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子供の口腔機能の発達

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お子さんのお口周りの発達についてのトピックです。

 

口周りの癖が原因で治療対象となったケース

 

 


上唇を噛む癖があるお子さん:上唇を口の中に巻き込むように遊ぶ癖があったために、上の前歯が内側へ傾斜して受け口になっています。



小児矯正と口周りの筋機能訓練を行います。親御さんにも、矯正治療のマウスピースの取り扱い、お子さんのフォローをお願いしながらすすめます。


4ヶ月で正常咬合に変わりました。

 

⚫️子どもの口腔機能の発達

 

—離乳の準備期—
●原始反射

 

乳児は、出生直後からみられる原始反射によむて哺乳を行うことで栄養を摂取します。また、原始反射が出現している時期では、口唇、舌、顎などの口腔諸器官の一体動作により哺乳動作が行なわれています。これらは乳児自身の意思とは関係なく、不随運動で行われます。
乳児の時期は、口を開口させて乳首を取り込み、舌を下唇の上に置きながら舌の蠕動様の動きで乳汁を摂り取り込む、このときの口蓋には、「吸啜窩」という乳首がちょうど安定するようなくぼみがある。

・原始反射・・・乳児に備わっている、特有の刺激に応えて示す中枢神経系由来の反射行動。

 

●指しゃぶり・おもちゃしゃぶり

 

多くの乳児は,生後2カ月ごろから随意的に指しゃりを始めますが。手指の発達によって徐々にしゃぶりは減少していきます。さらに,4カ月ごろこなると上肢と手指の発達に伴い,おもちゃなどをロこもっていく行動(おもちゃしゃぶり)がみられはじめます。指しゃぶりやおもちゃしゃぶりによりさまざまな物性が口腔内に入ることで、口唇,舌,顎を随意的に動かすようになり、「原始反射を消失させて離乳食を開始するための準備運動」としても重要な行動と考えられています。そのため,離乳食開始時期に保護者から「離乳食をベロで押し出して食べてくれないんです」「うまく食べ物を喉のほうにもっていけないみたいなんです」というような質問があったときには,原始反射の残存を確認したり、指しゃぶりやおもちゃしゃぶりをしているか(あるいは,していたか)を確認しています。

 

 

—離乳期以降—

 

原始反射は、おおよそ離乳食を開始する5〜6カ月ごろには消失していきます。このころから身体の成長、発育が著しくなるとともに、摂食機能の獲得にもさまざまな変化がみられるため。
問診,観察を細かく行う必要性があります。離乳食が始まったら、歯の萌出程度と併せて口腔の形態、口腔機能の獲得をみていきます。
いずれの段階においても発達の程度には個人差が大きく、子どものもつ意欲によっても左右される場合があります。発達を促すためには、次に獲得する機能がすこしみえはじめた時点で次のステップにチャレンジし、学習するということも重要です。
しかし、あまり急ぎすぎても子どもがついていけなくなるため、保護者こ方は「自分の子はほかの子より遅れている」という不安になると思いますが、子どもの口腔発達には個人差があること忘れずに急がず発達段階を踏まえたアプローチをしていきましょう 。

 

⚫️子どもの口腔習癖
—指しゃぶり—

 

「指しゃぶり」は、授乳期の乳児には大切な行為であり,幼児期になってもおよそ20~40%にみられる生理的なものです、この指しゃぶりは、お母さんのお腹の中にいる胎生15〜20週から始まっています。そして、乳児は出生後。2~3カ月かけて自分の指を口にもっていけるようになり。盛んに指しゃぶりを行うようになります。このころは原始反射である哺乳反射が優位ですので,指しゃぶりも反射の動きで行われています。しかし,やがて大脳上位の発達がなされるとともに、哺乳反射が消えていくため。
徐々に随意的な動きに変わっていきます。また、哺乳反射の消失に伴い、5~6カ月ごろには哺乳機能から摂食機能へ移行していきます。
指しゃぶりは哺乳に通じる行為であり、心理的満足感や情緒の安定にもつながると考えられています。乳児は、はじめのうちは感覚の発達した器官である口への刺激として指しゃぶりを盛んに行っていますが、やがて1歳を過ぎてひとり歩きができるようになると、ほかに興味が広がり、徐々に指しゃぶりがなくなっていくことが多いようです.
これらのことを考えると、5カ月ぐらいのお子さんの指しゃぶりはまだやめさせる必要はありません。むしろ、口の機能や情緒の発達にとっては大切な行為ですから。無理にやめさせるのは逆効果になる恐れがあります。指しゃぶりが歯並びに影響してくるのは乳歯が萌出してからであり、遅くとも4歳までにやめれば後の歯並びに影響はないというのが一般的な見解です。
もし4歳以降~学童期にかけても指しゃぶりを行っている場合には、口腔機能や顎顔面の形態への影響が深刻になります。しかし、この時期においても指しゃぶりを行っているということは、生活環境や社会環境などの影響。心理的な問題など、多くの要素が関係していると考えられます.その行為だけに目を向けても解決することは難しく、小児科医や小児歯科医、矯正歯科医,言語聴覚士,臨床心理士など、専門職からの支援が必要です。

・哺乳反射・・・一連の乳汁摂取のために反射運動、胎生期の後半には獲得される原始反射であり、探索反射.口唇反射.呼吸反射.咬反射がある。

 

—口呼吸—

 

口呼吸の関連因子は多様ですが、幼少時の指しゃぶりが長期化することにより上顎前突や開咬が引き起こされ、その結果として口唇閉鎖不全が起こり、口呼吸となる可能性も指摘されています。全身への影響としては、鼻腔を通じた加温・加湿や防塵機能が働かないため呼吸器系の粘膜保護が作用せず、風邪などの感染症に罹りやすくなります。また、口呼吸の子どもでは下顎と舌が下行して顔面が上向きになり、頭部が前へ出るような不良姿勢になりやすいという報告もあります 。
このように、口呼吸は口腔顔面のみならず全身にも影響を及ぼす可能性がありますが、どのように対応したらよいでしょうか?耳鼻科疾患がある場合は、まずその治療が最優先でしょう.鼻呼吸を促すためにも,鼻孔の通過をよくしておく必要があります。もし、耳鼻科疾患がなく、ほかに口唇閉鎖を阻害する因子(筋緊張を低下させるような薬の服用等)がなけれは、口唇閉鎖力をつけるトレーニングや、鼻呼吸を促すトレーニングを行いましょう。
「口を閉じて!」と注意することも必要ですが、あまり言いすぎるとかえって逆効果になることがあります。すでに上顎前突になってしまっていたり。口輪筋の筋力が弱かったりする場合には、「口で言われて頭でわかっていてもできない!」という状況だからです。本人の負担にならないよう自覚させながら。楽しんでできるトレーニングプログラムを立てていきましょう!

 

—離乳食を嫌がる—
●離乳食開始の時期

 

離乳食は、首の座りがしっかりしている,支えてあげると座れる、食べ物に興味を示す、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなるなど、子どもの育ちをみて開始します。離乳食を始めてみたものの。まだ身体や口や心の準備が整っていなしために食べることを嫌がってしまうことがあります。

 

●食べる機能の育ちと離乳食の固さのずれ

 

舌や顎の動かし方の発達に伴って、食べることのできる固さが変わってきます。そのため、食べる機能の育ちと食べ物の固さがずれていると,離乳食を嫌がる原因になることがあります。保護者には、調理した離乳食を子どもに食べさせる前に,自身の舌を使って試食するようにしてみましょう。さらに,子どもが食べているときの口元の動きを観察し、発達とそれに合った離乳食の固さにしましょう。食べる機能の育ちに合った固さにすることで食べやすくねります。

 

 

●食への興味を伸ばす

 

何にでも興味津々の子どもは、食べることにもワクワクしています。見た目や匂いに興味をもつだけでなく、”触ってみたい”とも感じていますが、手が器用になる以前の、微妙な力加減が難しい時期には、ほとんどの食材はグチャ、とつぶれてしまいます。そこでテーブルや服や床が汚れてしまうため、保護者がつい先まわりして食べ物に触れないように手の届かないところに避けたり、汚さないよう注意したりしてしまうことがあります.手づかみでのかじりとりは自食のスタートとして、手の経験だけでなく、手と口の動きの連動を学習するためにも必要であることですので、触れるための食材を準備するなど、十分に手づかみ食べを経験させるようにしましょう。

 

—あまり食べない—

 

保護者のなかには、「子どもが離乳食をあまり食べない」という悩みをもっている方がいますがまずは、食べる機能と食べ物の形態が合っているかを確認しましょう 。
食欲や食べる量の差は、体格.性格.体力などによる個人差もあります。そのときの体調(眠い.空腹でない.便秘.疲れているなど)、好き嫌い(新しいものが苦手、味,形態など)などさまざまな要因が考えられます。特に、離乳食の時期は、本人が気持ちを言葉で伝えることはできないので、なぜ食べないのかがわからず保護者が悩んでしまうことも多くあるでしょう。量だけにとらわれず、総合的な判断が必要です。
子どもの身体的な発育については成長曲線を確認し、問題がないようであれば、焦らず見守るようにしましょう。

お子さんの気になるお口についての相談はお気軽にこちらからお願いいたします。

小児矯正のメリット

2023年8月8日

歯並びの問題
昔と比べると、虫歯自体は減少傾向にあり、歯並びの問題は増えています。顎は現代の食生活を送る上でそんなに発達しなくても良くなり、歯が生えるスペースが狭くなっているためです。
 また、普段の生活の中で、正しい口唇と舌の動きができていないために、歯並びが乱れてしまう場合も多いです。

お子さんの治療例
 3歳1ヶ月でこの状態でした。

受け口で、食事の際の唇と舌の動きにも問題がありました。下唇で上唇を巻き込むような食事の取り方で、筋肉の動きとバランスの不調が認められました。歯並びが乱れてしまう原因として、口唇による外からの圧力、舌による内側からの圧力が適切でないため、受け口になってきたと考えられます。矯正装置と、筋肉の働きを正常にしていく訓練を行いました。

4ヶ月後

受け口の改善が認められます。筋肉の機能訓練と矯正装置の併用で、適切な舌と口唇の動きになるよう修正をしていきました。食事の際も、以前の癖が取れて、自然な筋肉の動きになるように変わってきました。

当院の小児歯科矯正治療については、こちらをご覧ください。大きく分けて2種類の矯正治療の方法がございます。

私たちの導入している矯正装置は、お子さんご自身で取り外し可能なものです。お子さんの矯正治療は、親御さんの協力なくしては成り立ちません。1日のうち、矯正器具を装着するタイミングと時間は装置により異なりますが、装着ができなければ何の効果も得られません。きちんと装着できれば、治療効果が得られる以外に、歯につけっぱなしの矯正器具と異なり、食事や清掃しやすいという大きいメリットがあります。

口唇や舌は柔らかいため、それらがしっかり生えている歯を動かすような影響があるのかと驚かれる患者さんは多いです。歯の移動は意外と簡単に生じるものです。無意識のうちにしていることで、
・舌先で歯と歯の間を触ってしまう
・口がぽかんと開いている
・頬杖
・片側のみで噛む癖
・うつ伏せ寝
などございませんか?これらは実は歯並びを乱す良くない習慣なのです。外からの力、手や机、枕などから持続的に力がかかることにより、その側の歯列が押されてへこんでくる変化が生じます。(すぐではありませんが)
 舌が無意識のうちに特定の場所を触ってしまうと、歯と歯の間が開いてきたり、傾斜が生じたりします。あの柔らかい舌が硬い歯を押して動かすような力を発揮してしまうのです。

歯並びが良いと老後も健康!

 健康的に老いていくことは誰しも望んでいることです。一番いいのは、ずーっと心身ともに健康であり続け、活動的に日々暮らしながら歳を重ねていき、ある日眠るように息を引き取る、天寿を全うするというイメージです。これが所謂ピンピンコロリ(PPK)ですね。私たちも今からピンピンコロリを目指してできる範囲で健康管理に取り組んでおります。具体的には、訳のわからないもの、身体にあまり良くないものはほどほどにしておくこと、食べ過ぎない、普段から運動する習慣形成、しっかり眠ることです。世の中には健康に良いとされる情報が溢れています。例えば牛乳が身体にいいという意見、それと真反対の意見もありますよね。さまざまな健康情報も、その人ごとに合う、合わないが違うでしょうし、自分に合った健康管理法を実践していきたいものです。
 しかし、多くの人は普段の健康へのありがたみはなく、病気がないのが当たり前に思っているようです。そのため、病気にならないために予防していくという意識は低く、病気になってからの事後対応がほとんどであります。その証拠に、我が国では80%の方が病院で亡くなっています。
 50%の人が自分は病院で死んでいっていいと思っています。人生の最後の段階で、不健康な期間が男性で9年、女性で12年もあります。では何歳まで生きたいかについてはどうでしょう。男性で80歳、女性で73歳まででいいというアンケート結果があるようです。果たして不健康なまま人生を終えて良いのでしょうか。
 死ぬ時に後悔することで何か多いかというと、健康を大切にしてこなかったということ、美味しいものを食べておかなかったことが挙げられるようです。お口の健康を守り、病気を予防してこなければ、高齢になるにつれ口腔内の状況は悪化してしまいます。それを回避し、できるだけ病気にならないよう予防をして良い状態を保つことが重要です。

歯並びと健康寿命との関係
1989年から厚生省と歯科医師会により推進されている8020運動というものがあります。80歳の時点で20本の歯が残っているようにすることで、噛める状態を維持し、健康寿命を伸ばそうという狙いがあります。前歯から一般的に生えそろっている奥歯まで、上下左右合わせて28本なんですが、8本無くなっても健康的に噛めるかというと、正直歯の欠損の場所によります。例えば上顎は歯が14本全て揃っており、下顎が6本でも8020達成ということになりますが、下顎が6本しかなかったら全然噛めないと思います。このようなツッコミはさておき、8020達成されている方の割合は年々増えておられます。昨年のデータではその割合は51.6%とのこと。その中で、歯並びや噛み合わせの状態を調べた興味深い統計があります。

出っ歯、受け口
 まず、前歯の問題のある歯並びについて、簡単に分類すると
①上顎前突(上の前歯が出ている出っ歯)

②反対咬合(下が出ている受け口)

の3つです。8020達成の方のうち、どのような割合かというと、
・正常:84.6%
・上顎前突:15.4%
・反対咬合0%
です。

前歯が噛み込みすぎ、または奥歯しか当たっていない噛み合わせ
 出っ歯、受け口よりも一般的に分かりづらいですが、これらも問題がある歯並びです。
①過蓋咬合

噛み合わせると、下の歯が全く見えないほど深く噛み込んでいる状態。顎の動きが阻害されてしまい、将来的に奥歯の負担が大きくなり失われる、顎関節症になるリスクが高いです。

②開咬

どのように噛み合わせても奥歯しか噛み合わないため、奥歯に力がかかりすぎて歯を失う、顎関節症になる、前歯で噛みきれず食事が取りづらい、口呼吸で口臭や感染症のトラブルが多いなどデメリットが多いです。

8020達成した方の割合は、
・正常:86.5%
・過蓋咬合:13.5%
・開咬:0%
です。

歯並びを良くしておくと・・・
 これらのことをまとめると、歯並びや噛み合わせを整えておくことで、結果的に8020を達成しやすく、健康寿命の延長!ピンピンコロリもいける!ということがわかります。可能ならば、人生の早い段階で治しておきたいこれらの歯並びの問題。特に子供の時期に適切なタイミングで適切な治療介入すると、成人矯正よりも治療の費用や期間がマシになることが本当に多いです。
 また、将来的なむし歯や歯周病のリスクを減らせるというメリットが大きいです。お子さんの時点で中高年、高齢になった将来像を想像しにくいとは思いますが、実際診療室で診させていただく方で、出っ歯や受け口のお年寄りの方は少ないです。もともとある歯から、大きい入れ歯やブリッジ、またはインプラントに変わっています。理由は、それまでの人生のどこかのタイミングで、歯を失ってしまうからです。毎回のお手入れがしにくい歯並びや力の負担が大きい噛み合わせだと、健康的な口腔内を保つのが困難になってしまいます。矯正治療により、若い段階で健康的な歯並びに整えておくのは、このようなメリットが大きいと考えられます。