Tag Archives: インプラント、ノーベルバイオケア、ノーベルガイド、CT、インプラントの寿命、インプラントの失敗、インプラントのトラブル、手術、期間、費用

インプラント治療のよくある質問

2023年10月28日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


術前右側:奥歯の欠損があります。

術前咬合面:歯を失ってからある程度期間が空いていて、歯茎の形が落ち着いています。


術後右側:インプラントで奥歯を作りました。

術後咬合面:歯列にマッチしていて、機能に問題なしです。

今回は患者さんからよくある、インプラントに関する質問についてまとめてみました。

Q.他の医院で、インプラントができないと言われたのですが、治療できませんか?
インプラントは顎の骨の中に埋入するので、骨の高さや幅がない場合、治療できないと判断される場合もあります。
私たちも全ての骨欠損に対して、「なんでも治療可能です!」とは言えませんが、
骨の量的に難しいと判断し、専門クリニックを紹介した症例は1つのみで、
他のほとんどの症例は骨を作る施術を行なってインプラント治療を完了しております。
これは、CTによる画像診断をしていくことで判断できますので、
他院で断られた方も、ぜひご相談していただけたらと思います。

Q.骨の量以外で、インプラント治療ができない人はいますか?
以下の人は治療ができません。
骨の成長が終わっていない若い方
日常の歯磨きなどの清掃が全くできない方
チタンのアレルギーの方
アルコール依存症の方
歯科医師と意思疎通が取れない方
骨粗鬆症の治療中の方
糖尿病、高血圧のコントロールができていない方

Q.インプラント治療ってこわい。顎にでかいネジが入るんでしょ?痛いんでしょ?
手術中はしっかり麻酔が効いた状態で施術をしますので、術中痛い中やることはありません。
でかいネジについてですが、大体治療説明の画像などで、歯やインプラントや顎の骨のイラストをどアップでご覧になると、
なんか巨大なネジが顎に入っていくイメージを持たれることがあります。
実際は、天然の歯の方が大きいです。
術後の感覚は、抜歯された時と同じくらいの印象です。
治療された患者さんも、「最初はこわいイメージだったけど、思ってたより全然楽だった」と言う感想がほとんどです。
インプラントのレギュラーサイズは、直径が4.3mm、長さが10mmです。
天然の歯の直径も長さもそれよりもう少し大きいので、インプラントは全然大きいネジではないです。

Q.手術時間はどのくらい?
30分〜1時間程度が多いです。
埋入するインプラントの本数、骨増成の程度、お口を開けられる量が極端に小さいなど難易度により前後します。

Q.インプラント治療の費用が気になる。
具体的な治療費については、CT撮影、画像診断をしてお見積りを作成し、ご案内させていただきます。
また、費用の分割払いもこちらを利用していただけます。

Q.インプラント治療費を抑えることはできる?
医療費控除です。
例えば、400万円の所得の人が30万円のインプラント治療を受けた場合、
この制度を使うと、26万円で治療を行うことができます。
費用的にハードルが高かったという場合も、数万円安くできるなら、、、となったりします。
どんな風に利用するのでしょうか。

我が国の一般的なインプラントの治療費は、40万円程度です。画像診断から手術、最終的な被せ物まで含めてです。
医療費控除が使えるので、税金から医療費の一部が還付され、お得にインプラント治療ができると言えます。
どのような制度かと言うと、、、
その年の1年間でかかった医療費が一定額を超えた場合、その額と所得を元に計算された額、税金が返ってくると言うものです。
この医療費は、生計を同一にする配偶者、親族も含めてです。
一定の額というのは、医療費の合計が10万円または所得の5%を超えるというのが条件です。

✳︎所得と税金還付の例
年収400万円でその年の医療費が30万円だった場合、4万円の還付
→つまり、30万円から10万円を超えた分、20万円
 これに400万円の所得税率20%をかけた4万円が返ってきます。
という仕組みです。
クリニックの窓口で費用が減るわけではありません。

Q.インプラントはどれくらいもちますか?
20年の累積データで、上顎90%以上、下顎95%以上です。
上顎と下顎で差がありますね。これは、上顎の骨の質が下顎よりも少し弱いために起こります。
たまに、「インプラントを入れたら、骨が溶けるんですよね?」
とお話しされるかたがいらっしゃいます。
インプラントの周りの骨だけが溶けるというニュアンスのようですが、
そんな現象は起きなくて、周りの歯が歯周病が悪化するような状況でしたら、
周りの歯と同じように歯周病(インプラント周囲炎)になります。
ご自身の歯も、インプラントも同じようにお手入れすると、同じようにもちますとお答えしています。
インプラントが適切な位置に埋入され、歯列や噛み合わせにマッチした上部構造が入っており、
定期的にお口のメンテナンスに歯科受診されると安心です。

Q.インプラントだから特別メンテナンスが必要?
お家でのケアは、インプラントがあってもなくても同じように重要です。
インプラントに関係なく、病気の予防のために歯科受診し、
お口のメンテナンスを受けていただくのが一番歯が長持ちします。
そうすることで、結果的に健康寿命を伸ばすことに繋がります。
なぜなら、なんでも噛める状態であれば食事を楽しみながら栄養摂取でき、
虚弱にはならないからです。
噛み合わせがしっかりしていることで、全身を動かすバランスもとりやすく、
高齢者の寝たきりの原因である、転倒や骨折を防止できます。

Q.使用しているインプラントや歯科材料はどんなもの?
当院ではノーベルバイオケア社の製品を使用しています。
他のメーカーは使用しておりません。
ノーベルバイオケア社は、歯科インプラントで世界で初めて製品展開した、海外のメーカーです。(本社はスイス)
そのため歯科インプラントで最も長い歴史があり、世界70カ国以上で使用されています。
1965年、ブローネマルク博士により、世界で初めてインプラントが歯科臨床に応用されるようになりました。
現在、日本に存在するインプラントメーカーは40種類以上。
その中でも人体に応用してから50年以上の歴史があるのは、このメーカーならではの強みと言えます。
現在は、インプラントの表面にタイユナイトという特殊な加工がされているものを導入しています。
タイユナイトの特徴は、顎の骨の中に埋入されたあと、早期の骨結合と治癒期間の短縮が可能であることです。

Q.高齢だけどインプラント治療は可能?
年齢によりインプラントと骨の結合が制限があるということはありません。
当院のインプラント治療患者さんの最高齢は、90歳ですが、
全く問題なく、治療後も快適に過ごせています。

Q.ガイドやコンピューター支援の手術とは何のこと?
ノーベルバイオケア社が開発したものが、ノーベルガイドというものです。
CT撮影データとインプラントのシミュレーションソフトウェアを組み合わせて、治療計画をサポートするコンセプトです。
手術の前に骨の形態や質、神経の位置などを把握し、安全・安心な治療を可能にしています。
計画通りにインプラントを埋入するために、患者さんごとにサージカルテンプレート(手術用補助器具)を作製して手術をします。
治療計画に基づいてインプラント埋入をするため、サージカルテンプレートをお口に取り付け、
インプラント手術をします。
これにより、シミュレーションした位置に正確に手術が行えます。

実際のお口の状況は人それぞれですので、
インプラントの相談だけでもお気軽にしていただけると、
よりわかりやすいと思います。
ウェブでもご予約が可能です。

インプラントのブリッジ症例

2023年10月26日

インプラントのブリッジ症例

ほとんど歯が残っていない上顎に対して、インプラントのブリッジで治療した症例です。

以前、歯がない顎に対して、All on 4コンセプトの治療を行った症例をご紹介しました。
今回もほとんど歯が残っていない上顎に対する治療ですが、残っている歯が治療したら問題なく使っていける状態でしたので、
それを温存して尚且つ固定式の歯を入れるにはどのようにするのか、という治療プランを考える必要がありました。

 

当院を受診された時のお悩み

 

「上の入れ歯でしっかり噛めない」
というものでした。上顎は3本歯が残っておられて、あとは部分入れ歯が入っていました。
術前はこのような状態でした。


術前正面:歯の欠損が広範囲に認められます。


術前右側:惻切歯、犬歯、第一小臼歯のみ残存していました。


術前左側:すべて欠損でした。

欠損に至った原因ですが、虫歯がひどくなり、治療を繰り返すうちに徐々に歯が抜かれていったとのことでした。
虫歯の治療も際限なくできるわけではありませんので、最初は虫歯のところを埋める簡単な施術で済むのですが、
根管治療をして被せ物を入れる→虫歯が再発し最治療、となったら、残っている歯の量が少なすぎて抜歯になってしまいます。
抜歯後にブリッジや部分入れ歯で欠損を補ったあとは、欠損の負担がブリッジや部分入れ歯の土台の歯にかかってきますので、
長い時間をかけて抜歯に近づいてくようなものです。
そのようにして、この方は徐々に欠損の範囲が拡大していき、10本の欠損に至ったわけです。
大きい部分入れ歯が入った後、このようなお悩みが出てきました。
・ガタガタして硬いものが噛めない。
・食事の際、入れ歯と歯ぐきの隙間に食べ物が入り込む。
・歯ぐきが痩せてくるので、作り直さないといけない。
・入れ歯の金属のバネをしばしば調整しないとゆるくなってしまう。
。入れ歯のピンクの床の部分が割れてきた。
などなど、入れ歯あるあると言えます。
インプラントだからできる生活があると思います。それは、天然の歯があった頃を取り戻せる方法だからこそ、
自然に自由な生活を楽しむことができます。非常に治療効果が高いと考えております。

今回の症例の話に戻ります。
実は、この治療を行ったのはかなり前で、私たちはその時ノーベルガイドのシステムを導入していませんでした。
ノーベルバイオケアのインプラントをずっと使用していたのは変わらないのですが、
この症例後に、ノーベルガイドのクリニシャンというソフトと、ガイド用のオペキットがクリニックに導入されたのを覚えています。
今ならノーベルガイドを使用し、よりスムーズに治療が進んでいただようと思われます。今更ごちゃごちゃ言ってもしょうがないですが。。。

ところで、インプラント治療ならではのやり方で、トップダウントリートメントというものがあります。
簡単に言うと、最終的な歯から逆算した位置にインプラントを埋入するやり方です。

 

ワックスアップ

 



右下奥歯の欠損

歯型をとり、石膏模型を作ります。このように歯がないところに、ワックスを用いて歯の形を作ります。残っている歯や歯列、噛み合わせを踏まえて、理想的な歯の形・位置を設定します。この最終的な歯の設計図を準備するところから始まります。ワックスアップと呼ばれています。



上顎前歯のケース


下顎両側第臼歯部のケース



上顎全部のケース

ノーベルガイドが使用できる状況でしたら、ノーベルバイオケアのソフトにワックスアップ模型のデータを入れて、ガイドを作製していきます。
今回のケースは、ガイド導入前でしたので、技工の先生と手製のガイドを作製し、それを用いて手術を行いました。
院内で、石膏模型上にレジンを使ってガイドを作り、インプラント埋入を行いました。

手製のガイドは、ノーベルガイドと比較すると手術の正確さにおいては劣ってしまいますが、何も手掛かりがないフリーハンドの手術を行うよりかは、最終的な上部構造を反映した位置にインプラント埋入がしやすいと考えています。この症例は、比較的顎の骨の厚みや高さに余裕があったので、このやり方でも問題なかったと考えます。

まだ、現在のようなCTがない時代、インプラントの施術はパノラマX線写真などの平面の写真のみで行われていたわけで、ガイドも当然ない状況でした。そのような中で当時の歯科の先生方は工夫してされていたのだと思います。と考えると、ガイドのシステムがある現在は、医療の技術開発ならではの施術も可能になり、画期的で良いことだと感じております。

埋入後、インプラントと骨が結合する現象が起きます。オッセオインテグレーションと言います。インプラントの表面と骨の組織が直接結合する間は、負荷をかけないようにします。埋入する際、インプラントにかけるトルクを35N以上で固定できたら、初期固定が良好であると判断できます。手術の時はこの良好な初期固定を得るために、工夫をします。たとえば、柔らかい骨質の場合はあまりドリルで形成しすぎないようにします。小さめの穴を開けて、インプラントをねじ込んでいくイメージです。
この1次手術 のあと、一旦骨の組織とインプラントの結合は弱まります。スタビリティーディップと呼ばれます。それがあったあと、徐々に固定がしっかりしてきます。そのため、すぐに力をかけない方が良いです。
ただし、例外はあって、インプラントの先端が鼻腔底や上顎洞底の皮質骨噛み込むよう埋入するやり方では、待機せずに加重することもあります。ALL on コンセプトの治療はそうです。

 

最終上部構造装着後

 


術後正面観:機能的で審美的な歯が入りました。


術後左側:今回の症例のように、顎の骨の高さが豊富に残っている場合、最終上部構造は歯の形そのままを再現したような状態になります。これが骨の高さが吸収して低くなっている場合、歯の部分だけではなく、歯肉も一体となった上部構造を装着することになります。


術後右側:入れ歯と違って何でも噛める!と、患者さんに非常に喜ばれました。

 

インプラント治療って痛い?/strong>

 

よくあるご質問にお答えします。
Q.インプラント治療って痛いですか?
手術のことが一番気になると思います。顎の骨にネジを入れていくのってなんかこわいイメージがあるようです。
手術中は、麻酔をしっかりとかけます。痛みは感じない状態で手術を行います。少しでも痛みを感じられるようなら、麻酔を追加して行います。
全身麻酔ではないので、手術で触られている感覚は当然あります。
音や振動を感じてしまうのが、インプラント治療の埋入時ですね。
埋入後の待機期間や2次手術、上部構造装着などのステップと比べると、
埋入時のストレスが1番大きいわけです。麻酔の量も一番多いです。
また、お口の中は体の他の部分に比べて、傷が治りやすいという特徴があります。
実際に手術された患者さんの感想は、思ったよりも楽だった、早くやっておいてよかったと言うものが多いです。
では全く痛みや腫れがないのかというと、人によって身体の傷の感じ方、治り具合に差がありますので、
侵襲の大きい手術予定の方には特に、腫れや痛みが出る可能性が高いこと、
その際の対処法、不快症状が出ると思われる期間などを詳しくお伝えしております。

当院のインプラント治療のページはこちらです。
ぜひご覧ください。
セカンドオピニオン、相談のみなど歓迎いたします。

少ない本数で最大の効果のインプラント治療

2023年9月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、入れ歯で噛めないことでお困りの方の治療例です。
少ない本数で最大の効果というタイトルですが、まさにその通りで、
要は歯がない顎に対して、いかにコスパよく固定式の歯を入れて機能回復するかというのがテーマであります。
All on 4というインプラント治療のコンセプトです。

術前正面

上顎には大きい入れ歯が入っておられました。

術前左側

左下奥歯は欠損で噛めない状態です。

術前右側

残っている2本に入れ歯の金属のバネがかかっています。

術前パノラマX線写真

上顎は左右ともに2本ずつ歯が残っています。下顎は欠損もありますがほとんど歯が残っています。
主訴は上顎の歯でしっかり噛みづらいとのことで、大きい入れ歯を長年使われていたのですが、それがしっかり噛めない状態でした。
上顎に残っている歯は4本。あとの10本は入れ歯で補われています。
このくらい歯がなくなっている場合、義歯の設計を考えるときに、上顎を大きく覆う床を用います。
理由は、残っている歯が少ないため、そこに入れ歯のバネを引っ掛けるのですが、それだけでは入れ歯を維持するのに足りないのです。
粘膜を大きく覆い、入れ歯の床で吸着を得ようと考えます。
入れ歯が吸着する原理というと、入れ歯が入っている口の中って、粘膜の上にプラスチックの板が乗っかっている状態なわけですが、
真っ平なガラスの板2枚を想像してみてください。
このガラス板をくっつけただけではすぐ離れてしまいます。しかし、水をその間に介在させると、ピタッとくっ付きますね。
この状態、空気の出入りがないのです。総入れ歯が口の中で吸着したりする原理は、口腔内の粘膜と入れ歯の床の間に、
唾液があり、顎を動かしても空気の出入りがない床の形態を作れているということです。

この方の口腔内で、入れ歯の吸着や維持が適切にできているかというと、全くできていませんでした。
まず、入れ歯の床が邪魔だからと、上顎を覆う部分をくり抜いており、そこから口腔内粘膜と入れ歯の床の間に空気の出入りがどうやっても生じてしまいます。
だから入れ歯がパカパカ浮いてしまうのでした。

入れ歯治療と身体が払う代償
また、部分入れ歯の宿命といってもいいですが、入れ歯のバネが引っかかっている歯に、歯を揺らすような力が常にかかるので、
ゆっくり抜歯しているようなものです。残っている4本の歯いずれも、食事に支障があるほど揺れが大きくなっていました。

この患者さんは、今までの人生で、もっと歯が残っていたけれども、このように入れ歯のバネがかかっている歯は揺らされてダメになってしまい、
どんどん入れ歯が大きくなって行く流れになっていました。
入れ歯を作る際に、必ず歯科ではこのような話をします。部分入れ歯は徐々に大きくなる、総入れ歯に近づいて行くのです。
部分入れ歯を入れる前に、入れ歯のバネをひっかける部分を削って形を整えたり、被せ物を作ったりします。
これらは、入れ歯の着脱方向に可能な限り平行になっている面を作り、維持力を得るためのものです。
どんなに良い部分入れ歯を作ったとしても、必ずバネの部分の負担があり、残っている歯が失われていきます。

入れ歯の床が接している歯茎に関してはどうでしょう?ここでも、身体の代償が払われています。
噛むときに粘膜に入れ歯の床がグッと押し込まれます。すると血流が悪くなり顎の骨が吸収してやせていきます。
ずっと入れ歯を使用していて、顎の骨がものすごく痩せてしまっている方、
少しずつ身体が代償を払っていて、尚且つ生活の質が悪くなってしまっています。

あまりにも骨が吸収しすぎていると、入れ歯を作り直しても入れ歯が歯茎をしっかり掴むこともできず、
入れ歯と粘膜の間に空気が出入りしやすく、噛もうとしても動いてしまう入れ歯にしかなりません。
そして、骨がなさすぎると、インプラント治療も難しくなってしまうこともあります。
骨を作るために、他のところからブロック骨を削り出して移植をするような手術になるかもしれません。
ではインプラントしよう!となっても、一苦労なのです。

ダブルテンプレートテクニック
この方は、上顎の残っている歯がグラグラすぎて抜歯が必要でした。
いきなり抜歯してインプラントを埋入することはありません。
最終的な歯の設計図を模型上で作って臨みます。
インプラントの位置付けに、コンピューター支援のガイドシステムを使います。
これはノーベルガイドと呼ばれるものです。
口腔内にはめ込み、ガイドのスリーブに沿ってドリルとインプラント埋入操作を行います。
欠損が比較的小さい症例は、作製したガイドを口腔内に装着し手術に用いるというシンプルな活用法になります。
今回のようなほとんど歯が残っていないような場合、作製したガイドが口腔内のシミュレーションした位置に留まっていて欲しいですが、
そうもいきません。歯がたくさん残っていたら、ガイドをはめ込んでもあまりがたつくことなく口腔内に留まってくれますが、
歯がない状態でインプラントを6本埋入するプランですので、何もとっかかりがない口腔内ではガイドがツルツル滑ってしまい、
シミュレーションとずれてしまいます。ガイドが所定の位置に来るように工夫が必要です。

このため、歯を抜く前の状態に合うガイド、抜歯後の口腔内に合うガイドの二つを作製して手術に臨みます。
麻酔をして、残っている歯がある状態でガイドを口腔内に位置付けます。
前方や最後方のインプラントの埋入を先に行います。
そこで1つ目のガイドの役目は終わりです。
抜歯を行い、2つ目のガイドを口腔内に装着します。
歯のとっかかりは無くなりましたが、1つ目のガイドで埋入したインプラントがありますので、
2つ目のガイドと埋入済みのインプラントをスクリューで締結します。
そうすると、全く口腔内でずれることなく2つ目のガイドを位置付けられます。
抜歯をしたエリアには、2つ目のガイドを用いてインプラント埋入を行います。


インプラント埋入後のパノラマX線写真。All on 4コンセプトの治療では、インプラント埋入時、しっかりとした初期固定を狙います。35Nというトルクをかけても、インプラントが骨内で回らない状態が、目指すところです。そのために、インプラントの先端を上顎洞や鼻腔底の皮質骨に噛み込ませて、しっかりとした初期固定を得るようにします。そのインプラントを用いて、固定式の仮歯を装着し、即日で機能回復を図るのが特徴です。


上部構造の一例。チタンのフレームに口腔内にマッチするようなピンクの歯茎部分、人工歯の部分で構成されています。


インプラントにスクリュー固定されるところがネジ穴に見えるところです。口腔内に装着されると、インプラントとインプラントの間を歯間ブラシで清掃していくことになります。


術後正面:歯茎部がある場合、必要ない場合とがあります。顎の骨がどれだけ吸収しているかによります。吸収が大きいと、人工物で補うところが大きくなります。この方の場合、すべて歯の部分にすると、異様に長い歯になってしまいますので、歯茎部分もあったほうがむしろ自然な仕上がりになります。


術後右側:適切な形に回復できています。


術後左側:左下奥の欠損にはインプラントで歯を作っています。


術後咬合面:ネジ穴にはふたがしてあります。

このように、All on 4の治療には独特の工夫が必要で、専門性が高い治療と思います。
この方のように、歯がほどんとない、全くない顎に対して固定式の歯を入れるにはどのようにするかというと、
8本くらいインプラント埋入し、前歯、奥歯にわけてブリッジを作製する、
All on4コンセプトで作製する、
ということになります。しかし、前者では治療後の長期予後が期待できる分、どうしても費用が高額になりがちです。
All on 4は、費用を抑えて早期の機能回復を図ることができ、コスパに優れた治療法と言えます。
当院のインプラント治療のページです。
入れ歯でお困りの方、是非ご相談ください。

ホワイトニング、上下顎インプラントの治療

2023年9月12日

20代で奥歯が噛めない状態
歯の欠損の回復、歯の色が気になるという0代女性の治療例です。
欠損はインプラント、ジルコニアのブリッジ、
歯の色はホワイトニングで改善しました。

初診時はこのような状態でした。
術前正面

前歯の黄ばみ、暗い色調を気にされていました。歯の先端に近いところに茶渋のような沈着があります。

術前左側

下の奥歯がありません。上の歯が下の歯茎にあたりそうです。

術前右側

左側と同様に、下の奥がないため、歯の病的な移動が生じています。上の小臼歯にも欠損があります。

パノラマX線写真

虫歯の進行によりかみ合わせが壊れてしまっているのがわかります。歯根だけになっているところは抜歯が必要な状態。長期間虫歯で歯がない状態であったため、噛み合わせの歯が伸びてしまっています。

唾液検査で虫歯の原因を調べます
なぜ若くして虫歯がここまで進行してしまったかというと、学生時代に少しずつ歯が欠けてなくなっていったが、前歯と小臼歯まででなんとなく食事していたから、やばさがわからなかったということでした。
虫歯に感受性が高い、低いというのは個人差がありますので、食事のタイミングやケアについて聞き取りを行いました。
同時に、虫歯リスクの検査として、唾液を採取して機械で分析する、SMTを活用しました。

これは、患者さんに専用のうがいの水で10秒間うがいしてもらい、それを採取し分析する機器です。
この唾液検査でわかることは、
・虫歯菌の多さ
・唾液の緩衝能(虫歯菌の出す酸を中和する能力)
・口腔内のpH(酸性に傾く人は虫歯で歯が溶けやすい)
・歯肉の炎症度
・口臭に関するガスの多さ
です。
調べたところ、唾液の緩衝能が低く、虫歯菌が多い判定結果でした。また、ケアが1日1回3分以下のブラッシングのみで、糖分を含む飲料を長時間とってしまうという生活習慣がありました。
これらを踏まえて、担当衛生士から適切な生活習慣指導とケア用品の案内をし、生活習慣の改善に取り組んでいただきました。なんといっても、治療する期間というのは、長い人生のうち数か月です。患者さんの生活はそこから新たにスタートですから、治療後のよい状態が、虫歯の再発によって壊されないように生活習慣からよくしていく必要があります。生活スタイルに合うように、虫歯リスクを下げるケア用品を取り入れていきました。虫歯や歯を補う治療と並行して衛生指導を行いました。

歯の着色除去、クリーニング

エアフローという機械を用いて施術をします。パウダーがステインを効果的に除去して、歯面を傷つけないのです。そして、傷がつかないためきれいな状態が長期間維持できます。歯面清掃用のペーストはさまざまで、ものによっては研磨成分が強く、歯面が傷がつくおそれもあります。
メンテナンスはずっと続くので、使用する機材やペーストなどのケア用品の選定は重要です。
健康は生活習慣から作られるという意見はごもっともです。私たちが働きかけても、たとえば喫煙の習慣が歯周病を悪化させているためやめるようにできないかという話をしても、なかなか生活習慣を変えられないわけです。習慣が変えられないのでその患者さんを助けられない、のではなく、私たちが関われることや可能な手立てを講じることで、改善できないかやってみます。
それぞれの年代に響く言葉がけも重要です。
パウダーのクリーニングは、施術する衛生士もしっかりトレーニングをしています。特に痛みを感じさせないようにポイントがあります。パウダー吹き付け部が粘膜に当たらないよう注意が必要です。歯面からの跳ね返りもあり、適切にバキューム(水分やパウダーを吸引する)がないといけません。
このような場合におすすめです。
・ステインや着色が目立つ方
・ホワイトニング前のクリーニング
・いろんな材質の補綴装置が入っている方
・矯正器具が装着されている方
基本的にメンテナンスは口腔内の原因除去が終わって、感染のコントロールがある程度できている方が多いです。その患者さんの口腔内の状況、リスクに合わせてメンテナンスの器具を選択していきます。いつも同じではなく、その時、その方の必要な部位に適切なケアを行うのです。
現在の紙面清掃に用いられる機材はたくさんの種類がありますが、歯面にカップやブラシを回転させて当てて汚れを除去するものが一般的です。
 パウダーを用いたクリーニングは、用途に合わせて2種類あります。メンテナンスで用いる場合と、補綴装置装着などの前処置の場合です。どちらも、患者さんに不快感がなく、歯に優しい清掃方法です。

インプラント埋入

ノーベルバイオケアのリプレイスCCというインプラントを主に用いています。今回も臼歯にあうレギュラーサイズのものを埋入しました。
特に奥の方は、骨の密度が低かったようで、ドリルの感触から骨が柔らかい感じがありました。
しっかり待機期間をおく予定にしました。
実はこの後、患者さんが怪我で入院されてしまい、その治療が落ち着くまで歯科受診ができない状態でした。しかし、無事に復活されて、インプラントも顎の骨と結合しているのを確認しました。

ホワイトニング
ホワイトニングの薬剤を塗布し、専用の光照射を行い、歯面に作用させるのですが、その前にポリリンホワイトリキッドとスポンジを用いて歯の表面を磨きます。
高濃度の短鎖分割ポリリンを配合して専用のメラミンスポンジとセットで使用することで、歯面の汚れを高次元で取り除くことが可能です。
清掃ごは、短鎖分割ポリリン酸が歯面に吸着し、歯面保護及び、汚れの再付着防止効果もあります。
ポリリン酸ホワイトニングを導入している理由で最も大きいことは、歯科業界での口コミの良さです。以前は複数のメーカーのホワイトニング材を自分たちで試したこともありましたが、ニオイや刺激が強すぎて、術中、術後の痛みがあることが問題に感じていました。
ポリリン酸ホワイトニングの良さはその逆で、刺激や痛みを感じずに確実に白くなっていくところと、ホワイトニングしながら歯の質を強化していくところです。
日本人の歯の特性を考慮した性質で、プラチナナノコロイドを配合し、漂白時間の短縮に成功しています。EXポリリン酸を配合し、漂白効果を従来品よりも高めています。
知覚過敏にもなりくいため、継続使用できます。これは、硝酸カリウムの鎮痛効果により知覚過敏が緩和されているからです。
EXポリリン酸のイオン吸着効果(歯の表面のコーティング)で、刺激成分が歯髄に届きにくいようブロックしています。
他メーカーのホワイトニング材は、エナメル質が細かいすりガラス状になり、光がその構造にあたって白く見えるという効果がありますが、ポリリン酸はそのような歯にダメージがないところが大きいメリットと考えられます。

治療後
術後正面

気にされていた着色や黄ばみが改善し、ホワイトニングにより透明感のあるはっきりとした白さになりました。
欠損はセラミックのブリッジ、インプラントの被せ物で補っており、奥歯でしっかり噛める状態に回復できています。

術前の状態でずっと経過していたら、奥歯で噛めない分、負担が前方の歯にのしかかります。そのため、力による歯の破損、歯周組織のダメージが大きくなり、より噛み合わせが崩壊してくることが考えられました。
現在はメンテナンスで良い状態が保てるようにしています。着色が気になってきたら、パウダークリーニングやホームホワイトニングを行うようにしています。ポリリン酸ホワイトニングで、美しく丈夫な歯面にできており、汚れがつきにくいためツルッとした感触が心地よいとのこと。自信を持ってスマイルできることで、モチベーションの維持にも役立っています。

上顎前歯インプラント症例

2023年8月15日

左上前歯のインプラント症例
 患者さんは30代の女性で、20歳くらいに事故で前歯が折れ、根管治療と被せ物の処置をされた経緯がありました。それ以降特にトラブルなく経過していましたが、ある日前歯がぐらぐらしてきてポロッと取れてきたため来院されました。診てみると、歯根破折しており、土台の金属もろとも被せ物が脱落していました。必要な処置だっと思いますが、元々の残っている歯の部分が少なくなっており、今までなんとかもってきたのですが、いよいよ限界が来たようです。歯根の薄い部分に、金属の支柱に伝わる力が集中し、割れるべくして割れてしまったと考えられます。このままの状態ですと、再装着もできませんし、歯根派接している部位から顎骨に細菌感染と炎症が持続するため、どんどん周囲骨が吸収しなくなってきます。歯肉も受診されたとき、赤黒く腫れて、歯の周りから排膿がありました。取れた被せ物は全く装着できないため、その場で仮歯を作製し、仮づけしました。
術前正面

反対側と比較すると、歯肉の位置が下がり、赤黒い炎症がある状態になっています。

術前左側

問題の歯の歯肉が大きく下がっている要因は、歯根破折からの細菌感染、骨の炎症が生じ、骨が吸収してなくなってしまったことです。骨がなくなると、当然その部分の歯肉は下がってきます。

術前右側

歯根破折していた歯の周囲の歯は、全く治療されていない天然歯です。

このまま置いておくことで、どんどん骨が失われてしまうため、身体のためによくないですから、抜歯が妥当であると判断しました。抜歯後の歯を補う治療を検討しました。
インプラントと接着ブリッジの2つの方法でどちらにしようか迷っておられましたが、最終的には、周りの歯を一切削らないことを重要視され、インプラントによる治療を希望されました。

インプラント治療前の追加検査
CT撮影を行いました。

 歯根破折しており、歯肉より深い部位に虫歯の進行もありました。根が問題ない状態と違い、歯周組織が炎症により破壊されています。唇側の骨が吸収してなくなっていました。
 私たちアジア人の骨格の特徴として、もともと頬側、唇側の骨の厚みが少ないことが挙げられます。個人差はありますが、私たちもCT画像を見て、唇側の骨に厚みがある患者さんに出会ったことがありません。健康的な状態でもそうなので、炎症がある場合は、唇側の骨は消失しているか、あっても部分的に1mmあるかないかです。そして、歯肉も退縮していますので、単にインプラント埋入をするだけでは大きく歯肉の位置が下がってしまい、とても長く不自然な歯になってしまいます。

最終的な上部構造から逆算したインプラントの位置づけ
 他の投稿にも含まれますが、インプラント治療はトップダウントリートメントと言って、最終的な上部構造(被せもの)の設計図があり、そこから逆算してインプラント埋入の位置を決めるというやり方をします。骨があるところに入れて、あとは被せ物をそこから立ち上げて作る、となりますと、歯の列から逸脱した位置から歯が作られたり、噛み合うはずの歯と噛み合わない状態になりかねません。最終的な上部構造の形と位置が決められて、そこに合うような位置に埋入するには、どのようにしたらよいかを検討します。そこに顎の骨が十分あるならば、あまり悩むことはありません。インプラントを位置付けるのに十分な骨がなければ、骨を作る、またはインプラントのサイズや角度を修正して実現できないか考えます。
 最終的な上部構造の設計図は、患者さんの歯型をとって、石膏模型を作ることから始まります。シリコンの印象材を用いて精密な型とりをします。石膏模型上で最終的な上部構造をワックスで整形し、機械をスキャンしてデータ化しますノーベルバイオケアのソフト上で、そのデータとCTデータを重ね合わせて、インプラントの位置のプランニングをします。このソフトが非常に臨床上のポイントを踏まえて操作しやすく、よい治療結果につながるように思います。開院してからすぐ使い始めました。最初は慣れませんでした。大ベテランのインプラントが得意な先生方が、「ガイドはいいかもしれないが、ソフトに抵抗がある」とおっしゃられていたことがありましたが、なるほどと思いました。フリーハンドでのインプラントオペ歴が長いほど、それまでの経験を頼りに手術される方が手間がかかりませんし、新たにソフトの操作を覚えていくのは抵抗あると思います。私自身、勤務医時代にフリーハンドで見事な手術をされている先生を目の当たりにしたことがあります。私はそのような特殊感覚を持ち合わせていませんし、 ノーベルバイオケア社のガイドシステムを使うことによる臨床上のメリットが大きいと判断し、導入しています。やはり、インプラントメーカーは多くありますが、世界No.1シェアということと、臨床データの蓄積が長期にあり、信頼できることが導入している理由です。
 
 CTデータとワックスアップのデータを用いてインプラントのプランニングが終わりました。そこで初めてノーベルバイオケア社にノーベルガイドの発注が可能となります。オーダーしたら、1週間程度でクリニックにノーベルガイドが届きます。
 一旦患者さんのお口の中にガイドを合わせます。ガイドは機械で作成されますので、口腔内に適さないバリが残っていたりしますので、手術の前に合わせて確認し、必要な調整をします。もし口腔内で少しでもかたつくようでしたら、ガイドの意味が全くなくなりますので、再製作の必要があります。その場合は、元々の型取りやCT撮影時のエラーが考えられます。そこで治療が数週間ストップしかねないので、作製時のあらゆる工程を注意して進めます。

抜歯即時埋入>
 前歯の問題のある歯根を抜歯し、そのままにしておくと、もともと薄い上顎の骨が全くなくなって、大規模な骨造成をしないとインプラント埋入ができなくなってしまいます。今回の症例も同じで、抜歯しての骨の治りを3〜4ヶ月くらい待ってから埋入すると、大変難しい状況になります。
 そういう理由で、抜歯とインプラント埋入を同時に行うやり方をとります。抜歯し、歯根周囲にある炎症のある組織を除去し、薄い唇側の骨をできるだけ壊さないように操作します。埋入は準備したガイドを用いて行います。フリーハンドでドリリング、埋入をしようとすると、どうしても骨のない唇側に器具が持っていかれてしまい、シミュレーーション通りの手術にはなりません。唇側に寄ってインプラント埋入がなされると、最終的な上部構造の固定が問題が出てきます。私たちはインプラントの上部構造を基本的にスクリュー固定にしています。理由は、どんなに注意しても、上部構造をセメント固定したら余剰セメントの取り残し問題が発生するからです。余剰セメントがインプラント周囲炎の原因となってしまうと残念ですので、清掃性や長期予後の観点、メンテナンスのしやすさを考慮し、セメント固定をします。前歯の領域で、インプラントの位置や角度が唇側に傾いてしまうと、唇側にネジ穴が見えてくることになりますので、必然的にセメント固定になってしまいます。角度つきの土台(アバットメント)を用いるにしても限度がありますので、やはり、インプラントの位置付けをコンピューター支援のシステムを用いて行うメリットは大きいです。

術後CT

このように、フリーハンドでは不可能なシミュレーション通りの位置にインプラント埋入ができております。

術後正面

自然な歯冠形態と歯肉形態になっています。

術後左側

近くで見ても、天然の歯があった頃と変わらない仕上がりです。

術後右側

このように自然な仕上がりのためには、実はインプラントの位置付けが最も重要であり、そこから立ち上がった上部構造が自然な歯肉形態を支えているのです。

当院のインプラント治療のページは

こちら

です。動画もありますのでぜひご覧ください。

 

下顎前歯と奥歯のインプラント治療

2023年8月13日

 私たちは年間100本以上のインプラント埋入手術をしており、そのほとんどのケースでノーベルガイドのシステムを使用しています。ノーベルガイドを使用するのは、安心、安全で長期的な予後が良いインプラント治療を実現するためです。

 今回は、下顎前歯と奥歯のインプラント治療例を通じて、どのように治療を進めていくかまとめました。ノーベルガイドのようなコンピューター支援のシステムをどのように活用しているか、見ていきましょう。

資料とり、診断、インプラントのプランニング
  当院を受診された方はまずはお口の資料取りをし、診断と治療計画を立てます。口腔内写真、パノラマX線写真、歯周組織検査を行います。インプラント治療を検討されている方には、CT撮影で骨の状態を3次元で精察します。CTは平面のレントゲン画像と異なり、骨の奥行きや重要な身体の器官との距離を計測することができます。歯を失ったところの骨にインプラントを埋入しますが、そもそも骨がないことが多いです。歯を失う原因は、若年者は虫歯、高齢者は歯周病の割合が多くなります。抜歯に至る虫歯は、重症ですので、顎の骨への細菌感染と骨の炎症が進んでいます。抜歯に至るような歯周病も重症ですので、歯根の半分以上の骨が失われている状態ですから、抜歯後には大体骨が残っていません。その残っている骨の中にどのようにインプラントを位置付けるのかは、骨を様々な方向からみる画像診断が必要です。
 ノーベルガイドはいきなり出来上がりません。まずは、精密なお口の型取りをします。それを元に技工の先生にワックスアップを作製してもらいます。
右下奥歯

左下前歯

石膏模型の色がついている部分がワックスで作られた歯です。最終的な歯は、噛み合う反対の顎の歯との位置関係、周りの歯列との調和が取れた理想的な位置に作っていきたいので、模型上でゴールを決めます。こちらの模型の形態をスキャナーで読み込んで私たちのクリニックにデータが届きます。
 撮影したCTデータと、ワックスアップのデータをノーベルバイオケア社のソフトに取り込みます。最終的な歯の位置になるように、インプラントを位置付けるプランニングをします。位置やインプラントのサイズが決まったら、ノーベルバイオケア社にノーベルガイドを発注します。
右下奥歯:周囲の骨が豊富に残存しています。

左下前歯:歯根破折の影響で、周囲の骨の炎症が進み、インプラントを完全に骨内に位置付けることが不可能です。

このような場合、抜歯とインプラント埋入と同時に骨造成を行い、インプラント周囲にしっかり骨ができるような追加の処置を併用します。

クリニックに届くノーベルガイドはこのようなものです。半透明のマウスピースに似た形で、歯と歯茎にピッタリ適合するよう作られています。手術前に口腔内に合わせて、歯肉に当たってしまうようなところがあれば調整します。


金属の筒の部分がインプラント埋入部位です。こちらの筒の部分に沿ってインプラントが入るように骨を整形し、インプラント埋入もこの筒に沿って行います。

術後:右下奥歯

術後:左下前歯

このように事前のシミュレーション通りに埋入ができています。最終的な上部構造から導かれた理想的な位置にインプラントがあります。これをガイドなしにできないのか、というと寸分の狂いもなく位置付けることは不可能と考えられます。
 今回の症例で特に注意が必要なことは、まず左下前歯の部分で言うと、唇側の骨が大きく吸収してなくなっていることです。元々歯があったところは、歯の根が割れて菌の感染が生じていたため骨が吸収してしまい、インプラント埋入ができません。宙に浮いた状態になってしまいます。インプラント埋入する際、骨が全くないところにインプラントをポンと置いたところで、組織内で動いてしまいますし、全く骨との結合がなされないのです。今回は、長めのサイズのインプラントを選択し、吸収が生じた部分よりもさらに深い位置に、インプラントの先端が食い込むようにしています。インプラントの角度も、歯にかかる力のバランスと審美面を考慮しこのようにしました。この角度をフリーハンドでドンピシャの角度にコントロールすることは不可能です。唇側には骨がないため、ドリルで骨を形成する際に唇側にドリルが流れてしまい、ドリリングできたと思ったら、とんでもない方向にインプラントが埋入されることになります。術者は、患者さんが水平に寝た状態で、斜め上から口腔内を見ますので、CT画像上だけでイメージした通りの施術をすることができません。インプラントのこの角度がたとえば5度唇側に傾いてしまったら、全く理想的な歯にはなりません。唇側に大きく傾いた歯が出来上がります。ガイドがあるからこそ、このような操作が可能となります。
 そして、埋入ができた後に骨のボリュームがどうしても足りていませんので、人工のカルシウムの材料を用いて骨造成を行い、患者さん自身の骨組織とインプラントが結合する治癒期間を置きます。
 右下奥歯のインプラント埋入では、下顎骨の施術ならではの注意点があります。下顎には喉の奥の方から神経や血管が入っている下顎管という構造があります。奥の方から歯の根の下数ミリくらいの位置を通り、歯列の真ん中あたり、前から数えて4番目の歯の頬側で顎骨の外に出てきます。インプラント治療の際のドリルやインプラント体が下顎管の構造を少しでも傷害してしまったら、出血や神経麻痺の問題が生じます。下顎の施術の際は常に、この身体の重要な器官から安全域を確保しておく必要があります。ノーベルバイオケア社のソフト上で、下顎管との安全域を確認した上でシミュレーションを作っています。それを活かしてガイドを作製しています。ガイドに沿ってドリリングを行う際は、絶対的な安心感があります。

インプラントの失敗の原因とは
 手術中のトラブルとしては。上記のような神経、血管の傷害が挙げられます。これらは、事前のCTによる画像診断やガイドにより回避することができます。手術中や術後の感染も失敗の原因の一つです。どの歯科医院でも、侵襲の大きい外科処置は特に滅菌の環境下で行いますので、術中は問題ないと考えられます。術後は、管理や自宅でのケアにも影響されます。
 喫煙はこのような外科処置の成否に大きく影響があります。喫煙により血流の問題が生じます。インプラント手術の侵襲は、骨造成の有無や埋入本数、切開・剥離の程度で異なります。術後が比較的楽なのは、フラップレス手術といって、インプラントの直径分4〜5mm程度歯肉に穴をあけて行うものです。侵襲が大きい手術は、サイナスリフトや大規模な骨造成を併用した場合です。喫煙は術後管理やインプラントの上部構造が入った後も、長期予後に良くない影響があります。喫煙されている方のコンプライアンスの問題もあります。
「こういう手術を予定していますので、〇〇日間は禁煙でお願いします」
「先生、わかりました」
診療室でこんなやりとりをして、クリニックを出た瞬間タバコに火をつけている姿を目撃された、という患者さんもおられました。笑い話のようですが、患者さんの喫煙問題は無くなりません。
 インプラントの位置異常の問題は大きいです。このノーベルバイオケア社のガイドシステムにより、フリーハンドの手術ではなしえない精密なインプラント手術が行えます。力のバランスや清掃性の良い上部構造は、インプラントの位置が適切だからこそ作製可能となります。理想的な上部構造から逆算してインプラント埋入を行う、このようなトップダウントリートメントと言われるやり方が必要不可欠であり、ノーベルガイドのテクノロジーを用いることで実現可能となります。
 私たちのインプラント治療の流れはこのようになっております。

治療説明動画

ぜひ一度、お問合せください。