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歯科治療に関係大アリ?骨粗鬆症

2024年2月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

全身疾患と歯科の関連のトピックです。
●骨粗鬆症とは、どんな病気でしょうか?

 1993年,「骨粗鬆症は、低骨量で、かつ骨組織の微細構造が変化し、そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態」と定義されました。
すなわち、1990年代になり、高い精度、低被曝量,短時間での骨密度測定装置が実用化され、広く普及したことによる骨密度を重視した診断でした。
 しかし、1990年代後半頃より、骨粗鬆症の進行に伴う骨折は、骨密度だけで、予測できず、骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善には、少なくとも、1年が必要となることなど、骨密度だけに偏重した評後の問題点が指摘されてきました。その後,生化学代謝マーカーによる骨代謝回転の評価により、骨密度としての変化があらわれる前段階での早期で迅速な判定が可能になってきました。
 そこで、骨密度が低くないのに発生する骨折の問題や骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善例と変化のない例での骨折リスクの抑制率に主要がないことなどの報告から、現在は、以下のように考えられています。
 すなわち、2000年の米国国立公衆衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のコンセンサス会議で、
「骨粗鬆症は、骨強度(骨密度と骨の質)の低下によって骨折リスクが高くなる骨格の疾患」と定義されました。この骨強度は、従来から重視されていた骨密度と骨質の双方を総合的に評価して決定されるものです。


歯科でのパノラマX線写真で、皮質骨の厚みから骨粗鬆症のスクリーニングをすることができます。
骨粗鬆症の治療中の方で、投薬状況によっては抜歯などの外科処置を避けるよう、注意が必要です。

1. 骨粗鬆症の特徴を理解する
 骨粗鬆症には、閉経期以降の女性や高年齢の男性に多くみられる原発性骨粗鬆症や、若い人でも、栄養不良や運動不足、副腎ステロイド剤などの影響で罹患する続発性骨粗鬆症があります。いずれも、日常のライフスタイルが大きく影響することから,歯周病と同様に、生活習慣病の一つと考えられています。
 す。
骨は20~40歳ごろをピークに、加齢とともに生理的に骨量が減少します。特に、女性では、閉経後5~10年の間に年間骨量減少率3%以上の,急速な骨量減少が起こり、10年間の平均骨量減少率は、20%を越えると報告されています。各年代の推定人口から算出した40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2000年783万人から2001年819万人へと増加していることが推定されています。
 一方、わが国の人口は、2004年11月現在,約1億2.771万人を超え、そのうち、65歳以上の高齢者は、2.493万人(19%)、また、75歳以上の後期高齢者は、1,100万人(8.7%)で、ますます超高齢化が進んできています。そのような高齢化に伴い。骨粗鬆症患者は増加し、しかも、無自覚に進行することから、骨折(特に、大腿骨頸部骨折、推計2002年約117,900人)が急増し、寝たきり老人の大きな一因になっています。寝たきりの原因は、脳卒中、老衰に次いで、第3位が骨粗鬆症による骨折です。そして、骨折後は、40%は退院できず寝たきりになったり、骨折後1年以内に、10~20%が死亡するなど、不可逆的に、患者の自立度(ADL:activities ofdaily living)と満足度(QOL:quality of life)が著しく低下し、老人性痴呆などの合併症を生じさせます。したがって、発育期に十分に骨量を増加させ、その後は、骨粗鬆症発症前の骨量減少者を早期に識別し,ライフスタイルの改善や骨粗鬆症の薬物治療などの予防策を講じることにより、その発症・進行を予防する必要性が強調されてきています。

 2. 骨粗鬆症の症状を理解する一特徴的な「圧迫骨折」を知ろう!
 骨粗鬆症は、単なる「骨の老化現象」ではなく、骨の病的変化を主とする疾患ですが、病状が進行するまで顕著な自覚症状がない「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」といわれ、ゆっくりと静かに進行し、腰や背中が痛くなったり(腰痛),背中が曲がったり(身長低下)して自覚するようになります。
 その後、さらに放置し進行すると、背中や腰の激しい痛みで寝込んでしまったり、ちょっと転んだだけで手首や足の付け根(好発部位:橈骨末端,上腕骨近位部、大腿骨頸部)の骨折を起こして寝たきりの原因になります。
 また、背中や腰が痛むのは、骨粗鬆症化(スカスカになった状態)した脊椎に体重などの負荷がかかることにより、脊椎が潰れてしまうからです。ポキッと折れることだけが骨折ではなく、このような骨折が、「圧迫骨折」といわれ、経時的にゆっくり進行します。圧迫骨折を起こすため、背中が曲がったり、身長が短縮します。一般的に,閉経後2cm以上の身長低下は、骨粗鬆症の存在を示唆する所見であると同時に、脊椎変形に伴う満足度低下の重要な指標にもなるといわれています。

 3. 骨粗鬆症の診断はどうやっているのでしょうか
 従来は、脊椎✕像で骨量減少が認められ、脊椎圧迫骨折のある症例が骨粗鬆症と診断されていました。しかし、脊椎圧迫骨折のない段階での早期診断により、本症の予防や早期治療が可能になることから、1994年 WHO研究班は、骨密度を指標とした新しい診断基準を提唱しました。すなわち、骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の2.5SD 以下の症例を、原発性骨粗鬆症と診断しました。しかし、この診断基準では、白人の骨醤度が指標となることから、1996年日本骨代謝学会では、骨粗鬆症の診療や研究に従事している整形外科、内科(老人科,老年科),婦人科、放射線科およびスポーツ医学から、日本人における包括的な診断基準を作成し、その後2000年にさらに、改訂を加えました。新しく設けられた原発性骨粗鬆症の診断基準は、従訂を加えましたる。
産の診動基準は、従来の診断基準とは異なり、骨折が生じていなくても、設定された骨折閾値以下に骨量減少をきたした病態までも骨粗鬆症に包括しています。すなわち、骨密度と脊椎X線像の2つの指標を用いた点、若年基準値からの変化率を用いた点、さらに鑑別診断の重要性を強調した点が特徴です。
 
4.骨密度測定にはどんな方法があるのでしょうか
骨密度測定は、骨粗鬆症の診断,治療効果の判
・骨折リスクの予知のため、現在、中手骨に対して,MD法(microdensitometry),改良型MD法[DIP i (digital image processing) , CXD 法
(computed X-ray densitometry)], 橈骨や踵骨に対して、単一エネルギーX線吸収法(single energy X-ray absorptiometry : SXA),全身骨,橈骨,腰椎,大腿骨に対して,二重エネルギーX線吸収測法定 (dual energy X-ray :DXA)
橈骨や腰椎の海綿骨には、定量的CT 法(quantitativecomputed tomography: QCT),さらに、踵骨に対して,定量的超音波法(ultrasound bone densitometry: QUS)など、種々の骨量測定装置が開発され、市販されています。
現在の原発性骨粗鬆症の診断基準に準じると、骨密度測定は、DXA 法による腰椎骨密度が第
1選択になります。しかし、高齢者で,脊椎変形などのため腰椎骨密度が適切でない場合は、DXA 法による大腿骨頚部骨密度を測定します。また、検診などでの骨粗鬆症のスクリーニングには、CXD 法や定量的超音波法が適用されています。一方、男性では、大腿骨頸部骨密度の方が、腰椎骨密度より骨折の判別に有用とされているので、DXA法による腰椎に加え、同時に大腿骨頸部骨密度を測定します。
 5.骨粗鬆症の治療は、どんなことをするのでしょうか
 骨粗鬆症の予防と治療の目標は、前述のように骨折の防止です。骨粗鬆症では、まず、日常生活の中で骨量を増やす努力をすることが大切です。予防法でもある3原則「食事、運動。日光浴」は、治療の段階でも重要になります。初期の骨量減少であれば、予防を心がけることで骨量が増える可能性があります。しかし、さらに骨量減少が進むと薬物療法が必要になります。その場合でも、3原則に留意しないと薬の効果がみられません。どんな薬を選んで、いつから薬物療法を始めるかは、年齢や症状の進み具合により総合的に判断されます現在使われている薬は。骨吸収抑制薬(骨の吸収を抑在使われている薬は、骨吸収抑制薬(骨の吸収抑える薬),骨形成促進薬(骨の形成を促進する薬),骨の吸収と形成の骨代謝を調節する薬の3つに大別されます。

 6. 骨粗鬆症をまとめると
 前述のように、40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2001年819万人と試算されています。しかし,大多数を占める閉経後骨粗鬆症患者は、骨折を起こすまで自覚症状がないため、医科を受診する機会が少なく、骨粗鬆症治療を受けている患者数は、200万人に満たないといわれています。いいかえれば、歯科疾患の治療のために歯科を受診する潜在的骨粗鬆症患者は、決して少なくないと考えられます。
 女性の身体は、初潮を迎えたあと、周期的に女性ホルモンが分泌され、その後、更年期(閉経前後の約10年間,45~55歳頃),閉経を迎え、女性ホルモンの分泌量が激減し,急激な骨量低下を来します。この時に現れる不快症状の集合が、「更年期障害」とされています。したがって、更年期障害の典型的な症状やその後の骨粗鬆症に関する前兆を見極めて、そのリスクを軽減させるようにアドバイスし、歯周組織の健康と同時に、骨の健康を促すことが必要です。

気になる口臭&歯周病が妊娠へ与える影響について

2024年2月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お口の中で気になることといえば、
歯の色と口臭が挙げられます。常にネットの検索上位にあります。
今回は、口臭について先にお話しします。

気になる口臭、どこから来てる?
原因を胃腸の不調であると思われるかもしれませんが、口臭の原因は約9割がお口にあり、
特に歯周病は独特の嫌な臭いがします。
フリスクなどの強烈なミントもありますが、それば一時しのぎですので、
歯周病治療とセルフケアで改善したいですね。
なかなかご自身では気付きにくいですし、周りの人もデリケートな話題のため指摘しづらいです。

口臭には種類があります

プラーク、歯石がたくさんついていて、歯周病が進行している口腔内。


歯周病の独特の口臭があります。
この写真の口腔内のようだったら、歯周病など口の中の病気が原因の口臭が不快に感じられるようになります。
実は、口臭には他にも種類があります。
まず、健康な人でも生理的口臭があります。緊張したり、寝起きなどは唾液分泌量が少ないため少し臭いがありますが、
これはすぐに元に戻りますので気にすることはありません。

次に、食事によるものです。具体的にはニンニクやお酒などによるものです。
身体の病気が原因の口臭は、内臓の重篤な疾患によるものです。その病気によって発生した臭い物質が身体をめぐって呼気として出ていることになりますので、
口臭以前にその重篤な疾患に対しての治療が優先となります。

つまり、圧倒的に多いのは歯周病による口臭であり、それは治療とケアで改善可能です。
「しばらく歯石をとってないな」
「最近歯ブラシで血が出る」
といったことはありませんか?定期的に歯科受診し、口臭をスッキリさせましょう。

⚫️本当はコワイ、妊娠初期の歯周病
歯周病と早産・低体重児出産の関連性

◼️はじめに
 お口の中の疾患である歯周病が、糖尿病,肺炎。心臓の病気などに関連するかもしれないということは、最近知られてきています。しかし,お口から遠く離れた産婦人科領域の疾患,しかも妊娠に関連する病気にも影響する可能性があるということは、あまり知らない人が多いのではないでしょうか。
 その,歯周病と関係する産科領域の疾患として挙げられているのが早期低体重児出産です。

⚫️歯周病と関係するといわれている早期低体重児出産とは何でしょうか?
 早期低体重児出産とは、分娩時期より早い、妊娠22週以降37週未満で出産する“早産”と、2,500g未満の小さい赤ちゃんを出産する“低体重児出産”のことです。早産で産まれた赤ちゃんは、低体重児であることが多いとされています。その理由は、おなかの赤ちゃんの体重が2,500gまで成長するのは平均妊娠34週程度といわれているためです。
 日本では、厚生労働省の平成16年の人口動態調査から分かるように、低体重児の出生率年々のびてきています。これは医療技術の発達によるものだと思われます。以前なら助かる確率が低かった低体重児出産の赤ちゃんの多くが、現代の医療技術により救われていることは非常にすばらしいことです。しかし、低体重児出産の赤ちゃんは、おなかにいた期間が短いほど未熟性が強くなり、産まれた後に特別な管理が必要なことが多いとされています。また、成長していく過程においても、さまざまな疾患に対するリスクが高いこともいわれています。
そのため、できるだけ長くおなかの中で育てることが、赤ちゃんにとって望ましいことだと思われます。
 早産・低体重児出産の原因は、頸管無力症,絨毛羊膜炎、妊娠中毒症などの疾患が挙げられています。また、危険因子としては、年齢,喫煙、アルコール、ドラッグ、人種,早産の既往等があります。しかし、これらの疾患や危険因子が全く見あたらない、原因不明の妊婦さんも数多く存在します。

⚫️歯周病と早期低体重児の関連性に関する報告
▪️歯周病の治療が早期低体重児出産の防止に効果がある!!
 2002年以降には、歯周病の治療をすることで早産・低体重児出産が少なくなったという報告がいくつか存在します。
 最新のものでは、2005年に Lopezらが、870名の妊婦さんを対象に、妊娠中に歯周病治療を行ったグループ(553名)と行わなかったグループ(281名)それぞれで、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率を調べました。その結果、歯周病治療を行わなかったグループと比較し、行ったグループでは、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率が、早産では5.65%から1.42%へ(p=0.001),低体重児出産では1.15%から0.71%へ(p=0.79),早期低体重児出産では6.71から2.14%へ(p=0.002)と減少したことが示されました。
 これらの報告により,歯周病が早期低体重児出産に大きく関わることだけではなく、歯周病の治療が出産によい効果をもたらす可能性も示されました。

妊産婦さんが歯周病にかかっていると、歯周病でない妊産婦さんの7.5倍〜7.9倍もの確率で早期、低体重児出産が起こる危険率は、上がるという報告がありました。
 炎症物質が子宮に到達すると、刺激を受けて子宮が出産予定日より前に子宮収縮を引き起こし早産、低体重児出産になると言われています。
これまで歯周病と早期低体重児出産との関連性に関して過去に発表された論文等を詳しくみてきました。そこからも分かるように、日本におけるその関連性はまだ確立されているわけではありません。しかし、最近の世界各国からの報告では、歯周病は早産に対しては2.3倍,早期低体重児出産に対しては、5.3倍の危険率があることが明らかにされました。このことからも、歯周病が早期低体重児出産に関連している可能性はあるとわれわれは考えています。
 妊娠・出産は、女性にとって人生の大きなイベントの1つです。母子ともに健康な状態で出産を終えることは、母親だけでなくその家族、地域社会の願いでもあります。そのため、妊婦さんは少しでも異常妊娠,異常出産の危険性を減らしたいと思っているはずです。歯周病は予防可能な、そして妊娠中も治療可能な病気です。実際、外国からの報告でも歯周治療が出産によい効果を与える可能性も示されています。
 しかし、残念なことにこのような歯周病と早期低体重児出産の関連性に関しては、歯科医療従事者の間でもよく知られていないのが現状です。今後は、歯周病が早期低体重児出産の危険因子となりうる可能性を、多くの妊婦さんに伝えていくことはもちろんのこと、歯科医療従事者、医療従事者、行政にも知ってもらうことが大切になってくるのではないでしょうか。
 妊婦さんのお口の状態を良くすることは、母親本人だけでなく,生まれてくる子供、社会の口腔内健康状態の向上につながる可能性があります。その意味でも、将来,より多くの報告により、歯周病と早期体重児出産の関連性が確立され、広く知られるようになることが望まれます。
 
●妊産婦の口腔ケアの重要性について
 妊娠すれば、タバコやアルコール、夜更かしなどの悪習慣を改め、食事にも気を配るなど、誰でも良い親になろうと努力します。妊娠そして育児期は健康に対するモチベーションが非常に高まる時期であり、自分自身のこれまでの生活や食習慣を改善することができる絶好の時期であるといえます。妊娠を契機として、母親が歯科をはじめ各種疾病に関する正しい予防知識と好ましい健康観を獲得することができれば,自分自身のみならず、生まれ来る子どもや家族の生涯にわたる健康と幸せづくりに繋がることが期待できるのです。

肺炎と口腔内の清掃の関係とは?

2024年2月7日

口腔の健康は Air Way からみてもこんなに重要です
歯周病と誤嚥性肺炎
⚫️高齢者の健康を脅かす肺炎
 国の統計資料によると肺炎は日本人における死因の第4位です。そして肺炎の発症率は加齢とともに増加し、肺炎で死亡する人の大部分は65歳以上の高齢者であり、年々増加傾向にあります。また、肺炎のために入院を余儀なくされ、長期の安静臥床を続ける間に廃用症候群が進行し、さまざまな合併症を引き起こし、結果的に要介護状態となる危険もはらんでいます。同時に、病院や施設入所患者の直接の死因としても頻度が高く、障害者や衰弱者の合併症として大きな危険性があります。すなわち、肺炎は高齢者の罹病率や死亡率を上昇させ、医療費や介護費用を増大させる原因の大きな要因であるといえます。したがって、肺炎の予防はわが国の医療・福祉行政の上で大きな課題です。
 高齢者の肺炎の重症化や肺炎による死亡の原因には、心不全,肺疾患,腎不全,糖尿病等の基礎疾患の存在とともに、繰り返す誤照(誤って食塊や唾液が喉頭、肺に流入してしまうこと)が挙げられます。肺炎を発症した高齢者の多くは、嚥下反射(食塊や唾液を嚥下する能力)や咳反射(気道に誤って流入(誤嚥)した食塊や唾液を排除する能力)が潜在的に低下しており、食事のときにむせこんだり、食べ物が喉につかえたりするという症状がなくとも、夜間睡眠中に唾液を下気道や肺に不顕性に誤嚥(むせこみや咳がみられない誤嚥)していることがわかっています。日頃は不顕性誤嚥を繰り返して肺炎にならない人でも、全身状態の悪化や風邪や気管支炎等の呼吸器感染を起こしたとき、あるいは口腔疾患等で口腔内の細菌が増えたときには肺炎を発症します。肺炎になると。栄養や免疫機能がさらに低下し,繰り返す不顕性誤嚥ために肺炎が反復,重症化し,ついには死にいたることも稀ではありません。

⚫️口腔ケアは認知機能に影響を与える
 研究より、誤無性肺炎を予防する以外にも口腔ケアは身体的,精神的活動の維持や改善をもたらす効果が示されました。とくに認知機能を表す指標(痴呆の進行度を示す)である MMS(Mini mental State Examination)について口腔ケアグループにおいてその低下が有意に抑制されました。実際、現場では、口腔ケアを始めてから施設利用者の顔が目にみえて明るくなったという数多くの朗報を得ています。また、日常の生活リズムの中で敏感な口腔を注意深くケアすることによって、固く閉ざされた心が開く可能性があります。誤嚥性肺炎の背景には全身の抵抗力の低下がありますが、口腔ケアによってこの抵抗性の低下につながる落ち込みなどを予防できる可能性もあり、将来,精神・神経的な疾病や障害に対して口腔ケアは有効な手段の一つになる可能性があります。

歯の欠損、噛めないことも認知症につながる
口腔内に歯の欠損があり、放置されているような場合、咀嚼障害が徐々に起こります。口腔内の環境を悪化させないように、インプラントや入れ歯、ブリッジなどの欠損補綴治療があります。これらは、欠損歯列による障害を予防する意味合いも大きいです。
欠損がある場合、多くの患者さんは、今のお口の状況が一番悪いと思われています。適切でない治療や欠損の放置により、噛み合わせが崩壊していくと、全身のバランスが取れなくなる、栄養状態が悪化し虚弱になる悪循環に陥ってしまいます。


歯の欠損が進むと、顎に一本も歯がない状態、無歯顎となります。上顎が無歯顎となった方のパノラマX線写真。


歯茎だけの上顎。


年季の入った総義歯。噛みあとがついています。その方の噛みかた、かむ力、生活習慣などにより摩耗の程度は異なります。


慣れておられる義歯で、食事を工夫して摂取されておられるようです。義歯に向いている食品、そうでない食品があります。
食品アンケートによる咀嚼能力難易度検査もあります。これは、朝倉の分類から抽出した4種類、ゆで卵、茹でた千切りキャベツ1口サイズ、ロングパスタ1口サイズ、スライスハムです。摂食してから嚥下するまでの所要時間を計測し、各食品を片咀嚼してもらい計測するという内容です。
特別な器具を必要とせず、良いのですが、ご家族の協力が不可欠であり、万能というわけではありませんが、咀嚼の評価をする一つの指標として参考になります。

⚫️ブラッシングはこの嚥下反射に影響を与える
 ブラッシング(毎食後に歯・歯肉・歯と歯肉の間を1箇所あたり10回ずつ)、そのものが口腔内の知覚神経を刺激し、嚥下反射や咳反射を惹起することで(神経伝達物質であるサブスタンスPの関与の可能性),摂食・臙下機能の訓練としての効果をもたらし、嚥下機能を改善させて結果として ADL(日常生活動作、日常的な生活動作と活動性をあらわす指標)を向上させることが実証されたといえます。
 
⚫️低栄養・脱水の予防と肺炎予防
 加齢にともなう摂食・嚥下機能の低下に加えて、肺炎を起こした高齢者では、無症候性脳梗塞を生じており、燃下反射にや咳反射の低下を生じており、食事摂取に際して不利な状況です。
 栄養状態不良者に対して、栄養を付加する群と、栄養付加に加えて口腔清掃(口腔ケア)を併せて行う群を比較したところ、4カ月後には、口腔清掃を併せて行う群の方で血清アルブミン値が上昇し、栄養状態が改善したことが認められました。口腔清掃による肺炎の予防効果や前述の嚥下機能や味覚機能の向上により、食物摂取量が増加し、栄養状態が改善したものと考えられます。

▪️…おわりに…
健やかな人生のために歯周病の予防と肺炎の予防

 健康に生活している時は誰も口腔の大切さに気づきませんが、いったん病床の身になり全身の抵抗力が低下し、口腔の清掃ができない。あるいは口腔ケアがほとんど受けられない状況になると、細菌で満たされた口腔が呼吸器の入り口であるということが無視できなくなります。つまり、生死に関係することすらあるのです。とくに高齢者の場合、劣悪な口腔衛生状態、進行した歯周病、呼吸器の機能低下、摂食・嚥下機能の低下、感染に対する抵抗力,ADL低下の観点から、呼吸器の入り口としての口腔に目が向けられないことは重大な結果を引き起こす可能性があります。一方、口から食物を摂取できない高齢者が急激に増えていますが、口からの摂取が制限されたその日から、全身の活力が低下していくケースにたびたび遭遇します。これは、口から食べられなくなり、口腔の廃用性の変化によって全身の代謝のメカニズムがペースダウンしてしまった上に、精神的なダメージが大きく影響するためと思われます。このように、口腔と肉体的,精神的健康は密接に関係するといっても過言ではありません。
 気道感染のひとつである誤嚥性肺炎の予防には、
① 感染源ともいえる口腔咽頭細菌叢の除去(コントロール)
② 感染経路対策としての嚥下反射,咳嗽反射の改善
③ 感受性宿主対策として栄養改善による免疫能の改善
④ 潜在化している摂食・無下機能の障害の早期発
などが必要です。そして,何より、誤嚥性肺炎の原因と目される歯周ポケット内の細菌のコントロールは、非常に重要になってきます。口腔内の衛生状態を良好に雑持するとともに、口腔機能の要となる歯を喪失しないようにする歯周病対策は、肺炎予防の基本でもあるのです。

診断のための資料とりについて

2023年11月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

私たちは初診時や治療経過、メンテナンスなどのタイミングで、お口の資料取りを行なっています。
レントゲン撮影、歯周組織検査、口腔内写真、顔貌写真です。
レントゲンで写るものは、硬い組織です。
口腔内でいうと顎の骨、歯、顎の関節、上顎洞などです。
虫歯や歯周病、顎の関節の病気、歯の根の病気を画像診断するためです。

歯周組織検査というのは、成人の方ならご経験あるかもしれませんが、
歯と歯ぐきの境目の溝の深さを測定し、歯周病の状態を判定する検査です。
歯周ポケットが〇〇mmある、ということも重要な検査の項目ですし、
ポケット測定した際の歯ぐきからの出血の程度も重要です。
歯の揺れの程度も記録します。

口腔内写真は、このようなものです。

正面、左右、上下顎咬合面をカメラとミラーを用いて撮影します。
顔貌写真も正面、側方から撮影します。
なぜ、顔の写真が必要なのか?と思われるかもしれません。
そこで、口腔内の状態とともに、表情も変化する現象についてお話しします。

なぜ、患者さんの表情を診る必要があるのか?
口腔機能関連器官に起こる加齢変化を診ています。年齢を経ると口腔周囲の筋組織が変性します。また、歯の喪失がある場合、
咬合力の低下を招きます。私たちが食事をとるときに無意識に動かしている筋肉は、歯の喪失があると機能しにくくなります。
たとえば頬筋は臼歯などの喪失により変性し、口腔前庭部の食塊の咬合面への押し戻し機能の低下が生じます。
臼歯の咬合面の摩耗や歯の喪失によって噛み合わせの高さ(咬合高径)の減少を引き起こし、口腔容積が減ります。
舌の稼働空間が小さくなるのです。舌が動かしにくくなり、嚥下反射も弱くなります。

噛み合わせの高さが低下しているため、下顔面が短くなっている状態。


口周りのシワが深くなる、筋肉が衰え、はりがなくなる印象に変わっていきます。

高齢者の20%は、口底部に液体を貯めてから嚥下するタイプになりますが、このタイプになると、舌の運動量を大きくする必要があるため、
嚥下に時間がかかるようになります。
咀嚼筋は退化し、顔面の表情筋は垂れ下がり、口腔全体に加齢変化が起こります。

このように複雑な症状をかかえる高齢者、あるいは高齢者予備軍の60代の患者さんはたくさんおられます。

入れ歯を使い続けることにより、身体は代償を払っている?
入れ歯で生活されている方の歯茎を見ると、顎の骨吸収をともなうことが多いです。
抜歯をして義歯を装着すれば、初めの1年間で骨の高さが4mm 減少するという研究もあります。(1996年 World Workshop in Periodontics)

歯がない側の下顎の骨は、高さがなくなっています。

25年間に及んで義歯を装着された患者のレントゲン撮影による長期研究によると、この間に連続続的な骨吸収が起き、
上顎は約4倍の骨吸収が生じると報告されています。(Warrerら1995年) 

合わない義歯を入れられていたため、上顎の歯がない部分は、骨の高さがなくなっています。
つまり、歯槽骨を維持するためには歯の存在が不可欠であり、入れ歯は骨吸収を加速させる、ということです。
以前、歯やインプラントにかかる力がどのように骨に伝わるかを解析した研究発表を見ました。
噛んだ時の力は、顎の骨の広い範囲に散っていくような画像でした。
歯やインプラントは顎の骨に植っているために、
このような力の伝わり方になるのだと理解できました。
だから、身体は骨をしっかりさせようと反応し、歯槽骨が維持されるわけです。

骨吸収により、口腔内の加齢変化は加速していきます。
合わない入れ歯がある場合には、骨の吸収が早まり、
また、患者さんも抜歯後に適合の悪い義歯を使用することで、さらに骨が吸収することの説明を受けていない場合もあります。
ほとんどの入れ歯の患者さんは、そのような事実を理解されていません。

私たちは、歯の保存だけでなく抜歯後の骨の保存も考慮した治療計画を立てねばなりません。
また、義歯が引き起こす危険性も十分に説明する必要があります。
患者さんは、ご自身の体験として、入れ歯の引っかかっている歯がダメになることを知っておられます。
「入れ歯ってだんだん大きくなるよね」
「入れ歯が浮いてきて噛めないけど、そういうものだよね」

このような状況を経た場合、噛むための筋肉の短縮を招き、咀嚼力の低下を起こし、顔面諸筋は下垂し、表情に多くの退化が見られます。

私たちは資料とりでお顔の写真を撮影するのは、受診に至るまでの表情の状態を把握するためです。
そして、治療がすすみ、治療用の仮歯などでリハビリをするときに、スムーズにトレーニングを行うことができます。
表情の特徴を分析し患者さんと共有することが、治療する上で重要であります。

唾液分泌低下は味覚障害、口腔乾燥につながる
上顎義歯を装着すると、奥歯の領域にある唾液腺を圧迫してしまいます。
加齢とともに唾液分泌量は低下するうえ、その唾液腺を義歯が圧迫するため、
より唾液がでにくくなります。
そのようにして、口腔内には以下のような変化が生じます。
(1)口腔内の湿潤が低下し食塊の滑りが悪くなるため、粘膜へ食物が付きやすく、咽頭へ食塊を送りづらくなる。
(2)食塊に十分な水分を混ぜ込むことができなくなり、むせやすくなり、味がわかりにくい。誤嚥のリスクが高まる。
(3)味覚の低下。。
 
口腔周囲筋トレーニングについて
健康寿命を伸ばすことへの関心は増加しています。
歯を失うことなく、予防管理していくことが最重要であります。
他科疾患の罹患率も減り、人生における医療費は大きく削減できます。
歯がグラグラしたり、抜けてきたりして、ああやばいなー歯医者行こうってなる場合が多いです。
非常に勿体無いです。それに、噛めない状態、合わない入れ歯の状態でずっと過ごされていると、
身体の代償として、筋肉の機能低下、顎骨の吸収が生じます。
入れ歯の名医と言われる先生でも、なんでもかんでもなおせるわけではありません。
過度に吸収してしまった歯茎に対しては、入れ歯が浮いてくるのは必然ですし、
インプラントも場合によっては難しくなるでしょう。
歯の欠損を放置することで、結果的に寝たきり→不健康で楽しめない人生となってしまいます。
本当は、入れ歯やインプラントがないお口が一番いいです。

では、歯周病や事故で歯を失ってしまった場合、
1ヶ月くらいで出来上がる保険の入れ歯で機能回復できるのでしょうか。
しっかり歯があった頃くらいに噛めるようにするには、ある程度の高額な治療費がかかってしまいます。
はっきり言って、健康はお金で買えるのです。
幸せな人生のために必要なこととして、
・健康
・人間関係
・経済
・楽しみ
・承認
など、いくつか要素が考えられます。
全て満たされていたらとても充実した人生と言えますね。
口腔内のトラブルから、寝たきりになってしまったとしたらどうでしょう。
健康を失えば、ベッド1つ分の人生と思うと、健康って当たり前じゃなくて、ありがたいことだなと思いますね。

オーラルフレイル:口の中の問題から全身の虚弱を招きます。

現在、若年労働者の減少とともに、高齢者でも現役で社会参加しなければならない状況になった今こそ、
お口の中から予防に取り組むこと、
治療が必要になったら身体の代償を払うような治療は避けること、
しっかり噛める状態を作り、維持していくこと
が大切ですね。

歯周病の進行に関わるプラークについて

2023年10月13日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は世界一多い感染症である、歯周病についてのお話しです。

歯周病と聞くと多くの人は「歯ぐきから血が出る」「歯ぐきから膿が出る」「歯がぐらぐらする」「歯周病の歯は抜かないといけない」など想像されるかもしれませんが、このような想像をした方は、歯周病について歯医者さんやメディアを通じて、一度はその説明を受けたことがあるか、ご自身が歯周病と指摘されたことがある方ではないでしょうか。歯石のついている状態も含めると成人の半分以上は歯周病であり、40歳以上の人の歯を失う原因の約80%が歯周病と言われています。しかし歯周病を正しく理解されている方はその割合よりはずっと少ないでしょう。一昔前の歯科医院でも、あまり歯周病については積極的に施術がされていなかったようで、削って被せる、詰める、あとは一回クリーニングして終了という感じの対応が多かったようです。

歯周病は歯ぐきにのみ炎症が見られる歯肉炎と、歯ぐきと歯を支える歯槽骨に吸収がみられる歯周炎を総称してこのように呼びます。少し前までは「歯槽膿漏」という言い方のほうが一般的でありこちらのほうが馴染みがある方も多いのではないでしょうか。
歯周病とはその言葉通り、歯そのものの病気ではなく「歯」を支えているその「周」囲の組織の「病」気なのです。家に例えると家そのものが壊れるのが虫歯でありその土台を支える基礎の部分、つまり家の建っている土壌そのものが崩れてしまうのが歯周病です。また厄介なことに、この病気は家の場合と同じようにあまり目立たず、気づくのに時間がかかる病気です。一旦それも進行してしまうと家そのものが建っていられなくなります。
 歯は目では見えないいくつかの組織で支えられています。歯ぐき、骨、歯と骨を直接結びつける繊維(歯根膜)、その繊維と骨の根を結びつける組織(セメント質)と4つの組織からなりたっています。
この目には見えない部分の病気はレントゲン写真を撮るとよくわかります。歯や骨のように硬い部分レントゲンでは白く写り、歯根膜や歯ぐきなどの柔らかい部分は黒く写ります。そのため、歯を支えるのに大事な骨が歯周病によって失われてるのがよくわかります。歯周病が進み骨が溶けると支えがなくなりますから、歯がぐらぐらしてきます。それでも痛みを伴わないことが多く、目に見えない部分の骨が溶けているのは、本人でもわからないので多くの人はそのまま過ごしています。さらに進行していよいよ噛む力に耐えられなくなるとある日突然歯が抜けてしまった…なんてことにもなります。
では歯周病の原因はなんでしょうか。歯周病は歯ぐきに炎症が起こることから始まり、歯ぐきに炎症が起こると歯ぐきが赤くなったり、腫れたり出血したりします。歯周病の原因は歯の表面についた細菌の集団です。この細菌の集団のことをプラーク(歯垢)といいます。

 このプラークは歯の表面にしっかりとしがみついていて、うがいなどでは決して落ちることがありません。なので、プラークはいわゆる食べ物のカスなどとは全く違うということです。プラーク中の細菌が出すさまざまな物質によって歯ぐきに炎症が起きます。
 一般的に歯石が歯周病の原因だと思われている方が多く、歯石を定期的にとってもらているのに、いっこうに歯周病が改善しないと言って来院される方が多数見れます。実は歯石はプラークが石灰化(石のように固くなる)したもので、歯ぐきに炎症を引き起こす原因はプラークより低く、歯や歯の根元の表面がざらつくため、プラークがつきやすくなります。いくら歯石をとってもプラークがつきやすい環境では、歯の炎症が改善しないということです。プラーク以外にも歯並び、嚙み合わせ、歯ぎしりなどの習癖、全身疾患など原因は他にもさまざまありますが、それら単独では歯周病は発症することはなく、プラークが一番の原因です。
 歯周病は生活習慣病とされています。一番の原因は口の中のプラークですが、その細菌は健康なヒトの口の中にも存在しており、その集団であるプラークは個々の食生活やブラッシング習慣、個人の感染に対する抵抗力により大きく違ってきます。口の中のプラークが歯周組織を破壊するかは、その人の生活習慣によっても大きく違っています。生活習慣病の特徴は生活習慣の歪みを正すことにより、その発症を予防できるということです。言い換えると生活習慣病は生活習慣を改善せず医者や歯医者の通うだけでは決して治らないということです。生活習慣病の多くがサイレントディジーズ(静かな病気)と言われ、普段はほとんど症状もなく進んでいく病気であることが特徴です。歯周病の多くは普段からのブラッシングにより予防可能で、歯周病の検査は歯科医院でできます。もし歯周病と言われてしまった方は、普段の食生活と特にブラッシング習慣について見直しと改善が必要です。この改善の指導とチェックは歯科医師や歯科衛生士が行います。
 歯周病治療の流れとしてまず最初に、すべての歯と歯ぐきの間にできた隙間(歯周ポケット)の深さと歯周組織の炎症の状態や破壊の程度を調べる検査をします。その程度の差によって治療の方法、難易度、予後の予測が大きく異なるため、この検査で歯周病の程度を把握します。歯肉炎や軽度の歯周炎の場合、生活の改善と原因となるプラークを除去するためのプラークコントロール(ブラッシング習慣や方法の改善)でほぼ正常な歯周組織にもどすことが可能です。中程度進行した歯周炎ではプラークコントロールしたあと、歯周ポケット内のプラークと歯石除去を行います。歯石は表面がざらざらしておりプラークが付きやすいため、通常は手用スケーラーまたは超音波スケーラーと呼ばれる歯石除去のための専用器具で機械的に除去します。さらに歯石を除去した後、プラークで汚染された歯の根本の一層を除去し、平滑にして歯ぐきに対して物理的な刺激をなくすことで、歯ぐきの炎症を抑えます。こうした一連の器具操作をスケーリング・ルートプレーニングと呼びます。歯周病が進行したケースでは、この歯石除去に時間をかけ、徹底して行います。しかし、歯石のついている部位によっては、徹底した除去が難しい場合もあります。そうしたケースや高度に進行した歯周炎の部位に対しては歯周外科を行います。
 以上が歯周治療の流れですが、歯周病の治療がおおよそ終了しても再発しないよう、ブラッシングという生活習慣を定期的にチェックし管理していくメインテナンスを継続することが、歯周組織の健康を長期にわたり保つために重要となります。

 歯周病の一番の原因はプラークですが、実際はプラークが歯に大量に付いていてもあまり歯周病が進行していない場合や、逆にプラークは非常に少ないのに歯周病が進行いている方もいます。その理由に、歯周病の発症や進行には生体の抵抗性や感受性などが影響し、遺伝的因子や環境因子などが関与していると考えられています。特に歯周病の危険因子と言われているのは喫煙と糖尿病です。喫煙と糖尿病は歯周病の発症や進行に大きく関与しています。また、全身疾患(冠動脈疾患、呼吸器疾患、糖尿病、早産や低体重児出産、骨粗鬆症など)が歯周組織の健康や歯周病に影響を及ぼすことはもちろんですが、歯周病がこれら全身の健康状態に強い影響を与えていることが報告されています。
外来での患者さんも、訪問診療での口腔ケアも、このように全身疾患との関連がありますので、歯周病のケアはずっと生活習慣として続けていく

 歯周病の一番の原因はプラークですが、プラーク以外の様々な病因因子の存在が関係いていると言われています。局所因子として嚙み合わせが悪いことなどによる外傷があります。歯の欠損を放置しておくと反対側の歯が伸びてきたりして早期接触が起こり、外傷を受けたりします。また片側の一番奥の歯が喪失し、噛み癖が変化し反対側の一部の歯に負担が集中したりするケースもあります。さらに、高齢になるにつれて生じる咬耗によって咬合高径が下がり、前歯への早期接触が起こるなど生理的にも咬合性外傷は起こるので、長期のメインテナンスでは嚙み合わせの変化のチェックは必要です。
 また、ブラキシズムはクレンチング(くいしばり)とグラインディング(歯ぎしり)、タッピング(歯をカチカチさせる)があります。クレンチングは無意識に行われることが多いです。グラインディングは、長年にわたって行われることがあり、どちらも歯に持続的にしかも無意識で噛む力がかかるため、歯の動揺や高度な咬耗などの原因となります。
 

 

地域医療と私たちの役割

2023年7月20日

地域医療

 我が国の歯科受診率は、先進国と比較すると低いというニュースをよく聞きます。歯科業界でも、昔から言われていました。アメリカやヨーロッパの人は、みんな子供の時に矯正をして歯をきれいにしたり、生涯にわたって予防のための歯科受診をしているという内容です。国民全員がそうなっているわけでは決してありませんが、確かにデータ上では、日本よりも受診率は高いです。口腔内の健康を保つことで、人生の長期にわたって全身の健康を保てるということがわかっているからです。

 これからの歯科医院には従来の歯科診療に加えて医科歯科連携を通して国民の健康寿命の延伸に寄与するという視点が求められるのではないでしょうか。そこまで歯科が行う必要があるのかと言う意見をいただくこともありますが、これは私達歯科医療従事者でなければできないことです。患者さんに侵襲を与えるわけではなく、私達が伝えていくことで患者さんの健康寿命が伸びるなら素晴らしいことだと思います。

国の地域医療に関する方針について
 また、このような取り組みを今、国も後押ししています。それが「経済財政運営と改革の基本方針」が毎年改定している「骨太の方針 2023」です。生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた取組の推進、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療機関・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携、歯科衛生士・歯科技工士等の人材確保の必要性を踏まえた対応、歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。また、市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する。とあります。
国は、歯科と医科との連携を奨励することで、重症化予防の方向に医療の舵を切り始めています。
 「口腔の健康は全身の健康にもつながることからエビデンスを蓄積しつつ、患者さんへの適切な情報提供、生涯を通じた歯科検診、フレイル対策にもつながる歯科医師、歯科衛生士による口腔機能管理など歯科口腔保健の充実、入院患者への口腔機能管理などの医科歯科連携に加え、介護、障害福祉関連との連携を含む歯科保険医療提供体制の構築に取り組む」
 この一文から、医科歯科連携という言葉が多くの意味をもって実態を構築していかなければならないことがわかります。また、歯科医療単独は脱却して、医療・介護・福祉の中の歯科医療へと昇華していかなければならないのです。
 今は医療の技術・発展とともに人の寿命はますます長くなってきています。足は、大丈夫だが歯が悪い。内臓系は、大丈夫だが足が悪い。など身体のどこかに問題がある高齢者は、少なくありません。今後、さらに健康寿命を伸ばしていく為には、「口腔」を含めて全身が健康でなければいけません。

オーラルフレイル
 口の健康が全身の健康に直結することは、あまりイメージしにくいかもしれません。噛めなくなると、栄養状態も運動機能も悪くなり、最終的には寝たきりになってしまうという流れがあります。若い時は虫歯により歯を失い、高齢になるにつれて歯周病により歯を失う傾向があります。日本の医療は発達しており、噛めないからといって簡単に死ぬことはありません。医療費をたくさん使って延命するわけですが、要介護状態で何年も生かされるような医療になってはいないでしょうか。噛めずに低栄養になると、老化は加速していきます。噛める状態ですと、食事内容は充実するのです。栄養素密度が重要になります。おかずが多く取れると、栄養素密度の高いたんぱく質が取れます。噛めない状態だと、柔らかいおかゆやうどんなどの糖質メインになりやすいです。栄養は偏ってしますのです。様々な食品を摂ることで、自然と栄養素密度の高い食事になります。サルコペニアは、筋力が低下して身体機能低下に陥ることです。フレイルは虚弱の状態です。ともに、しっかり噛めているなら関係ないことです。
 私たちは外来の患者さん、30歳以上の方によくフレイルの前段階、プレフレイルのことをお話しします。虫歯や歯周病、歯の欠損がある時点でお話しします。欠損放置の問題が目立つ方は特によくお話しします。「みなさん年をとります。フレイルになってから治療します?事前対応します?」「今すぐはいいかもしれません。でも3年後は?5年後は?」
 可能な限り要介護状態を避けて、健康寿命を延ばして人生を送りたいですね。
令和2年12月分の介護保険事業状況報告書によると、要介護率は年齢別で以下のようになっています。
・65~69歳:3.2%
・70~74歳:6.2%
・75~79歳:14.2%
・80~84歳:28.6%
・85~89歳:49.8%
・90歳以上:79.3%

 
歯科医院独自の取り組みや連携医療が必要であると考えています。地域で連携して1人の患者さんを診ていくという医療体制を作っていきたい。 歯科・内科・耳鼻科・小児科etc…経営は、別でも紹介・逆紹介をし情報を共有しつながっていけば、一つの総合病院です。
 歯科医院に定期検診で訪れた際、舌癌などの疑いを早期に発見できれば、近くの他の医療機関と連携すれば、軽症の、うちに治療して一命を取り留めることができるかもしれません。
 
歯周病は、糖尿病との合併症が恐ろしいと言われいます。歯周病をきちんと治療すると糖尿病も改善するケースがあることが明らかになってきました。そこで内科で歯科の受診を促してもらえれば、歯が悪くなる前に検診や治療を行えば、重症化せずいつまでもご自身の歯で美味しく食事が出来ることになります。栄養バランスの取れた食事をご自身の歯で咀嚼できお歳を重ねても楽しく健康的に暮らせる可能性が高くなります。
 それぞれの専門分野は、しっかり行いながら、他の分野ので可能性も視野にいれつつ、例えば内科に来院された患者さんに「最近、歯医者には、行かれてますか?症状がなくても検診に行かれた方がいいですよ!」または、歯科医院にこられた際に「足の具合は、どうですか?整形外科にも受診されるといいと思いますよ。」小さなお子さんがおられるお母さんは、なかなか自分の身体に気が回らないところがあるかと思いますので そう言う方には、「人間ドックとかにもいかれるといいですよ!お母さんが倒れてては、お子さんが困りますから ご自身のお身体も大事にして下さいね。」などの声かけを医療全体でしていければ、地域医療の連携につながるのでは、ないかと考えています。
 医療歯科連携を広義に捉えると
①クリニックレベルでの医科歯科連携
②在宅医療レベルでの多職種連携
③病院歯科の浸透
に分けることができます。
歯科医院⇄医科クリニック⇄在宅医療・病院
これら全てが、互いに患者さんの情報共有をし歯科治療や口腔ケアに加えて咀嚼機能の回復や摂食・嚥下リハビリテーションに力を入れて患者さんの生きる力の源である食べる力を支えてことが求められます。しかし、歯科医師のみでは、食道癌などの重篤な疾患を見逃す可能性があります。また、必要であっても咽頭・喉頭にら対する小外科手術は行えません。
 一方で、対応できる耳鼻咽喉科のみでは、在宅での摂食・嚥下リハビリテーションに対応出来るだけの人手がなく、咀嚼機能の回復もできません。ですから、医科歯科連携を通じて、診療科間で補い合うことが必要です。