Tag Archives: インプラント、ノーベルバイオケア、ノーベルガイド、CT、インプラントの寿命、インプラントの失敗、インプラントのトラブル、手術、期間、費用

インプラント治療を行うにあたっての全身的な注意点

2024年2月11日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


上顎に4本インプラント埋入し、入れ歯を組み合わせる治療例の写真

インプラント治療を行う際、特別注意が必要なことがあります。
全身疾患についても注意が必要なことの一つです。
治療の際の臨床検査の意義としては以下のことが挙げられます。
①リスクの明確化
②リスクを反映した治療計画、治療精度の向上
③患者さんによる自己管理の徹底と維持→治療後の長期安定
④加齢、病的変化への対応
特に治療に対する安全性に加えて、治療後のリスクを軽減する意味でも、臨床検査とその共有が重要です。

全ての患者さんの術前スクリーニング的な検査として、
・血液、尿検査
・デンタル、パノラマX線写真撮影
・CTによる3次元的画像診断
があります。

さらに、一部の患者さんを対象として、
・骨代謝マーカー
・歯の喪失原因の検査:細菌検査、力学的検査
・アレルギー検査:パッチテスト
があります。

インプラント治療を行うにあたっては、血液検査、ヘモグロビンA1c(HbAic)が6.5%未満、
空腹時血糖值13m/L未満にコントロールされていることが必要です。
これは、インプラント手術時だけではなく、メインテナンス時も同様です。そのため、メインテナンス時、定期的に血液検査データのHbAic値を確認することが重
要となります。

ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白で、身体のすみずみまで酸素を運ぶ役割があります。
このヘモグロビン(血色素)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンですが、
グリコヘモグロビンについて、その1つのヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病と関係しています。
赤血球の寿命は約120日(4ヵ月)なので、すなわち、血糖値は血液検査時の全身状態を示しています
一方、HbAIC値は血液検査の日から1〜2ヵ月前の血糖の状態を示し、糖尿病の状態を知るのに重要な検査値です。

骨粗鬆症
骨粗鬆症による全身の骨量減少と歯槽骨吸収との関連性については不明ですが、
骨粗鬆症の既往をもつ場合には、顎骨の骨量減少も考慮してインプラント手術やメインテナンスを進めていく必要があります。

一方、骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート(BP)系薬剤の投与を受けている患者さんで、
抜歯などの外科的侵襲により、顎骨壊死、顎骨骨髄炎の発症が近年報告され、問題となっています。

BP系薬剤には注射剤と経口剤があり、注射剤で顎骨壊死、顎骨骨髄炎が多く報告されていますが、
経口剤においても同様な報告があるので注意が必要です。
BP系薬剤による、顎骨壊死、顎骨骨髄炎のリスクファクターとしては、外科的侵襲のある歯科治療(抜歯、インプラント手術など)や
不適合な義歯だけではなく、口腔の不衛生も報告されています。
そのため、インプラントのメインテナンスに際し、服用している薬剤などの十分な問診とその知識が必要です。

・精神神経症
医療面接が不可能な精神的疾患のある患者さんには、治療内容を十分に理解していただくことが困難なため、
インプラント治療は難しいと思われます。また、不定愁訴や異常に不安感がある患者においても、
メインテナンス時にインプラント周囲炎などの問題を生じる可能性があるため、歯科医師だけではなく、
歯科衛生士も慎重にインフォームド・コンセントを行う必要があります。

生活習慣
1.喫煙
喫煙は、インプラントの長期経過に大きな影響を与えるリスクファクターの1つです。
なぜなら、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質により、末梢血管障害や免疫障害を起こし、
インプラント周囲炎に影響を与えるからです。
そのため、インプラント治療を開始する際は、喫煙の有無、喫煙歴について問診し、禁煙指導が重要となります。

インプラント手術時においては、埋入されたインプラント部の骨結合不良や創部治癒不全などの
問題が起きないようにするため、禁煙を徹底させます。

一般的な手術時禁煙プロトコールは、インプラント手術に際して、喫煙者にインプラント手術前3週間、手術後8週間の禁煙を指示しています。
期間設定は、喫煙による頭蓋顔面での手術創傷治癒への影響についての研究結果がいくつか報告されているからです。
実際、喫煙者にとってこれだけの期間の禁煙は変難しいことですが、手術前後の禁煙が成ことで継続的に断煙できるようになり、
「インプラント手術をきっかけにタバコを止められた」
という患者も少なくありません。
しかし、手術に際して禁煙した患者でも、喫煙を再開してしまうこともあります。
歯科医師、歯科衛生士はメインテナンス時にも、禁煙(喫煙)状況を確認して、必要に応じて禁煙の再指導を行う必要があります。

当院でのインプラント治療における禁煙指導の流れとして、まず、喫煙がインプラント治療のリスクファクターであることを十分に説明します。
禁煙指導の際には、喫煙によるインプラントの予後への影響をデータで具体的に説明し、禁煙を促します。

また、製薬会社のホームページなども利用し、禁煙意識を高めることも1つの方法です。
具体的な禁煙の方法として、ニコチンガムやニコチンパッチなどの禁煙補助薬を用いた禁煙方法であるニコチン代替療法があげられます。

このように禁煙指導を行っても、インプラント治療中からメインテナンスの時期まで一貫して禁煙できない患者さんは、
大きなリスクがあると考えられます。
その場合、非喫煙者よりもインプラント周囲炎を起こす可能性が高いことを十分に説明し、理解してもらい、
リコール間隔を短くするなど、早期に炎症性変化を発見できるようにすることが重要です。

・ストレス
ストレスがインプラント治療に悪影響を及ぼす明らかな報告はありません。しかし、ストレスが歯周炎に何らかの影響を及ぼしていることは知られています。
とくに、ストレスが直接的および間接的に歯周組織に影響を与えていることが報告されています。
まず、直接的な要因としては、ストレスなど精神的な原因による顎の動きです。つまり、就寝時のブラキシズムなどの悪習癖は、
直接的に歯周組織、とくに歯槽骨に破壊的な影響を及ぼします。
インプラント周囲組織においても、同様な現象生じることが予想されます。
また、間接的な要因として、代表的なものをあげます。
1つ目は、ストレスにより副腎皮ホルモンの分泌が高まり、免疫応答として白血球の作用が減弱することで、
歯周組織の持つ抵抗力が低下することです。この現象は、インプラント周囲組織の血液供給量が、歯織と比較して少ないことを考えると、
インプラント周囲炎のリスクといえます。

インプラント周囲組織は歯周組織よりも不利な条件であることが容易に想像できます。
2つ目は、ストレスにより自律神経系の交感神経が優位となるため、血液循環量が低下し、唾液分泌量も低下することです。
このことから、口腔内の洗浄、抗菌作用が低下し、歯周炎およびインプラント周囲炎を生じる可能性があります。
以上のことから、ストレスがインプラント周囲組織に悪影響を与える可能性が高いことが想定されます。
私たち歯科医療従事者は、メインテナンス時にインプラント周囲炎や歯周炎の原因の一つとして、
これら精神的な原因もあることを忘れずに、的確な目で口腔内組織を診ることが重要です。

口腔内に発現する力により、歯や歯周組織、筋肉や関節にも良くない影響が生じることがあります。
私たちの社会にはさまざまな程度のストレスがあり、感受性は人それぞれです。
インプラント治療においても、あまりストレスが強く感じられる方にとっては、
リスクとなってしまいますので、あまり溜め込みすぎないよう、
上手にストレス管理ができると良いでしょう。
噛み締め、食いしばり対策として、私たちはメディセルの施術を行っています。
これは、誰でも無意識のうちに行っている、噛み締め、食いしばりの運動を
筋肉の緊張を緩めることで解消していく療法です。
治療の案内はこちらです。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

インプラントと入れ歯を組み合わせた治療

2024年2月11日

⚫️オーバーデンチャーを用いた下顎無歯顎症例へのインプラント治療

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、歯がない下顎に対して、インプラントと入れ歯を組み合わせた治療=インプラントオーバーデンチャーについてです。
最初に、インプラントオーバーデンチャーについての、学術的な裏付けについてです。

「2本のインプラントによるオーバーデンチャーが今後、下顎無歯顎の補綴治療の第一選択となる」
 2002年のカナダのMcGilのコンセンサスレポートにはこのように述べられています、Feine らは、このレポートのエビデンスとなる無歯顎に対するインプラントオーバーデンチャー治療に関する多数の調査・報告を「Implant Overdentures - The Standard of Care for Edentulous Patients」と題する著書のなかで行っています。
 オトガイ孔間に埋入した2~4本のインプラントの予知性については、良好な結果が多数報告され、特に長期間総義歯を装着し顎堤が吸収し義歯の不調に悩む患者さんに対し,インプラントオーバーデンチャーの使用による咀嚼能力、義歯の安定性の改善に伴うQOLの向上、栄養改善が報告されています。またボーンアンカードブリッジとインプラントオーバーデンチャーの比較において、その清掃性、発音、審美性の優位性から、インプラントオーバーデンチャーを最終的に選択した被験者さんが多かったとも報告されています。
固定性のインプラント補綴装置と、取り外し式のインプラントオーバーデンチャー、それらの優劣については、以下のような研究論文が発表されています。

・下顎におけるバーアタッチメントによるインプラントオーバーデンチャーと固定式インプラント義歯の比較:de Grandmont P 1994年
予想を覆して、インプラントオーバーデンチャーは決して機能的には固定式インプラント補綴装置には劣らない、また難性食品を除けば、一般的には概ね両者とも患者満足度は同等である、そして高齢になる程最終的に取り外し式の入れ歯を好むという結果を示しました。

バー➕インプラント4本支持のインプラントオーバーデンチャーと、2本支持のものの比較:Tangら 1997年
4本支持は安定感、快適さ、噛みやすさが優れるものの、その他大半の評価項目には同等の結果を示しました。この研究では、2本支持の下顎のインプラントオーバーデンチャーを正当化する一つの根拠となります。

上顎のインプラントオーバーデンチャーに関する患者評価:de Albuquerque Junior RF 2000年
下顎と異なり、上顎の無歯顎に対しては、インプラントオーバーデンチャーが必ずしも第一選択とならないという結果を示しています。ですので、上顎に関してはインプラントと取り外し式の義歯を組み合わせることに関しては、今のところ絶対的評価はありません。

McGillコンセンサス 2002年
下顎無歯顎の第一選択はインプラントオーバーデンチャーが最良であるという論文。

インプラント領域における社会経済学的コスト分析の先駆け論文:Takahashi Y2002年
下顎インプラントオーバーデンチャーは、生活の質の改善に大きく寄与することを多数示しています。

栄養状態の改善がなされるのか検討:Morais JA 2003年
下顎インプラントオーバーデンチャーの使用により、栄養状態の改善が見られるのか調べた論文です。アルブミン、ヘモグロビン、B12に有意差が見られたとされています。

受容する患者さんの性差に注目した研究:Pan S 2008年
女性に対する義歯作製、リハビリの困難さは多く報告されていますが、インプラントオーバーデンチャーはその差を帳消しにするほどの大きな改善をもたらすことを意味しています。従来の総義歯治療に関しては、女性の満足度は決して高くありません。インプラントオーバーデンチャーにした場合の性差はなく、満足度は向上しました。

8編の論文を包含した分析:Emami E 2009年
これまでを振り返った研究。改めて、インプラントオーバーデンチャーは、従来の総義歯治療と比較して生活の質の向上に寄与することが示唆されました。一方で、対象となるメインの年齢層の高齢者には、同治療を助け入れない場合もあることもわかりました。

社会心理学的研究:Esfandiari 2009年
インプラントオーバーデンチャーは、インプラントによる固定式補綴装置と比較すると安価にはなりますが、それでも治療費用が受療を阻害していることも事実であります。さらに、他の主要因としては、老化による痛みへの恐れ、術後の偶発症が挙げられました。

下顎にインプラントと入れ歯を組み合わせた治療例

歯がない顎に対して、インプラントを2本埋入し、その上には入れ歯をとめる「ロケーター」というパーツが取り付けられています。

ロケーターとは?
ロケーターとは商品名で、Zest Anchors社から発売されているシステムです。簡単にいうと、シャツのボタン的な構造を想像してもらったら良いと思います。入れ歯の内側に弾性のあるパーツが組み込まれ、インプラント側にスタッド型のメタルパーツが設置されます。現在、国内では、私たちが採用しているノーベルバイオケア社、その他ストローマン社、白鵬社からそれぞれ自社インプラント用アタッチメントとして正規輸入販売されています。
他のアタッチメントのシステムとの比較について、患者さんの主観的評価の調査の報告があります。他のシステム、ボール型のアタッチメント、バー型アタッチメントに対し、有意差がないという結果の論文もあれば、QOLが向上したという論文もあり、一致はしていません。しかし、決して劣るシステムではないようです。
利点はいくつかあります。
①従来のバー型、ボール型アタッチメントよりもパーツの高さが低く設置できること。専門的な話ですが、これはとても重要な要素で、高さのあるアタッチメントの場合、どうしても入れ歯の構造に薄く強度の低い部分ができてしまいます。そのため、低いパーツが選択できるロケーターの場合、インプラントの位置付けや、入れ歯の設計に自由度が大きくなります。入れ歯の強度不足による破損などの偶発症に関しても、リスクを下げることができます。
②ボール型、マグネット型よりも安価である。
③1mm違いのサイズ展開があること。インプラント埋入深度や歯肉の厚みが何ミリであっても、その状況に応じてサイズ選択が可能であり、治療がやりやすいメリットがあります。
④維持力のバリエーション。通常ラインナップでは、0.7kg,1.4kg,2.3kgが選択できること。患者さんの取り扱いのしやすいキツさを選択できるわけです。
✳︎使用上の注意点:インプラントオペの計画に関することになりますが、ロケーターをつけるインプラント同士の角度が、可能な限り平行であることが求められます。これが20度以下に抑えられていることが望ましいです。これ以上の角度になると、急速に維持力の低下があります。つまり、フリーハンドや目測でのオペではなく、コンピューター支援のガイドオペを併用し、インプラント間の角度をコントロールする計画を立てる必要があります。


義歯を装着した状態の口腔内写真。着脱方向を間違えて強引に行ってしまったり、しっかりはまっていない状態で噛み込んで入れ歯を入れるような使用法は、アタッチメントの維持パーツの早期交換に繋がりますので、事前の患者さんへの指導を注意深く行う必要があります。


下顎骨両側の小臼歯部には、オトガイ孔という穴が空いています。オトガイ孔間には歯を失った後でも骨量が残っていることが多く、その部位に対して平行な角度にインプラント埋入をします。

これらのようなアタッチメントの利点をしっかり把握した上で、治療計画を立て、義歯装着後のフォローを行っております。

インプラント治療後のメンテナス その2

2024年1月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回もインプラントのメンテナンスについての内容ですが、
インプラントの上部構造とその周囲の状況を具体的に考えた上で、
どのようにケアを続けていくとよいかを説明します。

上部構造装着直後のブラッシング指導の重要性
上部構造装着直後、患者さんはインプラントで歯を補われた歯列に慣れていないため、
ブラッシング不良になりやすく注意が必要です。

とくに全く歯がない状態で長期にわたり総義歯を装着されていた患者さんの場合、
歯ブラシで歯を磨く習慣を忘れてしまっているため、
歯科衛生士が時間をかけてブラッシング指導をする必要があります。

また、インプラントは顎骨の幅や高さにより埋入する位置や長さが決定されるため、
上部構造の形態は顎骨の量や形態により清掃性の面で理想的な形態を付与できない場合があります。

左下奥にインプラントが埋入された状態のCT画像。天然の歯と比較すると、根の幅が大きく異なります。
この症例では、あまり骨の高さの差はありませんが、
このように整った条件ばかりではありません。

したがって、上部構造装着直後に患者にブラッシング指導をする際には、顎骨および上部構造の形態を説明し、
形態的に磨きにくい部位があることを理解していただくこと、
インプラント歯列のブラッシングに慣れていただくよう指導することが重要です。

インプラントの上部構造装着後、定期健診の重要性、インプラントを含めた歯磨きの方法等を説明しています。
患者さんが選んできた歯ブラシ等が、必ずしもインプラント周囲組織に適した製品ではない場合もあります。
私たちは、上部構造の装着直後に、インプラントに適した清掃用具およびブラッシング方法の説明を行っております。

バイオタイプによるセルフケアの注意点
バイオタイプというのは、歯茎の粘膜の質のことです。
インプラント周囲粘膜の形態は、
厚い(thick-fat)タイプと薄い(thin-scalloped)タイプの2つに大別されます。
また、歯周組織についてはlaynardらにより軟組織や骨の厚みの関係から
4つのバイオタイプに分類されます。

角化歯肉の幅や厚みが、インプラント周囲組織の安定に必要か否かの見解の一致は得られていません。
しかし、歯周組織において歯肉が薄く角化歯肉が不足している部位では、
臨床的にブラシや食物による擦過などの機械的刺激やプラークに対する抵抗性が低く、
炎症による歯肉退縮を起こしやすいことがわかっています。
インブラント周囲粘膜においても、粘膜がインプラント上部構造頭部に近接し角化歯肉の幅が不足している部位や、
薄い組織の部位において、ケアを行う際には十分な注意が必要です。

とくに前歯部においては、唇側粘膜の厚い(thick-1at)タイプ
では、粘膜の退縮は少なく、審美的問題も少ないでしょう。
一方、薄い(thin-scalloped)タイプでは、経時的な粘膜の退縮が生じやすく、
とくに強圧や間違った方向へのブラッシングを行った場合、粘膜退縮は大きくなり、
審美的問題を生じやすくなります。

セルフケアの指導は、バイオタイプを評価したうえで指導方法を選択する必要があります。
Thick-Alatタイプの場合は、通常のブラッシング指導を行い、
過度なブラッシング圧による粘膜損傷を起こさせないような指導が重要です。

一方、thin-scallopedタイプの場合、ブラッシングによる粘膜退縮を予防することが重要であり、
軟らかい毛質のブラシを選択し、ブラッシング圧を弱め、唇側面に直角に当てるようなブラッシング指導を厳密に行う必要があります。
セルフケアに使用する各種清掃用具は、天然歯とは異なる形態を呈しやすいインプラント上部構造は、清掃性が悪くなる部位があるため、
歯ブラシだけでは磨き残しやすいことも多くなります。
そのため、補助ブラシなどインプラント周囲組織と 上部構造の形態や材質に適した清掃用具の選択が重要となります。
①ワンタフトブラシ
豊隆が大きい部分やインプラントブリッジの鼓形空隙などは、通常の歯ブラシでは毛先が届かず磨き残しやすいため、
歯ブラシで磨いた後に補助的にワンタフトブラシを使用するよう指導します。
②歯間ブラシ
インプラント周囲粘膜は瘢痕状態であり、歯間ブラシの誤った使用方法により、容易に付着をしてしまうこともあります。
ブラシの使用を開始する際には、必ずサイズ確認を行い、挿入方向に十分注意するよう指導することが重要です。

歯間ブラシのサイズは、天然歯の歯間部に適合するサイズよりもワンサイズ小さいものを選択し、
歯肉を押し広げないように注意する必要があります。
筆者は、歯間ブラシのサイズSが抵抗なく挿入できる鼓形空隙より狭い部位には、
歯間ブラシの使用は避け、ワンタフトブラシでの清掃を中心に指導しています。

また、歯間ブラシの金属のワイヤーによって、チタン面やセラミックス表面を傷つけないために、
ワイヤーがナイロンやプラスチックコーティングされている歯間ブラシを使用することも重要です。

③軟毛ブラシ
可動粘膜がインプラント上部構造頸部に近接しており、ブラッシング時の擦過によって傷つきやすい部位や、
即時荷重インプラント治療において手術直後に暫間的補綴物を装着した部位など、
粘膜が脆弱な場合には、軟毛ブラシを選択します。

④音波振動歯ブラシ
音波の作用により効率的に磨くことができるため、とくに全顎無歯顎症例でインプラント治療された患者さんにおいて、
音波振動歯ブラシでのブラッシングは有効です。また、ブラッシング圧をコントロールできない患者においては、
とくに音波振動歯ブラシを勧めることが必要です。
なぜなら、インブラント周囲粘膜は瘢痕組織であるため過剰な圧のブラッシングによって粘膜を傷つけないためにも、
一定の振動で磨ける音波振動歯ブラシを選択することが重要だからです。

⑤電動歯ブラシ
電動歯ブラシの毛先の動きは、歯周組織と比較して粘膜が脆弱であると考えられるインプラント周囲組織に対して、
ブラッシング圧が強すぎる場合もあるため、なるべく使用を避けるように指導しています。

⑥歯磨剤
研磨剤が多く配合されている歯磨剤は、上部構造を摩耗させるため、インプラントのみならず天然歯に対しても使用を避けるべきです。
セラミックスや金属などインプラント上部構造の材質にかかわらず、研磨剤によって傷ついた表面はバイオフィルム、プラークの沈着を招きます。
また、審美的にも、研磨剤によって摩耗した細かい傷により、セラミックスの艶や輝きを失わせます。
低研磨性または研磨剤無配合の歯磨剤が望ましいと考えます。
インプラントの形態的特徴から、歯ブラシによるセルフケアでは磨き残しやすい部位を、含嗽剂による化学的清掃法で補うことも必要です。
とくに、インプラント上部構造装着直後は、インプラントで補綴された歯列形態でのブラッシングに慣れていないため、
化学的清掃によりプラークコントロールを行うことが重要となります。
うがい薬としておすすめなのは、エピオスです。
塩と精製水を電気分解した機能水で、院内の機械で製造しています。
殺菌作用は高く、生体には優しい性質で、口腔ケアにも適しています。

定期的な受診/strong>
インプラント治療での失敗の大多数は、2次手術より1年以内に起こるという報告があります。
したがって、インプラント上部構造装着後の1年間のメインテナンスはとくに重要となります。

ケア用品のフッ化物濃度
チタンは酸性下でフッ素イオンが存在すると耐食性が低下する2ため、
フッ化物局所応用として使用する製品は中性のものを選択しなければなりません。
口腔内において、粘膜などが炎症を起こすとpHが低くなり、酸性に傾きやすくなるため、
アバットメントなど露出しているチタン面が存在する場合は、
とくにpHとフッ素イオン濃度に注意することが重要です。
一般的にはインプラントが存在する口腔内において使用するフッ化物は、
pHが中性でフッ素イオン濃度は1,000ppm以下が望ましいとされています。

インプラント治療の基本的な流れ

2023年12月30日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回はインプラント治療の基本的な流れについてお話しします。
大きく5つのステップから成ります。
これらは相互に大きな関連性をもち,各ステップが連動することで,はじめてインプラント治療は成立します。
それぞれのステップにおいて重要となるポイントを解説します。
天然歯が残っている場合、それらの歯周病の状態が把握され、適切に治療が進んでいる必要があります。

①治療計画
まずは資料とり、検査とそれらに基づく治療計画立案、カウンセリング、クリニカルパス作製ですが、
何もインプラント治療に限ったことではありません。

インプラント治療前の資料とり、CTはその一つです。

口腔内全体の保護を念頭におく必要があり、そのためにも最終補綴物の設計や構造が重要となります。
現在はトップダウントリートメントの概念がインプラント治療の主流となっています。
この概念は,術前に天然歯列を模倣した理想的な補綴形態を診断用ワックスアップで設計し,その歯
冠部の位置を基準にインプラントの埋入ポジションを決定して,必要であれば骨を造成するやり方です。

最終的な歯の形態を示すワックスアップ。ゴールが先で、それに合うように手術プランを考えます。

しかし,問題はあくまでも天然歯の模倣であるという点で,インプラントと天然歯は周囲粘膜も骨内環境も異なっています.
歯根膜の有無が大きな違いで,歯根膜が存在しないインプラントは組織への血液供給や栄養供給がありません.
つまリインプラント周囲組織においては、天然歯では維持されていたはずの薄い周囲骨はすぐに吸収し,
薄い周囲粘膜は退縮を起こすことになります.
インプラント周囲の骨や粘膜には,骨膜からの栄養供給が十分に得られ,血流のネットワークが構築できるだけのボリュームや環境が必要です.
現在は,それらの環境を確保するためのインプラント埋入ポジションや埋入深度,
歯肉を圧迫しない被せ物の形態を事前に計画します.

ノーベルバイオケアのインプラントシミュレーションソフトを用いて、治療計画を立てます。インプラントの角度や埋入深度、上部の被せ物のどのあたりに固定のネジを設定するか、歯肉や骨の厚みも確認します。

②インプラント埋入手術
事前にCTで画像診断をしていても、インプラント埋入部位の骨質に関しては,実際のドリリングによって判明することが多いです.
一般的に上顎の骨の方が多孔質で、下顎の骨は緻密な質感です。CT画像で骨が黒っぽい感じだと、大体柔らかめの骨質です。
中には、発泡スチロールのような骨質もあるので,オステオトームなどの骨を圧縮する器具や,
骨質の恵まれないケースに用いるタイプのインプラントを選択します。
最も多いのは、インプラントのサイズよりも小さめにドリリングを行うことです。
ドリルを足すことはできますが、形成しすぎたからといって後戻りはできないので、
慎重に段階をふんでやっていきます。そのため、ドリリングを少なめにして、
この状態でインプラント埋入できるかトライします。
不十分ならもう少しドリルをたす、埋入トライを繰り返し、
インプラント埋入時のトルクが35N以上になる良好な初期固定を目指します。

術前の麻酔。インプラント埋入予定部位に局所麻酔を行います。

他の施術と異なり、高いレベルの滅菌環境下で手術を行います。

私たちは、ほとんど全ての症例で、手術用のコンピューター支援のガイドを用いてインプラント埋入手術を行います。

骨造成を同時に行う場合も多いです。小規模ならGBR、例えば上顎洞内に骨造成する場合はサイナスリフトです。

③治癒期間

埋入手術後、できるだけ早く噛めるようにしたいですが、インプラントと骨の結合を待機する必要があります。基本的に3ヶ月〜4ヶ月は待ちます。
その間、患者さんのQOLが下がらないよう、仮歯を貼り付ける、治療用の入れ歯を装着するなど対応します。
骨を造成するような施術後は、歯茎に外部から圧がかからないようにする必要があり、基本的に入れ歯を装着しない方が安心なこともあります。

④補綴処置

歯肉から立ち上がる部分を取り付ける、2次手術。ヒーリングアバットメントを装着すると、このチタンの滑らかな面に沿って、歯肉が綺麗に治癒してきます。

仮歯をスクリュー固定。

2次手術は骨を触るような大掛かりなものはなく、歯肉を取り扱います。局所麻酔が必要です。仮歯を使って生活をしていく中で、問題がないか経過を見ます。
インプラントで修復する範囲が大きいほど、仮歯で経過を見る期間を延長し、お口の環境に合う歯の形態を再現するよう調整を繰り替えします。
最終補綴物製作の前に,仮歯によって咀嚼運動や発音といった機能面と補綴物の歯冠形態や歯肉縁下形態などの審美面を整えていくこ
とが重要です。この仮歯の装着期間に、患者さんの習癖や口腔ケアのレベルなどを考慮して,
最終補綴物に反映させることになります。2次手術後の仮歯の期間で問題なければ、最終的な上部構造を作製します。
私たちは、3本以内の欠損治療では、お口の中をスキャンして型取りします。
それ以上の広範囲の治療では、シリコンの型取りの材料とトレーを用いています。

型とりの様子。


被せ物はジルコニアという材料を用いています。プラークが付着しにくいというメリットが大きいです。前まではジルコニアというとラメがかったようなキラッと目立つ質感でした。現在は審美的にも、天然歯と違いがわからないくらい仕上がりが良くなっています。
天然の歯の被せ物と大きく異なることは、インプラントと被せ物はスクリューで固定をするという点です。
インプラントと被せ物の装着について、セメント固定を選択した場合は、歯肉よりも深い位置にセメントの取り残しができてしまうため、
辺縁骨の炎症、吸収を引き起こします。
可能な限りスクリュー固定になるよう治療計画を立てます。
どうしても、顎骨の吸収などでインプラント埋入角度・位置が制限される場合、セメント固定にせざるを得ない場合もあります。
審美性の確保とともにセメントの除去が容易に行えるように、土台部分をカスタムするなどを工夫をします。

メンテナンス

一般的なメインテナンスについては、天然歯とインプラントとで変わらないので、患者さんご自身でのケアがしやすいよう、ブラシの選定、補助的な清掃用具のお話をさせていただいております。
定期的なメンテナンスに来院された際は、インプラント専用の器具を用いて、バイオフィルムや歯石の除去を行います。
噛み合わせの接触具合、スクリュー固定の状態もチェックをします。
口腔内は経年的に変化しますので,インプラントの補綴物も残存する天然歯も同様に口腔内の食事や噛みしめなどの過酷な環境に曝されており,
常に口腔内全体をチェックして力のコントロールを行う必要があります。
インプラントの補綴物は力を緩衝するショックアブソーバーのような存在でもあります。
天然歯は、歯根膜が周囲に存在しますので、噛み合わせの精密なセンサーの役割があります。
強い力がかかった際の緩衝材の役割もあります。
インプラントは、顎骨と直接結合しており、膜などは介在しません。
上部構造に用いられている、ジルコニアやポーセレン、周囲の歯が天然歯の状態であったり、補綴装置が装着されていたり、
その患者さんごとに多種多様であります。つまり、使っていて摩耗する程度も違ってきます。
その辺りの噛み合わせの状態をチェックし、インプラントの上部構造と噛み合う歯が変に強く当たってきているとか、
干渉しているようになったら、適切な状態に戻すように噛み合わせの調整を行います。

インプラントと天然歯、どんな違いがあるのでしょう?

2023年12月9日

⚫️インプラント周囲組織と歯周組織の違い
🔳インプラントと天然歯の相違点として、“天然歯は自己、インプラントは非自己である”ことが大前提となり、”インプラント周囲組織は非自己なる物体(異物)との間で代謝を繰り返している”のです。

🔳インプラント周囲組織と歯周組織の相違点
①結合組織中のコラーゲン含有量が多く、線維芽組織の量が少ない。
 インプラント治療とは、骨に植立された非自己であるチタンのネジがつかわれています。
チタンは、飛行機やロケットにも使用されていて、軽量性があり、金属アレルギーなど人体にやさしく安全な金属で、生体適合性・強度・耐食性・耐熱性に優れています。そのネジが、骨膜、および粘膜を貫通して口腔内に突出しているという、生体では大変不思議な状態となっています。つまり、口腔内の粘膜に骨まで達する傷口を故意に存在させていて、その粘膜は傷ぎ治癒するときと同じ硬い状態になっているのです。インプラント周囲組織はまさに「瘢痕組織」に類似しているといえます。その瘢痕組織様形態であるインプラント周囲組織の結合組織の成分は、コラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ないと報告されています。
 また、インプラント周囲粘膜上皮の増殖力は、天然歯の付着上皮と比較すると数分の1程度でり、天然歯の周囲粘膜に比べ代謝が弱いことが考えられています。そのため、インプラント周囲粘膜は炎症が生じやすく、治療しにくい状態と想定されます。

②血液供給量が少ない
 天然歯において、血液は歯肉と骨縁上の結合組織では、歯槽突起側方の骨膜上血管、歯根膜の血管の2方向から供給されています。しかしながら、インプラント周囲組織には、セメント質がないため、歯根膜が存在しません。そのめ、インプラント周囲粘膜は、インプラント部位の骨の骨膜から生じた、より大きな血管の終末枝のみから血液が供給されています。
 したがって、インプラントの骨膜上結合組織の血流は、歯周組織と比較して少ないと考えられています。このことにより、血液の免疫作用および再生能力が不十分になりすいため、インプラント周囲粘膜は炎症が生じやすく、治癒しにくい状態と想定されます。

③コラーゲン線維の走行
 天然歯ではコラーゲン線維の走行が歯根に垂直よび平行であるのに対し、インプラントに
メント質が存在しないことから、骨から垂直に存在し、インプラントと平行に走行しています
。そのため、インプラント周囲粘膜は、歯肉に比べ、外からの侵襲に対し、防御機能が低いこ
とが想定されます。
 つまり、インプラント周囲組織は、歯周組織
に比べて結合組織中の線維芽細胞の量および血液供給量が少なく、いったんインプラント周囲組織に炎症が起こると、急速に不可逆的に進行すると考えられます。
 歯周組織よりも感染防御機構が劣るインプラント周囲組織で、とくに早期に炎症性変化を見つけて対処する必要があります。

施術時の注意点
マニアックなお話ですが、インプラント周囲の組織の成り立ちやマネジメントは、長期予後にとって非常に重要なのです。
周囲に骨がある、歯肉という軟組織があるということが重要で、インプラント治療では天然歯以上に、組織の厚みを考慮して施術をします。
骨が足りない場合は、人工の骨を入れて、高さや幅を増やします。
私たちは、GC社から出ている、サイトランスグラニュールといういう骨補填材を用いています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
公式HPより
世界初の「炭酸アパタイト」が主成分とする、国内初の「インプラント周囲を含むしか領域での使用」が認められた顆粒状の骨補填材です。「炭酸アパタイト」は、骨の無機成分と同じ組成のため、患者さん自身の骨へ効率的に置換され、目標とした骨面の高さを維持します。また、インプラント体に対し、強固なオッセオインテグレーションの獲得を実現します。
生理食塩水や血液と混ぜて使用します。
主成分は炭酸アパタイトです。これは、人間の骨や歯を構成する無機成分であり、リン酸カルシウムの一種です。
生体由来材料のような感染リスクはありません。
人間の骨は有機成分(コラーゲン等)と無機成分(アパタイト)により構成されていますが、 本品は自家骨の無機成分と類似した組成の骨補填材になっています。
炭酸アパタイトの高い骨伝導能により、早期からサイトランス グラニュールの周囲が新生骨に覆われます。
炭酸アパタイトの吸収特性により、患者さん自身の骨にゆっくりと置き換わって行きます。
足場としての機能を維持しながら効率的な骨置換を実現します。
全ての作製工程を完全に滅菌環境下、国内で行なっています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以前はBio-ossという製品を用いていましたが、海外の製品で、取り寄せるのに時間がかかっていました。
サイトランスグラニュールは、入手のしやすさ、操作性も良いです。
何より、インプラントをよく施術されている歯科の先生方の評判が良いです。
私たちも導入し使っていますが、良好な治療結果を得ています。

⚫️患者さんとのコミュニケーション
 最後に、インプラント治療にかかわらずですが、患者さんとのコミュニケーションについて、考えていることを書いておきます。
インプラント治療とは、歯を失った顎堤に人工歯根を植立することにより、咀嚼・咬合・審美性を補う治療で、生体にとっては人為的に人工物(異物)を体内に入れる治療です。そのため、異物が生体に排除されないように、オッセオインテグレーション(骨結合)をいかに持続させられるかによって、インプラントの長期にわたる安定が保証されます。ですから、インプラント治療では、このことをつねに頭に入れて治療にあたるよう心がけています。
 インプラント治療を希望される患者さんもまた、「人工のものを体の中に入れるとはどういうことだろう?」と少なからず不安を抱いて来院されるでしょう。だいたい、大きいモニターで治療の説明をすることが多いです。モニターで見ると、何か巨大なネジが顎に入っていくイメージをされてしまうようで、誤解がないように模型や実寸、天然歯との比較をしつつお話をします。
また、最近ではインターネットの普及とともに、インプラント治療に関する誤った情報をそのまま理解されている患者さんも多く見受けられます。特に多いのはインプラントを入れらた骨が溶ける、といった謎のうわさがあるなと感じています。
 そこで、インプラント治療を始めるにあたり、インプラント治療とはどういった治療なのか、インプラント治療の利点・欠点を正確に説明する必要があります。医療面接において当院では、インプラント治療を希望するに至った主訴、現病歴、既往歴などを把握し、患者さんとのコミュニケーションをはかり、信頼関係を築きます。
 そして、治療に必要とされる検査を行い、検査結果の説明とインプラント以外の治療法を含めた治療計画の提案と、その際にかかる治療期間(回数)と治療費を患者さんに提示します。このように、患者さんへの十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)を得たうえで治療を進めていくようにしています。

インプラントのよくある質問その2

2023年11月1日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

まずはインプラント症例のお話からです。
右下奥の第二大臼歯が虫歯でボロボロでしたので、抜歯してインプラントで治療を行った症例です。
術前

術前パノラマ:右下奥歯が虫歯で小さい根のみになっています。

術前咬合面:奥歯は小さく、黒くなっています。

術前右側:上顎の奥歯が噛み合う相手がいません。
患者さんは、もともと歯があった頃の方が噛みやすかったので、治療で歯を作りたいとのご希望でした。

術後

術後パノラマ:右下奥にインプラント埋入、上部構造があります。

術後咬合面:インプラントの上部構造はスクリュー固定のため、ネジの穴を封鎖したあとがあります。

術後右側:噛み合わせが回復しています。

歯が大きく欠けてしばらくそのまま慣れていた時もあったけど、治療してかみやすくなったとおっしゃられていました。
奥の歯が1本なくなってしまった後、そのままで過ごす方もおられます。
積極的に治療で歯を補うとしたら、インプラントで歯を作るか、部分入れ歯を作って装着することになります。
奥だけ1本の部分入れ歯を作った経験がありません。しっかり噛めないどころか違和感が増すだけで、生活の質はむしろ下がってしまいます。
インプラントを絶対すすめることもしていません。噛みづらいなとか実感されている方には、ご案内しています。
感じ方は人それぞれですし、その方の生活スタイルや年齢などは、積極的な治療に踏み切るかどうかの大きい判断材料になります。

歯がなくなった側は、反対側で自然と噛んでいくことになります。歯がそろっていて噛みやすいからでしょう。
利き腕と同じように、噛むときも左右どちらかを主体に噛んでいることが多いですが、
噛み合う歯が少ない場合、歯が少ない側で咀嚼する機会が減ってしまいますので、
お顔の形も変わってきてしまいます。
これは、咀嚼する時の筋肉をどのくらい使っているかによります。当然使っていない側は筋肉が衰えてしまいますので、
お顔がたるんでくるわけです。
お顔の筋肉とシワも関係があります。

顔の筋肉とシワの関係って?
 みなさんは、「時間がないから」といって食事を短時間ですませてはいませんか?現代はやわらかい食べ物が好まれ、あまり噛まない食習慣になってきています。
 しかし、顔の筋肉を使ってしっかり噛まないと、頬がたるんでほうれい線が目立ち、口角も下がってきてしまいます。すると、全体的に老けた顔に見えてしまい、ときには、不機嫌ではないのに、周囲の人に「怒っているのかな?」と思われてしまうことも。
 顔の筋肉を衰えさせず、若々しい顔でいるためにも、1番大切なことは、「よく噛むこと」です。そして、「よく歌うこと」「よくしゃべること」も筋肉の衰えの予防に繋がります。
 食べ物を噛むときに動く咀嚼筋の一部でもある「側頭筋」と「咬筋」を自分の手で触って、よく噛むことの大切さを意識しましょう。手をあてて噛みながら、軽く噛んだとき、ギューッと噛みしめたときの筋肉の動く大きさの違いを感じてみるとよいでしょう。
 咀嚼筋が衰えると大きなシワの原因になります。食事のとき筋肉を使ってしっかりと噛んで、おくちを動かすことが若さの秘訣です!

▪️咀嚼筋の一部
【側頭筋】ちょうどこめかみの部分にある筋肉です。手のひら全体で触ってみてください。衰えると目元や瞼が下がってしまいます。

【咬筋】耳の前(頬側)にある筋肉です。机の上でほおづえをつくようにして触ってみるとわかりやすいです。衰えると頬がたるんで、ほうれい線が深く刻まれてしまいます。

▪️おくちのまわりの筋肉の一部
【口角挙筋】上あごの犬歯付近から小鼻の横周辺までに位置しています。目元と口角を繋いでいて、口角を上に引き上げる働きがあります。口角が下がったと感じるときは、口角挙筋が衰えている可能性が高いでしょう。

【口角下制筋】下唇の両側から下顎にかけて扇のように広がっており、上唇と口角を下に引っ張る役割を持っています。奥歯でものをかむときに使われる筋肉です。この筋肉が凝り固まると年齢を感じさせてる顔つきになってしまい、発達しすぎてしまうと、口角を下に引っ張る力が強くなって、口が「への字」になってしまいます。

特に奥歯は噛み合わせ、咀嚼の要と言っていい部位でありますので、
1本、2本失ってしまうと噛みづらくなってしまいます。
筋肉が衰えてしまい、お顔が変わってきます。

Q.インプラントは一生モノ?
一生モノではありません。
インプラントはチタンという生体に対して極めて親和性の高い材質です。顎の骨に埋入しても炎症は起こさず、骨の組織と直接結合する「オッセオインテグレーション」という現象が起きます。
現在のインプラントは近代インプラント治療が始まった時と比較して、高い成功率を達成できるレベルになっています。一度くっついたインプラントがどれだけ長持ちするかは、個人差があります。噛み合わせの力や他の歯がどれだけ残っているか、骨の質、嗜好品などの生活習慣、食いしばりの習癖の程度など、予後を左右する条件は様々でありますので、どれだけ長持ちするかを正確に予測できません。
そうは言っても、通常は10〜20年は抜けずに機能すると認識しています。40〜50年機能し続けているインプラントの報告もあります。

Q.インプラントと天然の歯とはどう違う?
周囲組織とのくっつき方が違います。
インプラントは骨の組織と直接結合します。天然歯は歯根膜という構造を有しており、それを介して骨の組織と結合しています。歯根膜はすごいです。これが噛み合わせの超精密なセンサーの役割があります。また、歯根膜自体に血流がありますので、歯根膜が健康な状態であれば、骨の再生を促すことができます。自家歯牙移植をして、移植した歯の周りに骨ができてくっついてくるのは、歯根膜のおかげです。
一方、インプラントは歯根膜の構造がないですから、骨がなかったらGBRといって骨を人工的に増成する施術を行います。また、噛み合わせの摩耗などで、インプラントの部分だけが強く噛み合っている状態だと、噛み合う相手の歯がダメージを受けやすくなります。
このような理由で、もしインプラント治療が一通り終わったあと、噛めるからと言って全く歯科での検診を受けずに過ごしていると、歯根膜のないインプラントならではのトラブル、噛み合わせの力によるトラブルが生じる可能性があります。
ですので、定期的に噛み合わせをチェックしたり、必要な調整を行いながらインプラントと付き合っていくことが重要です。
このようにインプラントにはまだ天然の歯には追いついていないというのは明らかであります。
では、治療を進めても問題ないのかというと、私の考えはこうです。

インプラントは100点満点ではないけれども、10〜20年という長い間、ブリッジや入れ歯から解放され、
周りの歯は負担がかからず長持ちすることができたり、なんでも美味しく食事ができるのであれば、
治療として十分な効果があると言える。
たとえトラブルがあったとしても、上部構造をやりかえたり、インプラントを埋入しなおすことで、回復ができる。
これにより、歯根膜のないインプラントでも、多くの人のQOLの向上に役立てる。

歯周病や虫歯、事故により歯を失ってしまった場合、その場の金額の安さだけで入れ歯治療を選んでしまうようなことは、
非常にもったいなく思います。
噛めずに食事に制限がある方、ぜひお気軽にこちらからご相談ください。

インプラント治療のよくある質問

2023年10月28日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


術前右側:奥歯の欠損があります。

術前咬合面:歯を失ってからある程度期間が空いていて、歯茎の形が落ち着いています。


術後右側:インプラントで奥歯を作りました。

術後咬合面:歯列にマッチしていて、機能に問題なしです。

今回は患者さんからよくある、インプラントに関する質問についてまとめてみました。

Q.他の医院で、インプラントができないと言われたのですが、治療できませんか?
インプラントは顎の骨の中に埋入するので、骨の高さや幅がない場合、治療できないと判断される場合もあります。
私たちも全ての骨欠損に対して、「なんでも治療可能です!」とは言えませんが、
骨の量的に難しいと判断し、専門クリニックを紹介した症例は1つのみで、
他のほとんどの症例は骨を作る施術を行なってインプラント治療を完了しております。
これは、CTによる画像診断をしていくことで判断できますので、
他院で断られた方も、ぜひご相談していただけたらと思います。

Q.骨の量以外で、インプラント治療ができない人はいますか?
以下の人は治療ができません。
骨の成長が終わっていない若い方
日常の歯磨きなどの清掃が全くできない方
チタンのアレルギーの方
アルコール依存症の方
歯科医師と意思疎通が取れない方
骨粗鬆症の治療中の方
糖尿病、高血圧のコントロールができていない方

Q.インプラント治療ってこわい。顎にでかいネジが入るんでしょ?痛いんでしょ?
手術中はしっかり麻酔が効いた状態で施術をしますので、術中痛い中やることはありません。
でかいネジについてですが、大体治療説明の画像などで、歯やインプラントや顎の骨のイラストをどアップでご覧になると、
なんか巨大なネジが顎に入っていくイメージを持たれることがあります。
実際は、天然の歯の方が大きいです。
術後の感覚は、抜歯された時と同じくらいの印象です。
治療された患者さんも、「最初はこわいイメージだったけど、思ってたより全然楽だった」と言う感想がほとんどです。
インプラントのレギュラーサイズは、直径が4.3mm、長さが10mmです。
天然の歯の直径も長さもそれよりもう少し大きいので、インプラントは全然大きいネジではないです。

Q.手術時間はどのくらい?
30分〜1時間程度が多いです。
埋入するインプラントの本数、骨増成の程度、お口を開けられる量が極端に小さいなど難易度により前後します。

Q.インプラント治療の費用が気になる。
具体的な治療費については、CT撮影、画像診断をしてお見積りを作成し、ご案内させていただきます。
また、費用の分割払いもこちらを利用していただけます。

Q.インプラント治療費を抑えることはできる?
医療費控除です。
例えば、400万円の所得の人が30万円のインプラント治療を受けた場合、
この制度を使うと、26万円で治療を行うことができます。
費用的にハードルが高かったという場合も、数万円安くできるなら、、、となったりします。
どんな風に利用するのでしょうか。

我が国の一般的なインプラントの治療費は、40万円程度です。画像診断から手術、最終的な被せ物まで含めてです。
医療費控除が使えるので、税金から医療費の一部が還付され、お得にインプラント治療ができると言えます。
どのような制度かと言うと、、、
その年の1年間でかかった医療費が一定額を超えた場合、その額と所得を元に計算された額、税金が返ってくると言うものです。
この医療費は、生計を同一にする配偶者、親族も含めてです。
一定の額というのは、医療費の合計が10万円または所得の5%を超えるというのが条件です。

✳︎所得と税金還付の例
年収400万円でその年の医療費が30万円だった場合、4万円の還付
→つまり、30万円から10万円を超えた分、20万円
 これに400万円の所得税率20%をかけた4万円が返ってきます。
という仕組みです。
クリニックの窓口で費用が減るわけではありません。

Q.インプラントはどれくらいもちますか?
20年の累積データで、上顎90%以上、下顎95%以上です。
上顎と下顎で差がありますね。これは、上顎の骨の質が下顎よりも少し弱いために起こります。
たまに、「インプラントを入れたら、骨が溶けるんですよね?」
とお話しされるかたがいらっしゃいます。
インプラントの周りの骨だけが溶けるというニュアンスのようですが、
そんな現象は起きなくて、周りの歯が歯周病が悪化するような状況でしたら、
周りの歯と同じように歯周病(インプラント周囲炎)になります。
ご自身の歯も、インプラントも同じようにお手入れすると、同じようにもちますとお答えしています。
インプラントが適切な位置に埋入され、歯列や噛み合わせにマッチした上部構造が入っており、
定期的にお口のメンテナンスに歯科受診されると安心です。

Q.インプラントだから特別メンテナンスが必要?
お家でのケアは、インプラントがあってもなくても同じように重要です。
インプラントに関係なく、病気の予防のために歯科受診し、
お口のメンテナンスを受けていただくのが一番歯が長持ちします。
そうすることで、結果的に健康寿命を伸ばすことに繋がります。
なぜなら、なんでも噛める状態であれば食事を楽しみながら栄養摂取でき、
虚弱にはならないからです。
噛み合わせがしっかりしていることで、全身を動かすバランスもとりやすく、
高齢者の寝たきりの原因である、転倒や骨折を防止できます。

Q.使用しているインプラントや歯科材料はどんなもの?
当院ではノーベルバイオケア社の製品を使用しています。
他のメーカーは使用しておりません。
ノーベルバイオケア社は、歯科インプラントで世界で初めて製品展開した、海外のメーカーです。(本社はスイス)
そのため歯科インプラントで最も長い歴史があり、世界70カ国以上で使用されています。
1965年、ブローネマルク博士により、世界で初めてインプラントが歯科臨床に応用されるようになりました。
現在、日本に存在するインプラントメーカーは40種類以上。
その中でも人体に応用してから50年以上の歴史があるのは、このメーカーならではの強みと言えます。
現在は、インプラントの表面にタイユナイトという特殊な加工がされているものを導入しています。
タイユナイトの特徴は、顎の骨の中に埋入されたあと、早期の骨結合と治癒期間の短縮が可能であることです。

Q.高齢だけどインプラント治療は可能?
年齢によりインプラントと骨の結合が制限があるということはありません。
当院のインプラント治療患者さんの最高齢は、90歳ですが、
全く問題なく、治療後も快適に過ごせています。

Q.ガイドやコンピューター支援の手術とは何のこと?
ノーベルバイオケア社が開発したものが、ノーベルガイドというものです。
CT撮影データとインプラントのシミュレーションソフトウェアを組み合わせて、治療計画をサポートするコンセプトです。
手術の前に骨の形態や質、神経の位置などを把握し、安全・安心な治療を可能にしています。
計画通りにインプラントを埋入するために、患者さんごとにサージカルテンプレート(手術用補助器具)を作製して手術をします。
治療計画に基づいてインプラント埋入をするため、サージカルテンプレートをお口に取り付け、
インプラント手術をします。
これにより、シミュレーションした位置に正確に手術が行えます。

実際のお口の状況は人それぞれですので、
インプラントの相談だけでもお気軽にしていただけると、
よりわかりやすいと思います。
ウェブでもご予約が可能です。

インプラントのブリッジ症例

2023年10月26日

インプラントのブリッジ症例

ほとんど歯が残っていない上顎に対して、インプラントのブリッジで治療した症例です。

以前、歯がない顎に対して、All on 4コンセプトの治療を行った症例をご紹介しました。
今回もほとんど歯が残っていない上顎に対する治療ですが、残っている歯が治療したら問題なく使っていける状態でしたので、
それを温存して尚且つ固定式の歯を入れるにはどのようにするのか、という治療プランを考える必要がありました。

当院を受診された時のお悩みは、
「上の入れ歯でしっかり噛めない」
というものでした。上顎は3本歯が残っておられて、あとは部分入れ歯が入っていました。
術前はこのような状態でした。


術前正面:歯の欠損が広範囲に認められます。


術前右側:惻切歯、犬歯、第一小臼歯のみ残存していました。


術前左側:すべて欠損でした。

欠損に至った原因ですが、虫歯がひどくなり、治療を繰り返すうちに徐々に歯が抜かれていったとのことでした。
虫歯の治療も際限なくできるわけではありませんので、最初は虫歯のところを埋める簡単な施術で済むのですが、
根管治療をして被せ物を入れる→虫歯が再発し最治療、となったら、残っている歯の量が少なすぎて抜歯になってしまいます。
抜歯後にブリッジや部分入れ歯で欠損を補ったあとは、欠損の負担がブリッジや部分入れ歯の土台の歯にかかってきますので、
長い時間をかけて抜歯に近づいてくようなものです。
そのようにして、この方は徐々に欠損の範囲が拡大していき、10本の欠損に至ったわけです。
大きい部分入れ歯が入った後、このようなお悩みが出てきました。
・ガタガタして硬いものが噛めない。
・食事の際、入れ歯と歯ぐきの隙間に食べ物が入り込む。
・歯ぐきが痩せてくるので、作り直さないといけない。
・入れ歯の金属のバネをしばしば調整しないとゆるくなってしまう。
。入れ歯のピンクの床の部分が割れてきた。
などなど、入れ歯あるあると言えます。
インプラントだからできる生活があると思います。それは、天然の歯があった頃を取り戻せる方法だからこそ、
自然に自由な生活を楽しむことができます。非常に治療効果が高いと考えております。

今回の症例の話に戻ります。
実は、この治療を行ったのはかなり前で、私たちはその時ノーベルガイドのシステムを導入していませんでした。
ノーベルバイオケアのインプラントをずっと使用していたのは変わらないのですが、
この症例後に、ノーベルガイドのクリニシャンというソフトと、ガイド用のオペキットがクリニックに導入されたのを覚えています。
今ならノーベルガイドを使用し、よりスムーズに治療が進んでいただようと思われます。今更ごちゃごちゃ言ってもしょうがないですが。。。

ところで、インプラント治療ならではのやり方で、トップダウントリートメントというものがあります。
簡単に言うと、最終的な歯から逆算した位置にインプラントを埋入するやり方です。

ワックスアップ


右下奥歯の欠損

歯型をとり、石膏模型を作ります。このように歯がないところに、ワックスを用いて歯の形を作ります。残っている歯や歯列、噛み合わせを踏まえて、理想的な歯の形・位置を設定します。この最終的な歯の設計図を準備するところから始まります。ワックスアップと呼ばれています。



上顎前歯のケース


下顎両側第臼歯部のケース



上顎全部のケース

ノーベルガイドが使用できる状況でしたら、ノーベルバイオケアのソフトにワックスアップ模型のデータを入れて、ガイドを作製していきます。
今回のケースは、ガイド導入前でしたので、技工の先生と手製のガイドを作製し、それを用いて手術を行いました。
院内で、石膏模型上にレジンを使ってガイドを作り、インプラント埋入を行いました。

手製のガイドは、ノーベルガイドと比較すると手術の正確さにおいては劣ってしまいますが、何も手掛かりがないフリーハンドの手術を行うよりかは、最終的な上部構造を反映した位置にインプラント埋入がしやすいと考えています。この症例は、比較的顎の骨の厚みや高さに余裕があったので、このやり方でも問題なかったと考えます。

まだ、現在のようなCTがない時代、インプラントの施術はパノラマX線写真などの平面の写真のみで行われていたわけで、ガイドも当然ない状況でした。そのような中で当時の歯科の先生方は工夫してされていたのだと思います。と考えると、ガイドのシステムがある現在は、医療の技術開発ならではの施術も可能になり、画期的で良いことだと感じております。

埋入後、インプラントと骨が結合する現象が起きます。オッセオインテグレーションと言います。インプラントの表面と骨の組織が直接結合する間は、負荷をかけないようにします。埋入する際、インプラントにかけるトルクを35N以上で固定できたら、初期固定が良好であると判断できます。手術の時はこの良好な初期固定を得るために、工夫をします。たとえば、柔らかい骨質の場合はあまりドリルで形成しすぎないようにします。小さめの穴を開けて、インプラントをねじ込んでいくイメージです。
この1次手術 のあと、一旦骨の組織とインプラントの結合は弱まります。スタビリティーディップと呼ばれます。それがあったあと、徐々に固定がしっかりしてきます。そのため、すぐに力をかけない方が良いです。
ただし、例外はあって、インプラントの先端が鼻腔底や上顎洞底の皮質骨噛み込むよう埋入するやり方では、待機せずに加重することもあります。ALL on コンセプトの治療はそうです。

最終上部構造装着後

術後正面観:機能的で審美的な歯が入りました。


術後左側:今回の症例のように、顎の骨の高さが豊富に残っている場合、最終上部構造は歯の形そのままを再現したような状態になります。これが骨の高さが吸収して低くなっている場合、歯の部分だけではなく、歯肉も一体となった上部構造を装着することになります。


術後右側:入れ歯と違って何でも噛める!と、患者さんに非常に喜ばれました。

インプラント治療って痛い?/strong>
よくあるご質問にお答えします。
Q.インプラント治療って痛いですか?
手術のことが一番気になると思います。顎の骨にネジを入れていくのってなんかこわいイメージがあるようです。
手術中は、麻酔をしっかりとかけます。痛みは感じない状態で手術を行います。少しでも痛みを感じられるようなら、麻酔を追加して行います。
全身麻酔ではないので、手術で触られている感覚は当然あります。
音や振動を感じてしまうのが、インプラント治療の埋入時ですね。
埋入後の待機期間や2次手術、上部構造装着などのステップと比べると、
埋入時のストレスが1番大きいわけです。麻酔の量も一番多いです。
また、お口の中は体の他の部分に比べて、傷が治りやすいという特徴があります。
実際に手術された患者さんの感想は、思ったよりも楽だった、早くやっておいてよかったと言うものが多いです。
では全く痛みや腫れがないのかというと、人によって身体の傷の感じ方、治り具合に差がありますので、
侵襲の大きい手術予定の方には特に、腫れや痛みが出る可能性が高いこと、
その際の対処法、不快症状が出ると思われる期間などを詳しくお伝えしております。

当院のインプラント治療のページはこちらです。
ぜひご覧ください。
セカンドオピニオン、相談のみなど歓迎いたします。

少ない本数で最大の効果のインプラント治療

2023年9月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、入れ歯で噛めないことでお困りの方の治療例です。
少ない本数で最大の効果というタイトルですが、まさにその通りで、
要は歯がない顎に対して、いかにコスパよく固定式の歯を入れて機能回復するかというのがテーマであります。
All on 4というインプラント治療のコンセプトです。

術前正面

上顎には大きい入れ歯が入っておられました。

術前左側

左下奥歯は欠損で噛めない状態です。

術前右側

残っている2本に入れ歯の金属のバネがかかっています。

術前パノラマX線写真

上顎は左右ともに2本ずつ歯が残っています。下顎は欠損もありますがほとんど歯が残っています。
主訴は上顎の歯でしっかり噛みづらいとのことで、大きい入れ歯を長年使われていたのですが、それがしっかり噛めない状態でした。
上顎に残っている歯は4本。あとの10本は入れ歯で補われています。
このくらい歯がなくなっている場合、義歯の設計を考えるときに、上顎を大きく覆う床を用います。
理由は、残っている歯が少ないため、そこに入れ歯のバネを引っ掛けるのですが、それだけでは入れ歯を維持するのに足りないのです。
粘膜を大きく覆い、入れ歯の床で吸着を得ようと考えます。
入れ歯が吸着する原理というと、入れ歯が入っている口の中って、粘膜の上にプラスチックの板が乗っかっている状態なわけですが、
真っ平なガラスの板2枚を想像してみてください。
このガラス板をくっつけただけではすぐ離れてしまいます。しかし、水をその間に介在させると、ピタッとくっ付きますね。
この状態、空気の出入りがないのです。総入れ歯が口の中で吸着したりする原理は、口腔内の粘膜と入れ歯の床の間に、
唾液があり、顎を動かしても空気の出入りがない床の形態を作れているということです。

この方の口腔内で、入れ歯の吸着や維持が適切にできているかというと、全くできていませんでした。
まず、入れ歯の床が邪魔だからと、上顎を覆う部分をくり抜いており、そこから口腔内粘膜と入れ歯の床の間に空気の出入りがどうやっても生じてしまいます。
だから入れ歯がパカパカ浮いてしまうのでした。

入れ歯治療と身体が払う代償
また、部分入れ歯の宿命といってもいいですが、入れ歯のバネが引っかかっている歯に、歯を揺らすような力が常にかかるので、
ゆっくり抜歯しているようなものです。残っている4本の歯いずれも、食事に支障があるほど揺れが大きくなっていました。

この患者さんは、今までの人生で、もっと歯が残っていたけれども、このように入れ歯のバネがかかっている歯は揺らされてダメになってしまい、
どんどん入れ歯が大きくなって行く流れになっていました。
入れ歯を作る際に、必ず歯科ではこのような話をします。部分入れ歯は徐々に大きくなる、総入れ歯に近づいて行くのです。
部分入れ歯を入れる前に、入れ歯のバネをひっかける部分を削って形を整えたり、被せ物を作ったりします。
これらは、入れ歯の着脱方向に可能な限り平行になっている面を作り、維持力を得るためのものです。
どんなに良い部分入れ歯を作ったとしても、必ずバネの部分の負担があり、残っている歯が失われていきます。

入れ歯の床が接している歯茎に関してはどうでしょう?ここでも、身体の代償が払われています。
噛むときに粘膜に入れ歯の床がグッと押し込まれます。すると血流が悪くなり顎の骨が吸収してやせていきます。
ずっと入れ歯を使用していて、顎の骨がものすごく痩せてしまっている方、
少しずつ身体が代償を払っていて、尚且つ生活の質が悪くなってしまっています。

あまりにも骨が吸収しすぎていると、入れ歯を作り直しても入れ歯が歯茎をしっかり掴むこともできず、
入れ歯と粘膜の間に空気が出入りしやすく、噛もうとしても動いてしまう入れ歯にしかなりません。
そして、骨がなさすぎると、インプラント治療も難しくなってしまうこともあります。
骨を作るために、他のところからブロック骨を削り出して移植をするような手術になるかもしれません。
ではインプラントしよう!となっても、一苦労なのです。

ダブルテンプレートテクニック
この方は、上顎の残っている歯がグラグラすぎて抜歯が必要でした。
いきなり抜歯してインプラントを埋入することはありません。
最終的な歯の設計図を模型上で作って臨みます。
インプラントの位置付けに、コンピューター支援のガイドシステムを使います。
これはノーベルガイドと呼ばれるものです。
口腔内にはめ込み、ガイドのスリーブに沿ってドリルとインプラント埋入操作を行います。
欠損が比較的小さい症例は、作製したガイドを口腔内に装着し手術に用いるというシンプルな活用法になります。
今回のようなほとんど歯が残っていないような場合、作製したガイドが口腔内のシミュレーションした位置に留まっていて欲しいですが、
そうもいきません。歯がたくさん残っていたら、ガイドをはめ込んでもあまりがたつくことなく口腔内に留まってくれますが、
歯がない状態でインプラントを6本埋入するプランですので、何もとっかかりがない口腔内ではガイドがツルツル滑ってしまい、
シミュレーションとずれてしまいます。ガイドが所定の位置に来るように工夫が必要です。

このため、歯を抜く前の状態に合うガイド、抜歯後の口腔内に合うガイドの二つを作製して手術に臨みます。
麻酔をして、残っている歯がある状態でガイドを口腔内に位置付けます。
前方や最後方のインプラントの埋入を先に行います。
そこで1つ目のガイドの役目は終わりです。
抜歯を行い、2つ目のガイドを口腔内に装着します。
歯のとっかかりは無くなりましたが、1つ目のガイドで埋入したインプラントがありますので、
2つ目のガイドと埋入済みのインプラントをスクリューで締結します。
そうすると、全く口腔内でずれることなく2つ目のガイドを位置付けられます。
抜歯をしたエリアには、2つ目のガイドを用いてインプラント埋入を行います。


インプラント埋入後のパノラマX線写真。All on 4コンセプトの治療では、インプラント埋入時、しっかりとした初期固定を狙います。35Nというトルクをかけても、インプラントが骨内で回らない状態が、目指すところです。そのために、インプラントの先端を上顎洞や鼻腔底の皮質骨に噛み込ませて、しっかりとした初期固定を得るようにします。そのインプラントを用いて、固定式の仮歯を装着し、即日で機能回復を図るのが特徴です。


上部構造の一例。チタンのフレームに口腔内にマッチするようなピンクの歯茎部分、人工歯の部分で構成されています。


インプラントにスクリュー固定されるところがネジ穴に見えるところです。口腔内に装着されると、インプラントとインプラントの間を歯間ブラシで清掃していくことになります。


術後正面:歯茎部がある場合、必要ない場合とがあります。顎の骨がどれだけ吸収しているかによります。吸収が大きいと、人工物で補うところが大きくなります。この方の場合、すべて歯の部分にすると、異様に長い歯になってしまいますので、歯茎部分もあったほうがむしろ自然な仕上がりになります。


術後右側:適切な形に回復できています。


術後左側:左下奥の欠損にはインプラントで歯を作っています。


術後咬合面:ネジ穴にはふたがしてあります。

このように、All on 4の治療には独特の工夫が必要で、専門性が高い治療と思います。
この方のように、歯がほどんとない、全くない顎に対して固定式の歯を入れるにはどのようにするかというと、
8本くらいインプラント埋入し、前歯、奥歯にわけてブリッジを作製する、
All on4コンセプトで作製する、
ということになります。しかし、前者では治療後の長期予後が期待できる分、どうしても費用が高額になりがちです。
All on 4は、費用を抑えて早期の機能回復を図ることができ、コスパに優れた治療法と言えます。
当院のインプラント治療のページです。
 入れ歯でお困りの方、是非ご相談ください。

ホワイトニング、上下顎インプラントの治療

2023年9月12日

20代で奥歯が噛めない状態
歯の欠損の回復、歯の色が気になるという0代女性の治療例です。
欠損はインプラント、ジルコニアのブリッジ、
歯の色はホワイトニングで改善しました。

初診時はこのような状態でした。
術前正面

前歯の黄ばみ、暗い色調を気にされていました。歯の先端に近いところに茶渋のような沈着があります。

術前左側

下の奥歯がありません。上の歯が下の歯茎にあたりそうです。

術前右側

左側と同様に、下の奥がないため、歯の病的な移動が生じています。上の小臼歯にも欠損があります。

パノラマX線写真

虫歯の進行によりかみ合わせが壊れてしまっているのがわかります。歯根だけになっているところは抜歯が必要な状態。長期間虫歯で歯がない状態であったため、噛み合わせの歯が伸びてしまっています。

唾液検査で虫歯の原因を調べます
なぜ若くして虫歯がここまで進行してしまったかというと、学生時代に少しずつ歯が欠けてなくなっていったが、前歯と小臼歯まででなんとなく食事していたから、やばさがわからなかったということでした。
虫歯に感受性が高い、低いというのは個人差がありますので、食事のタイミングやケアについて聞き取りを行いました。
同時に、虫歯リスクの検査として、唾液を採取して機械で分析する、SMTを活用しました。

これは、患者さんに専用のうがいの水で10秒間うがいしてもらい、それを採取し分析する機器です。
この唾液検査でわかることは、
・虫歯菌の多さ
・唾液の緩衝能(虫歯菌の出す酸を中和する能力)
・口腔内のpH(酸性に傾く人は虫歯で歯が溶けやすい)
・歯肉の炎症度
・口臭に関するガスの多さ
です。
調べたところ、唾液の緩衝能が低く、虫歯菌が多い判定結果でした。また、ケアが1日1回3分以下のブラッシングのみで、糖分を含む飲料を長時間とってしまうという生活習慣がありました。
これらを踏まえて、担当衛生士から適切な生活習慣指導とケア用品の案内をし、生活習慣の改善に取り組んでいただきました。なんといっても、治療する期間というのは、長い人生のうち数か月です。患者さんの生活はそこから新たにスタートですから、治療後のよい状態が、虫歯の再発によって壊されないように生活習慣からよくしていく必要があります。生活スタイルに合うように、虫歯リスクを下げるケア用品を取り入れていきました。虫歯や歯を補う治療と並行して衛生指導を行いました。

歯の着色除去、クリーニング

エアフローという機械を用いて施術をします。パウダーがステインを効果的に除去して、歯面を傷つけないのです。そして、傷がつかないためきれいな状態が長期間維持できます。歯面清掃用のペーストはさまざまで、ものによっては研磨成分が強く、歯面が傷がつくおそれもあります。
メンテナンスはずっと続くので、使用する機材やペーストなどのケア用品の選定は重要です。
健康は生活習慣から作られるという意見はごもっともです。私たちが働きかけても、たとえば喫煙の習慣が歯周病を悪化させているためやめるようにできないかという話をしても、なかなか生活習慣を変えられないわけです。習慣が変えられないのでその患者さんを助けられない、のではなく、私たちが関われることや可能な手立てを講じることで、改善できないかやってみます。
それぞれの年代に響く言葉がけも重要です。
パウダーのクリーニングは、施術する衛生士もしっかりトレーニングをしています。特に痛みを感じさせないようにポイントがあります。パウダー吹き付け部が粘膜に当たらないよう注意が必要です。歯面からの跳ね返りもあり、適切にバキューム(水分やパウダーを吸引する)がないといけません。
このような場合におすすめです。
・ステインや着色が目立つ方
・ホワイトニング前のクリーニング
・いろんな材質の補綴装置が入っている方
・矯正器具が装着されている方
基本的にメンテナンスは口腔内の原因除去が終わって、感染のコントロールがある程度できている方が多いです。その患者さんの口腔内の状況、リスクに合わせてメンテナンスの器具を選択していきます。いつも同じではなく、その時、その方の必要な部位に適切なケアを行うのです。
現在の紙面清掃に用いられる機材はたくさんの種類がありますが、歯面にカップやブラシを回転させて当てて汚れを除去するものが一般的です。
 パウダーを用いたクリーニングは、用途に合わせて2種類あります。メンテナンスで用いる場合と、補綴装置装着などの前処置の場合です。どちらも、患者さんに不快感がなく、歯に優しい清掃方法です。

インプラント埋入

ノーベルバイオケアのリプレイスCCというインプラントを主に用いています。今回も臼歯にあうレギュラーサイズのものを埋入しました。
特に奥の方は、骨の密度が低かったようで、ドリルの感触から骨が柔らかい感じがありました。
しっかり待機期間をおく予定にしました。
実はこの後、患者さんが怪我で入院されてしまい、その治療が落ち着くまで歯科受診ができない状態でした。しかし、無事に復活されて、インプラントも顎の骨と結合しているのを確認しました。

ホワイトニング
ホワイトニングの薬剤を塗布し、専用の光照射を行い、歯面に作用させるのですが、その前にポリリンホワイトリキッドとスポンジを用いて歯の表面を磨きます。
高濃度の短鎖分割ポリリンを配合して専用のメラミンスポンジとセットで使用することで、歯面の汚れを高次元で取り除くことが可能です。
清掃ごは、短鎖分割ポリリン酸が歯面に吸着し、歯面保護及び、汚れの再付着防止効果もあります。
ポリリン酸ホワイトニングを導入している理由で最も大きいことは、歯科業界での口コミの良さです。以前は複数のメーカーのホワイトニング材を自分たちで試したこともありましたが、ニオイや刺激が強すぎて、術中、術後の痛みがあることが問題に感じていました。
ポリリン酸ホワイトニングの良さはその逆で、刺激や痛みを感じずに確実に白くなっていくところと、ホワイトニングしながら歯の質を強化していくところです。
日本人の歯の特性を考慮した性質で、プラチナナノコロイドを配合し、漂白時間の短縮に成功しています。EXポリリン酸を配合し、漂白効果を従来品よりも高めています。
知覚過敏にもなりくいため、継続使用できます。これは、硝酸カリウムの鎮痛効果により知覚過敏が緩和されているからです。
EXポリリン酸のイオン吸着効果(歯の表面のコーティング)で、刺激成分が歯髄に届きにくいようブロックしています。
他メーカーのホワイトニング材は、エナメル質が細かいすりガラス状になり、光がその構造にあたって白く見えるという効果がありますが、ポリリン酸はそのような歯にダメージがないところが大きいメリットと考えられます。

治療後
術後正面

気にされていた着色や黄ばみが改善し、ホワイトニングにより透明感のあるはっきりとした白さになりました。
欠損はセラミックのブリッジ、インプラントの被せ物で補っており、奥歯でしっかり噛める状態に回復できています。

術前の状態でずっと経過していたら、奥歯で噛めない分、負担が前方の歯にのしかかります。そのため、力による歯の破損、歯周組織のダメージが大きくなり、より噛み合わせが崩壊してくることが考えられました。
現在はメンテナンスで良い状態が保てるようにしています。着色が気になってきたら、パウダークリーニングやホームホワイトニングを行うようにしています。ポリリン酸ホワイトニングで、美しく丈夫な歯面にできており、汚れがつきにくいためツルッとした感触が心地よいとのこと。自信を持ってスマイルできることで、モチベーションの維持にも役立っています。