプロバイオティクスを摂り続けることによって、ストレスが加わったり、食生活が乱れた際にも感染症を起こさないよう予防をすることができます。健康のめに「細菌のバランスを改善しましょう」というのは、こうした理由にるのです。

まとめ

歯周病の状態があまり良くない場合でも、外科的、内科的なアプローチを組み合わせて、可能な限り歯が長持ちするように歯周病治療を行なっています。
当院の歯周病治療のページです。

歯周病、口臭など気になる方は、ご相談ください。
WEB予約はこちらからどうぞ。

臭いの原因、舌苔&フッ素塗布について

2024年4月17日

舌苔、溜まっていませんか?

においの大きな原因「舌苔」 歯は毎日しっかりみがいているという人でも、意外に忘れていることが多いのが舌のお掃除。舌の汚れである「舌苔」は、口臭の原因でも最たるもののひとつです。 舌苔は、読んで字のごとく舌の表面を苔のように覆っている汚れです。舌の表面は一見平坦のようですが、じつは非常に微細なひだが無数に存在しています。これらの突起は「舌乳頭」(乳頭は「突起」の意)と呼ばれ、毛足の長いじゅうたんのような構造になっています。 この”肉のじゅうたん”に、新陳代謝ではがれたお口の粘膜の細胞(つまり老廃物ですね)や細菌が付着します。そしてそれがベットリと厚い層になったものが舌苔なのです。
糸状乳頭の白い点と誤解されがち 
舌苔がない状態だと、舌の表面には無数の小さな白い点と、それより大きな赤い点がポツポツと見えます。それぞれ舌乳頭の一種で、白い点は「糸状乳頭」、赤い点は「茸状乳頭」といいます。糸状乳頭は表層が角質化しているので白く見えます。 ときどき、糸状乳頭の白い点を舌苔と勘違いして、「ちゃんと舌の汚れを落とさなきゃ!」と歯ブラシでゴシゴシとみがいてしまうかたもいらっしゃいますが、それはよくありません。舌を傷つけて、出血による口臭が生じたり、味覚に影響してしまうおそれがあります。白い点が見えるのなら、舌苔はできていないと考えていいでしょう。
舌ブラシと洗浄液をかつようしよう!

舌ブラシで舌苔を落とす 舌苔のお掃除には舌ブラシがおすすめです。舌を傷つけないよう、やわらかめの毛のブラシで、力を入れずに表面をなぞるように動かします。ブラシを動かす方向は奥から手前です。手前から奥に動かすと、汚れを舌の奥に追いやってしまいます。 舌だけにブラシを当てているつもりでも、唾液を介して舌の洗れがお口のなかに広がりますので、できれば1回ブラシを走らせるごとにブラシとお口をすすぎましょう。お口のなかから汚れ(=におい物質)を追い出すことが大切です。 舌はデリケートですので、みがきすぎにはご注意を。うっすら舌苔がついている程度なら、綿などの不織布でぬぐうだけでもよいですよ。
洗浄液のうがいは長めに
 殺菌作用のある洗口液は、口臭予防に効果的です。細菌のかたまりであるプラークのかたまりを壊してからのほうが殺菌効果が上がるため、歯みがきをしてから使用するのがべストです。 その際は、殺菌成分がよく細菌に浸透するよう、製品が推奨している時間分、しっかりお口に含むようにしてください。テレビのCMなどで見られるように、ほんの数秒グチュグチュうがいするだけでは、効果は得られません。  ちなみに洗口液には、殺菌作用以外にも、におい物質を凝集して拡散を抑える銅イオンや亜鉛イオンが入ったものもあります。
歯科受診が口臭対策の早道です。
口臭が気になりつつも歯医者さんには行かない人が多数 自分の口臭が気になると答えた人は90.6%いたのに対して、「実際に歯科で口臭に関する診察・指導を受ける」という人はわずか5.1%でした。 歯周病などのお口の病気は、治療をしなくては解消されません。そうした病的口臭の原因が取り除かれないかぎり、においの元は残ったまま。ブレスケア製品でにおいをごまかそうとしても、焼け石に水です。 とりわけ歯周病は、初期のうちは自覚症状がなく進行するもの。最近歯ぐきがうずく、歯みがきすると歯ぐきから血が出るというかたは要注意。お口のなかで歯周病菌が暴れているのかもしれませんよ。 また、みがき残したプラークもにおいの元ですので気をつけたいところ。「えー、私、歯はちゃんとみがいてますけど?」と思うかもしれませんが、自分流の歯みがきでは、意外にみがけていない部分が多いものです。 歯科で歯のクリーニングを受けるのにくわえて、みがき残しのある場所をチェックしてもらい、さらにあなたのお口に合った歯ブラシとデンタルフロスの使いかたを教えてもらいましょう。そして舌苔を落とすのも忘れずに。 歯の健康を取り戻す、または維持してもらうついでに口臭予防もできるわけですから、定期的に歯医者さんに行きましょう!  口臭 Q&A ブレスケア製品は口臭に効果がありますか?・単にミント味のブレスケア製品を摂取したとしても、においをマスクするだけですので、病的口臭が原因の場合は根本的な解決にはなりません。ただ、ガムは噛んでいるうちに唾液が出て、お口のなかの老廃物や舌苔も洗い流されますので、そういう意味ではいいかもしれません。むし歯にならないように、砂糖不使用のものをお選びくださいね。 ストレスが口臭に影響するってホントですか?・口臭には、心理的な要因も影響します。ホラー映画を見たときに、のどの渇きを覚えた経験はありませんか。人は緊張状態にあると唾液の分泌が減り、唾液の性質もドロッとしたものになります。ですから、人が近づいてきたときに「におっていないかな?」と緊張することで、唾液の量と性質が変わって口臭が強まることも考えられます。

フッ素歯面塗布って知ってますか?

歯の表面に高濃度のフッ素を塗るむし歯予防の方法です。ところで、フッ素歯面塗布は何歳ぐらいから受けていいと思いますか?それは一歳半です。●フッ素歯面て塗布って受けたことありますか? 「フッ素歯面塗布」ってむし歯の予防法、知っていますか?歯の表面に直接ジェルやフォーム(泡)状のフッ素を塗って、歯を丈夫にする方法です。歯医者さんで受けたことのある方、きっと多いのでないでしょうか?歯みがき剤やフッ素洗口液を使ったむし歯予防といちばん違うのは、歯医者さんでないと受けられないってことです。それは、フッ素歯面塗布に使うフッ素の濃度が高いからです。 日本の歯みがき剤に入っているフツ素は、いちばん濃くても1500ppm。でもフッ素歯面塗布で使うフッ素の場合、なんと9000ppm(濃い!)。プロ向けの医薬品だから、患者さんがおうちに持って帰って使うことはできないんです。 フッ素塗布剤を歯に塗って3~4分間そっとしておくと、歯の表面に硬いアパタイトができて丈夫になるんですけど、じつはこの方法は、歯医者さんで定期的に受けないと、むし歯予防効果が下がります。なぜかというと、ご飯を食べたり歯みがきしたりしているうちに、少しずつ取れてきてしまうからです。1回塗布したからといって、油断しないで下さいね! 少なくとも年に2回、もしむし歯になりやすいのなら年に3〜4回受けて頂くことが理想です。というのも、年2回塗布のむし歯予防効果は20%程度ありますが、やったりやらなかったりだと、あまり効果が上がらないことがわかっています。
生えたての歯や象牙質むき出しの歯に。
  フッ素歯面塗布はどんな歯にいちばん効果的か知ってますか?それは「生えたての歯」なんです、生えたての歯は軟らかくてむし歯に弱い。でも、そのぶんフッ素を取り込みやすく、表面が硬くなりやすのです。 乳歯を守るなら奥歯が生えはじめる1歳半くらいから。永久歯を守るなら第2大臼歯が生え終わるまで。つまり15歳くらいまで定期的に受けるのがベストです。 あと、歯の根本の象牙質がむき出している人の「大人むし歯」(根面う蝕)の予防にもピッタリなんです。

銀歯が入っている歯の根元が大きく露出している写真。根面う蝕とは、このような根が露出した部分にできる虫歯です。歯の頭の部分、エナメル質の組織と異なり、虫歯に対し弱い特徴があります。

エナメル質より軟らかい象牙質の表面を硬くしてくれるんです。 フッ素歯面塗布っていうと、「費用がかかるからなあ」って思ってる人もいるかもしれません」ね。たしかに、フッ素歯面塗布は歯の「治療」ではないから、通常は保険がききません。 しかし、むし歯の多いお子さんの場合や、初期むし歯の治療などには保険がききますし、塗布の無料サービスを行っている自治体もありますからそういうのも利用しながらぜひ続けてください。

病的口臭と対処法について

2024年4月16日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

前回に引き続き、口臭についてのお話です。
最初に、口臭には種類がある!というトピックです。

生理的口臭
 誰にでもある「生理的口臭」 口臭というのは、じつは誰にでもある程度は存在するものです。朝起きてあくびとともに息を吐き出したとき、「あ、口がにおうな」と思ったこと、ありますよね。でもその後、朝食を取ったり歯みがきしたりするうちに気にならなくなるはずです。これは「鼻が慣れたから」ではなく、お口のなかのにおい物質が食事や歯みがきで減っているからです。 1日のなかで自然に増減するこうした口臭は、専門用語で「生理的口臭」と呼ばれます。寝起きなどににおいが強くなることはありますが、一時的なものです(同じくにおいの強い食べ物による口臭も、一時的なものです)。
 寝ている間は、起きて活動している時に比べて唾液の分泌量が少なくなりますから、口腔内の菌も増えやすいですし、臭いがキツくなってしまいます。病的なものではありません。気になる方には、寝る前の口腔内の菌を減らす、うがい薬を案内しています。

こちらのエピオスは、純粋な塩と精製水を専用の機器で電気分解し作成します。私たちのクリニックには、エピオス精製のこちらの機器があります。
https://epios7.co.jp/category7/entry2.html
エピオスは身体にやさしい成分ですが、殺菌能力が高いうがい薬として、ケアによく用いています。タンパク汚れを分解し、歯の表面から浮かせる効果があり、こちらを口に含んだ状態でブラッシングを行うと、短時間で高い清掃効果を得られます。寝る前にエピオスを使ってうがいをしておくと、起床時のお口の不快感やねばつきが軽減できます。

また、口を開けて寝てしまっている方、口呼吸の方はかなり口腔内が乾燥しやすいため、口臭も強くなります。唾液が乾燥してしまうので、日中でも無意識のうちに口呼吸している場合、前歯あたりの歯肉が炎症しやすかったり、虫歯リスクが高まってしまいます。原因の口呼吸自体を改善することが重要です。このような場合、お家ですぐできる
あいうべ体操
をご案内しています。当院の小児矯正治療の一環でもよくやっています。自然と唇と舌の筋肉のバランスが整い、口呼吸から鼻呼吸へ移行することができます。口臭改善はもちろん、アレルゲンを体内に取り込みにくくなるため、アレルギーなどの問題について体質改善が期待できます。


九州の今井先生が発案されたあいうべ体操。こちらの本にはあいうべ体操の効果や良い効果、実例が多く記載されています!

病的口臭 
 一方、強いにおいを持続的に発する口臭は「病的口臭」と呼ばれます。いわゆる不快な口臭と客観的に認識されやすいもので、においの原因がなくならないかぎり存在し続けます。 原因には、歯周病などのお口の病気と、お口とつながっている耳鼻咽頭の病気、内臓などのからだの病気が考えられます。 よく「からだの病気のにおいが口からにおう」という話を聞きますが、からだの病気が発するにおい物質が血液に乗って肺に至り呼気として吐き出されるというのは、そうとう病気が進行した状態です。また、「食べ物のにおいが胃から上がってくる」というのも、食道と胃の境界には括約筋があるため、ふつうはにおいの通り道は閉じられています。ですから、強い口臭の原因としてまず疑われるのは、お口のなかなのです。
一時的なにおい からだが本来もつ生理的なもの 健康な人にも存在するにおい。1日のうちで増減します。 においの強い食べ物などによるもの。
持続的なにおい 歯周病などお口の病気によるもので 歯周病やむし歯になった歯、舌の汚れやみがき残したプラーク(歯垢) 鼻炎など自費咽頭の病気によるもので副鼻腔炎や扁桃腺炎、中咽頭の癌などが原因。お口とつながっているため、においが口から出てきます。 胃腸・肝臓など、からだの病気によるもので糖尿病や、肝臓、腎臓、胃の病気などが原因。におい物質が血液をめぐって肺から息へ。
においの原因は お口の細菌
 たんぱく質を分解してにおい物質を出す 細菌のうち、とくに歯周病菌などの酸素を嫌う菌(嫌気性菌 けんきせいきん)が、腐敗臭をともなうにおい物質を生み出します。彼らが唾液や血液、はがれ落ちにお口の粘膜、食べかすに存在するタンパク質(正権には含硫アミノ酸)を分解したときに、揮発性の硫黄化合物——硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどを出すのです。 女性では、月経や妊娠などのホルモンバランスの変化によりお口のなかにいる歯周病菌が活発化し、口臭が増加するという報告もあります。

 唾液の減少も影響する 
 細菌の活動には、唾液も影響します。朝起きたときがいちばん強く、それから食事や歯みがきをするたびに下がって、時間がたつとまた上がります。唾液には、細菌を洗い流したり、細菌の繁殖を抑えるはたらきがあります。起床時にいちばんにおいが強いのは、就寝中は唾液の分泌が減るので、寝ているあいだにお口のなかで細菌が繁殖するためです。   このように、唾液の分泌量は口臭に影響しますので、ドライマウスなどで唾液が減少すると、口臭も強まる傾向があります。
お口のなかの においの元。 病的な口臭の元となるお口のトラブルをまとめました。気になるところがおりましたら受診してご相談を!
歯周病になっている歯周ポケット・歯周病が進行して、歯と歯ぐきの境目が深くなってできる歯周ポケット。歯周病になっているとき、この中にはプラークや歯石のほかに、歯ぐきの死んだ細胞(老廃物)や血液、体液、(滲出液)、そして細菌の代謝物(排泄物)が溜まり強いにおいを発します。・歯周ポケットのなかのクリーニングは歯科でしかできません。歯周病になっているなら早めに治療を。 溜まったプラーク・溜まったプラークは、むし歯や歯周病の原因になるだけでなく、においの元にもなります。みがき残しが多いのは、上あごは奥歯の頬側、下あごは奥歯の舌側。いずれも頬や舌が邪魔をして歯ブラシが届きにくい場所です。溜まったプラークは歯石となり、さらにプラークが付着する足場となります。・入れ歯のかたは、入れ歯自体のお掃除も欠かせません。・プラークの除去には、毎日のきちんとした歯みがきのほか、定期的に歯科でクリーニングを。 象牙質に及んだ多数のむし歯・歯の表面のエナメル質はほぼ100%無機質ですが、内部の象牙質は3割ほどがタンパク質(コラーゲン)でできています。むし歯が進行するとタンパク質が細菌により分解され、においを出します。ですから象牙質に達するむし歯がそのままだと、口臭の原因に。むし歯が深く多いほど、においは強くなります。・むし歯は放置せずに治療しましよう。 歯の根の先端の病変・まれなケースですが、歯の根の先端部に病変(根尖性歯周炎)ができ、膿のにおいが歯ぐきのなかを伝ってお口に放出されることもあります。 被せ物やブリッジと歯ぐきの境目・被せ物と歯ぐきの境い目や、ブリッジのポンティック(ダミーの歯)と歯ぐきが接する面もお掃除が行き届かないことが多く、においの元になりやすいです。・デンタルフロスやタフトブラシで清掃するようにしましょう。*注意* 審美性重視のブリッジを入れているかたは、治療内容に合わせた適切なデンタルフロスの使いかたについて、必ず歯科医院で指導を受けましょう。

口臭について

2024年3月29日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

患者さんからご相談も多い、口臭についてのお話です。

口臭の原因は、胃腸の不調であることも可能性はありますが、
 じつは、口臭の原因の約9割はお口のなかにあり、とくに歯周病は、強烈な口臭の元なんです。
生ものが腐敗したような、強烈な歯周病の口臭。
爽やかなミントの香りでごまかしても、それはほんの一時しのぎ。
くさい臭いを、歯科治療とセルフケアでもとから断ちましょう!

◼️口臭の原因はお口の中
 口臭がやっかいなのは、なかなか自分では気づけないことです。かといって周りの人が口臭について指摘はしにくいわけで、結果的に無頓着に過ごしているかたも少なくありません。実際、国内外の口臭調査では、だいたい3人に一人くらいに口臭があることがわかっています。ただし、心配し過ぎることはありません。ほとんどの口臭は、歯科の治療とセルフケアで治るからです。口臭についての誤解を解き、お口の健康と爽やかな息を取り戻しましょう!

◼️本人には気づきにくい あのニオイはどこから?!
 口臭は、自分では気づかないものですよね。自分のニオイは自分がつねに嗅いでいるので、慣れてしまうんです。始終気になっていてはつらくて仕方ないので、慣れることにより自分を守っているのです。
 じつは口臭は、多かれ少なかれ誰にでもあります。自分で気づくことは少ないですが、健康な人にも軽い口臭があり、これを私たちは「生理的口臭」と呼んでいます。
 たとえば、朝起きたときは誰でも軽く口が臭いますが、これは寝ているあいだはお口のなかの唾液が減って細菌が増えやすいからで、こういう口臭は朝食を食べたりすればヒトの鼻では感じないレベルに下がるので、ほとんど問題になりません。
 また、ニンニクやお酒を飲食すると臭いますよね。飲食物の成分が吸収され肺に届いて呼気から臭うのですが、これは一時的なものですし、おいしく飲食したのなら、少々臭うのは仕方ないことでしょう。
 こうした生理的・一時的な口臭がある一方、問題となるのは的な口臭です。健康な人の口臭にくらべ、ずっと攻撃的で不快感の強い臭いがします。それでは、この病的な口臭は、いったいどこからくるのでしょう?
「胃腸が悪いと口臭が強くなる」とよく言われますが、これは、臭いが胃から口に上がってくると思われているからかもしれません。実際は、胃の入口は強い筋肉でギュッと閉まっているので、(ゲップは別として)臭いが上がってくることはまずありません。からだの病気で口臭がするなら、それは臭いの物質が体内を巡り肺から呼気として臭っているわけで、ふつうに考えて、これはよほど重篤な状態です。からだの治療が優先で、口臭どころではないでしょう。
 病的な口臭で圧倒的に多いのは、じつは歯周病が原因の口臭なんです。つまりほとんどの口臭は、歯科治療とセルフケアで治せるということです。「しばらく歯石を取っていない」「近ごろ歯ぐきが浮く感じがする」なんてことはありませんか?ぜひ歯科医院で口臭を「治療」しましょう。
 

歯周病が進行した方のパノラマX線写真。歯を支える骨が、全体的に下がっています。口臭も強いです。

◼️攻撃的な臭いの正体は細菌の出す「ガス」!
 臭い物質といってもさまざまありますが、口臭に特徴的にあらわれる臭い物質は「硫黄化合物」と呼ばれる種類の揮発性ガスです。なかでも代表格は、硫化水素、メチルメルカプタン、そしてジメチルサルファイドでそれぞれに特有の強い臭いがあります。
 硫化水素は歯のプラーク(歯垢)や、舌に白くつく舌苔があるほど検出されやすい臭い物質です。また、歯周病の患者さんに目立って多いのがメチルメルカプタン。ジメチルサルフアイドは、からだの病気や薬の影響で出やすい傾向があります。
これらのガスには特徴的で強烈な悪臭があります。たとえるなら、硫化水素は卵が腐ったような臭い、メチルメルカプタンは魚や玉ねぎが腐ったような臭い、ジメチルサルファイドは生ごみのような臭いです。どれもたいへんな悪臭で、病的な口臭はこれが混合したものなので、周囲のかたが不快に思われるのも無理はないのです。
 ちなみに硫化水素は、濃度が高ければいのちに関わるほどの有毒ガスなんですよ。驚きですよね。
 それではなぜこんな悪臭がお口でつくられるのでしょう。じつはこれらのガスをつくるのはお口の細菌で、なかでも歯周菌は、タンパク質を分解する酵素をもっており、その酵素でさかんにタンパク質を分解して、揮発性ガスを発生させるというわけです。歯周病が進むと、粘膜や老廃物が大好きな歯周病菌は、歯と歯ぐきのあいだの溝だけでなく、老廃物が積もる舌にも住みつき、舌苔から強い臭いを発するようになります。
 臭いのもとを断つには、まずは歯周病の治療からです。


歯肉のはれ、歯石とバイオフィルムが目立つ口腔内。

◼️もとから断つには まず歯周病を治す。
 健康なお口のかたにも軽い口臭があります。それは、どんな人のお口のなかにも細菌がいるからなんです。そうした細菌が出すガスが、生理的口臭の原因です。
 それでは、健康なお口のかたの生理的口臭と、歯周病の患者さんの病的な口臭では、どこが根本的に違うのでしょうか。
 健康なお口には、歯周病菌などの細菌の巣が歯と歯ぐきのあいだの溝(歯周ポケット)のなかにそれほどありません。細菌の供給元がないおかげで、食事(とくに固形物を食べた場合)で舌が盛んに動き、食べ物とこすれて舌苔が落ちると、細菌もいっしょに胃袋へと流されていきます。
また、歯みがきで口のなかがきれいになると、細菌の数がガクッと減ります。そのためガスもたいして産生されず、ふだんの生活で、私たちの嗅覚では感じない程度の口臭しかしない、という状態を保つことができるのです。
 一方、歯周病のお口には、歯と歯ぐきのあいだの溝に歯周病菌などの細菌の巣があります。その巣のなかは、細菌がどんどん繁殖し貯蔵庫のようになっています。食事をして口のなかがきれいになっても、歯みがきで歯の表面がピカピカになっても、歯周ポケットの奥に隠れた細菌の貯蔵庫があるのですから、すぐに舌の上にも細菌が供給され、揮発性ガスをさかんにつくるのです。
 舌苔はデコボコしていて汚れがくっつきやすく、細菌にとっては居心地のいい場所です。舌苔が口臭の原因だからといくら舌の掃除をしても、おおもとの歯周病を治さないままでは、細菌が次々供給されるので、揮発性ガスはいつまでたってもとまりませ。
 ミントの香りにはたしかに一定のマスキング効果がありますが、細菌の出す揮発性のガスと混ざれば複雑な香りになるだけです。しかもそのマスキング効果は一時的。始終ガムを噛んでいるわけにもいかないでしょう。
 口臭の臭い物質の硫化水素は、濃度が高ければ生死に関わるような有毒ガスです。お口から揮発するガスは濃度が低いので心配はありませんが、だからといって、気づかないままずっと
お口のなかに有害ガスを発性のさせる細菌の巣を温存していては、からだにいいわけがありません。
 お口のなかのことは、つい気楽に考えがちですが、現在では歯周病は、からだの病気にも影響していることがわかっています。ぜひ歯周病を治して、臭いもとを断ちましょう。


口臭を数値で見る!唾液検査により、口臭も確認できます。その他の虫歯や歯周病のリスク判定も可能。

◼️口臭を予防してお口もからだも元気に!
 病的口臭の主たる原因である歯周病は、よほど悪くならないと痛みが出ない病気。発生する刺激的な臭いは、「歯周病になっていますよ」「炎症が起きていて危険ですよ」というからだからの警告なのですが、あいにくご本人は気づきにくいという特徴があり、この点が本当に残念なことです。
 ただし希望もあります。約3万人を対象とした厚生労働省の「保健福社動向調査(平成11年)」の結果によると。約70%のかたちが「お口のなかになんらかの問題がある」と答え、そのなかの15%のかたが口臭を気にかけておられることがわかりました。口臭に関心をもつかたがこれだけ潜在的におられるのですから、ぜひこの「気がかり」をきっかけに、歯科医院で歯周病の治療を受けていただきたいと思います。
 じつは病的口臭には、唾液の分泌量やストレス、からだの疲れなども影響を与えています。唾液によって洗い流され、唾液の抗菌物質によて守られているお口は、口臭のリスクがおのずと低いのですが、よく噛まないために唾液腺への刺が減っていたり、飲んでいるお薬の副作で唾液の分泌が減ると、お口のなかに細菌が増えやすくなって、口臭のリスクがアップしてしまいます。
 また、ストレスや疲れはからだが細菌と戦う免疫機能を低下させるので口臭が強くなるリスクになりますし、タバコも免疫機能を低下させるので、口臭にとって、とても大きなリスクです。つまり、口臭を予防することは、お口の健康維持にとどまらず、からだの健康管理にもなるということです。
 そして、くさい臭いをもとから断つには、歯周病の治療を受け、その後も定期的に歯のクリーニングをしてもらって、お口の清潔を呆つことが必要です。プロのケアとセルフケアで口臭を予防し、爽やかなお口で過ごしましょう。

歯科治療に関係大アリ?骨粗鬆症

2024年2月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

全身疾患と歯科の関連のトピックです。
●骨粗鬆症とは、どんな病気でしょうか?

 1993年,「骨粗鬆症は、低骨量で、かつ骨組織の微細構造が変化し、そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態」と定義されました。
すなわち、1990年代になり、高い精度、低被曝量,短時間での骨密度測定装置が実用化され、広く普及したことによる骨密度を重視した診断でした。
 しかし、1990年代後半頃より、骨粗鬆症の進行に伴う骨折は、骨密度だけで、予測できず、骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善には、少なくとも、1年が必要となることなど、骨密度だけに偏重した評後の問題点が指摘されてきました。その後,生化学代謝マーカーによる骨代謝回転の評価により、骨密度としての変化があらわれる前段階での早期で迅速な判定が可能になってきました。
 そこで、骨密度が低くないのに発生する骨折の問題や骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善例と変化のない例での骨折リスクの抑制率に主要がないことなどの報告から、現在は、以下のように考えられています。
 すなわち、2000年の米国国立公衆衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のコンセンサス会議で、
「骨粗鬆症は、骨強度(骨密度と骨の質)の低下によって骨折リスクが高くなる骨格の疾患」と定義されました。この骨強度は、従来から重視されていた骨密度と骨質の双方を総合的に評価して決定されるものです。


歯科でのパノラマX線写真で、皮質骨の厚みから骨粗鬆症のスクリーニングをすることができます。
骨粗鬆症の治療中の方で、投薬状況によっては抜歯などの外科処置を避けるよう、注意が必要です。

1. 骨粗鬆症の特徴を理解する
 骨粗鬆症には、閉経期以降の女性や高年齢の男性に多くみられる原発性骨粗鬆症や、若い人でも、栄養不良や運動不足、副腎ステロイド剤などの影響で罹患する続発性骨粗鬆症があります。いずれも、日常のライフスタイルが大きく影響することから,歯周病と同様に、生活習慣病の一つと考えられています。
 す。
骨は20~40歳ごろをピークに、加齢とともに生理的に骨量が減少します。特に、女性では、閉経後5~10年の間に年間骨量減少率3%以上の,急速な骨量減少が起こり、10年間の平均骨量減少率は、20%を越えると報告されています。各年代の推定人口から算出した40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2000年783万人から2001年819万人へと増加していることが推定されています。
 一方、わが国の人口は、2004年11月現在,約1億2.771万人を超え、そのうち、65歳以上の高齢者は、2.493万人(19%)、また、75歳以上の後期高齢者は、1,100万人(8.7%)で、ますます超高齢化が進んできています。そのような高齢化に伴い。骨粗鬆症患者は増加し、しかも、無自覚に進行することから、骨折(特に、大腿骨頸部骨折、推計2002年約117,900人)が急増し、寝たきり老人の大きな一因になっています。寝たきりの原因は、脳卒中、老衰に次いで、第3位が骨粗鬆症による骨折です。そして、骨折後は、40%は退院できず寝たきりになったり、骨折後1年以内に、10~20%が死亡するなど、不可逆的に、患者の自立度(ADL:activities ofdaily living)と満足度(QOL:quality of life)が著しく低下し、老人性痴呆などの合併症を生じさせます。したがって、発育期に十分に骨量を増加させ、その後は、骨粗鬆症発症前の骨量減少者を早期に識別し,ライフスタイルの改善や骨粗鬆症の薬物治療などの予防策を講じることにより、その発症・進行を予防する必要性が強調されてきています。

 2. 骨粗鬆症の症状を理解する一特徴的な「圧迫骨折」を知ろう!
 骨粗鬆症は、単なる「骨の老化現象」ではなく、骨の病的変化を主とする疾患ですが、病状が進行するまで顕著な自覚症状がない「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」といわれ、ゆっくりと静かに進行し、腰や背中が痛くなったり(腰痛),背中が曲がったり(身長低下)して自覚するようになります。
 その後、さらに放置し進行すると、背中や腰の激しい痛みで寝込んでしまったり、ちょっと転んだだけで手首や足の付け根(好発部位:橈骨末端,上腕骨近位部、大腿骨頸部)の骨折を起こして寝たきりの原因になります。
 また、背中や腰が痛むのは、骨粗鬆症化(スカスカになった状態)した脊椎に体重などの負荷がかかることにより、脊椎が潰れてしまうからです。ポキッと折れることだけが骨折ではなく、このような骨折が、「圧迫骨折」といわれ、経時的にゆっくり進行します。圧迫骨折を起こすため、背中が曲がったり、身長が短縮します。一般的に,閉経後2cm以上の身長低下は、骨粗鬆症の存在を示唆する所見であると同時に、脊椎変形に伴う満足度低下の重要な指標にもなるといわれています。

 3. 骨粗鬆症の診断はどうやっているのでしょうか
 従来は、脊椎✕像で骨量減少が認められ、脊椎圧迫骨折のある症例が骨粗鬆症と診断されていました。しかし、脊椎圧迫骨折のない段階での早期診断により、本症の予防や早期治療が可能になることから、1994年 WHO研究班は、骨密度を指標とした新しい診断基準を提唱しました。すなわち、骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の2.5SD 以下の症例を、原発性骨粗鬆症と診断しました。しかし、この診断基準では、白人の骨醤度が指標となることから、1996年日本骨代謝学会では、骨粗鬆症の診療や研究に従事している整形外科、内科(老人科,老年科),婦人科、放射線科およびスポーツ医学から、日本人における包括的な診断基準を作成し、その後2000年にさらに、改訂を加えました。新しく設けられた原発性骨粗鬆症の診断基準は、従訂を加えましたる。
産の診動基準は、従来の診断基準とは異なり、骨折が生じていなくても、設定された骨折閾値以下に骨量減少をきたした病態までも骨粗鬆症に包括しています。すなわち、骨密度と脊椎X線像の2つの指標を用いた点、若年基準値からの変化率を用いた点、さらに鑑別診断の重要性を強調した点が特徴です。
 
4.骨密度測定にはどんな方法があるのでしょうか
骨密度測定は、骨粗鬆症の診断,治療効果の判
・骨折リスクの予知のため、現在、中手骨に対して,MD法(microdensitometry),改良型MD法[DIP i (digital image processing) , CXD 法
(computed X-ray densitometry)], 橈骨や踵骨に対して、単一エネルギーX線吸収法(single energy X-ray absorptiometry : SXA),全身骨,橈骨,腰椎,大腿骨に対して,二重エネルギーX線吸収測法定 (dual energy X-ray :DXA)
橈骨や腰椎の海綿骨には、定量的CT 法(quantitativecomputed tomography: QCT),さらに、踵骨に対して,定量的超音波法(ultrasound bone densitometry: QUS)など、種々の骨量測定装置が開発され、市販されています。
現在の原発性骨粗鬆症の診断基準に準じると、骨密度測定は、DXA 法による腰椎骨密度が第
1選択になります。しかし、高齢者で,脊椎変形などのため腰椎骨密度が適切でない場合は、DXA 法による大腿骨頚部骨密度を測定します。また、検診などでの骨粗鬆症のスクリーニングには、CXD 法や定量的超音波法が適用されています。一方、男性では、大腿骨頸部骨密度の方が、腰椎骨密度より骨折の判別に有用とされているので、DXA法による腰椎に加え、同時に大腿骨頸部骨密度を測定します。
 5.骨粗鬆症の治療は、どんなことをするのでしょうか
 骨粗鬆症の予防と治療の目標は、前述のように骨折の防止です。骨粗鬆症では、まず、日常生活の中で骨量を増やす努力をすることが大切です。予防法でもある3原則「食事、運動。日光浴」は、治療の段階でも重要になります。初期の骨量減少であれば、予防を心がけることで骨量が増える可能性があります。しかし、さらに骨量減少が進むと薬物療法が必要になります。その場合でも、3原則に留意しないと薬の効果がみられません。どんな薬を選んで、いつから薬物療法を始めるかは、年齢や症状の進み具合により総合的に判断されます現在使われている薬は。骨吸収抑制薬(骨の吸収を抑在使われている薬は、骨吸収抑制薬(骨の吸収抑える薬),骨形成促進薬(骨の形成を促進する薬),骨の吸収と形成の骨代謝を調節する薬の3つに大別されます。

 6. 骨粗鬆症をまとめると
 前述のように、40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2001年819万人と試算されています。しかし,大多数を占める閉経後骨粗鬆症患者は、骨折を起こすまで自覚症状がないため、医科を受診する機会が少なく、骨粗鬆症治療を受けている患者数は、200万人に満たないといわれています。いいかえれば、歯科疾患の治療のために歯科を受診する潜在的骨粗鬆症患者は、決して少なくないと考えられます。
 女性の身体は、初潮を迎えたあと、周期的に女性ホルモンが分泌され、その後、更年期(閉経前後の約10年間,45~55歳頃),閉経を迎え、女性ホルモンの分泌量が激減し,急激な骨量低下を来します。この時に現れる不快症状の集合が、「更年期障害」とされています。したがって、更年期障害の典型的な症状やその後の骨粗鬆症に関する前兆を見極めて、そのリスクを軽減させるようにアドバイスし、歯周組織の健康と同時に、骨の健康を促すことが必要です。

気になる口臭&歯周病が妊娠へ与える影響について

2024年2月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お口の中で気になることといえば、
歯の色と口臭が挙げられます。常にネットの検索上位にあります。
今回は、口臭について先にお話しします。

気になる口臭、どこから来てる?
原因を胃腸の不調であると思われるかもしれませんが、口臭の原因は約9割がお口にあり、
特に歯周病は独特の嫌な臭いがします。
フリスクなどの強烈なミントもありますが、それば一時しのぎですので、
歯周病治療とセルフケアで改善したいですね。
なかなかご自身では気付きにくいですし、周りの人もデリケートな話題のため指摘しづらいです。

口臭には種類があります

プラーク、歯石がたくさんついていて、歯周病が進行している口腔内。


歯周病の独特の口臭があります。
この写真の口腔内のようだったら、歯周病など口の中の病気が原因の口臭が不快に感じられるようになります。
実は、口臭には他にも種類があります。
まず、健康な人でも生理的口臭があります。緊張したり、寝起きなどは唾液分泌量が少ないため少し臭いがありますが、
これはすぐに元に戻りますので気にすることはありません。

次に、食事によるものです。具体的にはニンニクやお酒などによるものです。
身体の病気が原因の口臭は、内臓の重篤な疾患によるものです。その病気によって発生した臭い物質が身体をめぐって呼気として出ていることになりますので、
口臭以前にその重篤な疾患に対しての治療が優先となります。

つまり、圧倒的に多いのは歯周病による口臭であり、それは治療とケアで改善可能です。
「しばらく歯石をとってないな」
「最近歯ブラシで血が出る」
といったことはありませんか?定期的に歯科受診し、口臭をスッキリさせましょう。

⚫️本当はコワイ、妊娠初期の歯周病
歯周病と早産・低体重児出産の関連性

◼️はじめに
 お口の中の疾患である歯周病が、糖尿病,肺炎。心臓の病気などに関連するかもしれないということは、最近知られてきています。しかし,お口から遠く離れた産婦人科領域の疾患,しかも妊娠に関連する病気にも影響する可能性があるということは、あまり知らない人が多いのではないでしょうか。
 その,歯周病と関係する産科領域の疾患として挙げられているのが早期低体重児出産です。

⚫️歯周病と関係するといわれている早期低体重児出産とは何でしょうか?
 早期低体重児出産とは、分娩時期より早い、妊娠22週以降37週未満で出産する“早産”と、2,500g未満の小さい赤ちゃんを出産する“低体重児出産”のことです。早産で産まれた赤ちゃんは、低体重児であることが多いとされています。その理由は、おなかの赤ちゃんの体重が2,500gまで成長するのは平均妊娠34週程度といわれているためです。
 日本では、厚生労働省の平成16年の人口動態調査から分かるように、低体重児の出生率年々のびてきています。これは医療技術の発達によるものだと思われます。以前なら助かる確率が低かった低体重児出産の赤ちゃんの多くが、現代の医療技術により救われていることは非常にすばらしいことです。しかし、低体重児出産の赤ちゃんは、おなかにいた期間が短いほど未熟性が強くなり、産まれた後に特別な管理が必要なことが多いとされています。また、成長していく過程においても、さまざまな疾患に対するリスクが高いこともいわれています。
そのため、できるだけ長くおなかの中で育てることが、赤ちゃんにとって望ましいことだと思われます。
 早産・低体重児出産の原因は、頸管無力症,絨毛羊膜炎、妊娠中毒症などの疾患が挙げられています。また、危険因子としては、年齢,喫煙、アルコール、ドラッグ、人種,早産の既往等があります。しかし、これらの疾患や危険因子が全く見あたらない、原因不明の妊婦さんも数多く存在します。

⚫️歯周病と早期低体重児の関連性に関する報告
▪️歯周病の治療が早期低体重児出産の防止に効果がある!!
 2002年以降には、歯周病の治療をすることで早産・低体重児出産が少なくなったという報告がいくつか存在します。
 最新のものでは、2005年に Lopezらが、870名の妊婦さんを対象に、妊娠中に歯周病治療を行ったグループ(553名)と行わなかったグループ(281名)それぞれで、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率を調べました。その結果、歯周病治療を行わなかったグループと比較し、行ったグループでは、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率が、早産では5.65%から1.42%へ(p=0.001),低体重児出産では1.15%から0.71%へ(p=0.79),早期低体重児出産では6.71から2.14%へ(p=0.002)と減少したことが示されました。
 これらの報告により,歯周病が早期低体重児出産に大きく関わることだけではなく、歯周病の治療が出産によい効果をもたらす可能性も示されました。

妊産婦さんが歯周病にかかっていると、歯周病でない妊産婦さんの7.5倍〜7.9倍もの確率で早期、低体重児出産が起こる危険率は、上がるという報告がありました。
 炎症物質が子宮に到達すると、刺激を受けて子宮が出産予定日より前に子宮収縮を引き起こし早産、低体重児出産になると言われています。
これまで歯周病と早期低体重児出産との関連性に関して過去に発表された論文等を詳しくみてきました。そこからも分かるように、日本におけるその関連性はまだ確立されているわけではありません。しかし、最近の世界各国からの報告では、歯周病は早産に対しては2.3倍,早期低体重児出産に対しては、5.3倍の危険率があることが明らかにされました。このことからも、歯周病が早期低体重児出産に関連している可能性はあるとわれわれは考えています。
 妊娠・出産は、女性にとって人生の大きなイベントの1つです。母子ともに健康な状態で出産を終えることは、母親だけでなくその家族、地域社会の願いでもあります。そのため、妊婦さんは少しでも異常妊娠,異常出産の危険性を減らしたいと思っているはずです。歯周病は予防可能な、そして妊娠中も治療可能な病気です。実際、外国からの報告でも歯周治療が出産によい効果を与える可能性も示されています。
 しかし、残念なことにこのような歯周病と早期低体重児出産の関連性に関しては、歯科医療従事者の間でもよく知られていないのが現状です。今後は、歯周病が早期低体重児出産の危険因子となりうる可能性を、多くの妊婦さんに伝えていくことはもちろんのこと、歯科医療従事者、医療従事者、行政にも知ってもらうことが大切になってくるのではないでしょうか。
 妊婦さんのお口の状態を良くすることは、母親本人だけでなく,生まれてくる子供、社会の口腔内健康状態の向上につながる可能性があります。その意味でも、将来,より多くの報告により、歯周病と早期体重児出産の関連性が確立され、広く知られるようになることが望まれます。
 
●妊産婦の口腔ケアの重要性について
 妊娠すれば、タバコやアルコール、夜更かしなどの悪習慣を改め、食事にも気を配るなど、誰でも良い親になろうと努力します。妊娠そして育児期は健康に対するモチベーションが非常に高まる時期であり、自分自身のこれまでの生活や食習慣を改善することができる絶好の時期であるといえます。妊娠を契機として、母親が歯科をはじめ各種疾病に関する正しい予防知識と好ましい健康観を獲得することができれば,自分自身のみならず、生まれ来る子どもや家族の生涯にわたる健康と幸せづくりに繋がることが期待できるのです。

肺炎と口腔内の清掃の関係とは?

2024年2月7日

口腔の健康は Air Way からみてもこんなに重要です
歯周病と誤嚥性肺炎
⚫️高齢者の健康を脅かす肺炎
 国の統計資料によると肺炎は日本人における死因の第4位です。そして肺炎の発症率は加齢とともに増加し、肺炎で死亡する人の大部分は65歳以上の高齢者であり、年々増加傾向にあります。また、肺炎のために入院を余儀なくされ、長期の安静臥床を続ける間に廃用症候群が進行し、さまざまな合併症を引き起こし、結果的に要介護状態となる危険もはらんでいます。同時に、病院や施設入所患者の直接の死因としても頻度が高く、障害者や衰弱者の合併症として大きな危険性があります。すなわち、肺炎は高齢者の罹病率や死亡率を上昇させ、医療費や介護費用を増大させる原因の大きな要因であるといえます。したがって、肺炎の予防はわが国の医療・福祉行政の上で大きな課題です。
 高齢者の肺炎の重症化や肺炎による死亡の原因には、心不全,肺疾患,腎不全,糖尿病等の基礎疾患の存在とともに、繰り返す誤照(誤って食塊や唾液が喉頭、肺に流入してしまうこと)が挙げられます。肺炎を発症した高齢者の多くは、嚥下反射(食塊や唾液を嚥下する能力)や咳反射(気道に誤って流入(誤嚥)した食塊や唾液を排除する能力)が潜在的に低下しており、食事のときにむせこんだり、食べ物が喉につかえたりするという症状がなくとも、夜間睡眠中に唾液を下気道や肺に不顕性に誤嚥(むせこみや咳がみられない誤嚥)していることがわかっています。日頃は不顕性誤嚥を繰り返して肺炎にならない人でも、全身状態の悪化や風邪や気管支炎等の呼吸器感染を起こしたとき、あるいは口腔疾患等で口腔内の細菌が増えたときには肺炎を発症します。肺炎になると。栄養や免疫機能がさらに低下し,繰り返す不顕性誤嚥ために肺炎が反復,重症化し,ついには死にいたることも稀ではありません。

⚫️口腔ケアは認知機能に影響を与える
 研究より、誤無性肺炎を予防する以外にも口腔ケアは身体的,精神的活動の維持や改善をもたらす効果が示されました。とくに認知機能を表す指標(痴呆の進行度を示す)である MMS(Mini mental State Examination)について口腔ケアグループにおいてその低下が有意に抑制されました。実際、現場では、口腔ケアを始めてから施設利用者の顔が目にみえて明るくなったという数多くの朗報を得ています。また、日常の生活リズムの中で敏感な口腔を注意深くケアすることによって、固く閉ざされた心が開く可能性があります。誤嚥性肺炎の背景には全身の抵抗力の低下がありますが、口腔ケアによってこの抵抗性の低下につながる落ち込みなどを予防できる可能性もあり、将来,精神・神経的な疾病や障害に対して口腔ケアは有効な手段の一つになる可能性があります。

歯の欠損、噛めないことも認知症につながる
口腔内に歯の欠損があり、放置されているような場合、咀嚼障害が徐々に起こります。口腔内の環境を悪化させないように、インプラントや入れ歯、ブリッジなどの欠損補綴治療があります。これらは、欠損歯列による障害を予防する意味合いも大きいです。
欠損がある場合、多くの患者さんは、今のお口の状況が一番悪いと思われています。適切でない治療や欠損の放置により、噛み合わせが崩壊していくと、全身のバランスが取れなくなる、栄養状態が悪化し虚弱になる悪循環に陥ってしまいます。


歯の欠損が進むと、顎に一本も歯がない状態、無歯顎となります。上顎が無歯顎となった方のパノラマX線写真。


歯茎だけの上顎。


年季の入った総義歯。噛みあとがついています。その方の噛みかた、かむ力、生活習慣などにより摩耗の程度は異なります。


慣れておられる義歯で、食事を工夫して摂取されておられるようです。義歯に向いている食品、そうでない食品があります。
食品アンケートによる咀嚼能力難易度検査もあります。これは、朝倉の分類から抽出した4種類、ゆで卵、茹でた千切りキャベツ1口サイズ、ロングパスタ1口サイズ、スライスハムです。摂食してから嚥下するまでの所要時間を計測し、各食品を片咀嚼してもらい計測するという内容です。
特別な器具を必要とせず、良いのですが、ご家族の協力が不可欠であり、万能というわけではありませんが、咀嚼の評価をする一つの指標として参考になります。

⚫️ブラッシングはこの嚥下反射に影響を与える
 ブラッシング(毎食後に歯・歯肉・歯と歯肉の間を1箇所あたり10回ずつ)、そのものが口腔内の知覚神経を刺激し、嚥下反射や咳反射を惹起することで(神経伝達物質であるサブスタンスPの関与の可能性),摂食・臙下機能の訓練としての効果をもたらし、嚥下機能を改善させて結果として ADL(日常生活動作、日常的な生活動作と活動性をあらわす指標)を向上させることが実証されたといえます。
 
⚫️低栄養・脱水の予防と肺炎予防
 加齢にともなう摂食・嚥下機能の低下に加えて、肺炎を起こした高齢者では、無症候性脳梗塞を生じており、燃下反射にや咳反射の低下を生じており、食事摂取に際して不利な状況です。
 栄養状態不良者に対して、栄養を付加する群と、栄養付加に加えて口腔清掃(口腔ケア)を併せて行う群を比較したところ、4カ月後には、口腔清掃を併せて行う群の方で血清アルブミン値が上昇し、栄養状態が改善したことが認められました。口腔清掃による肺炎の予防効果や前述の嚥下機能や味覚機能の向上により、食物摂取量が増加し、栄養状態が改善したものと考えられます。

▪️…おわりに…
健やかな人生のために歯周病の予防と肺炎の予防

 健康に生活している時は誰も口腔の大切さに気づきませんが、いったん病床の身になり全身の抵抗力が低下し、口腔の清掃ができない。あるいは口腔ケアがほとんど受けられない状況になると、細菌で満たされた口腔が呼吸器の入り口であるということが無視できなくなります。つまり、生死に関係することすらあるのです。とくに高齢者の場合、劣悪な口腔衛生状態、進行した歯周病、呼吸器の機能低下、摂食・嚥下機能の低下、感染に対する抵抗力,ADL低下の観点から、呼吸器の入り口としての口腔に目が向けられないことは重大な結果を引き起こす可能性があります。一方、口から食物を摂取できない高齢者が急激に増えていますが、口からの摂取が制限されたその日から、全身の活力が低下していくケースにたびたび遭遇します。これは、口から食べられなくなり、口腔の廃用性の変化によって全身の代謝のメカニズムがペースダウンしてしまった上に、精神的なダメージが大きく影響するためと思われます。このように、口腔と肉体的,精神的健康は密接に関係するといっても過言ではありません。
 気道感染のひとつである誤嚥性肺炎の予防には、
① 感染源ともいえる口腔咽頭細菌叢の除去(コントロール)
② 感染経路対策としての嚥下反射,咳嗽反射の改善
③ 感受性宿主対策として栄養改善による免疫能の改善
④ 潜在化している摂食・無下機能の障害の早期発
などが必要です。そして,何より、誤嚥性肺炎の原因と目される歯周ポケット内の細菌のコントロールは、非常に重要になってきます。口腔内の衛生状態を良好に雑持するとともに、口腔機能の要となる歯を喪失しないようにする歯周病対策は、肺炎予防の基本でもあるのです。

診断のための資料とりについて

2023年11月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

私たちは初診時や治療経過、メンテナンスなどのタイミングで、お口の資料取りを行なっています。
レントゲン撮影、歯周組織検査、口腔内写真、顔貌写真です。
レントゲンで写るものは、硬い組織です。
口腔内でいうと顎の骨、歯、顎の関節、上顎洞などです。
虫歯や歯周病、顎の関節の病気、歯の根の病気を画像診断するためです。

歯周組織検査というのは、成人の方ならご経験あるかもしれませんが、
歯と歯ぐきの境目の溝の深さを測定し、歯周病の状態を判定する検査です。
歯周ポケットが〇〇mmある、ということも重要な検査の項目ですし、
ポケット測定した際の歯ぐきからの出血の程度も重要です。
歯の揺れの程度も記録します。

口腔内写真は、このようなものです。

正面、左右、上下顎咬合面をカメラとミラーを用いて撮影します。
顔貌写真も正面、側方から撮影します。
なぜ、顔の写真が必要なのか?と思われるかもしれません。
そこで、口腔内の状態とともに、表情も変化する現象についてお話しします。

なぜ、患者さんの表情を診る必要があるのか?
口腔機能関連器官に起こる加齢変化を診ています。年齢を経ると口腔周囲の筋組織が変性します。また、歯の喪失がある場合、
咬合力の低下を招きます。私たちが食事をとるときに無意識に動かしている筋肉は、歯の喪失があると機能しにくくなります。
たとえば頬筋は臼歯などの喪失により変性し、口腔前庭部の食塊の咬合面への押し戻し機能の低下が生じます。
臼歯の咬合面の摩耗や歯の喪失によって噛み合わせの高さ(咬合高径)の減少を引き起こし、口腔容積が減ります。
舌の稼働空間が小さくなるのです。舌が動かしにくくなり、嚥下反射も弱くなります。

噛み合わせの高さが低下しているため、下顔面が短くなっている状態。


口周りのシワが深くなる、筋肉が衰え、はりがなくなる印象に変わっていきます。

高齢者の20%は、口底部に液体を貯めてから嚥下するタイプになりますが、このタイプになると、舌の運動量を大きくする必要があるため、
嚥下に時間がかかるようになります。
咀嚼筋は退化し、顔面の表情筋は垂れ下がり、口腔全体に加齢変化が起こります。

このように複雑な症状をかかえる高齢者、あるいは高齢者予備軍の60代の患者さんはたくさんおられます。

入れ歯を使い続けることにより、身体は代償を払っている?
入れ歯で生活されている方の歯茎を見ると、顎の骨吸収をともなうことが多いです。
抜歯をして義歯を装着すれば、初めの1年間で骨の高さが4mm 減少するという研究もあります。(1996年 World Workshop in Periodontics)

歯がない側の下顎の骨は、高さがなくなっています。

25年間に及んで義歯を装着された患者のレントゲン撮影による長期研究によると、この間に連続続的な骨吸収が起き、
上顎は約4倍の骨吸収が生じると報告されています。(Warrerら1995年) 

合わない義歯を入れられていたため、上顎の歯がない部分は、骨の高さがなくなっています。
つまり、歯槽骨を維持するためには歯の存在が不可欠であり、入れ歯は骨吸収を加速させる、ということです。
以前、歯やインプラントにかかる力がどのように骨に伝わるかを解析した研究発表を見ました。
噛んだ時の力は、顎の骨の広い範囲に散っていくような画像でした。
歯やインプラントは顎の骨に植っているために、
このような力の伝わり方になるのだと理解できました。
だから、身体は骨をしっかりさせようと反応し、歯槽骨が維持されるわけです。

骨吸収により、口腔内の加齢変化は加速していきます。
合わない入れ歯がある場合には、骨の吸収が早まり、
また、患者さんも抜歯後に適合の悪い義歯を使用することで、さらに骨が吸収することの説明を受けていない場合もあります。
ほとんどの入れ歯の患者さんは、そのような事実を理解されていません。

私たちは、歯の保存だけでなく抜歯後の骨の保存も考慮した治療計画を立てねばなりません。
また、義歯が引き起こす危険性も十分に説明する必要があります。
患者さんは、ご自身の体験として、入れ歯の引っかかっている歯がダメになることを知っておられます。
「入れ歯ってだんだん大きくなるよね」
「入れ歯が浮いてきて噛めないけど、そういうものだよね」

このような状況を経た場合、噛むための筋肉の短縮を招き、咀嚼力の低下を起こし、顔面諸筋は下垂し、表情に多くの退化が見られます。

私たちは資料とりでお顔の写真を撮影するのは、受診に至るまでの表情の状態を把握するためです。
そして、治療がすすみ、治療用の仮歯などでリハビリをするときに、スムーズにトレーニングを行うことができます。
表情の特徴を分析し患者さんと共有することが、治療する上で重要であります。

唾液分泌低下は味覚障害、口腔乾燥につながる
上顎義歯を装着すると、奥歯の領域にある唾液腺を圧迫してしまいます。
加齢とともに唾液分泌量は低下するうえ、その唾液腺を義歯が圧迫するため、
より唾液がでにくくなります。
そのようにして、口腔内には以下のような変化が生じます。
(1)口腔内の湿潤が低下し食塊の滑りが悪くなるため、粘膜へ食物が付きやすく、咽頭へ食塊を送りづらくなる。
(2)食塊に十分な水分を混ぜ込むことができなくなり、むせやすくなり、味がわかりにくい。誤嚥のリスクが高まる。
(3)味覚の低下。。
 
口腔周囲筋トレーニングについて
健康寿命を伸ばすことへの関心は増加しています。
歯を失うことなく、予防管理していくことが最重要であります。
他科疾患の罹患率も減り、人生における医療費は大きく削減できます。
歯がグラグラしたり、抜けてきたりして、ああやばいなー歯医者行こうってなる場合が多いです。
非常に勿体無いです。それに、噛めない状態、合わない入れ歯の状態でずっと過ごされていると、
身体の代償として、筋肉の機能低下、顎骨の吸収が生じます。
入れ歯の名医と言われる先生でも、なんでもかんでもなおせるわけではありません。
過度に吸収してしまった歯茎に対しては、入れ歯が浮いてくるのは必然ですし、
インプラントも場合によっては難しくなるでしょう。
歯の欠損を放置することで、結果的に寝たきり→不健康で楽しめない人生となってしまいます。
本当は、入れ歯やインプラントがないお口が一番いいです。

では、歯周病や事故で歯を失ってしまった場合、
1ヶ月くらいで出来上がる保険の入れ歯で機能回復できるのでしょうか。
しっかり歯があった頃くらいに噛めるようにするには、ある程度の高額な治療費がかかってしまいます。
はっきり言って、健康はお金で買えるのです。
幸せな人生のために必要なこととして、
・健康
・人間関係
・経済
・楽しみ
・承認
など、いくつか要素が考えられます。
全て満たされていたらとても充実した人生と言えますね。
口腔内のトラブルから、寝たきりになってしまったとしたらどうでしょう。
健康を失えば、ベッド1つ分の人生と思うと、健康って当たり前じゃなくて、ありがたいことだなと思いますね。

オーラルフレイル:口の中の問題から全身の虚弱を招きます。

現在、若年労働者の減少とともに、高齢者でも現役で社会参加しなければならない状況になった今こそ、
お口の中から予防に取り組むこと、
治療が必要になったら身体の代償を払うような治療は避けること、
しっかり噛める状態を作り、維持していくこと
が大切ですね。

歯周病の進行に関わるプラークについて

2023年10月13日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は世界一多い感染症である、歯周病についてのお話しです。

歯周病と聞くと多くの人は「歯ぐきから血が出る」「歯ぐきから膿が出る」「歯がぐらぐらする」「歯周病の歯は抜かないといけない」など想像されるかもしれませんが、このような想像をした方は、歯周病について歯医者さんやメディアを通じて、一度はその説明を受けたことがあるか、ご自身が歯周病と指摘されたことがある方ではないでしょうか。歯石のついている状態も含めると成人の半分以上は歯周病であり、40歳以上の人の歯を失う原因の約80%が歯周病と言われています。しかし歯周病を正しく理解されている方はその割合よりはずっと少ないでしょう。一昔前の歯科医院でも、あまり歯周病については積極的に施術がされていなかったようで、削って被せる、詰める、あとは一回クリーニングして終了という感じの対応が多かったようです。

歯周病は歯ぐきにのみ炎症が見られる歯肉炎と、歯ぐきと歯を支える歯槽骨に吸収がみられる歯周炎を総称してこのように呼びます。少し前までは「歯槽膿漏」という言い方のほうが一般的でありこちらのほうが馴染みがある方も多いのではないでしょうか。
歯周病とはその言葉通り、歯そのものの病気ではなく「歯」を支えているその「周」囲の組織の「病」気なのです。家に例えると家そのものが壊れるのが虫歯でありその土台を支える基礎の部分、つまり家の建っている土壌そのものが崩れてしまうのが歯周病です。また厄介なことに、この病気は家の場合と同じようにあまり目立たず、気づくのに時間がかかる病気です。一旦それも進行してしまうと家そのものが建っていられなくなります。
 歯は目では見えないいくつかの組織で支えられています。歯ぐき、骨、歯と骨を直接結びつける繊維(歯根膜)、その繊維と骨の根を結びつける組織(セメント質)と4つの組織からなりたっています。
この目には見えない部分の病気はレントゲン写真を撮るとよくわかります。歯や骨のように硬い部分レントゲンでは白く写り、歯根膜や歯ぐきなどの柔らかい部分は黒く写ります。そのため、歯を支えるのに大事な骨が歯周病によって失われてるのがよくわかります。歯周病が進み骨が溶けると支えがなくなりますから、歯がぐらぐらしてきます。それでも痛みを伴わないことが多く、目に見えない部分の骨が溶けているのは、本人でもわからないので多くの人はそのまま過ごしています。さらに進行していよいよ噛む力に耐えられなくなるとある日突然歯が抜けてしまった…なんてことにもなります。
では歯周病の原因はなんでしょうか。歯周病は歯ぐきに炎症が起こることから始まり、歯ぐきに炎症が起こると歯ぐきが赤くなったり、腫れたり出血したりします。歯周病の原因は歯の表面についた細菌の集団です。この細菌の集団のことをプラーク(歯垢)といいます。

 このプラークは歯の表面にしっかりとしがみついていて、うがいなどでは決して落ちることがありません。なので、プラークはいわゆる食べ物のカスなどとは全く違うということです。プラーク中の細菌が出すさまざまな物質によって歯ぐきに炎症が起きます。
 一般的に歯石が歯周病の原因だと思われている方が多く、歯石を定期的にとってもらているのに、いっこうに歯周病が改善しないと言って来院される方が多数見れます。実は歯石はプラークが石灰化(石のように固くなる)したもので、歯ぐきに炎症を引き起こす原因はプラークより低く、歯や歯の根元の表面がざらつくため、プラークがつきやすくなります。いくら歯石をとってもプラークがつきやすい環境では、歯の炎症が改善しないということです。プラーク以外にも歯並び、嚙み合わせ、歯ぎしりなどの習癖、全身疾患など原因は他にもさまざまありますが、それら単独では歯周病は発症することはなく、プラークが一番の原因です。
 歯周病は生活習慣病とされています。一番の原因は口の中のプラークですが、その細菌は健康なヒトの口の中にも存在しており、その集団であるプラークは個々の食生活やブラッシング習慣、個人の感染に対する抵抗力により大きく違ってきます。口の中のプラークが歯周組織を破壊するかは、その人の生活習慣によっても大きく違っています。生活習慣病の特徴は生活習慣の歪みを正すことにより、その発症を予防できるということです。言い換えると生活習慣病は生活習慣を改善せず医者や歯医者の通うだけでは決して治らないということです。生活習慣病の多くがサイレントディジーズ(静かな病気)と言われ、普段はほとんど症状もなく進んでいく病気であることが特徴です。歯周病の多くは普段からのブラッシングにより予防可能で、歯周病の検査は歯科医院でできます。もし歯周病と言われてしまった方は、普段の食生活と特にブラッシング習慣について見直しと改善が必要です。この改善の指導とチェックは歯科医師や歯科衛生士が行います。
 歯周病治療の流れとしてまず最初に、すべての歯と歯ぐきの間にできた隙間(歯周ポケット)の深さと歯周組織の炎症の状態や破壊の程度を調べる検査をします。その程度の差によって治療の方法、難易度、予後の予測が大きく異なるため、この検査で歯周病の程度を把握します。歯肉炎や軽度の歯周炎の場合、生活の改善と原因となるプラークを除去するためのプラークコントロール(ブラッシング習慣や方法の改善)でほぼ正常な歯周組織にもどすことが可能です。中程度進行した歯周炎ではプラークコントロールしたあと、歯周ポケット内のプラークと歯石除去を行います。歯石は表面がざらざらしておりプラークが付きやすいため、通常は手用スケーラーまたは超音波スケーラーと呼ばれる歯石除去のための専用器具で機械的に除去します。さらに歯石を除去した後、プラークで汚染された歯の根本の一層を除去し、平滑にして歯ぐきに対して物理的な刺激をなくすことで、歯ぐきの炎症を抑えます。こうした一連の器具操作をスケーリング・ルートプレーニングと呼びます。歯周病が進行したケースでは、この歯石除去に時間をかけ、徹底して行います。しかし、歯石のついている部位によっては、徹底した除去が難しい場合もあります。そうしたケースや高度に進行した歯周炎の部位に対しては歯周外科を行います。
 以上が歯周治療の流れですが、歯周病の治療がおおよそ終了しても再発しないよう、ブラッシングという生活習慣を定期的にチェックし管理していくメインテナンスを継続することが、歯周組織の健康を長期にわたり保つために重要となります。

 歯周病の一番の原因はプラークですが、実際はプラークが歯に大量に付いていてもあまり歯周病が進行していない場合や、逆にプラークは非常に少ないのに歯周病が進行いている方もいます。その理由に、歯周病の発症や進行には生体の抵抗性や感受性などが影響し、遺伝的因子や環境因子などが関与していると考えられています。特に歯周病の危険因子と言われているのは喫煙と糖尿病です。喫煙と糖尿病は歯周病の発症や進行に大きく関与しています。また、全身疾患(冠動脈疾患、呼吸器疾患、糖尿病、早産や低体重児出産、骨粗鬆症など)が歯周組織の健康や歯周病に影響を及ぼすことはもちろんですが、歯周病がこれら全身の健康状態に強い影響を与えていることが報告されています。
外来での患者さんも、訪問診療での口腔ケアも、このように全身疾患との関連がありますので、歯周病のケアはずっと生活習慣として続けていく

 歯周病の一番の原因はプラークですが、プラーク以外の様々な病因因子の存在が関係いていると言われています。局所因子として嚙み合わせが悪いことなどによる外傷があります。歯の欠損を放置しておくと反対側の歯が伸びてきたりして早期接触が起こり、外傷を受けたりします。また片側の一番奥の歯が喪失し、噛み癖が変化し反対側の一部の歯に負担が集中したりするケースもあります。さらに、高齢になるにつれて生じる咬耗によって咬合高径が下がり、前歯への早期接触が起こるなど生理的にも咬合性外傷は起こるので、長期のメインテナンスでは嚙み合わせの変化のチェックは必要です。
 また、ブラキシズムはクレンチング(くいしばり)とグラインディング(歯ぎしり)、タッピング(歯をカチカチさせる)があります。クレンチングは無意識に行われることが多いです。グラインディングは、長年にわたって行われることがあり、どちらも歯に持続的にしかも無意識で噛む力がかかるため、歯の動揺や高度な咬耗などの原因となります。