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お子さんの食べ方、気になることはありませんか?

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

小児の患者さんの、口腔機能についてのトピックです。
ご家庭でお食事される時、ふとした時、
「よく見たらうちの子、食事中の癖が強いな」
「いつも口がポカンって開いてる」
「舌がよく出てる」
「食事でよく噛めてないようで、時間がかかる」
「他のお友達と比べて、永久歯の生え変わりが進んでないな」
と気づかれることがあるかもしれません。
実は、それらはお口の発達不全につながっているのです。

 

リットレメーター

 


お口がよく開いているお子さんの、口唇閉鎖機能を検査するリットレメーター:マウスピースを唇で保持してもらい、どのくらいまで引っ張れるかテストをします。診断の一つの根拠になります。実は口が常に開いていると、口臭がキツくなる、虫歯や歯肉炎が悪化しやすい、アレルギーになりやすいなどよくないことにつながります。

 

⚫️食べることの問題

 

—噛まない—
①歯は生えそろっているか?

 

食べ物を噛んで食べるには、臼歯の咬み合わせが重要です。摂食機能の発達から事例をみると,通常2歳であれば咀嚼機能は獲得されていますが,歯の萌出状態によっては繊維の多い野菜や肉、かまぼこなどの練り製品は咀嚼しきれずに口の中に残ってしまう場合があります。そうすると,丸のみや口から出してしまうといった行動につながりやすくなります。萌出前の歯肉しかない時期や生えはじめの時期、また永久歯への交換の時期には、食事のメニューの選択の配慮が必要です。

 

②弱い力でもすりつぶせるか?

 

咀嚼機能の発達にも個人差があり、2歳でもまだ十分に機能が育っていない可能性があります。口の動きを観察し、「左右の口角は非対称に動いているか」「噛んでいる顎のほうに、口唇や顎は引っ張られているか」「舌は横に動いているか」を確認します。
これらができていなければ、まだ咀嚼機能が十分に育っていない可能性があります。


小児の方に、というわけではないですが、咀嚼能力を検査する機器がこちらです。検査用のグミを噛んでもらい、どの程度噛み砕けたか、センサーで確認できるものです。歯を失って機能に影響が出ている方の診断と、治療後の咀嚼機能を評価する基準に用いられます。

 

③かじりとりはできるか?

 

咀嚼するためには、まず自分の前歯で自分の口に合った一口量をかじりとることが大切です。それによって、前歯の歯根膜に食べ物の感覚が伝わり、口に入る食べ物の固さや量を感知し、その後の咀嚼運動へとつながっていきます。逆に、前歯でかじらず口の奥にポーンと放り込むような食べ方をしていると,口の中の感覚情報が得られず、咀嚼運動が引き出されにくくなります。

 

④食べることを急かされていないか?

 

咀嚼しないことの弊害は、「丸のみ」につながることです、臼歯が生えそろい、咀嚼機能が獲得されているにもかかわらずあまり噛まない場合。環境に原因があることも多いようです。「急いで食べなさい」などと急かされていたり、あるいは兄弟や姉妹と争うように食べていたりなど、早食いせざるをえないような環境にあるのかもしれません。早食いが定着すると窒息事故にもつながる恐れがあります。心身ともにリラックスして食事ができる環境を整えてあげることが大切です。
また。食べるのが速い。噛む回数が少ないことは、肥満の原因となります。よく噛むことは食べ物のおいしさを引き出し。消化吸収を助け、満腹中枢に作用して満腹感を得ることにつながります。子どものころからしっかり噛んで食べる習慣をつけ、生活習慣病にならないように指導しましょう。
※正常な咀嚼機能の見方
①咀嚼しているほうへ口唇.顎.舌が寄るのがみ
られる。
②歯の上の食べ物を舌と頬で支えている。

 

—口に溜めて飲み込まない—
①口の機能の発育段階と食べ物の形・固さは合っているか?

 

「食べる意欲はありそうなのに、口に溜めたまま飲み込まない」…..そのような場合は、食べ物の形・固さが摂食機能の発達段階に合っていない可能性があります。たとえば、小学校入学前の6歳では、咀嚼機能も十分に育ち、第一乳臼歯の萌出とともに咀嚼の力は強くなりますが、まだ大人と同じくらいの力までは身についておらず、固い食べ物を何でも食べられるわけではありません。同時に、前歯の交換も始まるため、前歯が動揺していたり、抜けていたりすることから、かじりとりができない時期でもあります。その結果として、口の中の食べ物をうまく飲み込めずに、口に溜めたままになってしまうことも考えられます。このような時期に摂食機能に合わない固い食べ物ばかり食べさせていると、口に溜めたままになってしまうか,あるいは無理に丸のみする癖がついてしまいます。子どものそのときどきの口の環境や摂食機能の状態に合わせて、食べられる形・固さの食べ物を与え、すこしずつ機能を伸ばしていくようにします。
※摂食機能の発育段階に適さない形・固さの食べ物を与えると、正常な摂食が困難になってしまいます。

 

②食べる意欲はあるか?生活は乱れていないか?

 

子どもは同じ年齢でも個人差が大きく、食欲もまちまちです。食欲旺盛な子もいれば、小食の子もいます。子どもが小食の場合,親は「ちゃんと栄養が摂れているのかしら?」と心配しがちです。そうすると。「もっと食べなさい」と食事の量を増やしたり、追いかけ回して食べさせようとしたりしてしまい。子どもにとっては食事が苦しいものになっている可能性があります。また,間食(おやつ)やジュースを摂る量が多くなっている場合は、つねに満腹で食べる意欲も育ちません。それでも食べなくてはいけない状況になると,結果的に「口に溜めたまま飲み込まない」ということになってしまいます。
外遊びや友だちとの遊びをとおして適度に運動をさせ、自然に空腹感を味わえるような生活リズムをつくることも大切です。

 

—食べるときに舌がいつも出る—
①嚥下はきちんとできているか?

 

口が開きっぱなしで,の嚥下時に舌が出るということは、まだ「乳児の下」をしていると考えられます。通常、離乳食が開始された5~6カ月ころには、口を閉じての下する「成人の下」が獲得されますが、哺乳を継続しているお子さんだと、舌の使い方が哺乳のときのまま残ってしまうことがあります。その場合,まずは哺乳瓶をやめて、水分をスプーンやコップから飲むように促していきます。もし、哺乳瓶の使用をやめてしばらく経っても乳児嚥下が改善されなければ、成人嚥下を覚えてもらう練習が必要かもしれません。その場合,口唇と顎をしっかり閉じた状態での嚥下できるよう、お母さんなどの指で、口唇を閉じる介助を試みるようにします。

 

②口唇の力はあるか? いつも口が開いたままか?

 

咀嚼の動きはできているようなので、幼児食程度の固さのものでも食べられるかもしれません。しかし,口を閉じるための筋肉,特に口輪筋が低緊張であるといつも口が開きっぱなしになり、そのためにの下時に舌が出てしまう可能性もあります。また、鼻炎などで鼻から呼吸ができない場合は口呼吸となりますので、やはり口が開きっぱなしとなり、安静時の筋肉の緊張度にも影響が出てしまいます。


「うちの子、いつも口開いてるんです」というお話は、診療室でよく聞きます。お口や顔面の成長は、生まれた時からの授乳をどうしていくか、から考える必要があります。母乳が可能な場合は、赤ちゃんが顔を真っ赤にしておっぱいを飲む、この行為自体に非常に意味があります。一生懸命吸っていくことにより、骨が正常に成長していきます。
よくないのは、小さい力で飲みやすいようにと哺乳瓶の吸い口を大きくすることです。楽に飲めるようにと考慮されたものかもしれませんが、発育にとっては逆効果のものなので、使用されない方が良いです。

 

③食べ物は咀幅機能に合っているか?

 

「咀嚼はできるけれど舌を出しての下してしまう」・・・・・・このような場合、いったいどのような食べ物が合っているのでしょうか、ここで大切なのは「咀嚼の動きがどこまでできているのか」ということです。咀嚼の動きというのは、顎や舌が側方に動くことだけを指すのではありません。顎や舌とともに口唇や頰も上手に協調させながら、奥歯で食べ物を十分にすりつぶし,唾液と混ぜ、そして舌の上で一塊にすることができなければ、上手には飲み込めません。したがって、咀嚼しきれない食べ物を飲み込もうとするために、舌が出てしまっている可能性が考えられます.そのような場合は、咀嚼機能に食べ物が合っていない (食べ物が固すぎる)可能性が高いので、咀嚼できる軟らかいものに変えていくようにしましょう同時に、舌を出さずに嚥下する機能を獲得するためにのアプローチを行っていきます。
摂食機能の発達には、ある程度順番があります。しかしときには,この順番が違ってしまうこともあります。本人の発達段階に合わせて摂食機能を促すことが原則ですが、安全面を考慮しながら、獲得している咀嚼機能を大切に育てていくことも考えていくようにしましょう。
ほかにも、食行動の問題は、齲蝕など口腔内の痛みが原因のことも考えられます。まずは口腔内にこうした器質的な問題がないかをチェックし、そのうえで機能面の対応をしていきましょう。

 

小児の口腔機能発達不全の診断基準

 

○離乳前    以下の2つ以上該当する
・お口ポカン
・小帯付着異常
・授乳時間、回数のムラ
・スプーンを押し出す癖
・離乳がすすまない

○離乳後    Aから1つ以上、Bから2つ以上該当する
A:歯の萌出の遅れ、歯列不正、偏咀嚼、虫歯があって咀嚼に影響ある、強く噛みしめられない、咀嚼時間が長すぎる
B:舌突出癖、口唇閉鎖不全、小帯の異常、舌や口唇、指吸いなどの癖あり、食べる量や回数のムラあり、構音の異常。

口腔機能発達不全に対する検査、筋機能訓練、生活習慣指導は、保険診療でも認められております。
お子さんのお口が気になったら、こちらからお気軽にご相談ください。

口腔機能、その成り立ち

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

なぜ、歯科診療室で口腔機能をみることが重要なのか?
ヒトは、どのように口腔機能を発達させるのか?
についてのお話です。


下の前歯の方が上の前歯よりも出ている、逆被蓋の状態。不正咬合の一種。

 

⚫️ヒトの口腔の発達は母胎内から始まる!

 

口は、「呼吸」と「嚥下」という,ヒトが生きていくうえでなくてはならない2つの機能を担う器官です。そのため、これらの機能は胎生期のかなり初期から発達しています。
受精後,胎児は胎生24週には吸啜の動きが出現し,28週ころには吸啜との下が同期するようになります。吸啜の動きを自分の指で繰り返し練習することで、出生後すぐに哺乳を行い。栄養を摂取することができるのです。このように、胎児の吸啜・嚥下運動は、母胎内ですでに感覚・運動系の発達として獲得されています。そして,出生後の食べる機能(摂食嚥下機能)もまた,感覚・運動系の発達としてなされていきます。
この機能は、口腔と咽頭の形態発育との関連がとても深いのです。ヒトの哺乳期の口腔や咽頭は,吸啜(哺乳)を行うのに適した形態をしていますが、その後離乳が始まり、固形の食べ物が食べられるようになるにしたがって口や顎が成長し、ものを噛んで食べるのにふさわしい形態に発達していくのです。

 

●成長・発達による口・喉の変化(嚥下時)

 

①乳児のころ(乳児嚥下)
哺乳期の舌は前後の動きが主であり、喉の位置(気管と食道の入り口)は高い。
②離乳食が始まったころ
舌は上下に動いて食べ物をつぶすようになり、下唇が内側にめくれ込む動きもみられる。
③乳歯が生えはじめたころ
舌のさらに複雑な動きができるようになり、下唇のめくれ込みはみられなくなる。また、喉の位置も下がり、発声のための音をつくる空間ができていく。

 

●”食べる機能”発達の原則

 

食べる機能(摂食嚥下機能)の発達には、原則があるとされます。それは、「個体と環境の相互作用」です。子ども本人の「発達する力」と、周りを取り巻く「環境」からの刺激がバランスよく働きかけあうことで,感覚・運動の統合がなされ、食べるために必要な機能の発達が促進されます。また、食べる機能の発達には適切な時期があり、年齢が低いほど内発的な力が旺盛です。しかし、最適な時期を過ぎたとしても,時間がかかるかもしれませんが食べる機能の獲得はなされていくと考えられており、何歳になってもあきらめるべきではありません。

乳歯列から成長し、生え替わりの途中の時期。このように乳歯の間の隙間が目立ってきます。永久歯への生え変わりに向けて、顎が成長していきます。

 

●“食べる機能”の発達の順序とは?

 

食べる機能はある一定の順番で発達していきます。全身の姿勢や運動に関連する粗大運動の発達では、じめに頸定し(首がすわり),座位がとれるようにり、つかまり立ちをし,一人歩きをする,といった番がありますが、食べる機能も同様で、哺乳からしなり咀嚼機能が獲得されるわけではなく、口唇を閉たり、舌が前後から上下,左右へと動いたりするこができるようになりながら咀の動きが獲得されてきます。そして、その動きには”予行性”があることもいわれています。これは、「獲得された動きを十分に経験することで、次の段階の機能が獲得されやすくなる」ということです。つまり、そのとき食べられる形、軟らかさの食事を十分に食べているうちに、次の段階の機能が自然と引き出されてくるということなのです.

 

●口腔機能の発達はヒトそれぞれ

 

機能の発達は、日々順調に進んでいくわけではありません。階段を上がったり降りたり、あるいは螺旋階段を登るように遠まわりしながら伸びていく場合もあります。ヒトほど個人差の大きい動物はいないといわれるほど、食べる機能の発達過程にも個人差があります.これは機能面のみならず、歯の萌出時期や口腔形態の違い,個人の性格や家庭環境による違いなど、さまざまな要因が影響するためです。したがって、同じ月齢,年齢で比較することは意味がないばかりか、かえって弊害を招くことが多くなります。
このように、ヒトは自分のもっている力に加え、実にさまざまな要因の影響を受けながら口の機能を発達させていきます。このことは、健康な子どもも発達に遅れのある子どもも、変わりはないのです。


下の前歯が見えないほど深く噛み込んでいる、過蓋咬合の状態。顎の成長に影響があります。

 

⚫️人は、どのように老いるのか?
●いま来院している高齢者はいずれ通院不可能となる

 

日本人はどのように老いていくのでしょうか?全国の高齢者を20年間追跡調査し(N=5717),高齢者の自立度の変化パターンを調べた報告があります。その調査によると、男性では
60歳代前半から一気に自立度を低下させるパターンは19%で、脳血管疾患への罹患など全身疾患がその原因となります。一方で,75歳以降に徐々に身体機能の低下を示すのは約70%であり、加齢とともにその発症率を増すさまざまな疾患に加え、低栄養に伴う筋力の低下などが原因と考えられます。
高齢者の多くが憧れる“ぴんぴんころり (亡くなる直前まで元気に生活すること)”は10%程度にすぎず、多くの高齢者が徐々に身体機能・認知機能を低下させ、自立度を低下させていることがわかります。手段的日常生活動作について援助が必要。加えて基礎的日常生活動作についても援助を必要とする。
「手段日常生活動作」とは、買い物や洗濯などの家事や、交通機関を利用した外出や服薬管理、金銭の管理など高次の生活機能を維持するために必要な能力です。一方、「基礎的日常生活動作」は、食事や着替え、就寝・起床、入浴やトイレに行くなどの基本的な生活動作を示しています。つまり、70%の人が80歳を前にして、齲蝕や歯周病の予防が可能な口腔衛生管理ができなくなる恐れがあり,80歳代前半には外来受診が困難になるといえます。また、晩年まで自立を維持できる10%の人を除いて、期間の長短はあるにしろほぼすべての人が自立した生活が困難な時期を過ごすことになり、歯科医院への通院が不可能となることを示しています。
60歳代前半から一気に自立度を低下させる19%の多くは、病気などで一気に通院が困難になった方たちで,皆さんが診療室に勤めている限りはお会いすることはないかもしれません。一方で、いま、元気に来院してくれている高齢者のなかには、もうすぐに、約70%のコースに乗っている人たちも多くいるはずです。
つまり、高齢者についてはある意味,ほぼすべての人が通院不可能になることを考えて,歯科治療の計画を立てる必要があります。次のリコールやメインテナンスの際には、もしかしたら体調を崩して診療室に来ることが困難になっているかもしれませんし,「次の診療の機会は訪問診療で…」ということになる可能性もおおいにあるのです。

 

●口腔機能は低下する〜診療室でも早めの対応を!

 

すべての人の口腔機能は低下します。70歳の患者さんも80歳の患者さんもいつまでも口だけが健康というわけにはいきません。誰もが老いたくはありませんし、いつまでも若いままでいることを望みます。しかし、残念ながらすべての人に老いは訪れ、身体機能。認知機能の低下に伴って口腔機能も低下し。口腔衛生管理が徐々に困難になってきます。手を細かく動かすことが困難になり、口腔器官の運動能が低下することで自浄作用も低下し、口腔内が不潔になりがちになります。
つまり、高齢者の口の機能の低下に気づき、早い段階で改善・予防することができれば、齲蝕や歯周病の予防となるだけではなく、その後の口腔機能をできる限り維持し、最期まで自分の口で食事を楽しむことにもつながってくるのです。

 

●運動障害性咀嚼障害とは?

 

咀嚼障害は、その原因から「器質性咀嚼障害」と「運動障害性咀嚼障害」に分けることができます。器質性咀嚼障害とは、歯をはじめとする咀嚼器官の欠損によって起こる咀嚼障害です。この器質性咀嚼障害に対しては、義歯などの補綴治療による咬合回復が咀い機能改善のための唯一の方法となります。
一方,避けては通れない生理的老化により身体機能は低下を示し、また、依然日本人の死亡原因の上位を占める脳血管疾患などによっても身体機能は障害されます。これら身体機能の低下や障害は、口腔にも及んで咀嚼障害を引き起こし、これを「運動障害性咀嚼障害」とよびます。この場合には、一般的な歯科治療による咬合回復に加えて,筋肉に負荷を与え運動機能の回復を目指すレジスタンス訓練や,巧緻性の訓練の実施も必須となり、歯科診療室においても「器質性咀噂障害」と「運動障害性咀嚼障害」の両面からアプローチしていくことが求められています。
このように、社会が高齢化し、歯科においても齲蝕・歯周病などの口腔疾患だけではなく「口腔機能」にもアプローチすることが重要視されています。

口腔機能の発達や、機能障害を回復するリハビリなど、お問い合わせはお気軽にこちらからお願いします。

メンテナンスの始まり

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


メンテナンスで用いる機材の一部:手前の小さいブラシは超音波で汚れを除去するサスブラシです。


エアフロー:審美的にも清掃効果を感じやすい機器です。パウダーを吹き付けて着色除去します。

 

◼️治療後メインテナンスの始まり

 

 

●治療後メインテナンスとは?

 

歯周動的治療をして歯周病の進行リスク、再発リスクを下げたうえでメインテナンスに移行するのが、歯周治療の原則です。ということは基本的にはすべて動的治療をするわけですから、わざわざ「治療後メインテナンス」というメインテナンスを設ける必要はないような気がします。歯周病のメインテナンスのすべてが治療後メインテナンスなわけですから。では、なぜ設けるのでしょうか。
メインテナンスに移行するときのリスクの程度は患者さんによってさまざまです。動的治療のゴールの設定にはある幅があって、その幅があるためにメインテナンスにも幅が出てきます。この幅の中に現れるのが治療後メインテナンスというもので厳密な言葉の使い方にこだわると、メインテナンスはすべて治療後メインテナンスということになってしまいますので注意が必要です。
予防的メインテナンスの患者さんは元々初診時にリスクが低いわけですから、動的治療のゴールも究極のゴールになっていて、場合によってはほとんど自力でそのすばらしいゴールを切られる患者さんもいらっしゃいます。動的治療における私たちの関与がもっとも少ないメインテナンスです。それに対して治療後メインテナンスでは最初はリスクが高く、それを動的治療によりリスクを下げた後に行うメインテナンスということになります。その場合の動的治療は、その患者さんにとって望ましいと思われるような治療オプションを採用しています。同じようにリスクの高い患者さんに動的治療をする場合でも、次善の策をしている試行的メインテナンスやほとんど手をつけていな(手をつけられない)妥協的メインテナンスとはリスクの下がり方が異なってきます。
このように治療後メインテナンスは初診時にリスクの高い患者さんに対して動的治療をしっかり行った後のメインテナンスということになりますので、どのような症例に対してどのような動的治療を行ったかによって、リスクの程度や治療のポイント、メインテナンスプログラムの内容などに違いが出てきます。そこで動的治療の内容によってこの治療後メインテナンスも分類していきます。

 

●歯周動的治療の分類

 

メインテナンスの話の途中ですが動的治療に逆戻りしてみましょう。それは、動的治療を理解していないと治療後メインテナンスが理解できないからです。歯周動的治療の分類にもいくつかあります。
歯周治療では、ポケットをいかに浅くしていくかという大きなテーマがあります。そして病的歯肉溝(ポケット、pocket)から健康歯肉溝(サルカス、sulcus)にする場合、サルカスにはシャローサルカス(shallow sulcus)とディープサルカス(deepsulcus)の2種類があって、そのどちらを目指すのかというテーマもあります。この2つのテーマを同時に考えることで動的治療の理解を深めてみましょう。
ポケットが浅くなる!つまりプローピング値が小さくなるときには、大きく分けて2つの治り方があります。1つが歯肉退縮(gingival recession)で、もう1つが付着の獲得(attachment gain)です。プロービング値というのは歯肉頂からプロープ先端までの距離ですから、歯肉頂が下がるかプロープ先端が入らなくなるかすれば、プロービング値が小さくなります。前者が歯肉退縮、後者が付着の獲得となるわけです。付着の獲得というのは軟組織による付着が治療後に起こるということで、上皮性の付着による獲得と結合組織性付着による獲得の2種類がありますが、多くは上皮性の付着による付着の獲得が起こります。
この場合、通常は1mm程度の長さの上皮性付着が数mmと長く付着しますので、長い接合上皮(longjunctional epithelium、LJE)による治癒といわれます。
さて、歯肉退縮と付着の獲得という治癒の経過をとるとどのような治癒形態となるでしょうか?結論をいいますと、歯肉退縮ではシャローサルカス、付着の組ではデープサルカスンというパターンで考えればいいでしょう。これで先に述べた2つのテーマが結びつきました。
さて、一般論を理解したところで各論に移りましょう。歯周動的治療は、非外科療法と外科療法に大きく分かれます。まずは非外科療法から見ていきます。
非外科療法は根面デブライドメントを中心にした治療になります。動的治療における根面デブライドメントは従来のSRPとなりますので、ここではSRPという言葉を使うことにします。このSRPを行うとどのような治癒が起こるのでしょうか?実は非常に多様な治癒の仕方をしますので一言では表現できません。シャローサルカス、ディープサルカス両方の可能性があるのです。詳細は後述しますが、浮腫性の歯肉や水平性骨欠損の症例ですとシャローサルカス、線維性の歯肉や垂直性骨欠損の症例ですとディープサルカスができやすいという傾向があります。もちろんあまり深いポケットでは、ちゃんと治癒せずポケットの残存ということもあります。
では外科療法ではどうでしょう?外科療法には切除療法、組織付着療法、再生療法、歯周形成外科療法の4種類がありますので、順を追って見ていきます。
まず切除療法はどうでしょう?これは歯肉弁根尖側移動術に代表される歯周外科ですが、これらの治療法を採用すると歯肉退縮が起こり、術後シャローサルカスができます。通常骨整形により骨を生理的な形態に修正し、フラップ断端を骨頂に位置づけることによりもっとも浅い歯肉溝、つまりシャローサルカスができあがります。
改良型ウィッドマンフラップに代表される組織付着療法では逆に付着の獲得で治りますので、術後はディープサルカスによる治癒が起こります。この場合骨整形は行わず、SRPをしっかり行った後フラップをできるだけ元の根面上に戻すようにすることにより、長い接合上皮による治癒が起こるわけです。
再生療法では垂直性骨欠損部に膜や骨移植材、エムドゲインなどを適用して新たに組織を誘導してきますので、主に付着の獲得による治癒となります。ただ前述の組織付着療法と違って結合組織性付着ができる可能性が高くなっています。再生療法単独ではある程度上皮の埋入などがあってディープサルカスとして治ることが多いように思いますが、仕上げに切除療法をすることにより、組織が再生したうえにシャローサルカスができます。
最後に歯周形成外科療法ですが、これもいくつか種類があるので、結合組織移植術を用いた根面被覆術だけに絞って話をします。歯肉退縮を起こした根面に結合組織移植をすることで歯肉を元に戻そうという治療法ですが、移植片と根面は多くの場合長い接合上皮で治癒しているようです。つまり上皮性付着による付着の獲得が起こり、その結果できあがる歯肉溝はディープサルカスということになります。
このように動的治療と一言でいっても内容は多岐に渡りそれぞれによって治癒の仕方が違うわけですから、それを治療後メインテナンスとしてメインテナンスしていく場合も単純ではありません。つまり非外科療法後の治療後メインテナンスや外科療法後の治療後メインテナンスがあって、外科療法も4種類分かれるわけですから、切除療法後、組織付着療法後、再生療法後、歯周形成外科後の治療後メインテナンスが存在することになります。


超音波で歯石を除去する機器:外科療法、非外科療法ともに用います。外科というとたいそうな手術を想像されるかもしれませんが、実際は歯肉に隠れた感染源を除去する目的の小規模な手術です。歯科領域の虫歯治療、歯周病治療とは、原因を除去する外科の部分が多いと感じます。

 

●治療後メインテナンスの特徴

 

治療後メインテナンスを受ける患者さんの初診時は歯周病菌が繁殖し、すでに歯周組織の破壊が進んでいます。付着の喪失や骨の喪失、場合によっては歯の喪失をされていることもあるでしょう。つまり予防的メインテナンスに比べて初診時のリスクがかなり高いということになります。そのため積極的な動的治療が必要になり、その動的治療も症例によっていろいろ使い分けていくことになります。
動的治療後の治癒形態は多岐にわたります。動的治療で採用したオプションによってももちろん異なりますし、思い通りに治らないことがあるというのも臨床です。もちろん同じ口腔内でもさまざまな治癒形態が混在するわけです。予防的メインテナンスの患者さんの口腔内はシャローサルカスがほとんどと考えていいでしょうが、治療後メインテナンスの患者さんではシャローサルカスとディープサルカスが混在します。試行的メインテナンスや妥協的メインテナンスの患者さんに比べてポケットの残存は少ないのですが、理想的に事が進まないことも経験します。このように治療後メインテナンスでは、動的治療でどれだけ改善できたかによってメインテナンス移行時のリスクが異なってくることになります。


染め出し液、清掃用ペースト:歯科受診時に汚れを染め出したりされていますか?私たちはよほど小さなお子さんでない限り、基本的に染め出しを行います。理由は、患者さん自ら効果的に清掃できるようにサポートしていきたいからです。メンテナンスも汚れが付着しやすい部位が視覚的にわかりますので、やりやすいです。

 

●治療後メインテナンスのリコール間隔

 

通常、治療後メインテナンスのリコール間隔の基本は、3ヵ月といわれています。3ヵ月に一度というメインテナンスをしていれば、動的治療の内容にかかわらず悪化を防ぐことができたという論文が発表されています。この場合、動的治療の内容にかかわらずというところがミソで、これにより治療後メインテナンスのリコール間隔は3ヵ月ということになるわけです。
もちろん動的治療も理想どおりにできないこともあるわけですし、そのような場合は3ヵ月よりも短くする方が無難でしょう。また動的治療終了後いきなり3ヵ月リコールに移行するのではなく、最初は1ヵ月など、短めに設定する方が良いです。

私たちは、定期健診の施術時間を60分とり、歯肉も歯もスッキリ気持ち良い施術を行なっております。
お問い合わせはこちらからお願いいたします。

歯茎に潜んでいる菌って?

2024年5月21日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

私たちは歯周病治療と予防に力を入れて診療しております。
保険診療の範囲でも、歯周病の炎症を安定させる目的で、歯周病重症化予防治療・歯周病安定期治療という項目があり、歯科疾患を抑えることが医療費全体を抑えることにつながるため、歯科治療の方向性は、予防が大きなテーマとなっていることは間違い無いです。

今回は、歯周病や虫歯の原因となる、よくない菌、そして身体の健康を保つために良い菌のトピックです。

 

⚫️細菌の世界もバランスと多様性が大事です。

 

私たちの健康は、私たちのからだにすみついている細菌たちと切り離して考えることはできません。自然なやり方で感染症を防いでいくには、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスを維持しなるべく暴れずに暮らしてもらうことが大事です。ストレスや食生活の乱れで失われがちなバランスをプロバイオティクスの力を借りて育菌して、しっかりと維持していきましょう。
▪️お口のなかで悪さをするむし歯菌や歯周病菌は、体外から侵入して重大な健康被害をもたらすようなコレラ菌、チフス菌といった極悪菌ではありません。だれのお口のなかにもすんでいて、口腔環境さえ悪化しなければ、おとなしく過ごしてくれる平凡な細菌(日和見菌)です。ですから、むし歯菌や歯周病菌が活躍しないようにするには、お口のなかの環境を整えることがいちばん大事なのです。

お口の中の力、細菌感染で噛み合わせが崩壊・・・

上顎前歯に大きい修復物が入っている口腔内写真。


同じ患者さんのレントゲン写真。この時、奥歯がなくなって何年も経過しており、噛み合う歯がない歯を中心に病的な移動が生じています。
治療計画を立てて、これからやっていきましょう!と患者さんと決めてすぐ、お仕事の事情により3年間来院が途絶えてしまいました。
再来院された時には、歯がぐちゃぐちゃになってしまっていました・・・

修復物が取れてしまった歯。虫歯が進行しすぎて、歯茎にめり込んでいます。歯の上にお肉ものっかってすごい状態。

再来院時のレントゲン写真。もうブリッジの再治療は不可能で、土台の歯は全て抜かないといけなくなりました。
まず、奥歯がないために過剰に前歯に力がかかってしまっていること、虫歯菌が活躍しやすい生活習慣があったと考えられます。
お仕事も大事ですが、ご自身の健康を害してしまうほどに優先すると、回復がとても大変ですね。

取れちゃったブリッジ。内側には虫歯でグズグズになった歯のかけらが残っていました。

 

細菌叢は人それぞれ

 

私たちのお口の細菌叢(細菌の群れ)は、人それぞれ個性があります。むし歯菌も歯周病菌もほとんどいないというラッキーな人は少数派で、ある人の口のなかはむし歯菌はほとんどいないけれど歯周病菌がが多かったり、むし歯は多いけれど歯周病菌は少ない、といった具合に、その濃淡はさまざまです。そうしたお口のなかの細菌叢の違いが、むし歯のなりやすさ、歯周病のなりやすさに大きな影響を与えているのです。
そこで欠かせないのが、歯みがきでプラーク(悪さをする細菌の塊)をきれいに取り除くという従来の方法です。口のなかに、いつか暴れ出すかもしれない細菌をたくさん培養していては、その被害にあいやすくなってしまいます。だからこそ、毎日のていねいな歯みがきはとても重要なのです。
それに加えて有効なのがプロバイオティクスです。善玉菌をたくさんお口に送り込んで育菌し細菌のバランスを整える、つまりむし歯菌や歯周病菌の縄張りを減らして押さえつけ、おとなしくさせてしまうという方法です。この方法のメリットは、トラブルの根本原因である細菌にアプローチでき、病気のリスクそのものを減らせるということです。
また、たとえばL・ロイテリ菌などは、お口によい効果をもたらすたけでなく、腸にもよい効果をもたらすことがわかっています。腸の細菌バランスも維持されれば、免疫物質がさかんに作られ、からだ全体の免疫力アップが期待されますし、また、そのことによって歯ぐきに起きた歯周病の炎症が治りやすくなったり、口内炎ができにくくなったりする効果にもつながります。
そのほかにも、私たちの皮膚にすむ細菌が原因であるニキビが減るなどのうれしい報告も、プロバイオティクスの効果を実感する人からはよく聞かれるところです。
抗生物質というたいへん重要な薬が生まれてから、私たちはほとんどの感染症を征服したという気持ちになりがちでした。しかし現在は、抗生物質の使い過ぎによって生まれてしまった副産物である耐性菌の問題が指摘され、抗生物質の使用をいかに減らすかが重要なテーマになっています。
また、細菌感染によって病気が発症してから対処するのではなく、ふだんから細菌と共存し、細菌の力を借りながらいかに健康を増進するか、感染症を予防するかということも、大切なテーマになっています。
私たちは、多種多様な細菌とともに暮らしています。この細菌たちといっしょに健康を育んでいくために、お口のためのプロバイオティクスを、ぜひ一度お試しください。

 

⚫️出産すると歯が悪くなるのは仕方ないこと?

 

「出産すると歯が悪くなる」。
よく言われている言い伝えで、実際に妊娠期や授乳期に歯を悪くする女性は多いです。しかし、「赤ちゃんが原因だ」というのは間違いです。
本当の原因はほかにあります。まず、つわりで歯みがきがつらい期間がある。それに、お腹が大きくなるといっぺんに食べられないから間食が増えます。授乳中もお腹がすくから間食しますよね。そのたびにむし歯菌は栄養がもらえて大喜び。それでむし歯が増えやすいんです。
また、妊娠中盛んに分泌されるホルモンは歯周病菌の大好物。妊婦さんの歯ぐきの溝のなかで歯周病菌が元気になっちゃうので歯周病にもなりやすい。
とはいえ「つわりでも歯みがきしなさい」「間食を止めなさい」ってわけにはいきませんよね。つらいんだし、必要だから間食しているわけですからね。
じつはこういうとき、歯の健康に大きく差が出るのが、妊娠する以前から歯科に定期受診して予防処置を受けているかどうかなんです。ふだんから口内環境がうまくコントロールされていて、細菌が大暴れしにくい状態かどうかが大事です。それに定期受診していれば、困ったとき歯科医師や歯科衛生士に相談できますよね。「つわりで歯みがきがつらいんですけど」って。
かかりつけの歯科医院なら、つわりの程度を見つつ、ふだんのお口の状態(むし歯、歯周病のなりやすさ)も知っているわけですから、「じゃあ、つらい時期はこの手で乗り切りましょう」と、患者さんにあった次善の策を教えてもらえます。
こういうとき、真剣に考えてくれる人を持つか持たないかで、妊婦さんのその後のお口の健康に、大きな差が出るんです。
もうひとつ大事なのは赤ちゃんの歯の相談もできること。お母さんが予防処置を受けていると、むし歯菌が赤ちゃんに移りにくいし、赤ちゃんに歯が生えたら予防処置も受けられる。歯科って、みなさんが想像する以上に、みなさんの生活の手助けができるんですよ。かかりつけの歯科医をぜひ持ちましょう。
※妊婦さんの歯が悪くなりやすいのは、赤ちゃんがお腹で育つからではありません。つわりや食生活の変化でリスクがふやすからなんです。かかりつけの歯科を持ち、口内環境を整えるとともにいざというとき相談できるようにしておきましょう。

 

●歯肉溝(しにくこう)とは

 

歯と歯ぐきのあいだにあって、歯を囲むような浅いミゾのことです。健康な歯肉溝の深さは1〜2ミリです。
歯周病になって深くなってしまった歯肉溝のことを歯周ポケットといいます。
歯肉溝は歯ぐきと同じく丈夫にできていますが、細胞と細胞のあいだが広くできているので、水分や小さな細胞ざスイスイと通れるのです。歯肉溝のあたりは、毛細血管が集まっているので外からはいってくる細菌とたたかう免疫細胞が出入りしやすく細菌の出す毒素がたまりやすい。そういう悪いものがからだのなかに入りこまないように、守っています。

歯周病は歯そのものの病気ではなく、歯の周りの骨や歯ぐきの病気です。歯の土台にあたる骨(歯槽骨)や根っこを包んでいる歯根膜、歯ぐきがこわれて、歯がグラグラしてしまうのです。レントゲンを撮ると、骨の溶けてしまった部分が黒く写ってくるので、骨がなくなっていることがわかります。骨が溶けてなくなりはじめると、ミゾは3〜5ミリくらい。これが歯周ポケットです。さらにすすんで重度になると6ミリ以上にもなってしまいます。
歯周ポケットの深さは、歯医者さんで細い器具(プローブ)を使って測ってもらわないとわからないので、ぜひ調べてもらってくださいね!
歯肉溝は、細菌や、細菌がつくり出すプラークがたまりやすく炎症もおきやすです。炎症がおきると、歯ぐきがこわれてミゾがどんどん深くなる。するとそこにプラークがたまって毒素を出します。それに対読し血流を増やして免疫細胞がガンガンたたかいますが戦場となった歯ぐきは荒廃して弱くなってしまい、腫れて出血しやすくなるというわけです。
ど、戦場となった歯ぐきは荒廃して弱くなってしまい、腫れて出血しやすくなるというわけです。
歯周病は、食生活の変化やタバコやストレスもかかわる生活習慣病だって知ってましたか?
からだに元気がないと悪化しやすくて、糖尿病、骨粗しょう症、心臓や自管の病気、遺伝も関係するんです。歯肉溝にプラーク(細菌や細菌の毒素)がたまるとなりやすいので、毎日の歯みがきが何よりも大事なんです。
しっかりきれいにするには、デンタルフロスと歯間ブラシがとても役に立ちます。抗菌剤やうがいもいいですが、やっぱり大事なのは毎日の歯みがき。それと定期的に歯医者さんでメインテナンスを受けるととてもいいです。
歯石が歯ぐきのなかにたまると、そこにベタベタのプラークがついてどんどん毒素を出し、歯をささえる骨をこわしてしまう。自分では取れないから、歯医者さんで取ってもらおう!
歯ぐきの奥深くに歯石がついたときは、歯ぐきを切って歯石を取らなくてはいけないので。こうならないためにも、日頃の歯みがきが大切なんです。

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入れ歯とインプラントを組み合わせて、動かない入れ歯にできる?

2024年5月14日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、部分入れ歯とインプラントを組み合わせた治療例のトピックです。

 

入れ歯治療について

 

どんな入れ歯でも、人工の歯と歯茎に接するピンクの床の部分があります。床の素材はレジンが広く使われていますが、見えない部分をチタンやコバルトの合金を用いて作られる場合もあります。
総入れ歯は歯茎に入れ歯が乗っかるのみですが、部分入れ歯は、入れ歯の部分と天然の歯の部分が混在している状態ですので、
残っている歯に維持力を得るため、クラスプという引っ掛けを作ります。よくあるのが、ワイヤーを曲げたものや、合金を鋳造して作ったものです。
審美的なクラスプとして、ノンクラスプデンチャーというものがあります。これは、通常金属製のクラスプの部分を、
特殊な床の材料に変えて、歯茎の色調に馴染ませて作られています。

こちらの写真は、よくある合金で作成されたクラスプです。歯の付け根あたりに金属の引っ掛けがありますね。保険診療で認められていますので、広く使われています。

入れ歯が入ったお口の状況ですが、歯茎のお肉の上にプラスチックの歯がのっており、それを介して物をかむということですので、
考えてみたら、結構大変な状況です。グッと力を入れて噛むと、入れ歯の床がズブっと歯茎に沈むことになります。
骨から生えている歯とかみごたえや使いやすさが異なるのはしょうがないことです。どんなに良い材料を用いても、天然の歯にはかないません。
そして、インプラントと入れ歯でも、かみやすさではインプラントにかないません。インプラントは骨に植立されていますので、天然の歯と同様に噛めるわけです。
あまり良くないことを書きましたが、しっかり物を噛むという面では、天然歯やインプラントが得意なのです。
一方で、入れ歯にも得意なことがいくつかあります。治療費の安さ、外科処置がほとんどいらないこと。
個人的には、一旦お試しができる治療であることがメリットと感じます。
入れ歯治療をして、リハビリが上手くいかなかったとして、
他の治療法に変更しよう、というのが可能であるため、後戻りができる治療法と言えます。

 

治療例

 

歯の欠損の部位に部分入れ歯を装着されていた方です。
「入れ歯で噛むと痛んで、しっかり噛めない」
「入れ歯が動く、浮いてくる」
というお悩みがありました。


術前正面


術前左側:奥歯の欠損があります。部分入れ歯を装着されていましたが、使いづらいとのこと。


術前下顎咬合面:歯を失ってから長期間経過しており、形態は落ち着いています。

 

治療計画

 

旧義歯の問題点を修正するため、外形、噛み合わせの状態を確認します。インプラントオーバーデンチャーを最終義歯とする場合、インプラントの治癒期間(オッセオインテグレーションと言います)に使用する、安定した治療用義歯が必要です。最終義歯の外形がある治療用義歯を作製、装着します。そして、インプラントの治癒期間が終わり、アタッチメントを取り付けるのですが、この治療用義歯を改造し、インプラントオーバーデンチャーへ移行します。患者さんはインプラントオーバーデンチャーに適合しやすくなります。
インプラントの位置決めですが、治療用義歯を作製中に、ガイド作製も行います。義歯は歯型をとってすぐに出来上がるものではなく、噛み合わせの記録取り、人工歯を排列し試適の工程を必ずやります。この試適の段階で診断用ステントを作ります。義歯を試適した状態で型を取り、レジンを流し込みます。最終的な歯に対して、インプラントが理想的な位置にくるように、このような手法を取ります。インプラント埋入部位は、維持のためのアタッチメントが義歯の中におさまるよう、クリアランスが確保できること、機能時の義歯の動きを抑制できることが要件です。また、今回は部分入れ歯ですので、クラスプがかかる歯の軸、義歯の着脱方向が非常に重要で、着脱方向と大きく維持装置の角度が違うと、適切な維持力が発揮できないことになりますので、これらを確認し、計画を立てていきます。

 

術後

 


術後CT:欠損部にインプラント埋入された状態。


術後正面


術後左側:アタッチメントが奥に見えます。


術後下顎咬合面:欠損の後方にインプラントが埋入され、ロケーターアタッチメントが装着されています。ボタンが歯茎から生えているように見えますね。


術後義歯装着した咬合面:このようにして装着した入れ歯は、噛む力が骨に伝わりしっかり噛むことが可能となります。

最終義歯の構造には、メタルのフレームが使われています。レジンのみの義歯床だと、アタッチメントの部分の強度不足により破折のリスクが高まります。
また、装着後の顎堤の形態変化にも対応するため、維持各子はレジン床内に取り込み、リライン(内面の敷き直しの処置)しやすい形状にします。

 

メンテナンス

 

一般的な義歯のメンテナンスといえば、経年的な人工歯の磨耗、床と顎堤の適合の変化に注意して、必要な時に早期に義歯の修正をします。これは、顎堤の保全にも、インプラントへの過剰な負担にも対応するものです。義歯設計やインプラント埋入位置の問題があると、術後の義歯破損を招きます。
ロケーターアタッチメントは、インプラント埋入された上にある凸部と、義歯床内の凹みが噛み込むことで維持力が発現します。義歯に組み込まれた部分には、維持のためのリテンションディスクがあります。6種類用意されており、維持力やインプラントの角度により使い分けをします。場合によってはこのリテンションディスクの交換が頻発する可能性もあります。研究では、1〜3年の間に0〜9回と幅があります。Vere Jら2012年の論文より。
この理由としては、義歯の着脱方向とインプラントの角度が大きいことが考えられます。これらの角度は可能であれば20°以内におさえられていることが望ましいです。また、咬合の強さと頻度によっては維持力が大きく減衰するという研究もあります。Abi Naderら2011年。
患者さんへの取り扱い指導も重要です。着脱方向から大きくずれて強引に引っ張ったり、ずれて装着した状態で噛み合わせたりすると、ディスクの変形が不可逆的になり、交換を余儀なくされます。

私たちは、術後の良い経過のために、まずインプラント埋入時に高い初期固定を確実に得るように注意をしています、具体的には、初期固定が得やすいインプラントの選定と、ドリリングの際のアダプテーションテクニックです。最終義歯のコピーデンチャーを作製し、造影剤を用いてサージカルステントとするとともに、歯肉の厚みも術前に確定し設計に反映します。このことにより、
・適切なデンチャーのスペースが確保できるよう、埋入方向を確実にプランニングできる
・術直後の荷重に対し、適度な高さのパーツの選択
を可能にしています。

 

まとめ

 

義歯とインプラントを組み合わせた治療により、少ない本数のインプラントで機能上優れた効果が得られる義歯作製が可能となります。
義歯が単体で十分患者さんが満足できるような機能を得るには、条件が整っている必要があります。具体的には、顎堤の高さ、幅、骨隆起やアンダーカット、口腔周囲筋の習癖の有無などの条件が整っていること、義歯の経験があることも患者さんのリハビリを行う上ではかなり慣れに関する差が出てきます。
条件が整っている患者さんばかりではありませんので、義歯でしっかり噛めない場合や義歯が動いてしまい、機能に問題がある場合、このようなインプラントを併用した治療を検討する価値があると考えられます。

義歯でお困りの方、どうぞお気軽にご相談ください。
お電話 072−767−7685
WEB予約もこちらから可能です。

肥満と歯周病についてラスト

2024年5月14日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

肥満と歯周病の関連のお話をしてきましたが、今回がラストです。

 

歯周病が進行しやすい

 


下の奥歯のレントゲン写真:歯周病が進行し、歯を支える骨が吸収してなくなってきています。奥歯は根が二股に分かれていたりしますが、支える骨がなくなってくるとこのように歯の根の分岐部のところがトンネル状になってきます。分岐部病変と呼ばれます。この状態になると、歯周病治療のスケーラーなどの器具が、トンネル状のところに到達しないため、歯周病が進行しやすい状態になってしまいます。

 

●肥満症とは

 

日本肥満学会は「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態」を肥満症と定義し疾患として位置づけしました。ここでいう健康障害とは10の疾患群、すなわち、2型糖尿病・耐糖能障害,脂質代謝異常,高血圧,高尿酸血症・痛風,冠動脈性疾患,脳梗塞,睡眠時無呼吸症候群,脂肪肝、整形外科的疾患,月経異常です。これらはいずれも減量による病態の改善が望まれるものばかりです。肥満症はこれらの健康障害の有無や、BMI,ウエスト値,腹部CT検査によって診断されます。

 

●肥満の現状

米国の1988〜94年の調査ではBMI30以上の肥満者の割合は男性で20%,女性で24.9%と非常に多かったのですが、さらに12年前と比べたところ男女ともおよそ8%も増加していました。喫煙対策が進んだ米国において、肥満は健康上最も深刻な問題であるとされています。その後,米国疾病対策センターは、BMI 30を超える肥満者の割合を州別に調査し、過去18年間にわたる分布図を作成しインターネットで公表していますが、これを見る限り中東部を中心に始まった肥満者の「蔓延」は全米に広がり深刻です。急速に広まる伝染病のアウトブレイクのように、肥満は全米で急増しています。
イギリスでも1980年から1995年の間に、肥満者は8%から15%に増加したと報告されています。肥満は先進国に限らず、多くの途上国、アジアや太平洋の島々でも増加しています。幸い日本では約15万人を対象にした大規模調査でBMI 30以上の肥満者の割合は男性1.86%,女性1.98%と欧米に比常に少ないようです。しかし肥満と最も関連の強い糖尿病の発病率は米国と同程度なのです。そこで肥満の基準値を BMI25以上とするとその割合は男性27.5%,女性18.9%となり、欧米と同程度になることから日本人では25が基準値として提唱されています。また国民栄養調査によると1980年以降、男性ではすべての年齢層においてBMIは増加しています。女性では高齢者で増加していますが、逆に中年期より前では痩せが増加しています。われわれの関与する福岡県久山町における疫学調査では、1961年以降、BMI 25以上の肥満者の割合は40歳以降で男女とも増加しています。BMI 25以上ではさまざまな疾患のリスクが上昇することや、糖尿病やその予備軍が急増していることから、やはり日本でも肥満は健康上の重要な問題となりつつあるといわれています。

 

●肥満が危険因子となる生活習慣病

 

肥満になると糖尿病,高血圧,高脂血症,動脈硬化,心疾患などになりやすくなります。これらの疾患のうち2型糖尿病へ及ぼす影響は特に強いのです。日本人の場合、前述のようにBMI 30を超える肥満は2%で、20%を超える米国にくらべ非常に少ないのですが、糖尿病人口は米国白人が7~15%であるのに対し日本人は4~12%と大きな差はありません。つまり日本人は軽度の肥満でも病気になりやすいようです。
肥満と心疾患に関する米国の大規模な調査です。
肥満と心疾患に関する米国の大規模な調査で成人の死亡率が最も低かったのはBMI 19〜21.9でした。面白いことに肥満の影響は若いほど強く 30~44歳の男性ではBMIが1増加する毎に虚血性心疾患(冠動脈疾患)による死亡率が10%増加していました。虚血性心疾患や脳血管障害の多くは動脈硬化によりますが、動脈硬化は肥満を始めとするいくつかの危険因子が関与しています。これらの危険因子(たとえば肥満,高血圧、高脂血症など)をひとつの集合体としてとらえるものとして、シンドロームX,インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、内臓脂肪症候群、などが提唱されてきましたが、これらは近年,糖代謝異常,脂質代謝異常,高血圧,中心性肥満(内臓脂肪の蓄積)などの組み合わせによって定義されるメタボリックシンドローム(metabolicsyndrome)として統一されつうあります。
また2003年に米国で報告された大規模調査で肥満は癌による死亡率も高めていることが明らかなりました。16年間の追跡調査で90万人中 6万人弱が癌で死亡していたのですが、肥満はあらゆる部位の癌による死亡と有意に関連していました。

 

●肥満と歯周病

 

肥満は2型糖尿病の最大の危険因子ですが、糖尿病が歯周病を増悪させることは古くから知られていますので、肥満→糖尿病→歯周病という図式ができ上がります。では肥満が歯周病に直接影響するのでしょうか。1977年に動物実験で高血圧を伴う肥満ラットでは歯周病が悪化しやすいことが報告されていますが、20年以上たって初めて、ヒトにおいても肥満と歯周病が関連していることが福岡市健康づくりセンターにおける健診結果から明らかになりました。
この報告では肥満の指標としてはBMIと体脂肪率が、歯周病の指標としてはWHOのCPI
(community periodontal index)が用いられました。その結果、特に疾患のない20~59歳の成人において BMIが高いほど歯周病の有病率が増加していました。さらに、歯周病の危険因子と考えられている年齢,性別,口腔清掃習慣,喫煙の影響を調整した分析でも、BMIが20未満の痩せている人を基準とした場合、BMIが高くなると何倍も歯周病の危険度が上がっていました。同様の分析を体脂肪率について行ったところ、体脂肪率が5%上がるごとに歯周病の危険度は30%増加していました。この報告には明らかな糖尿病の方などは含まれていないことから、特に疾患はなくても肥満に関連した全身の状態、たとえば前述のメタボリックシンドロームなどの状態によって歯周病が悪化している可能性が指摘されました。
さらに種々の運動能力テストの結果と歯周病との関連を調べたところ、日常の運動量保存則と強い関連を示す最大酸素摂取量が歯周病と関連しており、運動面からも肥満と歯周病との関連が支持されました。その後の調査で同センターはウエスト/ヒップ比と歯周病との関連を報告しています。それによると643人を対象に詳細な分析を行ったところ、BMIL,体脂防率,ウエスト/ヒップ比いずれについても、その値が高いほど深い歯周ポケットをもつ者の割合が多いことがわかりました。さらにウエスト/ヒップ比を用いて、対象者を上半身肥満とそうでない
グループに分けた分析を行ったところ、ウエスト/ヒップの高い上半身肥満のグループでのみ
BMIが高いほど歯周病のリスクが有意に上昇していました。体脂肪率でも同様の結果が得られたことから、歯周病が上半身肥満と関連していることが示され、内臓脂肪の蓄積との関連が予測されています。
その後,肥満と歯周病との関連を示す報告が徐々に増えてきました。米国の国民健康栄養調査(NHANES II)の結果から、アタッチメントロスと肥満の各指標が有意に関連していることが示されました。同じくNHANES Ⅲの結果から、特に18〜34歳の若いグループにおいて、BMIやウエスト値が歯周病と有意に関連していることが明らかとなりました。別の調査では、40歳未満の肥満者では歯槽骨吸収が大きいことが報告されています。逆に50歳以上を対象として歯周病の危険因子を調べたタイの報告では、BMIもウエスト値も歯周病と関連していませんでした。これらの報告は、肥満が心疾患や死亡率に及ぼす影響は若いほど強いという前述の報告とも一致していて、たいへん興味深いと思います。日本からは、喫煙が歯周病の最大の危険因子で次に大きいのが肥満であると報告されています。私たちの最近の結果ですが、糖尿病の診断基準となる糖負荷試験を行い、歯周病の危険因子として肥満と糖尿病を女性について同時に分析した結果、肥満と歯周病は有意に関連していましたが、糖尿病と歯周病との関係は有意ではありませんでした。つまり,糖尿病が歯周病に及ぼす影響とは別のメカニズムで、肥満が歯周病に影響している可能性があるのです.


歯周病と肥満が合わさっているケース:お顔や全身状態のお写真は掲載できませんが、肥満体型で歯周病もかなり全体が進行している患者さんです。レントゲンで、歯を支える顎の骨が全体なくなっているのがわかります。

 

●なぜ肥満は歯周病と関連しているのか?

 

現時点で、肥満と歯周病を関連づけるメカニズムについての報告はほとんどありませんが、多くの医学論文からさまざまなことが予測されます。低栄養が免疫能に及ぼす影響については古くから調べられてきましたが、肥満については、1980年代にさまざまな疾患の危険因子として注目されるようになってから、免疫との関連を示す報告が増えてきました。肥満者では単球の殺菌能の低下、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性や免疫グロブリンの低下、Bリンパ球やTリンパ球の機能低下、またB型肝炎ワクチンによる抗体ができにくいことなど、さまざまな報告がなされてきましたが、統一した見解は見当たりませんでした。
その後1994年に、脂肪細胞から分泌されるレプチンが発見され、食欲の抑制やエネルギー消費を増大させることが明らかとなり、「ダイエット新薬」の開発が期待され脚光を浴びました。それをきっかけに脂肪細胞の研究が盛んになり、脂肪細胞からは種々の生理活性物質が分泌され,全身へさまざまな影響を及ぼしていることがわかってきました。
このように、脂肪細胞はレプチン以外にもTNE-a,アディポネクチン、PAI-1 (plasminogenactivator inhibitor-1),性ホルモン、アディプシンなど、さまざまな生理活性物質を産生しますので、肥満になればなるほど巨大な内分泌器官となり影響も大きいのです。そして脂肪細胞はエネルギー貯蔵以外に、善悪いずれにおいても重要な役割を持っていると考えられるようになってきました。
そこで、これらの物質と歯周病との関連について述べてみます。歯周炎によって歯周局所には TNF-a が発現し、歯槽骨吸収を引き起こすことがわかっています。TNF-aは肥満者の脂肪組織からも多量に分泌されますので、歯周局所における歯槽骨吸収を促進する可能性があります。実際、若年の肥満者では、歯肉溝浸出液中のTNF-aの濃度がBMIと相関していることが報告されています 。肥満のマウスやラットでは、肝臓におけるLPS(菌体内毒素)の感受性が強くなることが報生されています。つまり、肥満によって肝臓にあるマイクロファージ(クッパー細胞)の機能が低下したり、肝細胞の素)の感受性が強くなることが報告されています
191.つまり、肥満によって肝臓にあるマクロファージ(クッパー細胞)の機能が低下したり、肝細胞のTNE-aに対する感受性が増強するのではないかと推測されています。歯周組織においても肥満がマクロファージの機能低下やTNE-a 感受性の上昇を引き起こすとすれば、歯周病が悪化しやすいと考えられます.
糖尿病は血管や神経組織に障害を及ぼします。糖尿病の前段階である肥満や高脂血症などの状態で血管に何らかの悪影響があるとすれば、歯周局所にも影響を及ぼしている可能性が考えられます。血液凝固を促進し虚血性心疾患を起こしやすくする PAI-1は、脂肪組織から分泌されますので、な血中にPAI-1が増加すると歯周組織の微細な血管にも血液循環障害が生じる可能性があります。実際、歯肉の炎症において、プラスミノーゲンの活性化が何らかの役割をもつことが報告されています。肥満者では血管内膜でマクロファージが泡沫化しアテローム動脈硬化症となりやすいのですが、歯周局所においても同様にマクロファージや単球が影響されているかもしれません。また,脂肪組織は補体活性因子を分泌しますので、これも歯周炎と関連しているかもしれません。このように脂肪組織からはさまざまな物質が分泌され複雑なネットワークを形成していますので、歯周病との関連があきらかになるにはしばらくかかるでしょう。

 

◼️おわりに

 

WHOによると2005年現在,世界人口60億人のうち10億人がBMI25を超えており、このまま増加傾向が続くと2015年には15億人に達すると推計されています。一方、地球上には肥満者とほぼ同じ数の人が飢餓にさらされています。この不均衡は私たちの社会が解決していかなければなりません。食べる量を少し減らしてその分を最貧国へ回せればいいのですが、なかなかそう簡単にはいきません。喫煙については医療費や税金など経済的な視点から、すでに多方面にわたる検討が進んでいます。健康づくりにつながる肥満対策は医療費の削減にもつながるでしょう.そう考えると、そろそろ社会経済的な取り組みをしていかなければならない時期ではないでしょうか.歯周病と肥満との関連はまだまだ不明な点が多いのですが、食に直接関連した歯科医院での助言や指導が、患者さんの肥満解消のモチベーションにつながればと思います。

肥満と歯科の関連について1回目

2024年4月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

肥満と歯科の病気の関連についてのお話1回目です。
まずは、肥満や脂肪についてです。

 

●肥満とは?

 

▪️肥満とは、中性脂肪(ほとんどがトリグリセリド)が脂肪組織に過剰に蓄積した状態と定義されます。これは、エネルギーの摂取がその消費に対し過剰な状態が続くことによって生じます。食事と運動のバランスが悪く、食事の量に対して運動量が少ないと、余ったエネルギーは脂肪となって体内に蓄えられます。非常に優れた生理学的なシステムによって脂肪は蓄えられていくのです。このエネルギー貯蔵システムは、太古から人や動物に必要なものとして築き上げられてきました。人が安定して食料を得ることができるようになったのは、農耕を始めた新石器時代からなので、せいぜい1万年ほど前で、それ以前は狩猟が食料を得る主な手段でした。狩猟では、日々安定して食料を得ることは困難ですが、狩りが成功すると大量の食料が手に入ります。当時は保存する方法もありませんので、食べられるだけ食べて中性脂肪に変換して体内に蓄積することのよって,飢えに備えてきたわけです。脂肪細胞のおよそ80%は中性脂肪です。中性脂肪のエネルギー変換率は非常に高く、1gで9.2キロカロリーのエネルギーに相当します。ヒトはこのエネルギー貯蔵システムを備えることによって何度かの氷河期を乗りこえてきたのです。

 

気になる肥満とダイエット

 

細い体型に憧れてダイエットする方は多いですよね。この世にはあらゆるダイエットが存在していますが、カロリーとダイエットの関係には、
・摂取カロリー<消費カロリー ならば痩せ、 ・摂取カロリー>消費カロリーならば太り、
・摂取カロリー=消費カロリーならば維持
という原則があります。
ここで言う痩せたとか太ったとかは、体重の増減なわけですが、健康的に痩せていくとしたら、栄養価を考慮する必要があります。栄養価が足りなければ、人間が生きていくために消費するエネルギーである代謝が落ちてしまいます。痩せたけど身体に不調をきたすなら、本末転倒であります。
3大栄養素である、タンパク質、脂質、炭水化物の割合をバランスよく取っていくことが必要です。このマクロバランスをすっ飛ばして、「〇〇を飲んでいればあとは好きに食べてOK!」とかいうダイエットはインチキなので、騙されてはいけません。過激なダイエットでは、確かに一時的に痩せることができます。ですがいつまで続けるのでしょう?元に戻した瞬間からリバウンド王になってしまいますよ。もし、ダイエットのストレスから過食と拒食のサイクルに入ってしまうと、健康被害が心配です。
さらに、ダイエットネタを続けますと、ランニングなどの有酸素運動をイメージされる方も多いのではないでしょうか?カロリー消費以外にもリフレッシュできたりする側面があります。しかし、ランニングのような有酸素運動を主軸としたダイエットが効果的かというと、そうでもないようです。ランニングの消費カロリーは、おおよそ体重✖️距離で、例えば60kgの人が10km走ったら600kcalということになります。一方で、体脂肪を1kg落とそうと思ったら約7200kcal消費しなくてはなりません。マラソン3回分でやっと1kgの体脂肪が除去されるわけです。また、身体の恒常性維持(ホメオスタシス)がありますから、習慣的にランニングするような場合、燃費のよくない身体に変わってくるのです。痩せにくい身体という意味です。こういうわけで、健康的に痩せていくことを考えると、筋肉量が落ちないようにトレーニングやタンパク質を意識して摂取し、脂質や炭水化物の取りすぎを避けていくのが適切であるということです。

 

歯科的にダイエットに効果的なことって?

 

固形のものをよく噛むことが重要です。まず、固形って何?って話ですが、栄養ゼリーやプロテインドリンクのみだと、口腔内で固形物を咀嚼する過程がないわけです。口腔内でものを噛み砕き、唾液と混ぜる過程で、食物は消化の第一段階を通ります。同じものを摂るにしても、歯でしっかり噛まないと、その食物の栄養吸収状態は悪くなるわけです。リアルフードをしっかりかみましょう。噛めないくらい歯の状態が良くないのであれば、歯科でちゃんと噛めるように治しましょう。

そうは言ってもタンパク質摂取に便利なプロテイン。ドリンクになりますが、口腔内で咀嚼しつつ飲み込むと良いでしょう。こちらはWPIと言って、乳糖不耐症の方でもお腹がゴロゴロしないホエイプロテインであります。チョコ味がとても美味しく仕上がっています。個人的にはザバスやマイプロテイン、ビーレジェンドよりもコクがありチョコドリンクとしても美味しい部類ではないでしょうか!ち


さらに、トレーニングネタ。院長室には懸垂とディップスが可能なこのようなスタンドが設置してあります。上半身を鍛えるのにうってつけです。脚はスクワットのいろんな種類をしてバランスよくトレーニングするように心がけています。
どうして懸垂とディップスなのか?というと、まず、歯科の職業病といっても良い、猫背になりがちな姿勢が関係しています。診療台でも、入れ歯などを機械で調整する際も、カルテの入力をする際も、意識をしないと前屈みの姿勢になりがちです。口の中を覗き込むような体勢になることも多いです。これに対して懸垂はバランスよく背中の筋肉を発達、維持できる運動であります。運動強度は高いですので、私は最初1回しかできませんでした。背中のトレーニング以前に、手のひらの皮が痛くてそんなに回数できなかったです。やり続けることで背中はもちろん、バーを握る手や肩の後ろの筋肉も使われていますので、健康的にスタイルアップが可能となります。手の皮も鍛えられて、分厚くなります。手の皮が鍛えられて日常生活のメリットはほとんどないですが、アスレチックなどで登る系のアクティビティの際、恩恵を感じられます。
ディップスは大胸筋に効かせる良い運動です。身体の前側と後ろ側両方をバランスよく整える必要がありますので、セットで行うと良いでしょう。
そのほかに、レッグレイズと言って身体のミドルセクション(腹筋群)の運動もできますので、1台このようなスタンドがあればかなり良いトレーニングができるわけです
。思い立ったらパッとできますので、自宅トレーニングしたいなっていう場合、おすすめの機材です。Amazonで1〜2万円だったと思います。

 

脂肪組織について

 

脂肪組織にはいろいろな役割があります。まず、脂肪の合成や分解でエネルギーの出し入れを行います。また油にしか溶けない脂溶性物質の貯蔵庫となります。ラクダの背中のこぶは脂肪のかたまりです。つまり脂肪組織は、まず冷蔵庫みたいな働きをしています。山や海の遭難でたいてい女性のほうが長く生き残っているのは、女性のほうが脂肪が多いためだといわれています。次に脂肪組織はアンドロゲンからエストロゲン、つまり女性ホルモンをつくることが知られていましたが、近年、脂肪組織はさまざまな生理活性物質をつくり出す,巨大な臓器であることがわかってきました。これについては疾患との関連のところで詳しく述べます。このような生理的な役割以外にも保温、外力からの保護、美容などの役割があります。
体重の維持には食事と運動のバランスが大切ですが、もうひとつ忘れてはならないことがあります。それはエネルギーの消費は運動だけではないということです。私たちはたとえ眠っていても、心臓は重くし呼吸もしなければなりません。体温も維持しなくてはなりませんし、新陳代謝で古い細胞は不要物となり新しい細胞と少しずつ置き換わっていきます。基礎代謝といいますがこのようなことにも然エネルギーが必要となります。そこで注意しなければならないのは、私たちの体の基礎代謝に必要なエネルギーは、年齢とともに低下していくということです。つまり、食事の量と運動量がうまくバランスがとれていても、年をとるにつれ少しずつ減少した基礎代謝の分だけエネルギーが余ってしまいます。通常は年齢とともに運動する機会も減るので、若い時と同じ量を食べ続けていると、気がついたらずいぶん脂肪組織が蓄えられているということになるのです。これがいわゆる中年太りがおこりやすい理由です。ただ高齢になると栄養の取り込みが悪くなり体重は減少していきます。そのための蓄えとも考えられますので、疾患の危険因子とならない程度の多少の中年太りはむしろ歓迎されるべきかもしれません。
一般に太り気味の方ほど骨量も多いようですが、過度のダイエットは骨密度の低下につながります。骨は成長期に作られ、20歳以降、骨密度は徐々に低下していきますので、若いうちにしっかりと食事をとり運動をすることで骨を蓄えておかなければなりません。若い女性は少しも太っていなにもかかわらずダイエットを行うことがありますが、肥満でない方の成長期のダイエットは骨粗鬆症の予備軍を増やしていることになります。あたりまえのことですが健康体重を維持することが大切なのです。

臭いの原因、舌苔&フッ素塗布について

2024年4月17日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

口臭についてのお話です。

 

舌苔、溜まっていませんか?

 


においの大きな原因「舌苔」 歯は毎日しっかりみがいているという人でも、意外に忘れていることが多いのが舌のお掃除。舌の汚れである「舌苔」は、口臭の原因でも最たるもののひとつです。 舌苔は、読んで字のごとく舌の表面を苔のように覆っている汚れです。舌の表面は一見平坦のようですが、じつは非常に微細なひだが無数に存在しています。これらの突起は「舌乳頭」(乳頭は「突起」の意)と呼ばれ、毛足の長いじゅうたんのような構造になっています。 この”肉のじゅうたん”に、新陳代謝ではがれたお口の粘膜の細胞(つまり老廃物ですね)や細菌が付着します。そしてそれがベットリと厚い層になったものが舌苔なのです。

 

糸状乳頭の白い点と誤解されがち 

 

舌苔がない状態だと、舌の表面には無数の小さな白い点と、それより大きな赤い点がポツポツと見えます。それぞれ舌乳頭の一種で、白い点は「糸状乳頭」、赤い点は「茸状乳頭」といいます。糸状乳頭は表層が角質化しているので白く見えます。 ときどき、糸状乳頭の白い点を舌苔と勘違いして、「ちゃんと舌の汚れを落とさなきゃ!」と歯ブラシでゴシゴシとみがいてしまうかたもいらっしゃいますが、それはよくありません。舌を傷つけて、出血による口臭が生じたり、味覚に影響してしまうおそれがあります。白い点が見えるのなら、舌苔はできていないと考えていいでしょう。

 

舌ブラシと洗浄液をかつようしよう!

 


舌ブラシで舌苔を落とす 舌苔のお掃除には舌ブラシがおすすめです。舌を傷つけないよう、やわらかめの毛のブラシで、力を入れずに表面をなぞるように動かします。ブラシを動かす方向は奥から手前です。手前から奥に動かすと、汚れを舌の奥に追いやってしまいます。 舌だけにブラシを当てているつもりでも、唾液を介して舌の洗れがお口のなかに広がりますので、できれば1回ブラシを走らせるごとにブラシとお口をすすぎましょう。お口のなかから汚れ(=におい物質)を追い出すことが大切です。 舌はデリケートですので、みがきすぎにはご注意を。うっすら舌苔がついている程度なら、綿などの不織布でぬぐうだけでもよいですよ。

 

洗浄液のうがいは長めに

 

殺菌作用のある洗口液は、口臭予防に効果的です。細菌のかたまりであるプラークのかたまりを壊してからのほうが殺菌効果が上がるため、歯みがきをしてから使用するのがべストです。 その際は、殺菌成分がよく細菌に浸透するよう、製品が推奨している時間分、しっかりお口に含むようにしてください。テレビのCMなどで見られるように、ほんの数秒グチュグチュうがいするだけでは、効果は得られません。  ちなみに洗口液には、殺菌作用以外にも、におい物質を凝集して拡散を抑える銅イオンや亜鉛イオンが入ったものもあります。

 

歯科受診が口臭対策の早道です。

 

口臭が気になりつつも歯医者さんには行かない人が多数 自分の口臭が気になると答えた人は90.6%いたのに対して、「実際に歯科で口臭に関する診察・指導を受ける」という人はわずか5.1%でした。 歯周病などのお口の病気は、治療をしなくては解消されません。そうした病的口臭の原因が取り除かれないかぎり、においの元は残ったまま。ブレスケア製品でにおいをごまかそうとしても、焼け石に水です。 とりわけ歯周病は、初期のうちは自覚症状がなく進行するもの。最近歯ぐきがうずく、歯みがきすると歯ぐきから血が出るというかたは要注意。お口のなかで歯周病菌が暴れているのかもしれませんよ。 また、みがき残したプラークもにおいの元ですので気をつけたいところ。「えー、私、歯はちゃんとみがいてますけど?」と思うかもしれませんが、自分流の歯みがきでは、意外にみがけていない部分が多いものです。 歯科で歯のクリーニングを受けるのにくわえて、みがき残しのある場所をチェックしてもらい、さらにあなたのお口に合った歯ブラシとデンタルフロスの使いかたを教えてもらいましょう。そして舌苔を落とすのも忘れずに。 歯の健康を取り戻す、または維持してもらうついでに口臭予防もできるわけですから、定期的に歯医者さんに行きましょう!  口臭 Q&A ブレスケア製品は口臭に効果がありますか?・単にミント味のブレスケア製品を摂取したとしても、においをマスクするだけですので、病的口臭が原因の場合は根本的な解決にはなりません。ただ、ガムは噛んでいるうちに唾液が出て、お口のなかの老廃物や舌苔も洗い流されますので、そういう意味ではいいかもしれません。むし歯にならないように、砂糖不使用のものをお選びくださいね。 ストレスが口臭に影響するってホントですか?・口臭には、心理的な要因も影響します。ホラー映画を見たときに、のどの渇きを覚えた経験はありませんか。人は緊張状態にあると唾液の分泌が減り、唾液の性質もドロッとしたものになります。ですから、人が近づいてきたときに「におっていないかな?」と緊張することで、唾液の量と性質が変わって口臭が強まることも考えられます。

 

フッ素歯面塗布って知ってますか?

 


歯の表面に高濃度のフッ素を塗るむし歯予防の方法です。ところで、フッ素歯面塗布は何歳ぐらいから受けていいと思いますか?それは一歳半です。●フッ素歯面て塗布って受けたことありますか? 「フッ素歯面塗布」ってむし歯の予防法、知っていますか?歯の表面に直接ジェルやフォーム(泡)状のフッ素を塗って、歯を丈夫にする方法です。歯医者さんで受けたことのある方、きっと多いのでないでしょうか?歯みがき剤やフッ素洗口液を使ったむし歯予防といちばん違うのは、歯医者さんでないと受けられないってことです。それは、フッ素歯面塗布に使うフッ素の濃度が高いからです。 日本の歯みがき剤に入っているフツ素は、いちばん濃くても1500ppm。でもフッ素歯面塗布で使うフッ素の場合、なんと9000ppm(濃い!)。プロ向けの医薬品だから、患者さんがおうちに持って帰って使うことはできないんです。 フッ素塗布剤を歯に塗って3~4分間そっとしておくと、歯の表面に硬いアパタイトができて丈夫になるんですけど、じつはこの方法は、歯医者さんで定期的に受けないと、むし歯予防効果が下がります。なぜかというと、ご飯を食べたり歯みがきしたりしているうちに、少しずつ取れてきてしまうからです。1回塗布したからといって、油断しないで下さいね! 少なくとも年に2回、もしむし歯になりやすいのなら年に3〜4回受けて頂くことが理想です。というのも、年2回塗布のむし歯予防効果は20%程度ありますが、やったりやらなかったりだと、あまり効果が上がらないことがわかっています。

 

生えたての歯や象牙質むき出しの歯に。

 

フッ素歯面塗布はどんな歯にいちばん効果的か知ってますか?それは「生えたての歯」なんです、生えたての歯は軟らかくてむし歯に弱い。でも、そのぶんフッ素を取り込みやすく、表面が硬くなりやすのです。 乳歯を守るなら奥歯が生えはじめる1歳半くらいから。永久歯を守るなら第2大臼歯が生え終わるまで。つまり15歳くらいまで定期的に受けるのがベストです。 あと、歯の根本の象牙質がむき出している人の「大人むし歯」(根面う蝕)の予防にもピッタリなんです。

銀歯が入っている歯の根元が大きく露出している写真。根面う蝕とは、このような根が露出した部分にできる虫歯です。歯の頭の部分、エナメル質の組織と異なり、虫歯に対し弱い特徴があります。

エナメル質より軟らかい象牙質の表面を硬くしてくれるんです。 フッ素歯面塗布っていうと、「費用がかかるからなあ」って思ってる人もいるかもしれません」ね。たしかに、フッ素歯面塗布は歯の「治療」ではないから、通常は保険がききません。 しかし、むし歯の多いお子さんの場合や、初期むし歯の治療などには保険がききますし、塗布の無料サービスを行っている自治体もありますからそういうのも利用しながらぜひ続けてください。

病的口臭と対処法について

2024年4月16日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

前回に引き続き、口臭についてのお話です。
最初に、口臭には種類がある!というトピックです。

 

生理的口臭

 

誰にでもある「生理的口臭」 口臭というのは、じつは誰にでもある程度は存在するものです。朝起きてあくびとともに息を吐き出したとき、「あ、口がにおうな」と思ったこと、ありますよね。でもその後、朝食を取ったり歯みがきしたりするうちに気にならなくなるはずです。これは「鼻が慣れたから」ではなく、お口のなかのにおい物質が食事や歯みがきで減っているからです。 1日のなかで自然に増減するこうした口臭は、専門用語で「生理的口臭」と呼ばれます。寝起きなどににおいが強くなることはありますが、一時的なものです(同じくにおいの強い食べ物による口臭も、一時的なものです)。
寝ている間は、起きて活動している時に比べて唾液の分泌量が少なくなりますから、口腔内の菌も増えやすいですし、臭いがキツくなってしまいます。病的なものではありません。気になる方には、寝る前の口腔内の菌を減らす、うがい薬を案内しています。

こちらのエピオスは、純粋な塩と精製水を専用の機器で電気分解し作成します。私たちのクリニックには、エピオス精製のこちらの機器があります。
https://epios7.co.jp/category7/entry2.html
エピオスは身体にやさしい成分ですが、殺菌能力が高いうがい薬として、ケアによく用いています。タンパク汚れを分解し、歯の表面から浮かせる効果があり、こちらを口に含んだ状態でブラッシングを行うと、短時間で高い清掃効果を得られます。寝る前にエピオスを使ってうがいをしておくと、起床時のお口の不快感やねばつきが軽減できます。

また、口を開けて寝てしまっている方、口呼吸の方はかなり口腔内が乾燥しやすいため、口臭も強くなります。唾液が乾燥してしまうので、日中でも無意識のうちに口呼吸している場合、前歯あたりの歯肉が炎症しやすかったり、虫歯リスクが高まってしまいます。原因の口呼吸自体を改善することが重要です。このような場合、お家ですぐできる
あいうべ体操
をご案内しています。当院の小児矯正治療の一環でもよくやっています。自然と唇と舌の筋肉のバランスが整い、口呼吸から鼻呼吸へ移行することができます。口臭改善はもちろん、アレルゲンを体内に取り込みにくくなるため、アレルギーなどの問題について体質改善が期待できます。


九州の今井先生が発案されたあいうべ体操。こちらの本にはあいうべ体操の効果や良い効果、実例が多く記載されています!

 

病的口臭

 

一方、強いにおいを持続的に発する口臭は「病的口臭」と呼ばれます。いわゆる不快な口臭と客観的に認識されやすいもので、においの原因がなくならないかぎり存在し続けます。 原因には、歯周病などのお口の病気と、お口とつながっている耳鼻咽頭の病気、内臓などのからだの病気が考えられます。 よく「からだの病気のにおいが口からにおう」という話を聞きますが、からだの病気が発するにおい物質が血液に乗って肺に至り呼気として吐き出されるというのは、そうとう病気が進行した状態です。また、「食べ物のにおいが胃から上がってくる」というのも、食道と胃の境界には括約筋があるため、ふつうはにおいの通り道は閉じられています。ですから、強い口臭の原因としてまず疑われるのは、お口のなかなのです。
一時的なにおい からだが本来もつ生理的なもの 健康な人にも存在するにおい。1日のうちで増減します。 においの強い食べ物などによるもの。
持続的なにおい 歯周病などお口の病気によるもので 歯周病やむし歯になった歯、舌の汚れやみがき残したプラーク(歯垢) 鼻炎など自費咽頭の病気によるもので副鼻腔炎や扁桃腺炎、中咽頭の癌などが原因。お口とつながっているため、においが口から出てきます。 胃腸・肝臓など、からだの病気によるもので糖尿病や、肝臓、腎臓、胃の病気などが原因。におい物質が血液をめぐって肺から息へ。

 

においの原因は お口の細菌

 

たんぱく質を分解してにおい物質を出す 細菌のうち、とくに歯周病菌などの酸素を嫌う菌(嫌気性菌 けんきせいきん)が、腐敗臭をともなうにおい物質を生み出します。彼らが唾液や血液、はがれ落ちにお口の粘膜、食べかすに存在するタンパク質(正権には含硫アミノ酸)を分解したときに、揮発性の硫黄化合物——硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどを出すのです。 女性では、月経や妊娠などのホルモンバランスの変化によりお口のなかにいる歯周病菌が活発化し、口臭が増加するという報告もあります。

唾液の減少も影響する 

 

細菌の活動には、唾液も影響します。朝起きたときがいちばん強く、それから食事や歯みがきをするたびに下がって、時間がたつとまた上がります。唾液には、細菌を洗い流したり、細菌の繁殖を抑えるはたらきがあります。起床時にいちばんにおいが強いのは、就寝中は唾液の分泌が減るので、寝ているあいだにお口のなかで細菌が繁殖するためです。   このように、唾液の分泌量は口臭に影響しますので、ドライマウスなどで唾液が減少すると、口臭も強まる傾向があります。
お口のなかの においの元。 病的な口臭の元となるお口のトラブルをまとめました。気になるところがおりましたら受診してご相談を!
歯周病になっている歯周ポケット・歯周病が進行して、歯と歯ぐきの境目が深くなってできる歯周ポケット。歯周病になっているとき、この中にはプラークや歯石のほかに、歯ぐきの死んだ細胞(老廃物)や血液、体液、(滲出液)、そして細菌の代謝物(排泄物)が溜まり強いにおいを発します。・歯周ポケットのなかのクリーニングは歯科でしかできません。歯周病になっているなら早めに治療を。 溜まったプラーク・溜まったプラークは、むし歯や歯周病の原因になるだけでなく、においの元にもなります。みがき残しが多いのは、上あごは奥歯の頬側、下あごは奥歯の舌側。いずれも頬や舌が邪魔をして歯ブラシが届きにくい場所です。溜まったプラークは歯石となり、さらにプラークが付着する足場となります。・入れ歯のかたは、入れ歯自体のお掃除も欠かせません。・プラークの除去には、毎日のきちんとした歯みがきのほか、定期的に歯科でクリーニングを。 象牙質に及んだ多数のむし歯・歯の表面のエナメル質はほぼ100%無機質ですが、内部の象牙質は3割ほどがタンパク質(コラーゲン)でできています。むし歯が進行するとタンパク質が細菌により分解され、においを出します。ですから象牙質に達するむし歯がそのままだと、口臭の原因に。むし歯が深く多いほど、においは強くなります。・むし歯は放置せずに治療しましよう。 歯の根の先端の病変・まれなケースですが、歯の根の先端部に病変(根尖性歯周炎)ができ、膿のにおいが歯ぐきのなかを伝ってお口に放出されることもあります。 被せ物やブリッジと歯ぐきの境目・被せ物と歯ぐきの境い目や、ブリッジのポンティック(ダミーの歯)と歯ぐきが接する面もお掃除が行き届かないことが多く、においの元になりやすいです。・デンタルフロスやタフトブラシで清掃するようにしましょう。*注意* 審美性重視のブリッジを入れているかたは、治療内容に合わせた適切なデンタルフロスの使いかたについて、必ず歯科医院で指導を受けましょう。

リラックス効果のある訪問診療

2023年8月2日

歯科の訪問診療
 私たちの訪問診療での取り組みをご案内します。開院直後は外来のみ診療しておりましたが、徐々に往診のご要望をいただくようになり、可能な限り訪問診療をしております。初回から訪問診療のご依頼をいただく場合と、外来で診させていただいていた患者様が、全身疾患により通院困難となり訪問診療に移行する場合があります。
外来のように診療チェアーに寝てもらい、ライトが当たっている状況ではないですから、訪問診療の際は様々な工夫を凝らして対応します。

 院長の勤務医時代は、3年間週2回の頻度で訪問診療に携わっていました。今から15年ほど前のことです。当時は香川県の歯科医院に勤務しており、寝たきりの患者さんのところを回って口腔ケアをしたり、居宅へ伺い入れ歯を修理、作製したり、様々な経験をさせていただきました。基本的に車社会で、身体が思うように動かせず、ご家族が車で歯科に連れていくのも難しいような方はたくさんいらっしゃいました。居宅への訪問診療では、ご夫婦または1人暮らしのご高齢の方が多かったです。臨床経験も少なく、的確に診療できていなかったと思いますが、患者様のもとへお伺いすると、喜ばれたりして嬉しかったです。

私たちの訪問診療の取り組み
歯周病治療、口腔ケアは、まず歯科の訪問診療といえばこのイメージがあります。口腔ケアは毎回大きい変化はありませんが、継続することにより確実に感染症のリスクを軽減できます。
 まず、口の病気は細菌感染症であることをご存知でしょうか。なぜ虫歯や歯茎の病気(歯茎の腫れ、出血、歯のぐらつき)が生じるのかというと、お口の中にいる無数の菌による感染で生じるのです。
 お口の清掃状態が良くなければ、歯の周りにべとべとした汚れのようなものが付着します。これは単なる食べかすの蓄積ではなく、プラークといって細菌の巣であります。虫歯、歯周病は、実はこのプラークに潜んでいる細菌によって引き起こされるのです。生まれつきお口の中にいるものではありませんが、生活をする中で、家族間で感染が起こります。
 歯周病菌が引き起こす病気は、日本人の80%が感染している歯周病です。これが歯を失ってしまう原因の第1位です。歯の周りの病気と書く通り、歯を支えている顎の骨が溶けて無くなっていきます。口腔内だけではなく、実は健康的な生活を送る上で全身の健康への悪影響が大きいのです。具体的には、心臓病、糖尿病、誤嚥性肺炎、血管障害、早産などです。罹患している方が多く、症状が出ないまま進行しやすいので、あまり病気に対する危機感がないように感じます。歯周病は、食べ物を噛み砕いて栄養摂取する活動を困難にしてしまいます。尚且つ死に直結するような全身疾患を引き起こす恐ろしい病気です。
 
口腔内のバイオフィルムを除去、綺麗な状態を維持する
 このような口腔内に存在する悪影響のある菌を可能な限り取り除いていくことが、全身の健康を維持するために必須なのです。特に、訪問診療を必要とされる方は、他科の疾患をお持ちの場合が多く、高血圧や糖尿病、血管障害が多く見られます。ケアをすることにより持病が改善することも期待できます。逆に、口腔内の菌の塊が血流に乗って他科疾患を引き起こしたり、炎症が持続することにより持病の増悪も進行します。
 口腔ケアにより歯周病菌をはじめとする悪玉細菌が増殖しにくい口腔内環境にしていきます。今まで十分なケアができていなかったとしても、今からケアに取り組んでいくことができる最善ではないでしょうか。

メディセル

 実際の施術の様子は

こちら

です。
 このように、頭頸部の咀嚼筋や姿勢を保つ筋肉を中心に、皮膚の上からメディセルを作用させていきます。とても気持ちよく受けていただけます。施術を受けられた方からは、メディセルについて次のような感想をいただいています。
・60代女性 施術6回
 顎が外れそうな感覚が以前ありました。施術後は、外れる感覚が弱まっていき、大きく口を開けられるようになりました。さらに、肩こりや眼精疲労がマシになりました。頭がスッキリして、まるで温泉に入ってリラックスしたような感覚です。

・40代女性 施術19回
 口が開きにくい、顎関節の音、肩こり、頭痛、寝つきが悪い、疲労が取れないというお悩み。
施術後は、顎の音はまだあるが、口周りの不快感は減ってきており、肩こりと頭痛の改善が見られました。
かなり症状が強い方でしたので、繰り返し施術を行い、症状改善を図りました。

義歯作製、修理
リハビリテーション

 口腔内の残っている歯が少ない、または義歯を以前使用していたが使わなくなったなど、患者さんによって様々な状況があります。基本的に上下の歯を噛み合わせる部分が減っていくと、どこで噛んだら良いのかわからなくなってきます。私たちが食べる時以外にも、上下の歯が噛み合う局面があります。身体を動かすとき、力を入れて踏ん張るような時です。噛み合わせを失ってしまうと、身体のバランスを失い、運動制限につながります。転倒もしやすくなります。転倒により大腿骨骨折→寝たきり→病院で亡くなる、といったよくない流れになります。
 訪問診療での入れ歯治療ですが、依頼が多いのは、入れ歯が合わない、ご家族からの相談で「入れ歯を入れるのを嫌がるようになった」などです。以前作った入れ歯が合わなくなってきているとしたら、顎が痩せてしまい、入れ歯の適合が著しく悪化していることが考えられます。その場合、可能な状態であれば修理で対応します。長年慣れておられる入れ歯があるなら、そちらを修理して使い続けるのが患者さんへの負担も少ないです。入れ歯の床に亀裂が入っていたり、割れてしまったような状態でも、訪問診療の準備の中に修理対応できる材料を入れております。その場で即修理し、お渡しします。修理が不可能なほど破損が大きい場合は、新製していくことになります。
 また、歯が何箇所か抜け落ちてしまい、以前の入れ歯が合わなくなってしまった場合、その入れ歯を修理してリハビリ可能な状態にしにくいため、新製することになります。
 義歯作製の手順は複数回あります。最初に、今までお使いの入れ歯やお口に残っておられる歯、歯茎の高さや幅、粘膜の状態を調べていきます。場合によっては、残っている歯の状態を改善してから入れ歯作製します。歯型をとって次の週に出来上がるようなものではなく、噛み合わせの記録をとり、お顔や発語の調和が取れているかを確認して、仕上げていきます。あまりこれらの工程を飛ばして完成しないほうがい良いです。作製工程の中で、修正が可能な段階で修正をかけることが重要です。完成後には歯の位置や向きなど修正不可能であるからです。
 入れ歯完成後は、新しい入れ歯にお口の感覚が慣れていく必要があります。一般的に、以前入れ歯を使用されたご経験のある方は、入れ歯自体への違和感、異物感に慣れておられますので、リハビリを進めやすいです。歯の欠損を長年放置されて、入れ歯を入れた経験がない場合、入れ歯にすぐ慣れるかというと難しいと思います。ご高齢であるほど、口腔内の感覚が入れ歯に慣れていきにくいのではないかと考えられます。その場合、入れ歯の設計を工夫したり、違和感がなるべく減らせるような調整をして、徐々にリハビリを進めます。

 このように、訪問診療では虫歯治療よりも口腔ケア、メディセルによる機能回復と不快症状の改善、入れ歯治療が主になっています。