Tag Archives: インプラント、ノーベルバイオケア、ノーベルガイド、CT、インプラントの寿命、インプラントの失敗、インプラントのトラブル、手術、期間、費用

ホワイトニング、上下顎インプラントの治療

2023年9月12日

20代で奥歯が噛めない状態
歯の欠損の回復、歯の色が気になるという0代女性の治療例です。
欠損はインプラント、ジルコニアのブリッジ、
歯の色はホワイトニングで改善しました。

初診時はこのような状態でした。
術前正面

前歯の黄ばみ、暗い色調を気にされていました。歯の先端に近いところに茶渋のような沈着があります。

術前左側

下の奥歯がありません。上の歯が下の歯茎にあたりそうです。

術前右側

左側と同様に、下の奥がないため、歯の病的な移動が生じています。上の小臼歯にも欠損があります。

パノラマX線写真

虫歯の進行によりかみ合わせが壊れてしまっているのがわかります。歯根だけになっているところは抜歯が必要な状態。長期間虫歯で歯がない状態であったため、噛み合わせの歯が伸びてしまっています。

唾液検査で虫歯の原因を調べます
なぜ若くして虫歯がここまで進行してしまったかというと、学生時代に少しずつ歯が欠けてなくなっていったが、前歯と小臼歯まででなんとなく食事していたから、やばさがわからなかったということでした。
虫歯に感受性が高い、低いというのは個人差がありますので、食事のタイミングやケアについて聞き取りを行いました。
同時に、虫歯リスクの検査として、唾液を採取して機械で分析する、SMTを活用しました。

これは、患者さんに専用のうがいの水で10秒間うがいしてもらい、それを採取し分析する機器です。
この唾液検査でわかることは、
・虫歯菌の多さ
・唾液の緩衝能(虫歯菌の出す酸を中和する能力)
・口腔内のpH(酸性に傾く人は虫歯で歯が溶けやすい)
・歯肉の炎症度
・口臭に関するガスの多さ
です。
調べたところ、唾液の緩衝能が低く、虫歯菌が多い判定結果でした。また、ケアが1日1回3分以下のブラッシングのみで、糖分を含む飲料を長時間とってしまうという生活習慣がありました。
これらを踏まえて、担当衛生士から適切な生活習慣指導とケア用品の案内をし、生活習慣の改善に取り組んでいただきました。なんといっても、治療する期間というのは、長い人生のうち数か月です。患者さんの生活はそこから新たにスタートですから、治療後のよい状態が、虫歯の再発によって壊されないように生活習慣からよくしていく必要があります。生活スタイルに合うように、虫歯リスクを下げるケア用品を取り入れていきました。虫歯や歯を補う治療と並行して衛生指導を行いました。

歯の着色除去、クリーニング

エアフローという機械を用いて施術をします。パウダーがステインを効果的に除去して、歯面を傷つけないのです。そして、傷がつかないためきれいな状態が長期間維持できます。歯面清掃用のペーストはさまざまで、ものによっては研磨成分が強く、歯面が傷がつくおそれもあります。
メンテナンスはずっと続くので、使用する機材やペーストなどのケア用品の選定は重要です。
健康は生活習慣から作られるという意見はごもっともです。私たちが働きかけても、たとえば喫煙の習慣が歯周病を悪化させているためやめるようにできないかという話をしても、なかなか生活習慣を変えられないわけです。習慣が変えられないのでその患者さんを助けられない、のではなく、私たちが関われることや可能な手立てを講じることで、改善できないかやってみます。
それぞれの年代に響く言葉がけも重要です。
パウダーのクリーニングは、施術する衛生士もしっかりトレーニングをしています。特に痛みを感じさせないようにポイントがあります。パウダー吹き付け部が粘膜に当たらないよう注意が必要です。歯面からの跳ね返りもあり、適切にバキューム(水分やパウダーを吸引する)がないといけません。
このような場合におすすめです。
・ステインや着色が目立つ方
・ホワイトニング前のクリーニング
・いろんな材質の補綴装置が入っている方
・矯正器具が装着されている方
基本的にメンテナンスは口腔内の原因除去が終わって、感染のコントロールがある程度できている方が多いです。その患者さんの口腔内の状況、リスクに合わせてメンテナンスの器具を選択していきます。いつも同じではなく、その時、その方の必要な部位に適切なケアを行うのです。
現在の紙面清掃に用いられる機材はたくさんの種類がありますが、歯面にカップやブラシを回転させて当てて汚れを除去するものが一般的です。
 パウダーを用いたクリーニングは、用途に合わせて2種類あります。メンテナンスで用いる場合と、補綴装置装着などの前処置の場合です。どちらも、患者さんに不快感がなく、歯に優しい清掃方法です。

インプラント埋入

ノーベルバイオケアのリプレイスCCというインプラントを主に用いています。今回も臼歯にあうレギュラーサイズのものを埋入しました。
特に奥の方は、骨の密度が低かったようで、ドリルの感触から骨が柔らかい感じがありました。
しっかり待機期間をおく予定にしました。
実はこの後、患者さんが怪我で入院されてしまい、その治療が落ち着くまで歯科受診ができない状態でした。しかし、無事に復活されて、インプラントも顎の骨と結合しているのを確認しました。

ホワイトニング
ホワイトニングの薬剤を塗布し、専用の光照射を行い、歯面に作用させるのですが、その前にポリリンホワイトリキッドとスポンジを用いて歯の表面を磨きます。
高濃度の短鎖分割ポリリンを配合して専用のメラミンスポンジとセットで使用することで、歯面の汚れを高次元で取り除くことが可能です。
清掃ごは、短鎖分割ポリリン酸が歯面に吸着し、歯面保護及び、汚れの再付着防止効果もあります。
ポリリン酸ホワイトニングを導入している理由で最も大きいことは、歯科業界での口コミの良さです。以前は複数のメーカーのホワイトニング材を自分たちで試したこともありましたが、ニオイや刺激が強すぎて、術中、術後の痛みがあることが問題に感じていました。
ポリリン酸ホワイトニングの良さはその逆で、刺激や痛みを感じずに確実に白くなっていくところと、ホワイトニングしながら歯の質を強化していくところです。
日本人の歯の特性を考慮した性質で、プラチナナノコロイドを配合し、漂白時間の短縮に成功しています。EXポリリン酸を配合し、漂白効果を従来品よりも高めています。
知覚過敏にもなりくいため、継続使用できます。これは、硝酸カリウムの鎮痛効果により知覚過敏が緩和されているからです。
EXポリリン酸のイオン吸着効果(歯の表面のコーティング)で、刺激成分が歯髄に届きにくいようブロックしています。
他メーカーのホワイトニング材は、エナメル質が細かいすりガラス状になり、光がその構造にあたって白く見えるという効果がありますが、ポリリン酸はそのような歯にダメージがないところが大きいメリットと考えられます。

治療後
術後正面

気にされていた着色や黄ばみが改善し、ホワイトニングにより透明感のあるはっきりとした白さになりました。
欠損はセラミックのブリッジ、インプラントの被せ物で補っており、奥歯でしっかり噛める状態に回復できています。

術前の状態でずっと経過していたら、奥歯で噛めない分、負担が前方の歯にのしかかります。そのため、力による歯の破損、歯周組織のダメージが大きくなり、より噛み合わせが崩壊してくることが考えられました。
現在はメンテナンスで良い状態が保てるようにしています。着色が気になってきたら、パウダークリーニングやホームホワイトニングを行うようにしています。ポリリン酸ホワイトニングで、美しく丈夫な歯面にできており、汚れがつきにくいためツルッとした感触が心地よいとのこと。自信を持ってスマイルできることで、モチベーションの維持にも役立っています。

上顎前歯インプラント症例

2023年8月15日

左上前歯のインプラント症例
 患者さんは30代の女性で、20歳くらいに事故で前歯が折れ、根管治療と被せ物の処置をされた経緯がありました。それ以降特にトラブルなく経過していましたが、ある日前歯がぐらぐらしてきてポロッと取れてきたため来院されました。診てみると、歯根破折しており、土台の金属もろとも被せ物が脱落していました。必要な処置だっと思いますが、元々の残っている歯の部分が少なくなっており、今までなんとかもってきたのですが、いよいよ限界が来たようです。歯根の薄い部分に、金属の支柱に伝わる力が集中し、割れるべくして割れてしまったと考えられます。このままの状態ですと、再装着もできませんし、歯根派接している部位から顎骨に細菌感染と炎症が持続するため、どんどん周囲骨が吸収しなくなってきます。歯肉も受診されたとき、赤黒く腫れて、歯の周りから排膿がありました。取れた被せ物は全く装着できないため、その場で仮歯を作製し、仮づけしました。
術前正面

反対側と比較すると、歯肉の位置が下がり、赤黒い炎症がある状態になっています。

術前左側

問題の歯の歯肉が大きく下がっている要因は、歯根破折からの細菌感染、骨の炎症が生じ、骨が吸収してなくなってしまったことです。骨がなくなると、当然その部分の歯肉は下がってきます。

術前右側

歯根破折していた歯の周囲の歯は、全く治療されていない天然歯です。

このまま置いておくことで、どんどん骨が失われてしまうため、身体のためによくないですから、抜歯が妥当であると判断しました。抜歯後の歯を補う治療を検討しました。
インプラントと接着ブリッジの2つの方法でどちらにしようか迷っておられましたが、最終的には、周りの歯を一切削らないことを重要視され、インプラントによる治療を希望されました。

インプラント治療前の追加検査
CT撮影を行いました。

 歯根破折しており、歯肉より深い部位に虫歯の進行もありました。根が問題ない状態と違い、歯周組織が炎症により破壊されています。唇側の骨が吸収してなくなっていました。
 私たちアジア人の骨格の特徴として、もともと頬側、唇側の骨の厚みが少ないことが挙げられます。個人差はありますが、私たちもCT画像を見て、唇側の骨に厚みがある患者さんに出会ったことがありません。健康的な状態でもそうなので、炎症がある場合は、唇側の骨は消失しているか、あっても部分的に1mmあるかないかです。そして、歯肉も退縮していますので、単にインプラント埋入をするだけでは大きく歯肉の位置が下がってしまい、とても長く不自然な歯になってしまいます。

最終的な上部構造から逆算したインプラントの位置づけ
 他の投稿にも含まれますが、インプラント治療はトップダウントリートメントと言って、最終的な上部構造(被せもの)の設計図があり、そこから逆算してインプラント埋入の位置を決めるというやり方をします。骨があるところに入れて、あとは被せ物をそこから立ち上げて作る、となりますと、歯の列から逸脱した位置から歯が作られたり、噛み合うはずの歯と噛み合わない状態になりかねません。最終的な上部構造の形と位置が決められて、そこに合うような位置に埋入するには、どのようにしたらよいかを検討します。そこに顎の骨が十分あるならば、あまり悩むことはありません。インプラントを位置付けるのに十分な骨がなければ、骨を作る、またはインプラントのサイズや角度を修正して実現できないか考えます。
 最終的な上部構造の設計図は、患者さんの歯型をとって、石膏模型を作ることから始まります。シリコンの印象材を用いて精密な型とりをします。石膏模型上で最終的な上部構造をワックスで整形し、機械をスキャンしてデータ化しますノーベルバイオケアのソフト上で、そのデータとCTデータを重ね合わせて、インプラントの位置のプランニングをします。このソフトが非常に臨床上のポイントを踏まえて操作しやすく、よい治療結果につながるように思います。開院してからすぐ使い始めました。最初は慣れませんでした。大ベテランのインプラントが得意な先生方が、「ガイドはいいかもしれないが、ソフトに抵抗がある」とおっしゃられていたことがありましたが、なるほどと思いました。フリーハンドでのインプラントオペ歴が長いほど、それまでの経験を頼りに手術される方が手間がかかりませんし、新たにソフトの操作を覚えていくのは抵抗あると思います。私自身、勤務医時代にフリーハンドで見事な手術をされている先生を目の当たりにしたことがあります。私はそのような特殊感覚を持ち合わせていませんし、 ノーベルバイオケア社のガイドシステムを使うことによる臨床上のメリットが大きいと判断し、導入しています。やはり、インプラントメーカーは多くありますが、世界No.1シェアということと、臨床データの蓄積が長期にあり、信頼できることが導入している理由です。
 
 CTデータとワックスアップのデータを用いてインプラントのプランニングが終わりました。そこで初めてノーベルバイオケア社にノーベルガイドの発注が可能となります。オーダーしたら、1週間程度でクリニックにノーベルガイドが届きます。
 一旦患者さんのお口の中にガイドを合わせます。ガイドは機械で作成されますので、口腔内に適さないバリが残っていたりしますので、手術の前に合わせて確認し、必要な調整をします。もし口腔内で少しでもかたつくようでしたら、ガイドの意味が全くなくなりますので、再製作の必要があります。その場合は、元々の型取りやCT撮影時のエラーが考えられます。そこで治療が数週間ストップしかねないので、作製時のあらゆる工程を注意して進めます。

抜歯即時埋入>
 前歯の問題のある歯根を抜歯し、そのままにしておくと、もともと薄い上顎の骨が全くなくなって、大規模な骨造成をしないとインプラント埋入ができなくなってしまいます。今回の症例も同じで、抜歯しての骨の治りを3〜4ヶ月くらい待ってから埋入すると、大変難しい状況になります。
 そういう理由で、抜歯とインプラント埋入を同時に行うやり方をとります。抜歯し、歯根周囲にある炎症のある組織を除去し、薄い唇側の骨をできるだけ壊さないように操作します。埋入は準備したガイドを用いて行います。フリーハンドでドリリング、埋入をしようとすると、どうしても骨のない唇側に器具が持っていかれてしまい、シミュレーーション通りの手術にはなりません。唇側に寄ってインプラント埋入がなされると、最終的な上部構造の固定が問題が出てきます。私たちはインプラントの上部構造を基本的にスクリュー固定にしています。理由は、どんなに注意しても、上部構造をセメント固定したら余剰セメントの取り残し問題が発生するからです。余剰セメントがインプラント周囲炎の原因となってしまうと残念ですので、清掃性や長期予後の観点、メンテナンスのしやすさを考慮し、セメント固定をします。前歯の領域で、インプラントの位置や角度が唇側に傾いてしまうと、唇側にネジ穴が見えてくることになりますので、必然的にセメント固定になってしまいます。角度つきの土台(アバットメント)を用いるにしても限度がありますので、やはり、インプラントの位置付けをコンピューター支援のシステムを用いて行うメリットは大きいです。

術後CT

このように、フリーハンドでは不可能なシミュレーション通りの位置にインプラント埋入ができております。

術後正面

自然な歯冠形態と歯肉形態になっています。

術後左側

近くで見ても、天然の歯があった頃と変わらない仕上がりです。

術後右側

このように自然な仕上がりのためには、実はインプラントの位置付けが最も重要であり、そこから立ち上がった上部構造が自然な歯肉形態を支えているのです。

当院のインプラント治療のページは

こちら

です。動画もありますのでぜひご覧ください。

 

下顎前歯と奥歯のインプラント治療

2023年8月13日

 私たちは年間100本以上のインプラント埋入手術をしており、そのほとんどのケースでノーベルガイドのシステムを使用しています。ノーベルガイドを使用するのは、安心、安全で長期的な予後が良いインプラント治療を実現するためです。

 今回は、下顎前歯と奥歯のインプラント治療例を通じて、どのように治療を進めていくかまとめました。ノーベルガイドのようなコンピューター支援のシステムをどのように活用しているか、見ていきましょう。

資料とり、診断、インプラントのプランニング
  当院を受診された方はまずはお口の資料取りをし、診断と治療計画を立てます。口腔内写真、パノラマX線写真、歯周組織検査を行います。インプラント治療を検討されている方には、CT撮影で骨の状態を3次元で精察します。CTは平面のレントゲン画像と異なり、骨の奥行きや重要な身体の器官との距離を計測することができます。歯を失ったところの骨にインプラントを埋入しますが、そもそも骨がないことが多いです。歯を失う原因は、若年者は虫歯、高齢者は歯周病の割合が多くなります。抜歯に至る虫歯は、重症ですので、顎の骨への細菌感染と骨の炎症が進んでいます。抜歯に至るような歯周病も重症ですので、歯根の半分以上の骨が失われている状態ですから、抜歯後には大体骨が残っていません。その残っている骨の中にどのようにインプラントを位置付けるのかは、骨を様々な方向からみる画像診断が必要です。
 ノーベルガイドはいきなり出来上がりません。まずは、精密なお口の型取りをします。それを元に技工の先生にワックスアップを作製してもらいます。
右下奥歯

左下前歯

石膏模型の色がついている部分がワックスで作られた歯です。最終的な歯は、噛み合う反対の顎の歯との位置関係、周りの歯列との調和が取れた理想的な位置に作っていきたいので、模型上でゴールを決めます。こちらの模型の形態をスキャナーで読み込んで私たちのクリニックにデータが届きます。
 撮影したCTデータと、ワックスアップのデータをノーベルバイオケア社のソフトに取り込みます。最終的な歯の位置になるように、インプラントを位置付けるプランニングをします。位置やインプラントのサイズが決まったら、ノーベルバイオケア社にノーベルガイドを発注します。
右下奥歯:周囲の骨が豊富に残存しています。

左下前歯:歯根破折の影響で、周囲の骨の炎症が進み、インプラントを完全に骨内に位置付けることが不可能です。

このような場合、抜歯とインプラント埋入と同時に骨造成を行い、インプラント周囲にしっかり骨ができるような追加の処置を併用します。

クリニックに届くノーベルガイドはこのようなものです。半透明のマウスピースに似た形で、歯と歯茎にピッタリ適合するよう作られています。手術前に口腔内に合わせて、歯肉に当たってしまうようなところがあれば調整します。


金属の筒の部分がインプラント埋入部位です。こちらの筒の部分に沿ってインプラントが入るように骨を整形し、インプラント埋入もこの筒に沿って行います。

術後:右下奥歯

術後:左下前歯

このように事前のシミュレーション通りに埋入ができています。最終的な上部構造から導かれた理想的な位置にインプラントがあります。これをガイドなしにできないのか、というと寸分の狂いもなく位置付けることは不可能と考えられます。
 今回の症例で特に注意が必要なことは、まず左下前歯の部分で言うと、唇側の骨が大きく吸収してなくなっていることです。元々歯があったところは、歯の根が割れて菌の感染が生じていたため骨が吸収してしまい、インプラント埋入ができません。宙に浮いた状態になってしまいます。インプラント埋入する際、骨が全くないところにインプラントをポンと置いたところで、組織内で動いてしまいますし、全く骨との結合がなされないのです。今回は、長めのサイズのインプラントを選択し、吸収が生じた部分よりもさらに深い位置に、インプラントの先端が食い込むようにしています。インプラントの角度も、歯にかかる力のバランスと審美面を考慮しこのようにしました。この角度をフリーハンドでドンピシャの角度にコントロールすることは不可能です。唇側には骨がないため、ドリルで骨を形成する際に唇側にドリルが流れてしまい、ドリリングできたと思ったら、とんでもない方向にインプラントが埋入されることになります。術者は、患者さんが水平に寝た状態で、斜め上から口腔内を見ますので、CT画像上だけでイメージした通りの施術をすることができません。インプラントのこの角度がたとえば5度唇側に傾いてしまったら、全く理想的な歯にはなりません。唇側に大きく傾いた歯が出来上がります。ガイドがあるからこそ、このような操作が可能となります。
 そして、埋入ができた後に骨のボリュームがどうしても足りていませんので、人工のカルシウムの材料を用いて骨造成を行い、患者さん自身の骨組織とインプラントが結合する治癒期間を置きます。
 右下奥歯のインプラント埋入では、下顎骨の施術ならではの注意点があります。下顎には喉の奥の方から神経や血管が入っている下顎管という構造があります。奥の方から歯の根の下数ミリくらいの位置を通り、歯列の真ん中あたり、前から数えて4番目の歯の頬側で顎骨の外に出てきます。インプラント治療の際のドリルやインプラント体が下顎管の構造を少しでも傷害してしまったら、出血や神経麻痺の問題が生じます。下顎の施術の際は常に、この身体の重要な器官から安全域を確保しておく必要があります。ノーベルバイオケア社のソフト上で、下顎管との安全域を確認した上でシミュレーションを作っています。それを活かしてガイドを作製しています。ガイドに沿ってドリリングを行う際は、絶対的な安心感があります。

インプラントの失敗の原因とは
 手術中のトラブルとしては。上記のような神経、血管の傷害が挙げられます。これらは、事前のCTによる画像診断やガイドにより回避することができます。手術中や術後の感染も失敗の原因の一つです。どの歯科医院でも、侵襲の大きい外科処置は特に滅菌の環境下で行いますので、術中は問題ないと考えられます。術後は、管理や自宅でのケアにも影響されます。
 喫煙はこのような外科処置の成否に大きく影響があります。喫煙により血流の問題が生じます。インプラント手術の侵襲は、骨造成の有無や埋入本数、切開・剥離の程度で異なります。術後が比較的楽なのは、フラップレス手術といって、インプラントの直径分4〜5mm程度歯肉に穴をあけて行うものです。侵襲が大きい手術は、サイナスリフトや大規模な骨造成を併用した場合です。喫煙は術後管理やインプラントの上部構造が入った後も、長期予後に良くない影響があります。喫煙されている方のコンプライアンスの問題もあります。
「こういう手術を予定していますので、〇〇日間は禁煙でお願いします」
「先生、わかりました」
診療室でこんなやりとりをして、クリニックを出た瞬間タバコに火をつけている姿を目撃された、という患者さんもおられました。笑い話のようですが、患者さんの喫煙問題は無くなりません。
 インプラントの位置異常の問題は大きいです。このノーベルバイオケア社のガイドシステムにより、フリーハンドの手術ではなしえない精密なインプラント手術が行えます。力のバランスや清掃性の良い上部構造は、インプラントの位置が適切だからこそ作製可能となります。理想的な上部構造から逆算してインプラント埋入を行う、このようなトップダウントリートメントと言われるやり方が必要不可欠であり、ノーベルガイドのテクノロジーを用いることで実現可能となります。
 私たちのインプラント治療の流れはこのようになっております。

治療説明動画

ぜひ一度、お問合せください。