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成人期以降〜高齢の方の口腔機能について

2024年7月27日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

口腔機能についてのトピックです。

⚫️成人期以降(高齢者)の口腔機能の変化
—まずは知っておきたい!食べることのメカニズム—

 

①食べ物の認識

 

NY大学の短期留学中、よく食べていたチキンオーバーライス。

初めて見る食べ物ですし、見た目はぐちゃっとしていてどんな味かわからないわけです。

それに対して、よく食べるものは目で見て食物の性状や味、温度も予想できます。

ちなみにこのチキンオーバーライスは、外食した中でもピカイチのお味でした。

本来、私たちがものを食べるとき、捕食すること前に過去の経験などからその食べ物はどのようなものか(噛む必要がある食品なのか?舌で押しつぶして食べるものなのか?嚥下だけで対応するものなのか?など)について、食べ物を見る、触る、匂いを嗅ぐなどして判断します。

 

②食べ物の取り込みと咀嚼

 

前歯は、ものを噛み切る「咬断」に向いた、シャベルのような形状をしています。

 

食べ物を口腔内に取り込む前に、口唇や前歯によって適当な大きさに切り取られ、舌は食べ物を迎えるかのように切歯の付近まで突出します。この際にも口唇や舌は食べ物の物性や温度などを感知して、その後の処理方法にかかわる情報を得ます。ある程度の固さをもち、咀嚼のが必要な食品に対しては、舌で受け取った後。すばやく咀嚼する側の歯の上に舌で食べ物を移動させ、舌と顎の動きの協調運動により上下の歯列で粉砕処理します。プリンのような軟らかい食品の場合、舌と口蓋で押しつぶすように処理されます。このとき、鼻腔は咽頭と交通し、呼吸をすることが可能です。

 

奥歯はものを噛み砕くために適した形態です。

特に第一大臼歯は、7割くらいの人がものを最初に噛み砕く機能を有しており、

主機能部位と呼ばれる噛み合わせのエリアがあります。

 

③食塊形成と飲み込みの開始

 

咀嚼が進んで口の中にバラバラに粉砕した食べ物は、そのまま飲もうとすると誤嚥してしまうことがあります。なぜなら、嚥下の際に私たちが息を止めていられる時間は0.5秒ときわめて短いためです。口の中でバラバラに広がった状態で飲もうとすると,早く喉に向かうもの、後から向かうものも含め、0.5秒に間に合わなくなってしまいます。そこで,バラバラに広がった食べ物を舌で上手に一塊にまとめあげることが必要になります(食塊形成)、この際に、唾液と十分に混ぜられるとより飲み込みやすくなります。
食べ物が一塊にまとめられると、軟口蓋が持ち上がることで鼻咽腔が閉鎖されます。この際に舌の前方が強く口蓋に押しつけられ、波打つように動かしながら咽頭に食べ物を押し込みます。

 

 

④咽頭(のど)への送り込み

 

舌の後方は口蓋や軟口蓋に向かって動き、食べ物を押し込みます.食べ物は一気に咽頭の下方に流れ込みます。そのとき、気管の入り口にある喉頭蓋が倒れ込み、同時に声帯など気管を保護するいくつかの構造物が閉鎖し、気管を閉じます.これにより、食べ物が気管に入り込むのを防止します(この食べ物を飲み込む間,息が止まっている時間が0.5秒)。

 

⑤食道への送り込み

 

舌根部は咽頭の後壁に向かって食べ物を押し込み、咽頭の後壁は前方に張り出すことで食道への押し込みを助けます。

 

 

⑥飲み込みの完了

 

食べ物は、すべて食道内に押し込まれました。あとは食道の蠕動運動により胃に向かいます.食べ物が食道に押し込まれたと同時に、喉頭蓋は跳ね上がって気道が開放され、呼吸が再開されます。

 

—高齢期にみられる口腔機能の変化—

 

成人期以降に起きる口腔機能の問題としては、一度獲得した機能が生理的に低下したり、病気が原因で失われたりすることがあげられます。

 

—筋力の低下–

 

加齢とともに全身の筋力は低下します。これは、生理的に起こる筋肉量の低下に加えて、低栄養などによる筋肉量の減少からも影響を受けます。この変化は、口腔や咽頭の筋肉にとっても例外ではありません。ロ腔や咽頭の筋力が低下することで、結果、噛む機能や飲み込む機能も低下するのです。特に舌は筋肉の塊ですので,舌の筋力の低下は、噛む機能。飲み込む機能に加えて、話す機能に影響を与えます。

 

—唾液の減少—

 

唾液は、噛んだ後の食べ物に湿り気を与え、まとまりやすく変化させるのに必須です。また、食べ物の味を含んだ物質を、味を感じる細胞(味蕾)に届けるのは、唾液の役目です。唾液の分泌量は、加齢そのものでは大きく変化しないといわれています。しかし,高齢者が服用している薬の多くは唾液の分泌を妨げる作用をもっています。特に「多剤服用患者」とよばれる。
多くの薬を飲んでいる高齢者では、唾液分泌が薬の影響を受けている場合が多くなります。

 

–喪失歯の増加—

 

現在、80歳で20本の歯を有する人の割合は、50%を超えているといわれています。しかしながら、いまだに残りの50%の人は歯を喪失し、義歯などの補綴装置を使うことで口腔機能を保っているといえます。しかし、義歯による咀嚼機能の回復には限界があり、組織機能の面では天然歯の有意性は揺るぎません。つまり、喪失歯の増加は咀嚼機能の低下につながるといえます。

 

⚫️口腔機能が低下することによる問題

 

—摂食嚥下障害—

 

高齢になると、加齢による機能の低下に加えて、複数の全身疾患をもっていたり、多種多様な薬を服用していたりするため、摂食嚥下障害になる危険性が非常に高まります。高齢者に多いの嚥下障害の症状としては、咀嚼ができない、食べこぼし、嚥下反射が遅くなる、食道の入口の開きが悪くなる、飲み込むのに時間がかかる、唾液が少なくなる,むせたときに咳をすることが下手になる、などがあります。また、摂食嚥下機能に影響を及ぼす副作用がある服用薬としてアトロピンなどの抗コリン薬、三環系抗うつ薬、抗てんかん薬などがあり、注意が必要です。

 

—誤嚥—

 

気道と食道はこのように交差しているので、

摂食嚥下の過程で誤って食物が気管内に入らないよう、

筋肉が協調運動をしているのです。

食物が通る際は、通常気管へ入らないように蓋がされるわけです。

声帯を越えて気管内に唾液や食べ物が侵入することを「誤嚥」といいます。声帯を越えなく喉頭内にこれらが入り込んでしまった際には、「喉頭侵入」といいます。食べ物や唾液が誤嚥や設
喉頭侵入を示すと、それを喀出するために咳嗽反射が起こり、「むせ込み」がみられます。ですから「むせ」がみられた際には,誤嚥や喉頭侵入を起こしていると考えて間違いありません。一方で、誤嚥してもむせず、睡眠中に無自覚に唾液とともに細菌が気管や肺に入る場合もあり、「むせなし誤嘸(不顕性誤嚥)」とよばれています。

 

—窒息—

 

「窒息」とは、空気の道である気道、すなわち口から咽頭、喉頭、気管にかけての道に食べ物が詰まり、呼吸ができなくなったことを指します。この窒息は、命の危険に直結するために注意が必要です。窒息事故は、さまざまな食品によって起こります。死亡に至た窒息事故の原因食品を消費者庁の報告からみてみると、1位である「餅」についで,「米飯」「パン」「肉」「魚介類」と続き、われわれ日本人が普段から食べてい食品が並びます。特に嚥下機能が低下した高齢者おいては、窒息への配慮が必要です。

 

—脱水・低栄養—

 

私たちが1日に食べたり飲んだりしている食事やお茶の量を想像してみてください。3度の食事に加えて、おやつや夜食、紅茶やコーヒーなどを頻繁に摂取していると結構な量になることがわかります。1日分を並べれば、テーブルいっぱいになるような量です。一方。摂食嚥下障害がある人では、十分な食事を摂ることが難しくなれば、当然「低栄養(栄養障害)」に陥ります。
「嚥下障害の人はスプーン1杯の水で溺れる」という言葉があります。通常、水というと誰しも飲みやすいものと思いがちです。しかし、嚥下障害の人にとって、水は動きが速く口腔内でバラバラに広がることから。もっとも誤嚥をしやすく、飲みにくいものなのです.水は、私たちが生きていくために毎日摂取しなければならない重要なものです。嚥下障害になり、水やお茶,みそ汁などの水分を摂るときにむせるようになると、知らず知らずのうちに摂取量が減少し。「脱水」につながります。

 

—食べる楽しみの消失—

 

「生きるために食べよ、食べるために生きるな」・ギリシアの哲学者・ソクラテスの名言としていまも残るこの言葉は、日々、忙しく働く私たちにも教訓を与えてくれます。しかし、「食べることは生きることである」ことも事実で、特に摂食嚥下障害患者さんにとっては、食べることが制限されるなか、「食事を楽しめない人生なんて!」と思うのも無理はありません。
食べるものに制限があっても、食べる楽しみを味わってもらえるような支援を継続することが必要です。

インプラントの手術、1回で終わりにできる?

2024年7月1日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


左下臼歯部にインプラント埋入された状態のCT画像。

 

⚫️インプラント治療には、一次手術と二次手術と2回の手術を行う「2回法」と、1回の手術ですませる「1回法」があります。

 

2回法は、インプラントを埋入後にいったん歯ぐきを閉じてインプラント体とあごの骨の結合を待ち、その後2度目の手術をしてインプラントの頭を出し、アバットメントを取りつけます。それに対して、1回法はインプラント埋入と同時にアバットメントをつける方法で、手術が一度ですみ、2回法にくらべて治療期間を短縮することができます。
適用症例が広いのは2回法で、より慎重に治療を進めたい場合に用いられます。前歯の審美治療、再生療法が必要なかた、持病のあるかた、タバコを吸うかたなどは、通常2回法が適用されます。1回法は、比較的治療条件のよいケースで選択されるのが一般的です。

 

⚫️予備治療

 

インプラントを埋入する準備のために行う予備治療は、すべてのかたに必要なわけではありません。炎症がなく骨量も十分で、条件的に問題がなければ、予備治療が必要ない患者さんもなかにはおられます。
ただ、歯を失うに至った原因によっては、インプラント治療を不利にする状況がお口のなかに生じていることが少なくなく、予備治療が必要になるケースはめずらしくありません。
たとえば、歯周病で歯を失った場合、その周りの歯にも大なり小なり歯周病の炎症が起きています。そこで、まず歯周病をしっかりと治療し炎症を止めなければなりません。周りに細菌感染があっては、インプラントを埋入しても今度はその細菌がインプラントの周りの骨に感染しかねません。もしも感染が起きれば、インプラントとあごの骨は結合せず、どんなに巧みな術者でも、治療を成功させることは難しいのです。
また、歯を失うほど歯周病が進行したかたのあごの骨は、炎症によって減ってしまっています。インプラントを安定させるための骨が足りない場合は、再生療法を行い骨を増やす必要があります。こうした予備治療は、インプラント治療を成功させるカギを握っているといっても過言ではありません。
予備治療が必要と診断されたかたは、予備治療の期間を含めた治療計画についてじっくり説明を受け、気がかりなことは遠慮なく質問して治寮について発しましょう。

●歯を失うと、その周りの骨は「歯を支える」という役割を失ってしまうため自然と減ってしまいます。入れ歯、ブリッジ、インプラント治療のいずれを選ぶ場合も治療に不利になりますので、歯を失ったら早めに歯科医院で相談しましょう。
●インプラントは、いったんあごの骨と結合すると、がっちり固定して動きません。インプラントを入れた後は矯正治療ができなくなってしまいますので、矯正治療をご希望のかたは、インプラント埋入前に必ずご相談ください。

 

⚫️治療を受ける前に知っておきましょう。

 

インプラント治療を受ける前にぜひ知っておいていただきたいことや、患者さんからよくある質問をまとめてみました。

 

●なぜ治療に時間がかかるの?

 

インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに(多くの因子・条件に左右されますが)おおむね1~4ヵ月かかります。インプラントの改良により、この期間は徐々に短縮してきていますが、それでもこれだけ時間がかかるのにはわけがあります。
インプラント治療は、チタン製のインプラント体とあごの骨がガッチリと結合してはじめて機能しますが、この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるものなのです。つまり、インプラント治療を成功させるには、骨の自然治癒力を見守りじっくりと待つことが不可欠。治療に時間がかかるのはそのためです。

歯がないところにインプラント埋入し、骨と結合する治癒期間をおきます。

 

●タバコを吸ってるけど大丈夫?

 

喫煙はインプラント治療の大敵です。
インプラントを入れると決めたらぜひ禁煙しましょう。「禁煙はどうしても無理」というかたは、せめて術前・術後の数週間、喫煙本数を可能な限り減らしてください。喫煙は、歯ぐきの傷の治りを遅らせ感染のリスクを高めるばかりか、骨の結合を遅らせて治療の邪魔をします。ぜひご協力をお願いします。

 

●治療に不適応なケースとは?

 

▪️成長過程にあるかた
▪️免疫不全症のかた
▪️抗がん剤で治療中のかた
▪️放射線療法を受けているかた
▪️ホルモン療法を受けているかた
▪️チタンアレルギーのかた
▪️骨粗しょう症のお薬を多量、長期にお使いの
かた
▪️また、全身疾患の病状を良好な状態にコント
ロールできていないかたなどはインプラント
治療に不適応な場合があります。なお、全身
疾患のある患者さんの場合、歯科医師が主治
医と連絡をとり、治療が可能かどうかを確認
して進めさせていただきます。

 

●手術後の痛みや腫れは?

 

痛みの感じかたは個人差があるので一概には言えないのですが、再生療法などをしていない通常のインプラント治療であれば、術後1日ほど軽く痛む程度でしょう。免疫応答がさかんな若い人ほど腫れやすいですが、腫れが引くのも早く、年齢が高いほど腫れは少ないー方、腫れが引くのは遅くなります。しかし、痛みが治まってきていれば心配いりません。痛みが増すようでしたら、治療を受けた歯科医院で診てもらいましょう。

術後の痛みや腫れについては、かなり個人差があるように思います。複数本を埋入し、同時に大規模な骨造成をするような手術の方が、一般的には術後の不快症状が出やすいと考えられます。しかし、施術を受けられた方で、「あまり痛くなかったし、ハイキングしてきた」とへっちゃらな方もいらっしゃいました。一方で、1本のみの埋入手術で、不快感を強く感じられるケースもありました。

 

●インプラントが壊れたら?

 

インプラントの構造でいちばん壊れやすいのは、上部構造(被せ物)です。
インプラントで強く噛めるようになるうえ、天然歯のときにはあった噛む力を感じる歯根膜がないため、噛む力の加減が働かず、上部構造が欠けたり割れたりしやすいのです。インプラント体が壊れたわけではないので、上部構造だけの修理・交換で対応できます。ご安心ください。

 

●手術後の食事はどうする?

 

そっとしておくために、食事は反対側の歯で食べてください。とくに抜糸するまでの1~2週間は手術したところの絶対安静期間なので噛まないようにお願いします。なかでも再生療法を受けたかたは、歯ぐきで食べられる軟らかな食事を。治療の成功にかかわる重要なお願いなので、しばらく不自由をおかけしますがご
協力をお願いいたします。

 

●治療期間中に仮歯は入れられるの?

 

これはケースバイケースです。患者さんがお困りにならないようさまざまな工夫をさせていただきますが、難症例の場合、治療を成功させるために、入れ歯も仮菌も使わずにそっとしておく期間もあるからです。入れ歯や仮歯を使えない期間があるかどうかについても説明を受け、それも含めインプラント治療を選択するかをお考えいただければと思います。

 

●インプラントが結合しなかった?

 

しっかりとした検査と診断、予備治療を終えて治療をしているのであれば、もし結合しなかった場合でも、早期に抜いて再治療をすることができます。あごの骨の穴は数カ月でもとどおりにふさがりますので、それを待って再埋入を行います。順調に結合が進むよう、「手術したところで噛まない」などの歯科からのお願いごとに注意してお過ごしください。

 

メンテナスでお会いしましょう!

 

インプラント治療が終わったら、定期的にメンテナンスを受けて検診とクリーニングでよい状態を長持ちさせていきましょう。
⚫️インプラントは人工の歯だから、「もうこれでむし歯にも歯周病にもならないと思っているたもおられるかもしれません。たしかに、インプラントはむし歯にはりません。でも歯周病にはなります。放っておくと、歯周病とそっくりの病気、「インプラント周囲炎」という病気になってしまうのです。
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えるあごの骨に炎症が起きる病気。天然歯のときと同様、インプラントの周りに歯石がついて、プラークがたまることによって起きます。そこで、インプラント治療が終わったら、今度は治療のためでなくメインテナンスのために、ぜひ歯科医院に定期的においでください。
メインテナンスでは、毎日の歯みがきやフロスでプラークがきちんと取れているかのチェックや、ご自分に合った歯みがきの仕方を教わることができます。インプラントにプラークや歯石がこびりつかないように、クリーニングも受けられます。
また、インプラントが入ると、つい強い力で噛んでしまうので、もしも噛み合わせが悪くなっていると、上部構造の欠けやネジのゆるみにつながりやすいのです。噛み合わせのチェックをすることで、そうしたリスクの軽減ができます。
インプラント治療は、入れたら終わりではありません。快適に使い続けるには、むしろ入れてからのお手入れが重要です。放っておいてインプラントの周りがプラークや歯石だらけになると、今度はインプラントの周りに炎症が起き、あごの骨との結合が失われて、せっかくの治療が機能しなくなってしまいます。
治療が終わったら、今度はメインテナンスでお会いしましょう。歯科医院とのお付き合いを予防中心に変えると、インプラントの快適な状態を長く維持できるだけでなく、残っている周りの歯の健康も、歯科のプロフェッショナルといっしょに守ることができます。

インプラント治療の素朴な疑問

2024年5月21日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

インプラント治療についてよく質問されますが、
「どうして治療に時間がかかるの?」
「インプラントって入れてすぐ歯作れないの?」
という内容は多いですので、この疑問に関するお話です。

 

リアルな治療の感想

 

「思ってたよりラクやった」と治療の感想
埋入して骨にガッチリと結合し自立するのがインプラントの特徴。ほかの歯に負担をかけない点で、代替えのない治療になっています。

歯を失ったとき「ブリッジか、入れ歯か、それとも•・・・」
と、多くのかたが迷うと思います。
インプラント治療は、金属の一部をからだに埋め込み、上部に人工歯を取りつけて使うという特殊な治療法です。残念なことですが、一時期
週刊誌などでバッシングされた影響もあり、「怖いな」と思っているかたもおられるかもしれません。ただ、実際には多くのかたがインプラント
治療を受け「治療してよかった」と喜んでおられるのも事実です。
インプラント治療のいちばんの特長は、埋入した骨にガッチリと結合し自立するということ。つまり、ほかの歯に負担をかけず、傷めずにすむということです。こうした治療は現状ではインプラント治療以外になく、そういう意味で、替えのきかない治療になっています。
ただし点もあります。手術が必要、治療期間が長い、予備治療に時間がかかることもある、そして自費診療である点です。ただ、信頼性の高い材料と機器・器具を使い、検査と治療計画を綿密に行い、感染対策を万全にして、専門的に訓練されたスタッフが治療するとなると、ある程度の費用が生じざるを得ない、というのが私の実感です。
もしインプラント治療に興味があるなら、知識を得てじっくり検討してみてください。不安なまま迷うのも、逆に最初から「インプラントしかない」と決め込むのも、どちらも残念なことだと思います。どの治療を選ぶにせよ、後悔をしないために、まず知ることからはじめましょう。


インプラントはこのように骨に埋入されて、上に被せ物が装着される構造です。


ブリッジは歯がない部分に対し、周囲の歯を削って土台として使います。接着剤で土台に装着をします。


部分入れ歯は取り外し式の歯です。欠損の近くの歯に引っかけをして維持する設計です。

 

なぜ埋入する前の予備治療が大事?

 

インプラントを埋入する準備のために行う予備治療は、すべてのかたに必要なわけではありません。炎症がなく骨量も十分で、条件的に問題がなければ、予備治療が必要ない患者さんもなかにはおられます。
ただ、歯を失うに至った原因によっては、インプラント治療を不利にする状況がお口のなかに生じていることが少なくなく、予備治療が必要になるケースはめずらしくありません。
たとえば、歯周病で歯を失った場合、その周りの歯にも大なり小なり歯周病の炎症が起きています。そこで、まず歯周病をしっかりと治療し炎症を止めなければなりません。周りに細菌感染があっては、インプラントを埋入しても今度はその細菌がインプラントの周りの骨に感染しかねません。もしも感染が起きれば、インプラントとあごの骨は結合せずどんなに巧みな術者でも、治療を成功させることは難しいのです。
また、歯を失うほど歯周病が進行したかたのあごの骨は、炎症によって減ってしまっています。インプラントを安定させるための骨が足りない場合は、再生療法を行い骨を増やす必要があります。こうした予備治療は、インプラント治療を成功させるカギを握っているといっても過言ではありません。
予備治療が必要と診断されたかたは、予備治療の期間を含めた治療計画についてじっくり説明を受け、気がかりなことは遠慮なく質問して治療について検討しましょう。

 

なぜ治療に時間がかかるの?

 

インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに(多くの因子・条件に左右されますが)おおむね1~4ヵ月かかります。インプラントの改良により、この期間は徐々に短縮してきていますが、それでもこれだけ時間がかかるのにはわけがあります。
インプラント治療は、チタン製のインプラント体とあごの骨がガッチリと結合してはじめて機能しますが、この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるものなのです。つまり、インプラント治療を成功させるには、骨の自然治癒力を見守いじっくりと待つことが不可欠。治療に時間がかかるのはそのためです。

 

タバコを吸ってるけど大丈夫?

 

喫煙はインプラント治療の大敵です。
インプラントを入れると決めたらぜひ禁煙しましょう。「禁煙はどうしても無理」というかたは、せめて術前・術後の数週間、喫煙本数を可能な限り減らしてください。喫煙は、歯ぐきの傷の治りを遅らせ感染のリスクを高めるばかりか、骨の結合を遅らせて治療の邪魔をします。ぜひご協力をお願いします。
▪️治療に不適応なケースとは?
●成長過程にあるかた
●免疫不全症のかた
●抗がん剤で治療中のかた
●放射線療法を受けているかた番
●ホルモン療法を受けているかた
●チタンアレルギーのかた
●骨粗しょう症のお薬を多量、長期にお使いのかた
●また、全身疾患の病状を良好な状態にコントロールできていないかたなどはインプラント治療に不適応な場合があります。なお、全身疾患のある患者さんの場合、歯科医師が主治医と連絡をとり、治療が可能かどうかを確認して進めさせていただきます。
▪️手術後の痛みや腫れは?
痛みの感じかたは個人差があるので一概には言えないのですが、再生療法などをしていない通常のインプラント治療であれば、術後1日ほど軽く痛む程度でしょう。免疫応答がさかんな若い人ほど腫れやすいですが、腫れが引くのも早く、年齢が高いほど腫れは少ないー方、腫れが引くのは遅くなります。しかし、痛みが治まってきていれば心配いりません。痛みが増すようでしたら、治療を受けた歯科医院で診てもらいましょう。

 

インプラントが壊れたら?

 

インプラントの構造でいちばん壊れやすいのは、上部構造(被せ物)です。インプラントで強く噛めるようになるうえ、天然歯のときにはあった噛む力を感じる歯根膜がないため、噛む力の加減が働かず、上部構造が欠けたり割れたりしやすいのです。インプラント体が壊れたわけではないので、上部構造だけの修理・交換で対応できます。ご安心ください。

 

治療期間中に仮歯は入れられる?

 

これはケースバイケースです。患者さんがお困りにならないようさまざまな工夫をさせていただきますが、難症例の場合、治療を成功させるために、入れ歯も仮歯も使わずにそっとしておく期間もあるからです。入れ歯や仮歯を使えない期間があるかどうかについても説明を受け、それも含めインプラント治療を選択するかをお考えいただければと思います。

 

インプラントが結合しなかった?

 

しっかりとした検査と診断、予備治療を終えて治療をしているのであれば、もし結合しなかった場合でも、早期に抜いて再治療をすることができます。あごの骨の穴は数カ月でもとどおりにふさがりますので、それを待って再埋入を行います。順調に結合が進むよう、「手術したところで噛まない」などの歯科からのお願いごとに注意してお過ごしください。

メインテナンスでお会いしょう!
ンプラントは人工の歯だから、「もうこれでむし歯にも歯周病にもならない」と思っているかたもおられるかもしれません。たしかに、インプラントはむし歯にはなりません。でも歯周病にはなります。放っておくと、歯周病とそっくりの病気、「インプラント周囲炎」という病気になってしまうのです。
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えるあごの骨に炎症が起きる病気。天然歯のときと同様、インプラントの周りに歯石がついて、プラークがたまることによって起きます。そこで、インプラント治療が終わったら、今度は治療のためでなくメインテナンスのために、ぜひ歯科医院に定期的においでください。
メインテナンスでは、毎日の歯みがきやフロスでプラークがきちんと取れているかのチェックや、ご自分に合った歯みがきの仕方を教わることができます。インプラントにプラークや歯石がこびりつかないように、クリーニングも受けられます。
また、インプラントが入ると、つい強い力で噛んでしまうので、もしも噛み合わせが悪くなっていると、上部構造の欠けやネジのゆるみにつながりやすいのです。噛み合わせのチエックをすることで、そうしたリスクの軽減ができます。
インプラント治療は、入れたら終わりではありません。快適に使い続けるには、むしろ入れてからのお手入れが重要です。放っておいてインプラントの周りがプラークや歯石だらけになると、今度はインプラントの周りに炎症が起き、あごの骨との結合が失われて、せっかくの治療が機能しなくなってしまいます。
治療が終わったら、今度はメインテナンスでお会いしましょう。歯科医院とのお付き合いを予防中心に変えると、インプラントの快適な状態を長く維持できるだけでなく、残っている周りの歯の健康も、歯科のプロフェッショナルといっしょに守ることができます。
インプラント治療の終了を機会に、歯科医院とのあたらしいお付き合いをはじめましょう。

私たちのクリニックのインプラント治療については
こちら
をご覧ください。

入れ歯とインプラントを組み合わせて、動かない入れ歯にできる?

2024年5月14日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、部分入れ歯とインプラントを組み合わせた治療例のトピックです。

 

入れ歯治療について

 

どんな入れ歯でも、人工の歯と歯茎に接するピンクの床の部分があります。床の素材はレジンが広く使われていますが、見えない部分をチタンやコバルトの合金を用いて作られる場合もあります。
総入れ歯は歯茎に入れ歯が乗っかるのみですが、部分入れ歯は、入れ歯の部分と天然の歯の部分が混在している状態ですので、
残っている歯に維持力を得るため、クラスプという引っ掛けを作ります。よくあるのが、ワイヤーを曲げたものや、合金を鋳造して作ったものです。
審美的なクラスプとして、ノンクラスプデンチャーというものがあります。これは、通常金属製のクラスプの部分を、
特殊な床の材料に変えて、歯茎の色調に馴染ませて作られています。

こちらの写真は、よくある合金で作成されたクラスプです。歯の付け根あたりに金属の引っ掛けがありますね。保険診療で認められていますので、広く使われています。

入れ歯が入ったお口の状況ですが、歯茎のお肉の上にプラスチックの歯がのっており、それを介して物をかむということですので、
考えてみたら、結構大変な状況です。グッと力を入れて噛むと、入れ歯の床がズブっと歯茎に沈むことになります。
骨から生えている歯とかみごたえや使いやすさが異なるのはしょうがないことです。どんなに良い材料を用いても、天然の歯にはかないません。
そして、インプラントと入れ歯でも、かみやすさではインプラントにかないません。インプラントは骨に植立されていますので、天然の歯と同様に噛めるわけです。
あまり良くないことを書きましたが、しっかり物を噛むという面では、天然歯やインプラントが得意なのです。
一方で、入れ歯にも得意なことがいくつかあります。治療費の安さ、外科処置がほとんどいらないこと。
個人的には、一旦お試しができる治療であることがメリットと感じます。
入れ歯治療をして、リハビリが上手くいかなかったとして、
他の治療法に変更しよう、というのが可能であるため、後戻りができる治療法と言えます。

 

治療例

 

歯の欠損の部位に部分入れ歯を装着されていた方です。
「入れ歯で噛むと痛んで、しっかり噛めない」
「入れ歯が動く、浮いてくる」
というお悩みがありました。


術前正面


術前左側:奥歯の欠損があります。部分入れ歯を装着されていましたが、使いづらいとのこと。


術前下顎咬合面:歯を失ってから長期間経過しており、形態は落ち着いています。

 

治療計画

 

旧義歯の問題点を修正するため、外形、噛み合わせの状態を確認します。インプラントオーバーデンチャーを最終義歯とする場合、インプラントの治癒期間(オッセオインテグレーションと言います)に使用する、安定した治療用義歯が必要です。最終義歯の外形がある治療用義歯を作製、装着します。そして、インプラントの治癒期間が終わり、アタッチメントを取り付けるのですが、この治療用義歯を改造し、インプラントオーバーデンチャーへ移行します。患者さんはインプラントオーバーデンチャーに適合しやすくなります。
インプラントの位置決めですが、治療用義歯を作製中に、ガイド作製も行います。義歯は歯型をとってすぐに出来上がるものではなく、噛み合わせの記録取り、人工歯を排列し試適の工程を必ずやります。この試適の段階で診断用ステントを作ります。義歯を試適した状態で型を取り、レジンを流し込みます。最終的な歯に対して、インプラントが理想的な位置にくるように、このような手法を取ります。インプラント埋入部位は、維持のためのアタッチメントが義歯の中におさまるよう、クリアランスが確保できること、機能時の義歯の動きを抑制できることが要件です。また、今回は部分入れ歯ですので、クラスプがかかる歯の軸、義歯の着脱方向が非常に重要で、着脱方向と大きく維持装置の角度が違うと、適切な維持力が発揮できないことになりますので、これらを確認し、計画を立てていきます。

 

術後

 


術後CT:欠損部にインプラント埋入された状態。


術後正面


術後左側:アタッチメントが奥に見えます。


術後下顎咬合面:欠損の後方にインプラントが埋入され、ロケーターアタッチメントが装着されています。ボタンが歯茎から生えているように見えますね。


術後義歯装着した咬合面:このようにして装着した入れ歯は、噛む力が骨に伝わりしっかり噛むことが可能となります。

最終義歯の構造には、メタルのフレームが使われています。レジンのみの義歯床だと、アタッチメントの部分の強度不足により破折のリスクが高まります。
また、装着後の顎堤の形態変化にも対応するため、維持各子はレジン床内に取り込み、リライン(内面の敷き直しの処置)しやすい形状にします。

 

メンテナンス

 

一般的な義歯のメンテナンスといえば、経年的な人工歯の磨耗、床と顎堤の適合の変化に注意して、必要な時に早期に義歯の修正をします。これは、顎堤の保全にも、インプラントへの過剰な負担にも対応するものです。義歯設計やインプラント埋入位置の問題があると、術後の義歯破損を招きます。
ロケーターアタッチメントは、インプラント埋入された上にある凸部と、義歯床内の凹みが噛み込むことで維持力が発現します。義歯に組み込まれた部分には、維持のためのリテンションディスクがあります。6種類用意されており、維持力やインプラントの角度により使い分けをします。場合によってはこのリテンションディスクの交換が頻発する可能性もあります。研究では、1〜3年の間に0〜9回と幅があります。Vere Jら2012年の論文より。
この理由としては、義歯の着脱方向とインプラントの角度が大きいことが考えられます。これらの角度は可能であれば20°以内におさえられていることが望ましいです。また、咬合の強さと頻度によっては維持力が大きく減衰するという研究もあります。Abi Naderら2011年。
患者さんへの取り扱い指導も重要です。着脱方向から大きくずれて強引に引っ張ったり、ずれて装着した状態で噛み合わせたりすると、ディスクの変形が不可逆的になり、交換を余儀なくされます。

私たちは、術後の良い経過のために、まずインプラント埋入時に高い初期固定を確実に得るように注意をしています、具体的には、初期固定が得やすいインプラントの選定と、ドリリングの際のアダプテーションテクニックです。最終義歯のコピーデンチャーを作製し、造影剤を用いてサージカルステントとするとともに、歯肉の厚みも術前に確定し設計に反映します。このことにより、
・適切なデンチャーのスペースが確保できるよう、埋入方向を確実にプランニングできる
・術直後の荷重に対し、適度な高さのパーツの選択
を可能にしています。

 

まとめ

 

義歯とインプラントを組み合わせた治療により、少ない本数のインプラントで機能上優れた効果が得られる義歯作製が可能となります。
義歯が単体で十分患者さんが満足できるような機能を得るには、条件が整っている必要があります。具体的には、顎堤の高さ、幅、骨隆起やアンダーカット、口腔周囲筋の習癖の有無などの条件が整っていること、義歯の経験があることも患者さんのリハビリを行う上ではかなり慣れに関する差が出てきます。
条件が整っている患者さんばかりではありませんので、義歯でしっかり噛めない場合や義歯が動いてしまい、機能に問題がある場合、このようなインプラントを併用した治療を検討する価値があると考えられます。

義歯でお困りの方、どうぞお気軽にご相談ください。
お電話 072−767−7685
WEB予約もこちらから可能です。

唾液の重要な働きについて

2024年5月13日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

口腔内の健康に重要な、唾液に関する内容です。

「お口がパサパサするな」と気になりはじめたら、定期的に歯科医院でむし歯、歯周病、口内炎のチェックを受けましょう!

●病気ではないからと油断していませんか?

 

唾液の分泌が減ってお口のなかがパサついても、「病気ではないから」と我慢しているかた、おそらく多いのではないでしょうか。
唾液は「魔法の水」と呼ばれるほど、お口の健康にとってとても重要。不足すると、再石灰化作用(むし歯になりかけた歯を修復してくれる働き)や抗菌作用(むし歯菌や歯周病菌の活動を抑え込む働き)が十分に機能しません。
お口がパサパサするということは、唾液がたっぷり分泌していたときと同じセルフケアを続けているだけでは、むし歯ができたり、歯周病が進行しやすくなっているということ。
油断大敵なんです。ではお口のなかがパサパサするかたは、どうすればむし歯や歯周病からお口を守ることができるのでしょう?
まずは、予防に熱心なかかりつけの歯科医院を見つけて、むし歯と歯周病を防ぐプラスアルファの予防法(歯みがきのスキルアップや歯みがき剤の効果的な使いかた、食生活の改善など)を個別指導してもらいましょう。定期的にお口のなかのチェックとプロフエッショナル・クリーニングを受け、むし歯や歯周病の原因であるプラークをしっかり取ってもらうことも大事です。
それと併行して重要なのが、唾液の分泌を増やす努力です。唾液の分泌が減るのは(唾液腺の病気や頭頚部のがんの治療など、唾液腺が障害された場合を除けば)、口の周りの筋肉の運動不足や水分不足、生活習慣や持病のお薬の影響など、さまざまな原因が重なって起きてきていることがほとんどだからです。
持病のお薬が唾液の分泌に影響してしまうケースは多々あります。たとえば高血圧のお薬やアレルギーを抑える抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、睡眠薬など、さまざまな持病のお薬が唾液の分泌を抑制してしまいます。
とはいえ、唾液の分泌が減るからといって、持病のお薬をいきなり止めるのはたいへん危険。お医者さんに相談して、唾液に影響しないお薬に代えてもらうのもなかなか難しい場合もあると思います。
でも、水分をこまめに摂ったり、コーヒーやお酒の飲み過ぎを見直したり、お口のエクササイズをすることならすぐにでもはじめられますよね。
唾液の分泌を妨げている原因をひとつずつ減らして、改善していきましょう。


このような口腔内の保湿ジェルもあります。全身疾患などの影響で口腔乾燥症が認められる場合、ジェルとスポンジブラシで清掃することもあります。

 

●からだの病気が隠されていることも。

 

最後に、もうひとつ重要なことをお伝えしたいと思います。「お口のパサパサは病気ではない」と多くのかたが思いがちです。ほどんどのケースではたしかにそうなのですが、じつはそのなかに、本当に病気が隠れていることもあるのです。
たとえばシェーグレン症候群などの自己免疫疾患、甲状腺機能亢進症などの内分泌異常、悪性貧血など血液の病気、糖尿病や腎臓病などの代謝異常、唾液を分泌する神経の障害などの症状が、唾液の分泌不足として現れることがあるからです。
お口のパサパサ感がとてもつらいとき、水分を摂ったり、舌やお口の周りの筋肉を動かしてもお口にうるおいが感じられない、ちっとも改善されないという場合は、かかりつけの歯科医院に相談し、専門的な検査の受けられる医療機関を紹介してもらいましょう。
ふだん意識したことはなくても、いざ分泌が減ってしまうと食事にもおしゃべりにも困ってしまうのが「唾液」。早めに気づくほど分泌量の改善が楽なので、「減っているかな?」と思ったら、お口のエクササイズをはじめてみてくださいね!

 

▪️予防指導を受けましょう。

 

歯みがきや食生活の指導を受け、香味がやさしく殺菌剤の入った歯みがき剤を選びましょう。

 

▪️クリーニングを受けましょう。

 

唾液が減るとむし歯や歯周病になるリスクが高まります。プロのお掃除でお口の健康を守りましょう。

◼️唾液の分泌を減らす持病のお薬
代表的なものは?
●高血圧症の治療薬、降圧剤
●けいれんや潰瘍などの治療に用いる副交感神経遮断薬
●アレルギーなどの治療に用いる抗ヒスタミン剤
●不安を鎮める鎮静薬/抗神経薬
●睡眠薬 など

 

⚫️予防の常識非常識

 

1.セルフケアと歯科のサポートで歯は残せます。

 

「歯を失う怖い病気」というイメージが強い歯周病。ですが、テレビのCMなどで見られるように、短期間で歯がグラグラになって抜け落ちてしまうことはふつうはありません。統計的には、歯周病になりにくい人が1割、進行しやすい人が1割で、残りの8割の人はゆっくり進行していきます。
歯周病を予防するには、セルフケアだけでなく、歯周病の早期発見が重要です。早く異常がわかれば、その分早く手が打てます。そのためには、定期的に歯科医院で健診を受けることが大切。もし歯周病になっていて治療を受けたのなら、治療が終わったときが歯を守る新たなスタート地点です。再発を予防するために健診に通いましょう!

 

Check!!
《タバコで歯周病が10年早く進行する!》

 

タバコは歯周病の進を速めます。約4,800人の初診患者さんの喫煙状況と歯周病の進行度を比較したところ、中等度・重度歯周病のかたの割合が、30代の喫煙患者さんと、40代の非喫煙患者さんでは同じくらいとなりました。40代の喫煙患者さんと50代の非喫煙患者さん、50代の喫煙患者さんと60代の非喫煙患者さんも同じような割合でした。
つまり、「タバコを吸っている人は、吸わない人より10年歯周病の進行が速くなる」と言えます。歯周病を予防するために、タバコはきっぱりやめましょう(加熱式タバコも同じです)。

 

2.歯ブラシだけでは落とし切れない汚れがあります。

 

歯ぐきの溝のなかはプラーク(細菌のかたまり)がたまりやすい場所で、たまったプラークは歯周病の原因になります。そのため、この部分を歯ブラシで注意してみがいているかたも多いことでしょう。
ですが、歯ブラシでは溝のなかのプラークは完全には取り切れません。しかも、無理に溝のなかにブラシの毛先を入れてみがくことを続けると、歯ぐきが傷つきやせ、むし歯になりやすい歯の根面が露出してしまいます。歯ぐきを傷つけずにきれいにプラークを取り除くみがきかたを、歯科医院で教えてもらいましょう。歯ぐきの深い溝や歯周ポケットのなかの掃除も歯科医院にお任せください。
歯と歯のあいだをデンタルフロスや歯間ブラシでみがくことと、むし歯予防のためにフッ素入り歯みがき剤を使うこともお忘れなく。

 

3.「量」より「食べかた」が問題です。

 

甘いものを控えているはずなのに、むし歯になってしまう。それは甘いものの「食べかた」に問題があるのかもしれません。
飲食後、お口のなかでは、細菌の生み出す
酸や飲食物の酸により歯の成分が溶け出し(脱灰)、その後、時間をかけて唾液が成分を歯に戻していきます(再石灰化)。溶かす力が戻す力を上回る状態が長期間続くと、むし歯になります。
このとき、甘いものの「量」以上に、食べる「頻度や時間」が問題となります。ひっきりなしに甘いものがお口のなかにあると、唾液が歯を修復する時間が取れません。ですから、のどあめを絶えず舐めていたり、ドリンクをチビチビ飲んでいたりすると、むし歯になりやすいのです。野菜ジュースやスポーツドリンクなど、ヘルシーなイメージのものにも意外に砂糖は入っていますのでご注意を。

※歯科医院では、皆さんのお口の状態や生活習慣にあった予防の方法をご提案しています。毎日のセルフケアにお役立てくださいね。

インプラント治療を行うにあたっての全身的な注意点

2024年2月11日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


上顎に4本インプラント埋入し、入れ歯を組み合わせる治療例の写真

インプラント治療を行う際、特別注意が必要なことがあります。
全身疾患についても注意が必要なことの一つです。
治療の際の臨床検査の意義としては以下のことが挙げられます。
①リスクの明確化
②リスクを反映した治療計画、治療精度の向上
③患者さんによる自己管理の徹底と維持→治療後の長期安定
④加齢、病的変化への対応
特に治療に対する安全性に加えて、治療後のリスクを軽減する意味でも、臨床検査とその共有が重要です。

全ての患者さんの術前スクリーニング的な検査として、
・血液、尿検査
・デンタル、パノラマX線写真撮影
・CTによる3次元的画像診断
があります。

さらに、一部の患者さんを対象として、
・骨代謝マーカー
・歯の喪失原因の検査:細菌検査、力学的検査
・アレルギー検査:パッチテスト
があります。

インプラント治療を行うにあたっては、血液検査、ヘモグロビンA1c(HbAic)が6.5%未満、
空腹時血糖值13m/L未満にコントロールされていることが必要です。
これは、インプラント手術時だけではなく、メインテナンス時も同様です。そのため、メインテナンス時、定期的に血液検査データのHbAic値を確認することが重
要となります。

ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白で、身体のすみずみまで酸素を運ぶ役割があります。
このヘモグロビン(血色素)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンですが、
グリコヘモグロビンについて、その1つのヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病と関係しています。
赤血球の寿命は約120日(4ヵ月)なので、すなわち、血糖値は血液検査時の全身状態を示しています
一方、HbAIC値は血液検査の日から1〜2ヵ月前の血糖の状態を示し、糖尿病の状態を知るのに重要な検査値です。

 

骨粗鬆症

 

骨粗鬆症による全身の骨量減少と歯槽骨吸収との関連性については不明ですが、
骨粗鬆症の既往をもつ場合には、顎骨の骨量減少も考慮してインプラント手術やメインテナンスを進めていく必要があります。

一方、骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート(BP)系薬剤の投与を受けている患者さんで、
抜歯などの外科的侵襲により、顎骨壊死、顎骨骨髄炎の発症が近年報告され、問題となっています。

BP系薬剤には注射剤と経口剤があり、注射剤で顎骨壊死、顎骨骨髄炎が多く報告されていますが、
経口剤においても同様な報告があるので注意が必要です。
BP系薬剤による、顎骨壊死、顎骨骨髄炎のリスクファクターとしては、外科的侵襲のある歯科治療(抜歯、インプラント手術など)や
不適合な義歯だけではなく、口腔の不衛生も報告されています。
そのため、インプラントのメインテナンスに際し、服用している薬剤などの十分な問診とその知識が必要です。

 

・精神神経症

 

医療面接が不可能な精神的疾患のある患者さんには、治療内容を十分に理解していただくことが困難なため、
インプラント治療は難しいと思われます。また、不定愁訴や異常に不安感がある患者においても、
メインテナンス時にインプラント周囲炎などの問題を生じる可能性があるため、歯科医師だけではなく、
歯科衛生士も慎重にインフォームド・コンセントを行う必要があります。

 

生活習慣

 

1.喫煙

 

喫煙は、インプラントの長期経過に大きな影響を与えるリスクファクターの1つです。
なぜなら、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質により、末梢血管障害や免疫障害を起こし、
インプラント周囲炎に影響を与えるからです。
そのため、インプラント治療を開始する際は、喫煙の有無、喫煙歴について問診し、禁煙指導が重要となります。

インプラント手術時においては、埋入されたインプラント部の骨結合不良や創部治癒不全などの
問題が起きないようにするため、禁煙を徹底させます。

一般的な手術時禁煙プロトコールは、インプラント手術に際して、喫煙者にインプラント手術前3週間、手術後8週間の禁煙を指示しています。
期間設定は、喫煙による頭蓋顔面での手術創傷治癒への影響についての研究結果がいくつか報告されているからです。
実際、喫煙者にとってこれだけの期間の禁煙は変難しいことですが、手術前後の禁煙が成ことで継続的に断煙できるようになり、
「インプラント手術をきっかけにタバコを止められた」
という患者も少なくありません。
しかし、手術に際して禁煙した患者でも、喫煙を再開してしまうこともあります。
歯科医師、歯科衛生士はメインテナンス時にも、禁煙(喫煙)状況を確認して、必要に応じて禁煙の再指導を行う必要があります。

当院でのインプラント治療における禁煙指導の流れとして、まず、喫煙がインプラント治療のリスクファクターであることを十分に説明します。
禁煙指導の際には、喫煙によるインプラントの予後への影響をデータで具体的に説明し、禁煙を促します。

また、製薬会社のホームページなども利用し、禁煙意識を高めることも1つの方法です。
具体的な禁煙の方法として、ニコチンガムやニコチンパッチなどの禁煙補助薬を用いた禁煙方法であるニコチン代替療法があげられます。

このように禁煙指導を行っても、インプラント治療中からメインテナンスの時期まで一貫して禁煙できない患者さんは、
大きなリスクがあると考えられます。
その場合、非喫煙者よりもインプラント周囲炎を起こす可能性が高いことを十分に説明し、理解してもらい、
リコール間隔を短くするなど、早期に炎症性変化を発見できるようにすることが重要です。

 

・ストレス

 

ストレスがインプラント治療に悪影響を及ぼす明らかな報告はありません。しかし、ストレスが歯周炎に何らかの影響を及ぼしていることは知られています。
とくに、ストレスが直接的および間接的に歯周組織に影響を与えていることが報告されています。
まず、直接的な要因としては、ストレスなど精神的な原因による顎の動きです。つまり、就寝時のブラキシズムなどの悪習癖は、
直接的に歯周組織、とくに歯槽骨に破壊的な影響を及ぼします。
インプラント周囲組織においても、同様な現象生じることが予想されます。
また、間接的な要因として、代表的なものをあげます。
1つ目は、ストレスにより副腎皮ホルモンの分泌が高まり、免疫応答として白血球の作用が減弱することで、
歯周組織の持つ抵抗力が低下することです。この現象は、インプラント周囲組織の血液供給量が、歯織と比較して少ないことを考えると、
インプラント周囲炎のリスクといえます。

インプラント周囲組織は歯周組織よりも不利な条件であることが容易に想像できます。
2つ目は、ストレスにより自律神経系の交感神経が優位となるため、血液循環量が低下し、唾液分泌量も低下することです。
このことから、口腔内の洗浄、抗菌作用が低下し、歯周炎およびインプラント周囲炎を生じる可能性があります。
以上のことから、ストレスがインプラント周囲組織に悪影響を与える可能性が高いことが想定されます。
私たち歯科医療従事者は、メインテナンス時にインプラント周囲炎や歯周炎の原因の一つとして、
これら精神的な原因もあることを忘れずに、的確な目で口腔内組織を診ることが重要です。

口腔内に発現する力により、歯や歯周組織、筋肉や関節にも良くない影響が生じることがあります。
私たちの社会にはさまざまな程度のストレスがあり、感受性は人それぞれです。
インプラント治療においても、あまりストレスが強く感じられる方にとっては、
リスクとなってしまいますので、あまり溜め込みすぎないよう、
上手にストレス管理ができると良いでしょう。
噛み締め、食いしばり対策として、私たちはメディセルの施術を行っています。
これは、誰でも無意識のうちに行っている、噛み締め、食いしばりの運動を
筋肉の緊張を緩めることで解消していく療法です。
治療の案内はこちらです。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

インプラントと入れ歯を組み合わせた治療

2024年2月11日

⚫️オーバーデンチャーを用いた下顎無歯顎症例へのインプラント治療

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、歯がない下顎に対して、インプラントと入れ歯を組み合わせた治療=インプラントオーバーデンチャーについてです。

 

学術的裏付け

 

最初に、インプラントオーバーデンチャーについての、学術的な裏付けについてです。

「2本のインプラントによるオーバーデンチャーが今後、下顎無歯顎の補綴治療の第一選択となる」
2002年のカナダのMcGilのコンセンサスレポートにはこのように述べられています、Feine らは、このレポートのエビデンスとなる無歯顎に対するインプラントオーバーデンチャー治療に関する多数の調査・報告を「Implant Overdentures – The Standard of Care for Edentulous Patients」と題する著書のなかで行っています。
オトガイ孔間に埋入した2~4本のインプラントの予知性については、良好な結果が多数報告され、特に長期間総義歯を装着し顎堤が吸収し義歯の不調に悩む患者さんに対し,インプラントオーバーデンチャーの使用による咀嚼能力、義歯の安定性の改善に伴うQOLの向上、栄養改善が報告されています。またボーンアンカードブリッジとインプラントオーバーデンチャーの比較において、その清掃性、発音、審美性の優位性から、インプラントオーバーデンチャーを最終的に選択した被験者さんが多かったとも報告されています。
固定性のインプラント補綴装置と、取り外し式のインプラントオーバーデンチャー、それらの優劣については、以下のような研究論文が発表されています。

 

・下顎におけるバーアタッチメントによるインプラントオーバーデンチャーと固定式インプラント義歯の比較:de Grandmont P 1994年

 

予想を覆して、インプラントオーバーデンチャーは決して機能的には固定式インプラント補綴装置には劣らない、また難性食品を除けば、一般的には概ね両者とも患者満足度は同等である、そして高齢になる程最終的に取り外し式の入れ歯を好むという結果を示しました。

 

バー➕インプラント4本支持のインプラントオーバーデンチャーと、2本支持のものの比較:Tangら 1997年

 

4本支持は安定感、快適さ、噛みやすさが優れるものの、その他大半の評価項目には同等の結果を示しました。この研究では、2本支持の下顎のインプラントオーバーデンチャーを正当化する一つの根拠となります。

 

上顎のインプラントオーバーデンチャーに関する患者評価:de Albuquerque Junior RF 2000年

 

下顎と異なり、上顎の無歯顎に対しては、インプラントオーバーデンチャーが必ずしも第一選択とならないという結果を示しています。ですので、上顎に関してはインプラントと取り外し式の義歯を組み合わせることに関しては、今のところ絶対的評価はありません。

 

McGillコンセンサス 2002年

 

下顎無歯顎の第一選択はインプラントオーバーデンチャーが最良であるという論文。

 

インプラント領域における社会経済学的コスト分析の先駆け論文:Takahashi Y2002年

 

下顎インプラントオーバーデンチャーは、生活の質の改善に大きく寄与することを多数示しています。

 

栄養状態の改善がなされるのか検討:Morais JA 2003年

 

下顎インプラントオーバーデンチャーの使用により、栄養状態の改善が見られるのか調べた論文です。アルブミン、ヘモグロビン、B12に有意差が見られたとされています。

 

受容する患者さんの性差に注目した研究:Pan S 2008年

 

女性に対する義歯作製、リハビリの困難さは多く報告されていますが、インプラントオーバーデンチャーはその差を帳消しにするほどの大きな改善をもたらすことを意味しています。従来の総義歯治療に関しては、女性の満足度は決して高くありません。インプラントオーバーデンチャーにした場合の性差はなく、満足度は向上しました。

 

8編の論文を包含した分析:Emami E 2009年

 

これまでを振り返った研究。改めて、インプラントオーバーデンチャーは、従来の総義歯治療と比較して生活の質の向上に寄与することが示唆されました。一方で、対象となるメインの年齢層の高齢者には、同治療を助け入れない場合もあることもわかりました。

 

社会心理学的研究:Esfandiari 2009年

 

インプラントオーバーデンチャーは、インプラントによる固定式補綴装置と比較すると安価にはなりますが、それでも治療費用が受療を阻害していることも事実であります。さらに、他の主要因としては、老化による痛みへの恐れ、術後の偶発症が挙げられました。

 

下顎にインプラントと入れ歯を組み合わせた治療例

 


歯がない顎に対して、インプラントを2本埋入し、その上には入れ歯をとめる「ロケーター」というパーツが取り付けられています。

 

ロケーターとは?

 

ロケーターとは商品名で、Zest Anchors社から発売されているシステムです。簡単にいうと、シャツのボタン的な構造を想像してもらったら良いと思います。入れ歯の内側に弾性のあるパーツが組み込まれ、インプラント側にスタッド型のメタルパーツが設置されます。現在、国内では、私たちが採用しているノーベルバイオケア社、その他ストローマン社、白鵬社からそれぞれ自社インプラント用アタッチメントとして正規輸入販売されています。
他のアタッチメントのシステムとの比較について、患者さんの主観的評価の調査の報告があります。他のシステム、ボール型のアタッチメント、バー型アタッチメントに対し、有意差がないという結果の論文もあれば、QOLが向上したという論文もあり、一致はしていません。しかし、決して劣るシステムではないようです。
利点はいくつかあります。

①従来のバー型、ボール型アタッチメントよりもパーツの高さが低く設置できること。専門的な話ですが、これはとても重要な要素で、高さのあるアタッチメントの場合、どうしても入れ歯の構造に薄く強度の低い部分ができてしまいます。そのため、低いパーツが選択できるロケーターの場合、インプラントの位置付けや、入れ歯の設計に自由度が大きくなります。入れ歯の強度不足による破損などの偶発症に関しても、リスクを下げることができます。

②ボール型、マグネット型よりも安価である。

③1mm違いのサイズ展開があること。インプラント埋入深度や歯肉の厚みが何ミリであっても、その状況に応じてサイズ選択が可能であり、治療がやりやすいメリットがあります。

④維持力のバリエーション。通常ラインナップでは、0.7kg,1.4kg,2.3kgが選択できること。患者さんの取り扱いのしやすいキツさを選択できるわけです。
✳︎使用上の注意点:インプラントオペの計画に関することになりますが、ロケーターをつけるインプラント同士の角度が、可能な限り平行であることが求められます。これが20度以下に抑えられていることが望ましいです。これ以上の角度になると、急速に維持力の低下があります。つまり、フリーハンドや目測でのオペではなく、コンピューター支援のガイドオペを併用し、インプラント間の角度をコントロールする計画を立てる必要があります。

 

義歯装着した状態

義歯を装着した状態の口腔内写真。着脱方向を間違えて強引に行ってしまったり、しっかりはまっていない状態で噛み込んで入れ歯を入れるような使用法は、アタッチメントの維持パーツの早期交換に繋がりますので、事前の患者さんへの指導を注意深く行う必要があります。


下顎骨両側の小臼歯部には、オトガイ孔という穴が空いています。オトガイ孔間には歯を失った後でも骨量が残っていることが多く、その部位に対して平行な角度にインプラント埋入をします。

これらのようなアタッチメントの利点をしっかり把握した上で、治療計画を立て、義歯装着後のフォローを行っております。

インプラント治療後のメンテナス その2

2024年1月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回もインプラントのメンテナンスについての内容ですが、
インプラントの上部構造とその周囲の状況を具体的に考えた上で、
どのようにケアを続けていくとよいかを説明します。

 

上部構造装着直後のブラッシング指導の重要性

 

上部構造装着直後、患者さんはインプラントで歯を補われた歯列に慣れていないため、
ブラッシング不良になりやすく注意が必要です。

とくに全く歯がない状態で長期にわたり総義歯を装着されていた患者さんの場合、
歯ブラシで歯を磨く習慣を忘れてしまっているため、
歯科衛生士が時間をかけてブラッシング指導をする必要があります。

また、インプラントは顎骨の幅や高さにより埋入する位置や長さが決定されるため、
上部構造の形態は顎骨の量や形態により清掃性の面で理想的な形態を付与できない場合があります。

左下奥にインプラントが埋入された状態のCT画像。天然の歯と比較すると、根の幅が大きく異なります。
この症例では、あまり骨の高さの差はありませんが、
このように整った条件ばかりではありません。

したがって、上部構造装着直後に患者にブラッシング指導をする際には、顎骨および上部構造の形態を説明し、
形態的に磨きにくい部位があることを理解していただくこと、
インプラント歯列のブラッシングに慣れていただくよう指導することが重要です。

インプラントの上部構造装着後、定期健診の重要性、インプラントを含めた歯磨きの方法等を説明しています。
患者さんが選んできた歯ブラシ等が、必ずしもインプラント周囲組織に適した製品ではない場合もあります。
私たちは、上部構造の装着直後に、インプラントに適した清掃用具およびブラッシング方法の説明を行っております。

 

バイオタイプによるセルフケアの注意点

 

バイオタイプというのは、歯茎の粘膜の質のことです。
インプラント周囲粘膜の形態は、
厚い(thick-fat)タイプと薄い(thin-scalloped)タイプの2つに大別されます。
また、歯周組織についてはlaynardらにより軟組織や骨の厚みの関係から
4つのバイオタイプに分類されます。

角化歯肉の幅や厚みが、インプラント周囲組織の安定に必要か否かの見解の一致は得られていません。
しかし、歯周組織において歯肉が薄く角化歯肉が不足している部位では、
臨床的にブラシや食物による擦過などの機械的刺激やプラークに対する抵抗性が低く、
炎症による歯肉退縮を起こしやすいことがわかっています。
インブラント周囲粘膜においても、粘膜がインプラント上部構造頭部に近接し角化歯肉の幅が不足している部位や、
薄い組織の部位において、ケアを行う際には十分な注意が必要です。

とくに前歯部においては、唇側粘膜の厚い(thick-1at)タイプ
では、粘膜の退縮は少なく、審美的問題も少ないでしょう。
一方、薄い(thin-scalloped)タイプでは、経時的な粘膜の退縮が生じやすく、
とくに強圧や間違った方向へのブラッシングを行った場合、粘膜退縮は大きくなり、
審美的問題を生じやすくなります。

セルフケアの指導は、バイオタイプを評価したうえで指導方法を選択する必要があります。
Thick-Alatタイプの場合は、通常のブラッシング指導を行い、
過度なブラッシング圧による粘膜損傷を起こさせないような指導が重要です。

一方、thin-scallopedタイプの場合、ブラッシングによる粘膜退縮を予防することが重要であり、
軟らかい毛質のブラシを選択し、ブラッシング圧を弱め、唇側面に直角に当てるようなブラッシング指導を厳密に行う必要があります。
セルフケアに使用する各種清掃用具は、天然歯とは異なる形態を呈しやすいインプラント上部構造は、清掃性が悪くなる部位があるため、
歯ブラシだけでは磨き残しやすいことも多くなります。
そのため、補助ブラシなどインプラント周囲組織と 上部構造の形態や材質に適した清掃用具の選択が重要となります。

 

①ワンタフトブラシ

 

豊隆が大きい部分やインプラントブリッジの鼓形空隙などは、通常の歯ブラシでは毛先が届かず磨き残しやすいため、
歯ブラシで磨いた後に補助的にワンタフトブラシを使用するよう指導します。

 

②歯間ブラシ

 

インプラント周囲粘膜は瘢痕状態であり、歯間ブラシの誤った使用方法により、容易に付着をしてしまうこともあります。
ブラシの使用を開始する際には、必ずサイズ確認を行い、挿入方向に十分注意するよう指導することが重要です。

歯間ブラシのサイズは、天然歯の歯間部に適合するサイズよりもワンサイズ小さいものを選択し、
歯肉を押し広げないように注意する必要があります。
筆者は、歯間ブラシのサイズSが抵抗なく挿入できる鼓形空隙より狭い部位には、
歯間ブラシの使用は避け、ワンタフトブラシでの清掃を中心に指導しています。

また、歯間ブラシの金属のワイヤーによって、チタン面やセラミックス表面を傷つけないために、
ワイヤーがナイロンやプラスチックコーティングされている歯間ブラシを使用することも重要です。

 

③軟毛ブラシ

 

可動粘膜がインプラント上部構造頸部に近接しており、ブラッシング時の擦過によって傷つきやすい部位や、
即時荷重インプラント治療において手術直後に暫間的補綴物を装着した部位など、
粘膜が脆弱な場合には、軟毛ブラシを選択します。

 

④音波振動歯ブラシ

 

音波の作用により効率的に磨くことができるため、とくに全顎無歯顎症例でインプラント治療された患者さんにおいて、
音波振動歯ブラシでのブラッシングは有効です。また、ブラッシング圧をコントロールできない患者においては、
とくに音波振動歯ブラシを勧めることが必要です。
なぜなら、インブラント周囲粘膜は瘢痕組織であるため過剰な圧のブラッシングによって粘膜を傷つけないためにも、
一定の振動で磨ける音波振動歯ブラシを選択することが重要だからです。

 

⑤電動歯ブラシ

 

電動歯ブラシの毛先の動きは、歯周組織と比較して粘膜が脆弱であると考えられるインプラント周囲組織に対して、
ブラッシング圧が強すぎる場合もあるため、なるべく使用を避けるように指導しています。

 

⑥歯磨剤

 

研磨剤が多く配合されている歯磨剤は、上部構造を摩耗させるため、インプラントのみならず天然歯に対しても使用を避けるべきです。
セラミックスや金属などインプラント上部構造の材質にかかわらず、研磨剤によって傷ついた表面はバイオフィルム、プラークの沈着を招きます。
また、審美的にも、研磨剤によって摩耗した細かい傷により、セラミックスの艶や輝きを失わせます。
低研磨性または研磨剤無配合の歯磨剤が望ましいと考えます。
インプラントの形態的特徴から、歯ブラシによるセルフケアでは磨き残しやすい部位を、含嗽剂による化学的清掃法で補うことも必要です。
とくに、インプラント上部構造装着直後は、インプラントで補綴された歯列形態でのブラッシングに慣れていないため、
化学的清掃によりプラークコントロールを行うことが重要となります。
うがい薬としておすすめなのは、エピオスです。
塩と精製水を電気分解した機能水で、院内の機械で製造しています。
殺菌作用は高く、生体には優しい性質で、口腔ケアにも適しています。

定期的な受診/strong>
インプラント治療での失敗の大多数は、2次手術より1年以内に起こるという報告があります。
したがって、インプラント上部構造装着後の1年間のメインテナンスはとくに重要となります。

 

ケア用品のフッ化物濃度

 

チタンは酸性下でフッ素イオンが存在すると耐食性が低下する2ため、
フッ化物局所応用として使用する製品は中性のものを選択しなければなりません。
口腔内において、粘膜などが炎症を起こすとpHが低くなり、酸性に傾きやすくなるため、
アバットメントなど露出しているチタン面が存在する場合は、
とくにpHとフッ素イオン濃度に注意することが重要です。
一般的にはインプラントが存在する口腔内において使用するフッ化物は、
pHが中性でフッ素イオン濃度は1,000ppm以下が望ましいとされています。

インプラント治療の基本的な流れ

2023年12月30日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回はインプラント治療の基本的な流れについてお話しします。
大きく5つのステップから成ります。
これらは相互に大きな関連性をもち,各ステップが連動することで,はじめてインプラント治療は成立します。
それぞれのステップにおいて重要となるポイントを解説します。
天然歯が残っている場合、それらの歯周病の状態が把握され、適切に治療が進んでいる必要があります。

 

①治療計画

 

まずは資料とり、検査とそれらに基づく治療計画立案、カウンセリング、クリニカルパス作製ですが、
何もインプラント治療に限ったことではありません。

インプラント治療前の資料とり、CTはその一つです。

口腔内全体の保護を念頭におく必要があり、そのためにも最終補綴物の設計や構造が重要となります。
現在はトップダウントリートメントの概念がインプラント治療の主流となっています。
この概念は,術前に天然歯列を模倣した理想的な補綴形態を診断用ワックスアップで設計し,その歯
冠部の位置を基準にインプラントの埋入ポジションを決定して,必要であれば骨を造成するやり方です。

最終的な歯の形態を示すワックスアップ。ゴールが先で、それに合うように手術プランを考えます。

しかし,問題はあくまでも天然歯の模倣であるという点で,インプラントと天然歯は周囲粘膜も骨内環境も異なっています.
歯根膜の有無が大きな違いで,歯根膜が存在しないインプラントは組織への血液供給や栄養供給がありません.
つまリインプラント周囲組織においては、天然歯では維持されていたはずの薄い周囲骨はすぐに吸収し,
薄い周囲粘膜は退縮を起こすことになります.
インプラント周囲の骨や粘膜には,骨膜からの栄養供給が十分に得られ,血流のネットワークが構築できるだけのボリュームや環境が必要です.
現在は,それらの環境を確保するためのインプラント埋入ポジションや埋入深度,
歯肉を圧迫しない被せ物の形態を事前に計画します.

ノーベルバイオケアのインプラントシミュレーションソフトを用いて、治療計画を立てます。インプラントの角度や埋入深度、上部の被せ物のどのあたりに固定のネジを設定するか、歯肉や骨の厚みも確認します。

 

②インプラント埋入手術

 

事前にCTで画像診断をしていても、インプラント埋入部位の骨質に関しては,実際のドリリングによって判明することが多いです.
一般的に上顎の骨の方が多孔質で、下顎の骨は緻密な質感です。CT画像で骨が黒っぽい感じだと、大体柔らかめの骨質です。
中には、発泡スチロールのような骨質もあるので,オステオトームなどの骨を圧縮する器具や,
骨質の恵まれないケースに用いるタイプのインプラントを選択します。
最も多いのは、インプラントのサイズよりも小さめにドリリングを行うことです。
ドリルを足すことはできますが、形成しすぎたからといって後戻りはできないので、
慎重に段階をふんでやっていきます。そのため、ドリリングを少なめにして、
この状態でインプラント埋入できるかトライします。
不十分ならもう少しドリルをたす、埋入トライを繰り返し、
インプラント埋入時のトルクが35N以上になる良好な初期固定を目指します。

術前の麻酔。インプラント埋入予定部位に局所麻酔を行います。

他の施術と異なり、高いレベルの滅菌環境下で手術を行います。

私たちは、ほとんど全ての症例で、手術用のコンピューター支援のガイドを用いてインプラント埋入手術を行います。

骨造成を同時に行う場合も多いです。小規模ならGBR、例えば上顎洞内に骨造成する場合はサイナスリフトです。

 

③治癒期間

 


埋入手術後、できるだけ早く噛めるようにしたいですが、インプラントと骨の結合を待機する必要があります。基本的に3ヶ月〜4ヶ月は待ちます。
その間、患者さんのQOLが下がらないよう、仮歯を貼り付ける、治療用の入れ歯を装着するなど対応します。
骨を造成するような施術後は、歯茎に外部から圧がかからないようにする必要があり、基本的に入れ歯を装着しない方が安心なこともあります。

 

④補綴処置

 


歯肉から立ち上がる部分を取り付ける、2次手術。ヒーリングアバットメントを装着すると、このチタンの滑らかな面に沿って、歯肉が綺麗に治癒してきます。

仮歯をスクリュー固定。

2次手術は骨を触るような大掛かりなものはなく、歯肉を取り扱います。局所麻酔が必要です。仮歯を使って生活をしていく中で、問題がないか経過を見ます。
インプラントで修復する範囲が大きいほど、仮歯で経過を見る期間を延長し、お口の環境に合う歯の形態を再現するよう調整を繰り替えします。
最終補綴物製作の前に,仮歯によって咀嚼運動や発音といった機能面と補綴物の歯冠形態や歯肉縁下形態などの審美面を整えていくこ
とが重要です。この仮歯の装着期間に、患者さんの習癖や口腔ケアのレベルなどを考慮して,
最終補綴物に反映させることになります。2次手術後の仮歯の期間で問題なければ、最終的な上部構造を作製します。
私たちは、3本以内の欠損治療では、お口の中をスキャンして型取りします。
それ以上の広範囲の治療では、シリコンの型取りの材料とトレーを用いています。

型とりの様子。


被せ物はジルコニアという材料を用いています。プラークが付着しにくいというメリットが大きいです。前まではジルコニアというとラメがかったようなキラッと目立つ質感でした。現在は審美的にも、天然歯と違いがわからないくらい仕上がりが良くなっています。
天然の歯の被せ物と大きく異なることは、インプラントと被せ物はスクリューで固定をするという点です。
インプラントと被せ物の装着について、セメント固定を選択した場合は、歯肉よりも深い位置にセメントの取り残しができてしまうため、
辺縁骨の炎症、吸収を引き起こします。
可能な限りスクリュー固定になるよう治療計画を立てます。
どうしても、顎骨の吸収などでインプラント埋入角度・位置が制限される場合、セメント固定にせざるを得ない場合もあります。
審美性の確保とともにセメントの除去が容易に行えるように、土台部分をカスタムするなどを工夫をします。

 

メンテナンス

 


一般的なメインテナンスについては、天然歯とインプラントとで変わらないので、患者さんご自身でのケアがしやすいよう、ブラシの選定、補助的な清掃用具のお話をさせていただいております。
定期的なメンテナンスに来院された際は、インプラント専用の器具を用いて、バイオフィルムや歯石の除去を行います。
噛み合わせの接触具合、スクリュー固定の状態もチェックをします。
口腔内は経年的に変化しますので,インプラントの補綴物も残存する天然歯も同様に口腔内の食事や噛みしめなどの過酷な環境に曝されており,
常に口腔内全体をチェックして力のコントロールを行う必要があります。
インプラントの補綴物は力を緩衝するショックアブソーバーのような存在でもあります。
天然歯は、歯根膜が周囲に存在しますので、噛み合わせの精密なセンサーの役割があります。
強い力がかかった際の緩衝材の役割もあります。
インプラントは、顎骨と直接結合しており、膜などは介在しません。
上部構造に用いられている、ジルコニアやポーセレン、周囲の歯が天然歯の状態であったり、補綴装置が装着されていたり、
その患者さんごとに多種多様であります。つまり、使っていて摩耗する程度も違ってきます。
その辺りの噛み合わせの状態をチェックし、インプラントの上部構造と噛み合う歯が変に強く当たってきているとか、
干渉しているようになったら、適切な状態に戻すように噛み合わせの調整を行います。

インプラントと天然歯、どんな違いがあるのでしょう?

2023年12月9日

⚫️インプラント周囲組織と歯周組織の違い

 

🔳インプラントと天然歯の相違点として、“天然歯は自己、インプラントは非自己である”ことが大前提となり、”インプラント周囲組織は非自己なる物体(異物)との間で代謝を繰り返している”のです。

🔳インプラント周囲組織と歯周組織の相違点

 

①結合組織中のコラーゲン含有量が多く、線維芽組織の量が少ない。

 

インプラント治療とは、骨に植立された非自己であるチタンのネジがつかわれています。
チタンは、飛行機やロケットにも使用されていて、軽量性があり、金属アレルギーなど人体にやさしく安全な金属で、生体適合性・強度・耐食性・耐熱性に優れています。そのネジが、骨膜、および粘膜を貫通して口腔内に突出しているという、生体では大変不思議な状態となっています。つまり、口腔内の粘膜に骨まで達する傷口を故意に存在させていて、その粘膜は傷ぎ治癒するときと同じ硬い状態になっているのです。インプラント周囲組織はまさに「瘢痕組織」に類似しているといえます。その瘢痕組織様形態であるインプラント周囲組織の結合組織の成分は、コラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ないと報告されています。
また、インプラント周囲粘膜上皮の増殖力は、天然歯の付着上皮と比較すると数分の1程度でり、天然歯の周囲粘膜に比べ代謝が弱いことが考えられています。そのため、インプラント周囲粘膜は炎症が生じやすく、治療しにくい状態と想定されます。

 

②血液供給量が少ない

 

天然歯において、血液は歯肉と骨縁上の結合組織では、歯槽突起側方の骨膜上血管、歯根膜の血管の2方向から供給されています。しかしながら、インプラント周囲組織には、セメント質がないため、歯根膜が存在しません。そのめ、インプラント周囲粘膜は、インプラント部位の骨の骨膜から生じた、より大きな血管の終末枝のみから血液が供給されています。
したがって、インプラントの骨膜上結合組織の血流は、歯周組織と比較して少ないと考えられています。このことにより、血液の免疫作用および再生能力が不十分になりすいため、インプラント周囲粘膜は炎症が生じやすく、治癒しにくい状態と想定されます。

 

③コラーゲン線維の走行

 

天然歯ではコラーゲン線維の走行が歯根に垂直よび平行であるのに対し、インプラントに
メント質が存在しないことから、骨から垂直に存在し、インプラントと平行に走行しています
。そのため、インプラント周囲粘膜は、歯肉に比べ、外からの侵襲に対し、防御機能が低いこ
とが想定されます。
つまり、インプラント周囲組織は、歯周組織
に比べて結合組織中の線維芽細胞の量および血液供給量が少なく、いったんインプラント周囲組織に炎症が起こると、急速に不可逆的に進行すると考えられます。
歯周組織よりも感染防御機構が劣るインプラント周囲組織で、とくに早期に炎症性変化を見つけて対処する必要があります。

 

施術時の注意点

 

マニアックなお話ですが、インプラント周囲の組織の成り立ちやマネジメントは、長期予後にとって非常に重要なのです。
周囲に骨がある、歯肉という軟組織があるということが重要で、インプラント治療では天然歯以上に、組織の厚みを考慮して施術をします。
骨が足りない場合は、人工の骨を入れて、高さや幅を増やします。
私たちは、GC社から出ている、サイトランスグラニュールといういう骨補填材を用いています。
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公式HPより
世界初の「炭酸アパタイト」が主成分とする、国内初の「インプラント周囲を含むしか領域での使用」が認められた顆粒状の骨補填材です。「炭酸アパタイト」は、骨の無機成分と同じ組成のため、患者さん自身の骨へ効率的に置換され、目標とした骨面の高さを維持します。また、インプラント体に対し、強固なオッセオインテグレーションの獲得を実現します。
生理食塩水や血液と混ぜて使用します。
主成分は炭酸アパタイトです。これは、人間の骨や歯を構成する無機成分であり、リン酸カルシウムの一種です。
生体由来材料のような感染リスクはありません。
人間の骨は有機成分(コラーゲン等)と無機成分(アパタイト)により構成されていますが、 本品は自家骨の無機成分と類似した組成の骨補填材になっています。
炭酸アパタイトの高い骨伝導能により、早期からサイトランス グラニュールの周囲が新生骨に覆われます。
炭酸アパタイトの吸収特性により、患者さん自身の骨にゆっくりと置き換わって行きます。
足場としての機能を維持しながら効率的な骨置換を実現します。
全ての作製工程を完全に滅菌環境下、国内で行なっています。

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以前はBio-ossという製品を用いていましたが、海外の製品で、取り寄せるのに時間がかかっていました。
サイトランスグラニュールは、入手のしやすさ、操作性も良いです。
何より、インプラントをよく施術されている歯科の先生方の評判が良いです。
私たちも導入し使っていますが、良好な治療結果を得ています。

 

⚫️患者さんとのコミュニケーション

 

最後に、インプラント治療にかかわらずですが、患者さんとのコミュニケーションについて、考えていることを書いておきます。
インプラント治療とは、歯を失った顎堤に人工歯根を植立することにより、咀嚼・咬合・審美性を補う治療で、生体にとっては人為的に人工物(異物)を体内に入れる治療です。そのため、異物が生体に排除されないように、オッセオインテグレーション(骨結合)をいかに持続させられるかによって、インプラントの長期にわたる安定が保証されます。ですから、インプラント治療では、このことをつねに頭に入れて治療にあたるよう心がけています。
インプラント治療を希望される患者さんもまた、「人工のものを体の中に入れるとはどういうことだろう?」と少なからず不安を抱いて来院されるでしょう。だいたい、大きいモニターで治療の説明をすることが多いです。モニターで見ると、何か巨大なネジが顎に入っていくイメージをされてしまうようで、誤解がないように模型や実寸、天然歯との比較をしつつお話をします。
また、最近ではインターネットの普及とともに、インプラント治療に関する誤った情報をそのまま理解されている患者さんも多く見受けられます。特に多いのはインプラントを入れらた骨が溶ける、といった謎のうわさがあるなと感じています。
そこで、インプラント治療を始めるにあたり、インプラント治療とはどういった治療なのか、インプラント治療の利点・欠点を正確に説明する必要があります。医療面接において当院では、インプラント治療を希望するに至った主訴、現病歴、既往歴などを把握し、患者さんとのコミュニケーションをはかり、信頼関係を築きます。
そして、治療に必要とされる検査を行い、検査結果の説明とインプラント以外の治療法を含めた治療計画の提案と、その際にかかる治療期間(回数)と治療費を患者さんに提示します。このように、患者さんへの十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)を得たうえで治療を進めていくようにしています。