Tag Archives: 入れ歯、噛めない、インプラント

Link

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

インプラント治療例

 

今回は、欠損と合金の被せ物の虫歯の再発に対して、
インプラントとセラミックで治療をした例についてです。

 

術前口腔内写真

 


術前上顎:虫歯の進行により残根状態のところがあります。


術前下顎:奥歯は虫歯により欠損になっています。


術前左側:噛み合わせのない奥歯が伸びてきています。


術前右側:左側と同様に、歯の病的移動が見られます。

 

術前CT

長期間歯の欠損が放置されていたため、

噛み合わせのない歯の病的移動が見られます。

 

治療後口腔内写真

術後口腔内写真上顎:インプラントとセラミック治療

 

術後口腔内写真下顎:インプラントとセラミック治療

術後口腔内写真左側:噛み合わせの面を揃えて治療をしています。

 

術後口腔内写真右側:両側の臼歯部でしっかりと噛み合わせを作ります。

 

インプラント治療の準備について

まずは術前の検査と診断から行います。

CT撮影

インプラント治療を行う際、骨のあるところにインプラントを位置付けることができるか、CTで十分に確認をします。

すでに抜歯されていて、何ヶ月、何年も経過している場合は、骨の形態はなだらかになっており、

ある程度高さと幅が吸収して縮小していることが多いです。

骨って吸収する?何のこと?と思われたかもしれません。実は、歯の根がなくなった部分は、

ほっとくと自然に吸収して小さくなってきます。

インプラント治療を必要とする場合、虫歯や歯周病で歯を失っていることがほとんどです。

前歯の欠損の場合、事故で歯が折れてしまったということもあります。

炎症により骨が吸収していることが多いですし、

私たちアジア人の唇側の顎の骨は薄いので、

インプラント治療をする際、よく骨造成を行い、足りない骨幅を補っていく必要があります。

 

骨造成

抜歯し、その周囲にある炎症性の組織を除去します。

同時にインプラントを埋入するのですが、足りない骨を補う骨造成もセットで行います。

GCのサイトランスグラニュールという材料を使用しています。

主成分は炭酸アパタイトで、国内初のインプラント治療に適応が認められた、

顆粒状の骨補填剤です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界初の「炭酸アパタイト」が主成分とする、国内初の「インプラント周囲を含むしか領域での使用」が認められた顆粒状の骨補填材です。「炭酸アパタイト」は、骨の無機成分と同じ組成のため、患者さん自身の骨へ効率的に置換され、目標とした骨面の高さを維持します。また、インプラント体に対し、強固なオッセオインテグレーションの獲得を実現します。

公式サイトより

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

生物由来原料ではないことが大きなポイントと考えております。

以前よく用いられていた骨補填剤は、ウシ由来の成分であったりしました。

サイトランスグラニュールはその点、完全化学合成によるものですから安心です。

何より、インプラント治療において、良好な結果を得ていること、

実際使用している歯科医師からの評価も高いことから、私たちも導入することになりました。

骨造成の際に使う特殊な膜

インプラント埋入し、骨が足りない部位に骨補填剤を転入した後、

そのまま軟組織を縫合して終わるとどうなるかというと、

骨造成したところに軟組織が入り込み、意図したエリアの骨造成ができないのです。

そこで、非吸収性フッ素樹脂(d-PTFE)オープンバリア・メンブレンというものを用いて、

軟組織が入り込まないように骨造成部位をカバーし、その上から軟組織を縫合します。

これは非常に優れもので、骨造成をする部分の軟組織が完全に閉鎖しなくても、

バクテリアの侵入を防いでくれるメリットがあります。

縫い合わせた傷口は、一般的には開いてほしくないわけですが、このメンブレンを用いると、

傷口が開いてメンブレンが露出しても、感染が生じるわけではないので、そのまま治癒を待つことになります。

大体術後4週くらいの間にメンブレンが自然に浮いてきますので、ピンセットで除去をして終わりです。非常に使い勝手が良い材料であります。

 

ノーベルガイド

この投稿コーナーでも何回か触れたことがありますが、正確な位置のインプラント埋入は、実は術後の被せ物の寿命に大きく関わることです。

インプラントの角度、位置は、術者の少しの手のブレ、手術用ドリルのブレによって大きく左右されます。

私たちは、せっかく治療したところが長持ちして欲しいので、インプラント治療に手術用のガイドであるノーベルガイドをよく用いています。

CTデータを元に、インプラントの被せ物の形態を決め、それが口腔内で機能するために理想的なインプラントの位置を逆算してプランニングします。

そのシミュレーションをノーベルバイオケア社におくり、手術用のガイドが送られてきます。

半透明でインプラント埋入位置が再現されている金属のスリーブが内在しています。

この写真のガイドは、上顎に4箇所、10度以内の角度でインプラントが位置付けられるようにしたものです。人間ではそのような手術をフリーハンドで行うことは不可能です。

ではガイドを用いない時はあるのかというと、少ないですが条件が整っている場合にガイドなしでも施術をします。骨幅や高さ、軟組織、審美性にある程度ゆとりがあり、許容範囲が大きい場合です。

ただ、基本的にはシミュレーションした位置を口腔内でも再現できるように、ダイドを用いるのが良いと考えています。

 

治療が終わったら

インプラントの被せ物が入り、そこから患者さんの新たな生活がスタートします。私たちは、インプラントが特別強くも弱くもないです、とお伝えしています。この意味合いとしては、インプラントは虫歯にはならないですが、お手入れを全くしなければ、周りの歯と同様に歯周病と同じ状態になるため、ケアはしっかりしましょうねという意味です。

よく誤解されている方がおられますが、インプラントを入れたところが特別骨が溶けてなくなっていくという都市伝説のような話があります。インプラントは歯周病と同じ状態になりうるのですが、もしそうなったときは、周りの歯も同様に歯周病でダメになっているわけで、だから特別強くも弱くもない、とお話しているのです。

 

虫歯予防に効果的なフッ素。インプラントには??

インプラントにフッ化物のケアは材質的に合わないと考えられています。

これもメリットデメリットを考慮して、ケア用品を用いる必要があります。

例えば、口腔内にほとんど天然の歯が残っており、数本インプラントで補綴されている箇所があるとします。このような場合、フッ化物のケアは、大部分を占める天然歯の虫歯予防のメリットが大きいため、積極的に用いると良いでしょう。

反対に、上顎がALL on 4、下顎がインプラントオーバーデンチャーといった、ほとんどあるいは全ての歯がインプラントによる補綴装置の場合、そもそもフッ化物のケアをするメリットがないか非常に小さいため、必要ないという判断になります。

 

どこで治療を受けるのが良いか

インプラントは非常に良い治療ですし、もっと世の中に広まって欲しいです。周りにインプラント治療を受けた方がおられて、そのクリニックの評判が良ければ一度相談に行かれたら良いと思います。

私たちのクリニックでも、お気軽にご相談いただけたら幸いです。

ご予約はこちらからお願いします。

ご予約・お問い合わせ

成人期以降〜高齢の方の口腔機能について

2024年7月27日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

口腔機能についてのトピックです。

⚫️成人期以降(高齢者)の口腔機能の変化
—まずは知っておきたい!食べることのメカニズム—

 

①食べ物の認識

 

NY大学の短期留学中、よく食べていたチキンオーバーライス。

初めて見る食べ物ですし、見た目はぐちゃっとしていてどんな味かわからないわけです。

それに対して、よく食べるものは目で見て食物の性状や味、温度も予想できます。

ちなみにこのチキンオーバーライスは、外食した中でもピカイチのお味でした。

本来、私たちがものを食べるとき、捕食すること前に過去の経験などからその食べ物はどのようなものか(噛む必要がある食品なのか?舌で押しつぶして食べるものなのか?嚥下だけで対応するものなのか?など)について、食べ物を見る、触る、匂いを嗅ぐなどして判断します。

 

②食べ物の取り込みと咀嚼

 

前歯は、ものを噛み切る「咬断」に向いた、シャベルのような形状をしています。

 

食べ物を口腔内に取り込む前に、口唇や前歯によって適当な大きさに切り取られ、舌は食べ物を迎えるかのように切歯の付近まで突出します。この際にも口唇や舌は食べ物の物性や温度などを感知して、その後の処理方法にかかわる情報を得ます。ある程度の固さをもち、咀嚼のが必要な食品に対しては、舌で受け取った後。すばやく咀嚼する側の歯の上に舌で食べ物を移動させ、舌と顎の動きの協調運動により上下の歯列で粉砕処理します。プリンのような軟らかい食品の場合、舌と口蓋で押しつぶすように処理されます。このとき、鼻腔は咽頭と交通し、呼吸をすることが可能です。

 

奥歯はものを噛み砕くために適した形態です。

特に第一大臼歯は、7割くらいの人がものを最初に噛み砕く機能を有しており、

主機能部位と呼ばれる噛み合わせのエリアがあります。

 

③食塊形成と飲み込みの開始

 

咀嚼が進んで口の中にバラバラに粉砕した食べ物は、そのまま飲もうとすると誤嚥してしまうことがあります。なぜなら、嚥下の際に私たちが息を止めていられる時間は0.5秒ときわめて短いためです。口の中でバラバラに広がった状態で飲もうとすると,早く喉に向かうもの、後から向かうものも含め、0.5秒に間に合わなくなってしまいます。そこで,バラバラに広がった食べ物を舌で上手に一塊にまとめあげることが必要になります(食塊形成)、この際に、唾液と十分に混ぜられるとより飲み込みやすくなります。
食べ物が一塊にまとめられると、軟口蓋が持ち上がることで鼻咽腔が閉鎖されます。この際に舌の前方が強く口蓋に押しつけられ、波打つように動かしながら咽頭に食べ物を押し込みます。

 

 

④咽頭(のど)への送り込み

 

舌の後方は口蓋や軟口蓋に向かって動き、食べ物を押し込みます.食べ物は一気に咽頭の下方に流れ込みます。そのとき、気管の入り口にある喉頭蓋が倒れ込み、同時に声帯など気管を保護するいくつかの構造物が閉鎖し、気管を閉じます.これにより、食べ物が気管に入り込むのを防止します(この食べ物を飲み込む間,息が止まっている時間が0.5秒)。

 

⑤食道への送り込み

 

舌根部は咽頭の後壁に向かって食べ物を押し込み、咽頭の後壁は前方に張り出すことで食道への押し込みを助けます。

 

 

⑥飲み込みの完了

 

食べ物は、すべて食道内に押し込まれました。あとは食道の蠕動運動により胃に向かいます.食べ物が食道に押し込まれたと同時に、喉頭蓋は跳ね上がって気道が開放され、呼吸が再開されます。

 

—高齢期にみられる口腔機能の変化—

 

成人期以降に起きる口腔機能の問題としては、一度獲得した機能が生理的に低下したり、病気が原因で失われたりすることがあげられます。

 

—筋力の低下–

 

加齢とともに全身の筋力は低下します。これは、生理的に起こる筋肉量の低下に加えて、低栄養などによる筋肉量の減少からも影響を受けます。この変化は、口腔や咽頭の筋肉にとっても例外ではありません。ロ腔や咽頭の筋力が低下することで、結果、噛む機能や飲み込む機能も低下するのです。特に舌は筋肉の塊ですので,舌の筋力の低下は、噛む機能。飲み込む機能に加えて、話す機能に影響を与えます。

 

—唾液の減少—

 

唾液は、噛んだ後の食べ物に湿り気を与え、まとまりやすく変化させるのに必須です。また、食べ物の味を含んだ物質を、味を感じる細胞(味蕾)に届けるのは、唾液の役目です。唾液の分泌量は、加齢そのものでは大きく変化しないといわれています。しかし,高齢者が服用している薬の多くは唾液の分泌を妨げる作用をもっています。特に「多剤服用患者」とよばれる。
多くの薬を飲んでいる高齢者では、唾液分泌が薬の影響を受けている場合が多くなります。

 

–喪失歯の増加—

 

現在、80歳で20本の歯を有する人の割合は、50%を超えているといわれています。しかしながら、いまだに残りの50%の人は歯を喪失し、義歯などの補綴装置を使うことで口腔機能を保っているといえます。しかし、義歯による咀嚼機能の回復には限界があり、組織機能の面では天然歯の有意性は揺るぎません。つまり、喪失歯の増加は咀嚼機能の低下につながるといえます。

 

⚫️口腔機能が低下することによる問題

 

—摂食嚥下障害—

 

高齢になると、加齢による機能の低下に加えて、複数の全身疾患をもっていたり、多種多様な薬を服用していたりするため、摂食嚥下障害になる危険性が非常に高まります。高齢者に多いの嚥下障害の症状としては、咀嚼ができない、食べこぼし、嚥下反射が遅くなる、食道の入口の開きが悪くなる、飲み込むのに時間がかかる、唾液が少なくなる,むせたときに咳をすることが下手になる、などがあります。また、摂食嚥下機能に影響を及ぼす副作用がある服用薬としてアトロピンなどの抗コリン薬、三環系抗うつ薬、抗てんかん薬などがあり、注意が必要です。

 

—誤嚥—

 

気道と食道はこのように交差しているので、

摂食嚥下の過程で誤って食物が気管内に入らないよう、

筋肉が協調運動をしているのです。

食物が通る際は、通常気管へ入らないように蓋がされるわけです。

声帯を越えて気管内に唾液や食べ物が侵入することを「誤嚥」といいます。声帯を越えなく喉頭内にこれらが入り込んでしまった際には、「喉頭侵入」といいます。食べ物や唾液が誤嚥や設
喉頭侵入を示すと、それを喀出するために咳嗽反射が起こり、「むせ込み」がみられます。ですから「むせ」がみられた際には,誤嚥や喉頭侵入を起こしていると考えて間違いありません。一方で、誤嚥してもむせず、睡眠中に無自覚に唾液とともに細菌が気管や肺に入る場合もあり、「むせなし誤嘸(不顕性誤嚥)」とよばれています。

 

—窒息—

 

「窒息」とは、空気の道である気道、すなわち口から咽頭、喉頭、気管にかけての道に食べ物が詰まり、呼吸ができなくなったことを指します。この窒息は、命の危険に直結するために注意が必要です。窒息事故は、さまざまな食品によって起こります。死亡に至た窒息事故の原因食品を消費者庁の報告からみてみると、1位である「餅」についで,「米飯」「パン」「肉」「魚介類」と続き、われわれ日本人が普段から食べてい食品が並びます。特に嚥下機能が低下した高齢者おいては、窒息への配慮が必要です。

 

—脱水・低栄養—

 

私たちが1日に食べたり飲んだりしている食事やお茶の量を想像してみてください。3度の食事に加えて、おやつや夜食、紅茶やコーヒーなどを頻繁に摂取していると結構な量になることがわかります。1日分を並べれば、テーブルいっぱいになるような量です。一方。摂食嚥下障害がある人では、十分な食事を摂ることが難しくなれば、当然「低栄養(栄養障害)」に陥ります。
「嚥下障害の人はスプーン1杯の水で溺れる」という言葉があります。通常、水というと誰しも飲みやすいものと思いがちです。しかし、嚥下障害の人にとって、水は動きが速く口腔内でバラバラに広がることから。もっとも誤嚥をしやすく、飲みにくいものなのです.水は、私たちが生きていくために毎日摂取しなければならない重要なものです。嚥下障害になり、水やお茶,みそ汁などの水分を摂るときにむせるようになると、知らず知らずのうちに摂取量が減少し。「脱水」につながります。

 

—食べる楽しみの消失—

 

「生きるために食べよ、食べるために生きるな」・ギリシアの哲学者・ソクラテスの名言としていまも残るこの言葉は、日々、忙しく働く私たちにも教訓を与えてくれます。しかし、「食べることは生きることである」ことも事実で、特に摂食嚥下障害患者さんにとっては、食べることが制限されるなか、「食事を楽しめない人生なんて!」と思うのも無理はありません。
食べるものに制限があっても、食べる楽しみを味わってもらえるような支援を継続することが必要です。

インプラントの手術、1回で終わりにできる?

2024年7月1日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


左下臼歯部にインプラント埋入された状態のCT画像。

 

⚫️インプラント治療には、一次手術と二次手術と2回の手術を行う「2回法」と、1回の手術ですませる「1回法」があります。

 

2回法は、インプラントを埋入後にいったん歯ぐきを閉じてインプラント体とあごの骨の結合を待ち、その後2度目の手術をしてインプラントの頭を出し、アバットメントを取りつけます。それに対して、1回法はインプラント埋入と同時にアバットメントをつける方法で、手術が一度ですみ、2回法にくらべて治療期間を短縮することができます。
適用症例が広いのは2回法で、より慎重に治療を進めたい場合に用いられます。前歯の審美治療、再生療法が必要なかた、持病のあるかた、タバコを吸うかたなどは、通常2回法が適用されます。1回法は、比較的治療条件のよいケースで選択されるのが一般的です。

 

⚫️予備治療

 

インプラントを埋入する準備のために行う予備治療は、すべてのかたに必要なわけではありません。炎症がなく骨量も十分で、条件的に問題がなければ、予備治療が必要ない患者さんもなかにはおられます。
ただ、歯を失うに至った原因によっては、インプラント治療を不利にする状況がお口のなかに生じていることが少なくなく、予備治療が必要になるケースはめずらしくありません。
たとえば、歯周病で歯を失った場合、その周りの歯にも大なり小なり歯周病の炎症が起きています。そこで、まず歯周病をしっかりと治療し炎症を止めなければなりません。周りに細菌感染があっては、インプラントを埋入しても今度はその細菌がインプラントの周りの骨に感染しかねません。もしも感染が起きれば、インプラントとあごの骨は結合せず、どんなに巧みな術者でも、治療を成功させることは難しいのです。
また、歯を失うほど歯周病が進行したかたのあごの骨は、炎症によって減ってしまっています。インプラントを安定させるための骨が足りない場合は、再生療法を行い骨を増やす必要があります。こうした予備治療は、インプラント治療を成功させるカギを握っているといっても過言ではありません。
予備治療が必要と診断されたかたは、予備治療の期間を含めた治療計画についてじっくり説明を受け、気がかりなことは遠慮なく質問して治寮について発しましょう。

●歯を失うと、その周りの骨は「歯を支える」という役割を失ってしまうため自然と減ってしまいます。入れ歯、ブリッジ、インプラント治療のいずれを選ぶ場合も治療に不利になりますので、歯を失ったら早めに歯科医院で相談しましょう。
●インプラントは、いったんあごの骨と結合すると、がっちり固定して動きません。インプラントを入れた後は矯正治療ができなくなってしまいますので、矯正治療をご希望のかたは、インプラント埋入前に必ずご相談ください。

 

⚫️治療を受ける前に知っておきましょう。

 

インプラント治療を受ける前にぜひ知っておいていただきたいことや、患者さんからよくある質問をまとめてみました。

 

●なぜ治療に時間がかかるの?

 

インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに(多くの因子・条件に左右されますが)おおむね1~4ヵ月かかります。インプラントの改良により、この期間は徐々に短縮してきていますが、それでもこれだけ時間がかかるのにはわけがあります。
インプラント治療は、チタン製のインプラント体とあごの骨がガッチリと結合してはじめて機能しますが、この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるものなのです。つまり、インプラント治療を成功させるには、骨の自然治癒力を見守りじっくりと待つことが不可欠。治療に時間がかかるのはそのためです。

歯がないところにインプラント埋入し、骨と結合する治癒期間をおきます。

 

●タバコを吸ってるけど大丈夫?

 

喫煙はインプラント治療の大敵です。
インプラントを入れると決めたらぜひ禁煙しましょう。「禁煙はどうしても無理」というかたは、せめて術前・術後の数週間、喫煙本数を可能な限り減らしてください。喫煙は、歯ぐきの傷の治りを遅らせ感染のリスクを高めるばかりか、骨の結合を遅らせて治療の邪魔をします。ぜひご協力をお願いします。

 

●治療に不適応なケースとは?

 

▪️成長過程にあるかた
▪️免疫不全症のかた
▪️抗がん剤で治療中のかた
▪️放射線療法を受けているかた
▪️ホルモン療法を受けているかた
▪️チタンアレルギーのかた
▪️骨粗しょう症のお薬を多量、長期にお使いの
かた
▪️また、全身疾患の病状を良好な状態にコント
ロールできていないかたなどはインプラント
治療に不適応な場合があります。なお、全身
疾患のある患者さんの場合、歯科医師が主治
医と連絡をとり、治療が可能かどうかを確認
して進めさせていただきます。

 

●手術後の痛みや腫れは?

 

痛みの感じかたは個人差があるので一概には言えないのですが、再生療法などをしていない通常のインプラント治療であれば、術後1日ほど軽く痛む程度でしょう。免疫応答がさかんな若い人ほど腫れやすいですが、腫れが引くのも早く、年齢が高いほど腫れは少ないー方、腫れが引くのは遅くなります。しかし、痛みが治まってきていれば心配いりません。痛みが増すようでしたら、治療を受けた歯科医院で診てもらいましょう。

術後の痛みや腫れについては、かなり個人差があるように思います。複数本を埋入し、同時に大規模な骨造成をするような手術の方が、一般的には術後の不快症状が出やすいと考えられます。しかし、施術を受けられた方で、「あまり痛くなかったし、ハイキングしてきた」とへっちゃらな方もいらっしゃいました。一方で、1本のみの埋入手術で、不快感を強く感じられるケースもありました。

 

●インプラントが壊れたら?

 

インプラントの構造でいちばん壊れやすいのは、上部構造(被せ物)です。
インプラントで強く噛めるようになるうえ、天然歯のときにはあった噛む力を感じる歯根膜がないため、噛む力の加減が働かず、上部構造が欠けたり割れたりしやすいのです。インプラント体が壊れたわけではないので、上部構造だけの修理・交換で対応できます。ご安心ください。

 

●手術後の食事はどうする?

 

そっとしておくために、食事は反対側の歯で食べてください。とくに抜糸するまでの1~2週間は手術したところの絶対安静期間なので噛まないようにお願いします。なかでも再生療法を受けたかたは、歯ぐきで食べられる軟らかな食事を。治療の成功にかかわる重要なお願いなので、しばらく不自由をおかけしますがご
協力をお願いいたします。

 

●治療期間中に仮歯は入れられるの?

 

これはケースバイケースです。患者さんがお困りにならないようさまざまな工夫をさせていただきますが、難症例の場合、治療を成功させるために、入れ歯も仮菌も使わずにそっとしておく期間もあるからです。入れ歯や仮歯を使えない期間があるかどうかについても説明を受け、それも含めインプラント治療を選択するかをお考えいただければと思います。

 

●インプラントが結合しなかった?

 

しっかりとした検査と診断、予備治療を終えて治療をしているのであれば、もし結合しなかった場合でも、早期に抜いて再治療をすることができます。あごの骨の穴は数カ月でもとどおりにふさがりますので、それを待って再埋入を行います。順調に結合が進むよう、「手術したところで噛まない」などの歯科からのお願いごとに注意してお過ごしください。

 

メンテナスでお会いしましょう!

 

インプラント治療が終わったら、定期的にメンテナンスを受けて検診とクリーニングでよい状態を長持ちさせていきましょう。
⚫️インプラントは人工の歯だから、「もうこれでむし歯にも歯周病にもならないと思っているたもおられるかもしれません。たしかに、インプラントはむし歯にはりません。でも歯周病にはなります。放っておくと、歯周病とそっくりの病気、「インプラント周囲炎」という病気になってしまうのです。
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えるあごの骨に炎症が起きる病気。天然歯のときと同様、インプラントの周りに歯石がついて、プラークがたまることによって起きます。そこで、インプラント治療が終わったら、今度は治療のためでなくメインテナンスのために、ぜひ歯科医院に定期的においでください。
メインテナンスでは、毎日の歯みがきやフロスでプラークがきちんと取れているかのチェックや、ご自分に合った歯みがきの仕方を教わることができます。インプラントにプラークや歯石がこびりつかないように、クリーニングも受けられます。
また、インプラントが入ると、つい強い力で噛んでしまうので、もしも噛み合わせが悪くなっていると、上部構造の欠けやネジのゆるみにつながりやすいのです。噛み合わせのチェックをすることで、そうしたリスクの軽減ができます。
インプラント治療は、入れたら終わりではありません。快適に使い続けるには、むしろ入れてからのお手入れが重要です。放っておいてインプラントの周りがプラークや歯石だらけになると、今度はインプラントの周りに炎症が起き、あごの骨との結合が失われて、せっかくの治療が機能しなくなってしまいます。
治療が終わったら、今度はメインテナンスでお会いしましょう。歯科医院とのお付き合いを予防中心に変えると、インプラントの快適な状態を長く維持できるだけでなく、残っている周りの歯の健康も、歯科のプロフェッショナルといっしょに守ることができます。

インプラント治療の素朴な疑問

2024年5月21日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

インプラント治療についてよく質問されますが、
「どうして治療に時間がかかるの?」
「インプラントって入れてすぐ歯作れないの?」
という内容は多いですので、この疑問に関するお話です。

 

リアルな治療の感想

 

「思ってたよりラクやった」と治療の感想
埋入して骨にガッチリと結合し自立するのがインプラントの特徴。ほかの歯に負担をかけない点で、代替えのない治療になっています。

歯を失ったとき「ブリッジか、入れ歯か、それとも•・・・」
と、多くのかたが迷うと思います。
インプラント治療は、金属の一部をからだに埋め込み、上部に人工歯を取りつけて使うという特殊な治療法です。残念なことですが、一時期
週刊誌などでバッシングされた影響もあり、「怖いな」と思っているかたもおられるかもしれません。ただ、実際には多くのかたがインプラント
治療を受け「治療してよかった」と喜んでおられるのも事実です。
インプラント治療のいちばんの特長は、埋入した骨にガッチリと結合し自立するということ。つまり、ほかの歯に負担をかけず、傷めずにすむということです。こうした治療は現状ではインプラント治療以外になく、そういう意味で、替えのきかない治療になっています。
ただし点もあります。手術が必要、治療期間が長い、予備治療に時間がかかることもある、そして自費診療である点です。ただ、信頼性の高い材料と機器・器具を使い、検査と治療計画を綿密に行い、感染対策を万全にして、専門的に訓練されたスタッフが治療するとなると、ある程度の費用が生じざるを得ない、というのが私の実感です。
もしインプラント治療に興味があるなら、知識を得てじっくり検討してみてください。不安なまま迷うのも、逆に最初から「インプラントしかない」と決め込むのも、どちらも残念なことだと思います。どの治療を選ぶにせよ、後悔をしないために、まず知ることからはじめましょう。


インプラントはこのように骨に埋入されて、上に被せ物が装着される構造です。


ブリッジは歯がない部分に対し、周囲の歯を削って土台として使います。接着剤で土台に装着をします。


部分入れ歯は取り外し式の歯です。欠損の近くの歯に引っかけをして維持する設計です。

 

なぜ埋入する前の予備治療が大事?

 

インプラントを埋入する準備のために行う予備治療は、すべてのかたに必要なわけではありません。炎症がなく骨量も十分で、条件的に問題がなければ、予備治療が必要ない患者さんもなかにはおられます。
ただ、歯を失うに至った原因によっては、インプラント治療を不利にする状況がお口のなかに生じていることが少なくなく、予備治療が必要になるケースはめずらしくありません。
たとえば、歯周病で歯を失った場合、その周りの歯にも大なり小なり歯周病の炎症が起きています。そこで、まず歯周病をしっかりと治療し炎症を止めなければなりません。周りに細菌感染があっては、インプラントを埋入しても今度はその細菌がインプラントの周りの骨に感染しかねません。もしも感染が起きれば、インプラントとあごの骨は結合せずどんなに巧みな術者でも、治療を成功させることは難しいのです。
また、歯を失うほど歯周病が進行したかたのあごの骨は、炎症によって減ってしまっています。インプラントを安定させるための骨が足りない場合は、再生療法を行い骨を増やす必要があります。こうした予備治療は、インプラント治療を成功させるカギを握っているといっても過言ではありません。
予備治療が必要と診断されたかたは、予備治療の期間を含めた治療計画についてじっくり説明を受け、気がかりなことは遠慮なく質問して治療について検討しましょう。

 

なぜ治療に時間がかかるの?

 

インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに(多くの因子・条件に左右されますが)おおむね1~4ヵ月かかります。インプラントの改良により、この期間は徐々に短縮してきていますが、それでもこれだけ時間がかかるのにはわけがあります。
インプラント治療は、チタン製のインプラント体とあごの骨がガッチリと結合してはじめて機能しますが、この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるものなのです。つまり、インプラント治療を成功させるには、骨の自然治癒力を見守いじっくりと待つことが不可欠。治療に時間がかかるのはそのためです。

 

タバコを吸ってるけど大丈夫?

 

喫煙はインプラント治療の大敵です。
インプラントを入れると決めたらぜひ禁煙しましょう。「禁煙はどうしても無理」というかたは、せめて術前・術後の数週間、喫煙本数を可能な限り減らしてください。喫煙は、歯ぐきの傷の治りを遅らせ感染のリスクを高めるばかりか、骨の結合を遅らせて治療の邪魔をします。ぜひご協力をお願いします。
▪️治療に不適応なケースとは?
●成長過程にあるかた
●免疫不全症のかた
●抗がん剤で治療中のかた
●放射線療法を受けているかた番
●ホルモン療法を受けているかた
●チタンアレルギーのかた
●骨粗しょう症のお薬を多量、長期にお使いのかた
●また、全身疾患の病状を良好な状態にコントロールできていないかたなどはインプラント治療に不適応な場合があります。なお、全身疾患のある患者さんの場合、歯科医師が主治医と連絡をとり、治療が可能かどうかを確認して進めさせていただきます。
▪️手術後の痛みや腫れは?
痛みの感じかたは個人差があるので一概には言えないのですが、再生療法などをしていない通常のインプラント治療であれば、術後1日ほど軽く痛む程度でしょう。免疫応答がさかんな若い人ほど腫れやすいですが、腫れが引くのも早く、年齢が高いほど腫れは少ないー方、腫れが引くのは遅くなります。しかし、痛みが治まってきていれば心配いりません。痛みが増すようでしたら、治療を受けた歯科医院で診てもらいましょう。

 

インプラントが壊れたら?

 

インプラントの構造でいちばん壊れやすいのは、上部構造(被せ物)です。インプラントで強く噛めるようになるうえ、天然歯のときにはあった噛む力を感じる歯根膜がないため、噛む力の加減が働かず、上部構造が欠けたり割れたりしやすいのです。インプラント体が壊れたわけではないので、上部構造だけの修理・交換で対応できます。ご安心ください。

 

治療期間中に仮歯は入れられる?

 

これはケースバイケースです。患者さんがお困りにならないようさまざまな工夫をさせていただきますが、難症例の場合、治療を成功させるために、入れ歯も仮歯も使わずにそっとしておく期間もあるからです。入れ歯や仮歯を使えない期間があるかどうかについても説明を受け、それも含めインプラント治療を選択するかをお考えいただければと思います。

 

インプラントが結合しなかった?

 

しっかりとした検査と診断、予備治療を終えて治療をしているのであれば、もし結合しなかった場合でも、早期に抜いて再治療をすることができます。あごの骨の穴は数カ月でもとどおりにふさがりますので、それを待って再埋入を行います。順調に結合が進むよう、「手術したところで噛まない」などの歯科からのお願いごとに注意してお過ごしください。

メインテナンスでお会いしょう!
ンプラントは人工の歯だから、「もうこれでむし歯にも歯周病にもならない」と思っているかたもおられるかもしれません。たしかに、インプラントはむし歯にはなりません。でも歯周病にはなります。放っておくと、歯周病とそっくりの病気、「インプラント周囲炎」という病気になってしまうのです。
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えるあごの骨に炎症が起きる病気。天然歯のときと同様、インプラントの周りに歯石がついて、プラークがたまることによって起きます。そこで、インプラント治療が終わったら、今度は治療のためでなくメインテナンスのために、ぜひ歯科医院に定期的においでください。
メインテナンスでは、毎日の歯みがきやフロスでプラークがきちんと取れているかのチェックや、ご自分に合った歯みがきの仕方を教わることができます。インプラントにプラークや歯石がこびりつかないように、クリーニングも受けられます。
また、インプラントが入ると、つい強い力で噛んでしまうので、もしも噛み合わせが悪くなっていると、上部構造の欠けやネジのゆるみにつながりやすいのです。噛み合わせのチエックをすることで、そうしたリスクの軽減ができます。
インプラント治療は、入れたら終わりではありません。快適に使い続けるには、むしろ入れてからのお手入れが重要です。放っておいてインプラントの周りがプラークや歯石だらけになると、今度はインプラントの周りに炎症が起き、あごの骨との結合が失われて、せっかくの治療が機能しなくなってしまいます。
治療が終わったら、今度はメインテナンスでお会いしましょう。歯科医院とのお付き合いを予防中心に変えると、インプラントの快適な状態を長く維持できるだけでなく、残っている周りの歯の健康も、歯科のプロフェッショナルといっしょに守ることができます。
インプラント治療の終了を機会に、歯科医院とのあたらしいお付き合いをはじめましょう。

私たちのクリニックのインプラント治療については
こちら
をご覧ください。

入れ歯とインプラントを組み合わせて、動かない入れ歯にできる?

2024年5月14日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、部分入れ歯とインプラントを組み合わせた治療例のトピックです。

 

入れ歯治療について

 

どんな入れ歯でも、人工の歯と歯茎に接するピンクの床の部分があります。床の素材はレジンが広く使われていますが、見えない部分をチタンやコバルトの合金を用いて作られる場合もあります。
総入れ歯は歯茎に入れ歯が乗っかるのみですが、部分入れ歯は、入れ歯の部分と天然の歯の部分が混在している状態ですので、
残っている歯に維持力を得るため、クラスプという引っ掛けを作ります。よくあるのが、ワイヤーを曲げたものや、合金を鋳造して作ったものです。
審美的なクラスプとして、ノンクラスプデンチャーというものがあります。これは、通常金属製のクラスプの部分を、
特殊な床の材料に変えて、歯茎の色調に馴染ませて作られています。

こちらの写真は、よくある合金で作成されたクラスプです。歯の付け根あたりに金属の引っ掛けがありますね。保険診療で認められていますので、広く使われています。

入れ歯が入ったお口の状況ですが、歯茎のお肉の上にプラスチックの歯がのっており、それを介して物をかむということですので、
考えてみたら、結構大変な状況です。グッと力を入れて噛むと、入れ歯の床がズブっと歯茎に沈むことになります。
骨から生えている歯とかみごたえや使いやすさが異なるのはしょうがないことです。どんなに良い材料を用いても、天然の歯にはかないません。
そして、インプラントと入れ歯でも、かみやすさではインプラントにかないません。インプラントは骨に植立されていますので、天然の歯と同様に噛めるわけです。
あまり良くないことを書きましたが、しっかり物を噛むという面では、天然歯やインプラントが得意なのです。
一方で、入れ歯にも得意なことがいくつかあります。治療費の安さ、外科処置がほとんどいらないこと。
個人的には、一旦お試しができる治療であることがメリットと感じます。
入れ歯治療をして、リハビリが上手くいかなかったとして、
他の治療法に変更しよう、というのが可能であるため、後戻りができる治療法と言えます。

 

治療例

 

歯の欠損の部位に部分入れ歯を装着されていた方です。
「入れ歯で噛むと痛んで、しっかり噛めない」
「入れ歯が動く、浮いてくる」
というお悩みがありました。


術前正面


術前左側:奥歯の欠損があります。部分入れ歯を装着されていましたが、使いづらいとのこと。


術前下顎咬合面:歯を失ってから長期間経過しており、形態は落ち着いています。

 

治療計画

 

旧義歯の問題点を修正するため、外形、噛み合わせの状態を確認します。インプラントオーバーデンチャーを最終義歯とする場合、インプラントの治癒期間(オッセオインテグレーションと言います)に使用する、安定した治療用義歯が必要です。最終義歯の外形がある治療用義歯を作製、装着します。そして、インプラントの治癒期間が終わり、アタッチメントを取り付けるのですが、この治療用義歯を改造し、インプラントオーバーデンチャーへ移行します。患者さんはインプラントオーバーデンチャーに適合しやすくなります。
インプラントの位置決めですが、治療用義歯を作製中に、ガイド作製も行います。義歯は歯型をとってすぐに出来上がるものではなく、噛み合わせの記録取り、人工歯を排列し試適の工程を必ずやります。この試適の段階で診断用ステントを作ります。義歯を試適した状態で型を取り、レジンを流し込みます。最終的な歯に対して、インプラントが理想的な位置にくるように、このような手法を取ります。インプラント埋入部位は、維持のためのアタッチメントが義歯の中におさまるよう、クリアランスが確保できること、機能時の義歯の動きを抑制できることが要件です。また、今回は部分入れ歯ですので、クラスプがかかる歯の軸、義歯の着脱方向が非常に重要で、着脱方向と大きく維持装置の角度が違うと、適切な維持力が発揮できないことになりますので、これらを確認し、計画を立てていきます。

 

術後

 


術後CT:欠損部にインプラント埋入された状態。


術後正面


術後左側:アタッチメントが奥に見えます。


術後下顎咬合面:欠損の後方にインプラントが埋入され、ロケーターアタッチメントが装着されています。ボタンが歯茎から生えているように見えますね。


術後義歯装着した咬合面:このようにして装着した入れ歯は、噛む力が骨に伝わりしっかり噛むことが可能となります。

最終義歯の構造には、メタルのフレームが使われています。レジンのみの義歯床だと、アタッチメントの部分の強度不足により破折のリスクが高まります。
また、装着後の顎堤の形態変化にも対応するため、維持各子はレジン床内に取り込み、リライン(内面の敷き直しの処置)しやすい形状にします。

 

メンテナンス

 

一般的な義歯のメンテナンスといえば、経年的な人工歯の磨耗、床と顎堤の適合の変化に注意して、必要な時に早期に義歯の修正をします。これは、顎堤の保全にも、インプラントへの過剰な負担にも対応するものです。義歯設計やインプラント埋入位置の問題があると、術後の義歯破損を招きます。
ロケーターアタッチメントは、インプラント埋入された上にある凸部と、義歯床内の凹みが噛み込むことで維持力が発現します。義歯に組み込まれた部分には、維持のためのリテンションディスクがあります。6種類用意されており、維持力やインプラントの角度により使い分けをします。場合によってはこのリテンションディスクの交換が頻発する可能性もあります。研究では、1〜3年の間に0〜9回と幅があります。Vere Jら2012年の論文より。
この理由としては、義歯の着脱方向とインプラントの角度が大きいことが考えられます。これらの角度は可能であれば20°以内におさえられていることが望ましいです。また、咬合の強さと頻度によっては維持力が大きく減衰するという研究もあります。Abi Naderら2011年。
患者さんへの取り扱い指導も重要です。着脱方向から大きくずれて強引に引っ張ったり、ずれて装着した状態で噛み合わせたりすると、ディスクの変形が不可逆的になり、交換を余儀なくされます。

私たちは、術後の良い経過のために、まずインプラント埋入時に高い初期固定を確実に得るように注意をしています、具体的には、初期固定が得やすいインプラントの選定と、ドリリングの際のアダプテーションテクニックです。最終義歯のコピーデンチャーを作製し、造影剤を用いてサージカルステントとするとともに、歯肉の厚みも術前に確定し設計に反映します。このことにより、
・適切なデンチャーのスペースが確保できるよう、埋入方向を確実にプランニングできる
・術直後の荷重に対し、適度な高さのパーツの選択
を可能にしています。

 

まとめ

 

義歯とインプラントを組み合わせた治療により、少ない本数のインプラントで機能上優れた効果が得られる義歯作製が可能となります。
義歯が単体で十分患者さんが満足できるような機能を得るには、条件が整っている必要があります。具体的には、顎堤の高さ、幅、骨隆起やアンダーカット、口腔周囲筋の習癖の有無などの条件が整っていること、義歯の経験があることも患者さんのリハビリを行う上ではかなり慣れに関する差が出てきます。
条件が整っている患者さんばかりではありませんので、義歯でしっかり噛めない場合や義歯が動いてしまい、機能に問題がある場合、このようなインプラントを併用した治療を検討する価値があると考えられます。

義歯でお困りの方、どうぞお気軽にご相談ください。
お電話 072−767−7685
WEB予約もこちらから可能です。

インプラントと入れ歯を組み合わせた治療

2024年2月11日

⚫️オーバーデンチャーを用いた下顎無歯顎症例へのインプラント治療

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、歯がない下顎に対して、インプラントと入れ歯を組み合わせた治療=インプラントオーバーデンチャーについてです。

 

学術的裏付け

 

最初に、インプラントオーバーデンチャーについての、学術的な裏付けについてです。

「2本のインプラントによるオーバーデンチャーが今後、下顎無歯顎の補綴治療の第一選択となる」
2002年のカナダのMcGilのコンセンサスレポートにはこのように述べられています、Feine らは、このレポートのエビデンスとなる無歯顎に対するインプラントオーバーデンチャー治療に関する多数の調査・報告を「Implant Overdentures – The Standard of Care for Edentulous Patients」と題する著書のなかで行っています。
オトガイ孔間に埋入した2~4本のインプラントの予知性については、良好な結果が多数報告され、特に長期間総義歯を装着し顎堤が吸収し義歯の不調に悩む患者さんに対し,インプラントオーバーデンチャーの使用による咀嚼能力、義歯の安定性の改善に伴うQOLの向上、栄養改善が報告されています。またボーンアンカードブリッジとインプラントオーバーデンチャーの比較において、その清掃性、発音、審美性の優位性から、インプラントオーバーデンチャーを最終的に選択した被験者さんが多かったとも報告されています。
固定性のインプラント補綴装置と、取り外し式のインプラントオーバーデンチャー、それらの優劣については、以下のような研究論文が発表されています。

 

・下顎におけるバーアタッチメントによるインプラントオーバーデンチャーと固定式インプラント義歯の比較:de Grandmont P 1994年

 

予想を覆して、インプラントオーバーデンチャーは決して機能的には固定式インプラント補綴装置には劣らない、また難性食品を除けば、一般的には概ね両者とも患者満足度は同等である、そして高齢になる程最終的に取り外し式の入れ歯を好むという結果を示しました。

 

バー➕インプラント4本支持のインプラントオーバーデンチャーと、2本支持のものの比較:Tangら 1997年

 

4本支持は安定感、快適さ、噛みやすさが優れるものの、その他大半の評価項目には同等の結果を示しました。この研究では、2本支持の下顎のインプラントオーバーデンチャーを正当化する一つの根拠となります。

 

上顎のインプラントオーバーデンチャーに関する患者評価:de Albuquerque Junior RF 2000年

 

下顎と異なり、上顎の無歯顎に対しては、インプラントオーバーデンチャーが必ずしも第一選択とならないという結果を示しています。ですので、上顎に関してはインプラントと取り外し式の義歯を組み合わせることに関しては、今のところ絶対的評価はありません。

 

McGillコンセンサス 2002年

 

下顎無歯顎の第一選択はインプラントオーバーデンチャーが最良であるという論文。

 

インプラント領域における社会経済学的コスト分析の先駆け論文:Takahashi Y2002年

 

下顎インプラントオーバーデンチャーは、生活の質の改善に大きく寄与することを多数示しています。

 

栄養状態の改善がなされるのか検討:Morais JA 2003年

 

下顎インプラントオーバーデンチャーの使用により、栄養状態の改善が見られるのか調べた論文です。アルブミン、ヘモグロビン、B12に有意差が見られたとされています。

 

受容する患者さんの性差に注目した研究:Pan S 2008年

 

女性に対する義歯作製、リハビリの困難さは多く報告されていますが、インプラントオーバーデンチャーはその差を帳消しにするほどの大きな改善をもたらすことを意味しています。従来の総義歯治療に関しては、女性の満足度は決して高くありません。インプラントオーバーデンチャーにした場合の性差はなく、満足度は向上しました。

 

8編の論文を包含した分析:Emami E 2009年

 

これまでを振り返った研究。改めて、インプラントオーバーデンチャーは、従来の総義歯治療と比較して生活の質の向上に寄与することが示唆されました。一方で、対象となるメインの年齢層の高齢者には、同治療を助け入れない場合もあることもわかりました。

 

社会心理学的研究:Esfandiari 2009年

 

インプラントオーバーデンチャーは、インプラントによる固定式補綴装置と比較すると安価にはなりますが、それでも治療費用が受療を阻害していることも事実であります。さらに、他の主要因としては、老化による痛みへの恐れ、術後の偶発症が挙げられました。

 

下顎にインプラントと入れ歯を組み合わせた治療例

 


歯がない顎に対して、インプラントを2本埋入し、その上には入れ歯をとめる「ロケーター」というパーツが取り付けられています。

 

ロケーターとは?

 

ロケーターとは商品名で、Zest Anchors社から発売されているシステムです。簡単にいうと、シャツのボタン的な構造を想像してもらったら良いと思います。入れ歯の内側に弾性のあるパーツが組み込まれ、インプラント側にスタッド型のメタルパーツが設置されます。現在、国内では、私たちが採用しているノーベルバイオケア社、その他ストローマン社、白鵬社からそれぞれ自社インプラント用アタッチメントとして正規輸入販売されています。
他のアタッチメントのシステムとの比較について、患者さんの主観的評価の調査の報告があります。他のシステム、ボール型のアタッチメント、バー型アタッチメントに対し、有意差がないという結果の論文もあれば、QOLが向上したという論文もあり、一致はしていません。しかし、決して劣るシステムではないようです。
利点はいくつかあります。

①従来のバー型、ボール型アタッチメントよりもパーツの高さが低く設置できること。専門的な話ですが、これはとても重要な要素で、高さのあるアタッチメントの場合、どうしても入れ歯の構造に薄く強度の低い部分ができてしまいます。そのため、低いパーツが選択できるロケーターの場合、インプラントの位置付けや、入れ歯の設計に自由度が大きくなります。入れ歯の強度不足による破損などの偶発症に関しても、リスクを下げることができます。

②ボール型、マグネット型よりも安価である。

③1mm違いのサイズ展開があること。インプラント埋入深度や歯肉の厚みが何ミリであっても、その状況に応じてサイズ選択が可能であり、治療がやりやすいメリットがあります。

④維持力のバリエーション。通常ラインナップでは、0.7kg,1.4kg,2.3kgが選択できること。患者さんの取り扱いのしやすいキツさを選択できるわけです。
✳︎使用上の注意点:インプラントオペの計画に関することになりますが、ロケーターをつけるインプラント同士の角度が、可能な限り平行であることが求められます。これが20度以下に抑えられていることが望ましいです。これ以上の角度になると、急速に維持力の低下があります。つまり、フリーハンドや目測でのオペではなく、コンピューター支援のガイドオペを併用し、インプラント間の角度をコントロールする計画を立てる必要があります。

 

義歯装着した状態

義歯を装着した状態の口腔内写真。着脱方向を間違えて強引に行ってしまったり、しっかりはまっていない状態で噛み込んで入れ歯を入れるような使用法は、アタッチメントの維持パーツの早期交換に繋がりますので、事前の患者さんへの指導を注意深く行う必要があります。


下顎骨両側の小臼歯部には、オトガイ孔という穴が空いています。オトガイ孔間には歯を失った後でも骨量が残っていることが多く、その部位に対して平行な角度にインプラント埋入をします。

これらのようなアタッチメントの利点をしっかり把握した上で、治療計画を立て、義歯装着後のフォローを行っております。

インプラント治療後のメンテナス その2

2024年1月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回もインプラントのメンテナンスについての内容ですが、
インプラントの上部構造とその周囲の状況を具体的に考えた上で、
どのようにケアを続けていくとよいかを説明します。

 

上部構造装着直後のブラッシング指導の重要性

 

上部構造装着直後、患者さんはインプラントで歯を補われた歯列に慣れていないため、
ブラッシング不良になりやすく注意が必要です。

とくに全く歯がない状態で長期にわたり総義歯を装着されていた患者さんの場合、
歯ブラシで歯を磨く習慣を忘れてしまっているため、
歯科衛生士が時間をかけてブラッシング指導をする必要があります。

また、インプラントは顎骨の幅や高さにより埋入する位置や長さが決定されるため、
上部構造の形態は顎骨の量や形態により清掃性の面で理想的な形態を付与できない場合があります。

左下奥にインプラントが埋入された状態のCT画像。天然の歯と比較すると、根の幅が大きく異なります。
この症例では、あまり骨の高さの差はありませんが、
このように整った条件ばかりではありません。

したがって、上部構造装着直後に患者にブラッシング指導をする際には、顎骨および上部構造の形態を説明し、
形態的に磨きにくい部位があることを理解していただくこと、
インプラント歯列のブラッシングに慣れていただくよう指導することが重要です。

インプラントの上部構造装着後、定期健診の重要性、インプラントを含めた歯磨きの方法等を説明しています。
患者さんが選んできた歯ブラシ等が、必ずしもインプラント周囲組織に適した製品ではない場合もあります。
私たちは、上部構造の装着直後に、インプラントに適した清掃用具およびブラッシング方法の説明を行っております。

 

バイオタイプによるセルフケアの注意点

 

バイオタイプというのは、歯茎の粘膜の質のことです。
インプラント周囲粘膜の形態は、
厚い(thick-fat)タイプと薄い(thin-scalloped)タイプの2つに大別されます。
また、歯周組織についてはlaynardらにより軟組織や骨の厚みの関係から
4つのバイオタイプに分類されます。

角化歯肉の幅や厚みが、インプラント周囲組織の安定に必要か否かの見解の一致は得られていません。
しかし、歯周組織において歯肉が薄く角化歯肉が不足している部位では、
臨床的にブラシや食物による擦過などの機械的刺激やプラークに対する抵抗性が低く、
炎症による歯肉退縮を起こしやすいことがわかっています。
インブラント周囲粘膜においても、粘膜がインプラント上部構造頭部に近接し角化歯肉の幅が不足している部位や、
薄い組織の部位において、ケアを行う際には十分な注意が必要です。

とくに前歯部においては、唇側粘膜の厚い(thick-1at)タイプ
では、粘膜の退縮は少なく、審美的問題も少ないでしょう。
一方、薄い(thin-scalloped)タイプでは、経時的な粘膜の退縮が生じやすく、
とくに強圧や間違った方向へのブラッシングを行った場合、粘膜退縮は大きくなり、
審美的問題を生じやすくなります。

セルフケアの指導は、バイオタイプを評価したうえで指導方法を選択する必要があります。
Thick-Alatタイプの場合は、通常のブラッシング指導を行い、
過度なブラッシング圧による粘膜損傷を起こさせないような指導が重要です。

一方、thin-scallopedタイプの場合、ブラッシングによる粘膜退縮を予防することが重要であり、
軟らかい毛質のブラシを選択し、ブラッシング圧を弱め、唇側面に直角に当てるようなブラッシング指導を厳密に行う必要があります。
セルフケアに使用する各種清掃用具は、天然歯とは異なる形態を呈しやすいインプラント上部構造は、清掃性が悪くなる部位があるため、
歯ブラシだけでは磨き残しやすいことも多くなります。
そのため、補助ブラシなどインプラント周囲組織と 上部構造の形態や材質に適した清掃用具の選択が重要となります。

 

①ワンタフトブラシ

 

豊隆が大きい部分やインプラントブリッジの鼓形空隙などは、通常の歯ブラシでは毛先が届かず磨き残しやすいため、
歯ブラシで磨いた後に補助的にワンタフトブラシを使用するよう指導します。

 

②歯間ブラシ

 

インプラント周囲粘膜は瘢痕状態であり、歯間ブラシの誤った使用方法により、容易に付着をしてしまうこともあります。
ブラシの使用を開始する際には、必ずサイズ確認を行い、挿入方向に十分注意するよう指導することが重要です。

歯間ブラシのサイズは、天然歯の歯間部に適合するサイズよりもワンサイズ小さいものを選択し、
歯肉を押し広げないように注意する必要があります。
筆者は、歯間ブラシのサイズSが抵抗なく挿入できる鼓形空隙より狭い部位には、
歯間ブラシの使用は避け、ワンタフトブラシでの清掃を中心に指導しています。

また、歯間ブラシの金属のワイヤーによって、チタン面やセラミックス表面を傷つけないために、
ワイヤーがナイロンやプラスチックコーティングされている歯間ブラシを使用することも重要です。

 

③軟毛ブラシ

 

可動粘膜がインプラント上部構造頸部に近接しており、ブラッシング時の擦過によって傷つきやすい部位や、
即時荷重インプラント治療において手術直後に暫間的補綴物を装着した部位など、
粘膜が脆弱な場合には、軟毛ブラシを選択します。

 

④音波振動歯ブラシ

 

音波の作用により効率的に磨くことができるため、とくに全顎無歯顎症例でインプラント治療された患者さんにおいて、
音波振動歯ブラシでのブラッシングは有効です。また、ブラッシング圧をコントロールできない患者においては、
とくに音波振動歯ブラシを勧めることが必要です。
なぜなら、インブラント周囲粘膜は瘢痕組織であるため過剰な圧のブラッシングによって粘膜を傷つけないためにも、
一定の振動で磨ける音波振動歯ブラシを選択することが重要だからです。

 

⑤電動歯ブラシ

 

電動歯ブラシの毛先の動きは、歯周組織と比較して粘膜が脆弱であると考えられるインプラント周囲組織に対して、
ブラッシング圧が強すぎる場合もあるため、なるべく使用を避けるように指導しています。

 

⑥歯磨剤

 

研磨剤が多く配合されている歯磨剤は、上部構造を摩耗させるため、インプラントのみならず天然歯に対しても使用を避けるべきです。
セラミックスや金属などインプラント上部構造の材質にかかわらず、研磨剤によって傷ついた表面はバイオフィルム、プラークの沈着を招きます。
また、審美的にも、研磨剤によって摩耗した細かい傷により、セラミックスの艶や輝きを失わせます。
低研磨性または研磨剤無配合の歯磨剤が望ましいと考えます。
インプラントの形態的特徴から、歯ブラシによるセルフケアでは磨き残しやすい部位を、含嗽剂による化学的清掃法で補うことも必要です。
とくに、インプラント上部構造装着直後は、インプラントで補綴された歯列形態でのブラッシングに慣れていないため、
化学的清掃によりプラークコントロールを行うことが重要となります。
うがい薬としておすすめなのは、エピオスです。
塩と精製水を電気分解した機能水で、院内の機械で製造しています。
殺菌作用は高く、生体には優しい性質で、口腔ケアにも適しています。

定期的な受診/strong>
インプラント治療での失敗の大多数は、2次手術より1年以内に起こるという報告があります。
したがって、インプラント上部構造装着後の1年間のメインテナンスはとくに重要となります。

 

ケア用品のフッ化物濃度

 

チタンは酸性下でフッ素イオンが存在すると耐食性が低下する2ため、
フッ化物局所応用として使用する製品は中性のものを選択しなければなりません。
口腔内において、粘膜などが炎症を起こすとpHが低くなり、酸性に傾きやすくなるため、
アバットメントなど露出しているチタン面が存在する場合は、
とくにpHとフッ素イオン濃度に注意することが重要です。
一般的にはインプラントが存在する口腔内において使用するフッ化物は、
pHが中性でフッ素イオン濃度は1,000ppm以下が望ましいとされています。

診断のための資料とりについて

2023年11月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

私たちは初診時や治療経過、メンテナンスなどのタイミングで、お口の資料取りを行なっています。
レントゲン撮影、歯周組織検査、口腔内写真、顔貌写真です。
レントゲンで写るものは、硬い組織です。
口腔内でいうと顎の骨、歯、顎の関節、上顎洞などです。
虫歯や歯周病、顎の関節の病気、歯の根の病気を画像診断するためです。

歯周組織検査というのは、成人の方ならご経験あるかもしれませんが、
歯と歯ぐきの境目の溝の深さを測定し、歯周病の状態を判定する検査です。
歯周ポケットが〇〇mmある、ということも重要な検査の項目ですし、
ポケット測定した際の歯ぐきからの出血の程度も重要です。
歯の揺れの程度も記録します。

口腔内写真は、このようなものです。

正面、左右、上下顎咬合面をカメラとミラーを用いて撮影します。
顔貌写真も正面、側方から撮影します。
なぜ、顔の写真が必要なのか?と思われるかもしれません。
そこで、口腔内の状態とともに、表情も変化する現象についてお話しします。

 

なぜ、患者さんの表情を診る必要があるのか?

 

口腔機能関連器官に起こる加齢変化を診ています。年齢を経ると口腔周囲の筋組織が変性します。また、歯の喪失がある場合、
咬合力の低下を招きます。私たちが食事をとるときに無意識に動かしている筋肉は、歯の喪失があると機能しにくくなります。
たとえば頬筋は臼歯などの喪失により変性し、口腔前庭部の食塊の咬合面への押し戻し機能の低下が生じます。
臼歯の咬合面の摩耗や歯の喪失によって噛み合わせの高さ(咬合高径)の減少を引き起こし、口腔容積が減ります。
舌の稼働空間が小さくなるのです。舌が動かしにくくなり、嚥下反射も弱くなります。

噛み合わせの高さが低下しているため、下顔面が短くなっている状態。


口周りのシワが深くなる、筋肉が衰え、はりがなくなる印象に変わっていきます。

高齢者の20%は、口底部に液体を貯めてから嚥下するタイプになりますが、このタイプになると、舌の運動量を大きくする必要があるため、
嚥下に時間がかかるようになります。
咀嚼筋は退化し、顔面の表情筋は垂れ下がり、口腔全体に加齢変化が起こります。

このように複雑な症状をかかえる高齢者、あるいは高齢者予備軍の60代の患者さんはたくさんおられます。

 

入れ歯を使い続けることにより、身体は代償を払っている?

 

入れ歯で生活されている方の歯茎を見ると、顎の骨吸収をともなうことが多いです。
抜歯をして義歯を装着すれば、初めの1年間で骨の高さが4mm 減少するという研究もあります。(1996年 World Workshop in Periodontics)

歯がない側の下顎の骨は、高さがなくなっています。

25年間に及んで義歯を装着された患者のレントゲン撮影による長期研究によると、この間に連続続的な骨吸収が起き、
上顎は約4倍の骨吸収が生じると報告されています。(Warrerら1995年)

合わない義歯を入れられていたため、上顎の歯がない部分は、骨の高さがなくなっています。
つまり、歯槽骨を維持するためには歯の存在が不可欠であり、入れ歯は骨吸収を加速させる、ということです。
以前、歯やインプラントにかかる力がどのように骨に伝わるかを解析した研究発表を見ました。
噛んだ時の力は、顎の骨の広い範囲に散っていくような画像でした。
歯やインプラントは顎の骨に植っているために、
このような力の伝わり方になるのだと理解できました。
だから、身体は骨をしっかりさせようと反応し、歯槽骨が維持されるわけです。

骨吸収により、口腔内の加齢変化は加速していきます。
合わない入れ歯がある場合には、骨の吸収が早まり、
また、患者さんも抜歯後に適合の悪い義歯を使用することで、さらに骨が吸収することの説明を受けていない場合もあります。
ほとんどの入れ歯の患者さんは、そのような事実を理解されていません。

私たちは、歯の保存だけでなく抜歯後の骨の保存も考慮した治療計画を立てねばなりません。
また、義歯が引き起こす危険性も十分に説明する必要があります。
患者さんは、ご自身の体験として、入れ歯の引っかかっている歯がダメになることを知っておられます。
「入れ歯ってだんだん大きくなるよね」
「入れ歯が浮いてきて噛めないけど、そういうものだよね」

このような状況を経た場合、噛むための筋肉の短縮を招き、咀嚼力の低下を起こし、顔面諸筋は下垂し、表情に多くの退化が見られます。

私たちは資料とりでお顔の写真を撮影するのは、受診に至るまでの表情の状態を把握するためです。
そして、治療がすすみ、治療用の仮歯などでリハビリをするときに、スムーズにトレーニングを行うことができます。
表情の特徴を分析し患者さんと共有することが、治療する上で重要であります。

 

唾液分泌低下は味覚障害、口腔乾燥につながる

 

上顎義歯を装着すると、奥歯の領域にある唾液腺を圧迫してしまいます。
加齢とともに唾液分泌量は低下するうえ、その唾液腺を義歯が圧迫するため、
より唾液がでにくくなります。
そのようにして、口腔内には以下のような変化が生じます。
(1)口腔内の湿潤が低下し食塊の滑りが悪くなるため、粘膜へ食物が付きやすく、咽頭へ食塊を送りづらくなる。
(2)食塊に十分な水分を混ぜ込むことができなくなり、むせやすくなり、味がわかりにくい。誤嚥のリスクが高まる。
(3)味覚の低下。。

 

口腔周囲筋トレーニングについて

 

健康寿命を伸ばすことへの関心は増加しています。
歯を失うことなく、予防管理していくことが最重要であります。
他科疾患の罹患率も減り、人生における医療費は大きく削減できます。
歯がグラグラしたり、抜けてきたりして、ああやばいなー歯医者行こうってなる場合が多いです。
非常に勿体無いです。それに、噛めない状態、合わない入れ歯の状態でずっと過ごされていると、
身体の代償として、筋肉の機能低下、顎骨の吸収が生じます。
入れ歯の名医と言われる先生でも、なんでもかんでもなおせるわけではありません。
過度に吸収してしまった歯茎に対しては、入れ歯が浮いてくるのは必然ですし、
インプラントも場合によっては難しくなるでしょう。
歯の欠損を放置することで、結果的に寝たきり→不健康で楽しめない人生となってしまいます。
本当は、入れ歯やインプラントがないお口が一番いいです。

では、歯周病や事故で歯を失ってしまった場合、
1ヶ月くらいで出来上がる保険の入れ歯で機能回復できるのでしょうか。
しっかり歯があった頃くらいに噛めるようにするには、ある程度の高額な治療費がかかってしまいます。
はっきり言って、健康はお金で買えるのです。
幸せな人生のために必要なこととして、
・健康
・人間関係
・経済
・楽しみ
・承認
など、いくつか要素が考えられます。
全て満たされていたらとても充実した人生と言えますね。
口腔内のトラブルから、寝たきりになってしまったとしたらどうでしょう。
健康を失えば、ベッド1つ分の人生と思うと、健康って当たり前じゃなくて、ありがたいことだなと思いますね。

オーラルフレイル:口の中の問題から全身の虚弱を招きます。

現在、若年労働者の減少とともに、高齢者でも現役で社会参加しなければならない状況になった今こそ、
お口の中から予防に取り組むこと、
治療が必要になったら身体の代償を払うような治療は避けること、
しっかり噛める状態を作り、維持していくこと
が大切ですね。

インプラントのブリッジ症例

2023年10月26日

インプラントのブリッジ症例

ほとんど歯が残っていない上顎に対して、インプラントのブリッジで治療した症例です。

以前、歯がない顎に対して、All on 4コンセプトの治療を行った症例をご紹介しました。
今回もほとんど歯が残っていない上顎に対する治療ですが、残っている歯が治療したら問題なく使っていける状態でしたので、
それを温存して尚且つ固定式の歯を入れるにはどのようにするのか、という治療プランを考える必要がありました。

 

当院を受診された時のお悩み

 

「上の入れ歯でしっかり噛めない」
というものでした。上顎は3本歯が残っておられて、あとは部分入れ歯が入っていました。
術前はこのような状態でした。


術前正面:歯の欠損が広範囲に認められます。


術前右側:惻切歯、犬歯、第一小臼歯のみ残存していました。


術前左側:すべて欠損でした。

欠損に至った原因ですが、虫歯がひどくなり、治療を繰り返すうちに徐々に歯が抜かれていったとのことでした。
虫歯の治療も際限なくできるわけではありませんので、最初は虫歯のところを埋める簡単な施術で済むのですが、
根管治療をして被せ物を入れる→虫歯が再発し最治療、となったら、残っている歯の量が少なすぎて抜歯になってしまいます。
抜歯後にブリッジや部分入れ歯で欠損を補ったあとは、欠損の負担がブリッジや部分入れ歯の土台の歯にかかってきますので、
長い時間をかけて抜歯に近づいてくようなものです。
そのようにして、この方は徐々に欠損の範囲が拡大していき、10本の欠損に至ったわけです。
大きい部分入れ歯が入った後、このようなお悩みが出てきました。
・ガタガタして硬いものが噛めない。
・食事の際、入れ歯と歯ぐきの隙間に食べ物が入り込む。
・歯ぐきが痩せてくるので、作り直さないといけない。
・入れ歯の金属のバネをしばしば調整しないとゆるくなってしまう。
。入れ歯のピンクの床の部分が割れてきた。
などなど、入れ歯あるあると言えます。
インプラントだからできる生活があると思います。それは、天然の歯があった頃を取り戻せる方法だからこそ、
自然に自由な生活を楽しむことができます。非常に治療効果が高いと考えております。

今回の症例の話に戻ります。
実は、この治療を行ったのはかなり前で、私たちはその時ノーベルガイドのシステムを導入していませんでした。
ノーベルバイオケアのインプラントをずっと使用していたのは変わらないのですが、
この症例後に、ノーベルガイドのクリニシャンというソフトと、ガイド用のオペキットがクリニックに導入されたのを覚えています。
今ならノーベルガイドを使用し、よりスムーズに治療が進んでいただようと思われます。今更ごちゃごちゃ言ってもしょうがないですが。。。

ところで、インプラント治療ならではのやり方で、トップダウントリートメントというものがあります。
簡単に言うと、最終的な歯から逆算した位置にインプラントを埋入するやり方です。

 

ワックスアップ

 



右下奥歯の欠損

歯型をとり、石膏模型を作ります。このように歯がないところに、ワックスを用いて歯の形を作ります。残っている歯や歯列、噛み合わせを踏まえて、理想的な歯の形・位置を設定します。この最終的な歯の設計図を準備するところから始まります。ワックスアップと呼ばれています。



上顎前歯のケース


下顎両側第臼歯部のケース



上顎全部のケース

ノーベルガイドが使用できる状況でしたら、ノーベルバイオケアのソフトにワックスアップ模型のデータを入れて、ガイドを作製していきます。
今回のケースは、ガイド導入前でしたので、技工の先生と手製のガイドを作製し、それを用いて手術を行いました。
院内で、石膏模型上にレジンを使ってガイドを作り、インプラント埋入を行いました。

手製のガイドは、ノーベルガイドと比較すると手術の正確さにおいては劣ってしまいますが、何も手掛かりがないフリーハンドの手術を行うよりかは、最終的な上部構造を反映した位置にインプラント埋入がしやすいと考えています。この症例は、比較的顎の骨の厚みや高さに余裕があったので、このやり方でも問題なかったと考えます。

まだ、現在のようなCTがない時代、インプラントの施術はパノラマX線写真などの平面の写真のみで行われていたわけで、ガイドも当然ない状況でした。そのような中で当時の歯科の先生方は工夫してされていたのだと思います。と考えると、ガイドのシステムがある現在は、医療の技術開発ならではの施術も可能になり、画期的で良いことだと感じております。

埋入後、インプラントと骨が結合する現象が起きます。オッセオインテグレーションと言います。インプラントの表面と骨の組織が直接結合する間は、負荷をかけないようにします。埋入する際、インプラントにかけるトルクを35N以上で固定できたら、初期固定が良好であると判断できます。手術の時はこの良好な初期固定を得るために、工夫をします。たとえば、柔らかい骨質の場合はあまりドリルで形成しすぎないようにします。小さめの穴を開けて、インプラントをねじ込んでいくイメージです。
この1次手術 のあと、一旦骨の組織とインプラントの結合は弱まります。スタビリティーディップと呼ばれます。それがあったあと、徐々に固定がしっかりしてきます。そのため、すぐに力をかけない方が良いです。
ただし、例外はあって、インプラントの先端が鼻腔底や上顎洞底の皮質骨噛み込むよう埋入するやり方では、待機せずに加重することもあります。ALL on コンセプトの治療はそうです。

 

最終上部構造装着後

 


術後正面観:機能的で審美的な歯が入りました。


術後左側:今回の症例のように、顎の骨の高さが豊富に残っている場合、最終上部構造は歯の形そのままを再現したような状態になります。これが骨の高さが吸収して低くなっている場合、歯の部分だけではなく、歯肉も一体となった上部構造を装着することになります。


術後右側:入れ歯と違って何でも噛める!と、患者さんに非常に喜ばれました。

 

インプラント治療って痛い?/strong>

 

よくあるご質問にお答えします。
Q.インプラント治療って痛いですか?
手術のことが一番気になると思います。顎の骨にネジを入れていくのってなんかこわいイメージがあるようです。
手術中は、麻酔をしっかりとかけます。痛みは感じない状態で手術を行います。少しでも痛みを感じられるようなら、麻酔を追加して行います。
全身麻酔ではないので、手術で触られている感覚は当然あります。
音や振動を感じてしまうのが、インプラント治療の埋入時ですね。
埋入後の待機期間や2次手術、上部構造装着などのステップと比べると、
埋入時のストレスが1番大きいわけです。麻酔の量も一番多いです。
また、お口の中は体の他の部分に比べて、傷が治りやすいという特徴があります。
実際に手術された患者さんの感想は、思ったよりも楽だった、早くやっておいてよかったと言うものが多いです。
では全く痛みや腫れがないのかというと、人によって身体の傷の感じ方、治り具合に差がありますので、
侵襲の大きい手術予定の方には特に、腫れや痛みが出る可能性が高いこと、
その際の対処法、不快症状が出ると思われる期間などを詳しくお伝えしております。

当院のインプラント治療のページはこちらです。
ぜひご覧ください。
セカンドオピニオン、相談のみなど歓迎いたします。

少ない本数で最大の効果のインプラント治療

2023年9月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、入れ歯で噛めないことでお困りの方の治療例です。
少ない本数で最大の効果というタイトルですが、まさにその通りで、
要は歯がない顎に対して、いかにコスパよく固定式の歯を入れて機能回復するかというのがテーマであります。
All on 4というインプラント治療のコンセプトです。

術前正面

上顎には大きい入れ歯が入っておられました。

術前左側

左下奥歯は欠損で噛めない状態です。

術前右側

残っている2本に入れ歯の金属のバネがかかっています。

術前パノラマX線写真

上顎は左右ともに2本ずつ歯が残っています。下顎は欠損もありますがほとんど歯が残っています。
主訴は上顎の歯でしっかり噛みづらいとのことで、大きい入れ歯を長年使われていたのですが、それがしっかり噛めない状態でした。
上顎に残っている歯は4本。あとの10本は入れ歯で補われています。
このくらい歯がなくなっている場合、義歯の設計を考えるときに、上顎を大きく覆う床を用います。
理由は、残っている歯が少ないため、そこに入れ歯のバネを引っ掛けるのですが、それだけでは入れ歯を維持するのに足りないのです。
粘膜を大きく覆い、入れ歯の床で吸着を得ようと考えます。
入れ歯が吸着する原理というと、入れ歯が入っている口の中って、粘膜の上にプラスチックの板が乗っかっている状態なわけですが、
真っ平なガラスの板2枚を想像してみてください。
このガラス板をくっつけただけではすぐ離れてしまいます。しかし、水をその間に介在させると、ピタッとくっ付きますね。
この状態、空気の出入りがないのです。総入れ歯が口の中で吸着したりする原理は、口腔内の粘膜と入れ歯の床の間に、
唾液があり、顎を動かしても空気の出入りがない床の形態を作れているということです。

この方の口腔内で、入れ歯の吸着や維持が適切にできているかというと、全くできていませんでした。
まず、入れ歯の床が邪魔だからと、上顎を覆う部分をくり抜いており、そこから口腔内粘膜と入れ歯の床の間に空気の出入りがどうやっても生じてしまいます。
だから入れ歯がパカパカ浮いてしまうのでした。

入れ歯治療と身体が払う代償
また、部分入れ歯の宿命といってもいいですが、入れ歯のバネが引っかかっている歯に、歯を揺らすような力が常にかかるので、
ゆっくり抜歯しているようなものです。残っている4本の歯いずれも、食事に支障があるほど揺れが大きくなっていました。

この患者さんは、今までの人生で、もっと歯が残っていたけれども、このように入れ歯のバネがかかっている歯は揺らされてダメになってしまい、
どんどん入れ歯が大きくなって行く流れになっていました。
入れ歯を作る際に、必ず歯科ではこのような話をします。部分入れ歯は徐々に大きくなる、総入れ歯に近づいて行くのです。
部分入れ歯を入れる前に、入れ歯のバネをひっかける部分を削って形を整えたり、被せ物を作ったりします。
これらは、入れ歯の着脱方向に可能な限り平行になっている面を作り、維持力を得るためのものです。
どんなに良い部分入れ歯を作ったとしても、必ずバネの部分の負担があり、残っている歯が失われていきます。

入れ歯の床が接している歯茎に関してはどうでしょう?ここでも、身体の代償が払われています。
噛むときに粘膜に入れ歯の床がグッと押し込まれます。すると血流が悪くなり顎の骨が吸収してやせていきます。
ずっと入れ歯を使用していて、顎の骨がものすごく痩せてしまっている方、
少しずつ身体が代償を払っていて、尚且つ生活の質が悪くなってしまっています。

あまりにも骨が吸収しすぎていると、入れ歯を作り直しても入れ歯が歯茎をしっかり掴むこともできず、
入れ歯と粘膜の間に空気が出入りしやすく、噛もうとしても動いてしまう入れ歯にしかなりません。
そして、骨がなさすぎると、インプラント治療も難しくなってしまうこともあります。
骨を作るために、他のところからブロック骨を削り出して移植をするような手術になるかもしれません。
ではインプラントしよう!となっても、一苦労なのです。

ダブルテンプレートテクニック
この方は、上顎の残っている歯がグラグラすぎて抜歯が必要でした。
いきなり抜歯してインプラントを埋入することはありません。
最終的な歯の設計図を模型上で作って臨みます。
インプラントの位置付けに、コンピューター支援のガイドシステムを使います。
これはノーベルガイドと呼ばれるものです。
口腔内にはめ込み、ガイドのスリーブに沿ってドリルとインプラント埋入操作を行います。
欠損が比較的小さい症例は、作製したガイドを口腔内に装着し手術に用いるというシンプルな活用法になります。
今回のようなほとんど歯が残っていないような場合、作製したガイドが口腔内のシミュレーションした位置に留まっていて欲しいですが、
そうもいきません。歯がたくさん残っていたら、ガイドをはめ込んでもあまりがたつくことなく口腔内に留まってくれますが、
歯がない状態でインプラントを6本埋入するプランですので、何もとっかかりがない口腔内ではガイドがツルツル滑ってしまい、
シミュレーションとずれてしまいます。ガイドが所定の位置に来るように工夫が必要です。

このため、歯を抜く前の状態に合うガイド、抜歯後の口腔内に合うガイドの二つを作製して手術に臨みます。
麻酔をして、残っている歯がある状態でガイドを口腔内に位置付けます。
前方や最後方のインプラントの埋入を先に行います。
そこで1つ目のガイドの役目は終わりです。
抜歯を行い、2つ目のガイドを口腔内に装着します。
歯のとっかかりは無くなりましたが、1つ目のガイドで埋入したインプラントがありますので、
2つ目のガイドと埋入済みのインプラントをスクリューで締結します。
そうすると、全く口腔内でずれることなく2つ目のガイドを位置付けられます。
抜歯をしたエリアには、2つ目のガイドを用いてインプラント埋入を行います。


インプラント埋入後のパノラマX線写真。All on 4コンセプトの治療では、インプラント埋入時、しっかりとした初期固定を狙います。35Nというトルクをかけても、インプラントが骨内で回らない状態が、目指すところです。そのために、インプラントの先端を上顎洞や鼻腔底の皮質骨に噛み込ませて、しっかりとした初期固定を得るようにします。そのインプラントを用いて、固定式の仮歯を装着し、即日で機能回復を図るのが特徴です。


上部構造の一例。チタンのフレームに口腔内にマッチするようなピンクの歯茎部分、人工歯の部分で構成されています。


インプラントにスクリュー固定されるところがネジ穴に見えるところです。口腔内に装着されると、インプラントとインプラントの間を歯間ブラシで清掃していくことになります。


術後正面:歯茎部がある場合、必要ない場合とがあります。顎の骨がどれだけ吸収しているかによります。吸収が大きいと、人工物で補うところが大きくなります。この方の場合、すべて歯の部分にすると、異様に長い歯になってしまいますので、歯茎部分もあったほうがむしろ自然な仕上がりになります。


術後右側:適切な形に回復できています。


術後左側:左下奥の欠損にはインプラントで歯を作っています。


術後咬合面:ネジ穴にはふたがしてあります。

このように、All on 4の治療には独特の工夫が必要で、専門性が高い治療と思います。
この方のように、歯がほどんとない、全くない顎に対して固定式の歯を入れるにはどのようにするかというと、
8本くらいインプラント埋入し、前歯、奥歯にわけてブリッジを作製する、
All on4コンセプトで作製する、
ということになります。しかし、前者では治療後の長期予後が期待できる分、どうしても費用が高額になりがちです。
All on 4は、費用を抑えて早期の機能回復を図ることができ、コスパに優れた治療法と言えます。
当院のインプラント治療のページです。
入れ歯でお困りの方、是非ご相談ください。