こんにちは、こさか歯科クリニックです。
前回に引き続き、口腔内の病気についてのトピックです。
⚫️口腔がんには前触れがある
—口腔潜在的悪性疾患を知っていますか—
“口腔潜在的悪性疾患(Oral Potentially Malignant Disorders;OPMDs,)”という名前を聞いたことがあるでしょうか。
2017年にWHOにより新たに定義された“疾患概念”で,「口腔がんになりやすい口腔粘膜疾患の総称」を意味します。
これまでは“前がん病変、前がん状態”とよばれていた疾患を含んでいます。
口腔がんは人口10万人あたり6人未満の希少がんと前述しましたが、
OPMDSの保有率は2.5%(100人に2,3人)です。
口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)
1. 白板症
2. 紅板症
3. 紅板白板症
4. 口腔扁平苔癬
5. 口腔カンジダ症
6. 円板状エリテマトーデス
7. 先天性角化不全症
8. 日光角化症(光線角化症)
9. 梅毒性舌炎
10. 口腔粘膜下線維症
11. 無煙タバコ角化症
12. リバーススモーキング関連口蓋病変
●頻度の高いOPMDs(特に注意)
1. 白板症
比較的頻度が高く,癌化の可能性が高い
(4.4~17.5%)ため注意を要する粘膜疾患です。文字どおり、板状に粘膜が白く分厚くなっている状態です.粘膜が分厚くなっているため、拭っても除去はできないのが特徴です。
舌の辺縁や歯肉、頰粘膜に好発します。粘膜の白色肥厚の正体は角化です。義歯や補綴物の不適合や慢性刺で同様に粘膜が角化し、白く見えることがありますが、これは白板症ではありません。
特に原因が明確でないにもかかわらず、粘膜が白色肥厚していれば、白板症を疑います。疣状になって大きくなったり拡大したり、濃を伴う場合はすでに癌化している可能性もあります。
2. 紅板症
まれですが、癌化の可能性がきわめて高い(30~70%)ため注意を要します。鮮紅色で表面が斑状でビロード状の病変です、舌,口底,歯肉、粘膜などに見られます。
発見時にすでに癌化している可能性がく、“口腔がん”に準じて扱う必要がある病変です。
3. 紅板白板症
白板症のなかに赤みを伴う部分が存在する場合があり、これを紅白板症といいます。白板症のなかでも癌化しやすい状態ですので、特に注意が必要です。
4.口腔扁平苔癬
頻度が高く、注意が必要な粘膜疾患です。粘膜にレース状の白斑を呈し、赤みを帯びる病変です。中年期以降の女性に多く、頬粘膜に好発します。発生原因に自己免疫系の異常が関与しているといわれており、免疫系の細胞が粘膜を攻撃するために炎症を起こす結果、このような症状をきたします。炎症の程度により「刺激物がしみる」「ヒリヒリした痛み」訴えることがあります。
癌化の可能性は2〜6%と、さほど高くありませんが、目にする頻度も多いので発見した場合は、長期のフォローや症状の程度によっては口腔外科専門医へ紹介する必要があります。
5.口腔カンジタ症
近年、高齢化が進んだことで頻度が高くなっています。口腔カンジダ症は、口腔粘膜が真菌(カビ)に感染することで起こります。
口腔カンジダ症といえば“ガーゼなどで拭い取れる”白斑が特徴ですが、白斑を伴わず“赤く、ただれたような”病変が広がる、いわゆる“赤い口腔カンジダ症”が存在することに注意が必要です。特に高齢者の場合、義歯の下部に白い口腔カンジダ症も、赤い口腔カンジダ症も発生していることが多く,慢性化して癌化の可能性が高くなります。高齢者の義歯下の粘膜の変化には注意が必要です。
⚫️きわめてまれなOPMDs(全身の疾患に伴うもの)
6.円板状エリテマトーデス
皮膚に角化やびらんを伴う不規則な形態の紅斑性病変です。自己免疫疾患の1つですが、紫外線により悪化や発症することが知られています。口の中では口唇や頰粘膜に紅斑やびらんが出現し、癌化することがあります。
7.先天性角化不全症
血球の減少を伴う爪の委縮、口腔の白板症,皮膚色素沈着を主徴とする先天性の疾患です。前記の症状は必ずしもそろうことはなく、不全型も多いとされています。口腔の白板症から癌化することが報告されています。
8 .日光角化症(光線角化症)
慢性の紫外線刺により皮膚細胞のDNA変異が生じて発症します。表面がザラザラした斑状になり、わずかに隆起する、皮膚がんの前駆病変でもあります.口唇は紫外線が当たりやすい場所であり、口腔がんに移行しやすいです。
9.梅毒性舌炎
近年、日本で梅毒感染が増加しているとの報告があります。梅毒に罹患すると早期の段階から特に舌に炎症を起こすことが知られており、病期によって紅斑や白斑などさまざまな症状を呈します。このような舌の症状を梅毒性舌炎といいますが、癌化しやすいことが報告されています。
⚫️日本では見られないOPMDs
以下に示すものは、特別な喫煙状態により生じるもので、日本人に見られることはないと考えられていますが簡単に特徴だけ説明します。
10.口腔粘膜下線維症
東南アジアで噛みタバコと同じくらいポピュラーな嗜好品である“ビンロウジュ”によって口腔粘膜下が固くなる疾患です。頰粘膜に出現します。
11.無煙タバコ角化症
世界的には無煙タバコの1種である噛みタバコを嗜好する習慣があり、噛みタバコにより口腔粘膜表面の著しい角化が生じます。これも頼粘膜に好発します.
“無煙タバコ”というと電子タバコをイメージしがちですが、そうではありません。電子タバコも通常のタバコ同様のリスクがあると考えられています。
12.リバーススモーキング関連口蓋病変
喫煙の特別な方法として、「タバコの火のついたほうを口の中に入れて喫煙する」というリバーススモーキングというものがあります。特に、口蓋に火傷とともに高度の炎症を起こし、慢性化すると癌化します。
⚫️鑑別できたほうがよい頻度の高い口腔粘膜疾患
癌化する可能性のない、日常よく遭遇する口腔粘膜疾患について紹介します。
1.褥瘡性漬瘍
不適合な義歯や補綴物により、舌や粘膜に傷が生じ,そこから細菌感染により清瘍が拡大します。補綴物などの刺激を改善すると、7日程度で消失します。原因が明らかになっていることが重要です。
2.再発性アフタ
特に原因となるものがないにもかかわらず、口唇や舌などに周期的にできる口内炎を指して、再発性アフタとよびます。直径数mm大の類円形の浅い潰瘍です。周囲に発赤を伴うこと(紅量)が特徴です。7~14日くらいで自然に消退するのが特徴です。
3.溝状舌
舌背部に多数の溝が生じる状態を指して、溝状舌といいます。遺伝的素因で生じると考えられています。加齢とともに明らかに溝が深くなってくるため、不安に思われる患者さんも多くおられます。治療の必要はありません。
4 地図状舌
舌背部に地図状の模様をきたす状態を地図状舌といいます。中央部が鮮紅色でその周囲に白色の縁取りを示す大小の斑が現われ、日によって形状が変化します。原因不明ですが、自覚症状がないことが多く、治療の必要はありません。
5.エプーリス
歯肉上に発生した”炎症性”の増殖物のことです。歯肉に発生する増殖性変化としてもっとも多いものです。
エプーリスの粘膜表面はツルツルしていて正常粘膜色で,歯肉から有茎性に増殖してくることが特徴です。
※良性、悪性かは腫瘤の辺縁を上方に持ち上げ、腫瘤が茎性であることを確かめます。癌は正常組織に浸潤し、下広の腫瘤であるのに対し、エプーリスは、歯肉に茎状に付着しています。
口腔内の変化が気になったら、まずネットなどで調べる方が多いです。
気になったら歯科受診し、必要な検査と診断されると安心と思います。
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