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口腔がん

2024年10月29日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

前回に引き続き、口腔内の病気についてのトピックです。

 

⚫️口腔がんには前触れがある

—口腔潜在的悪性疾患を知っていますか—

 “口腔潜在的悪性疾患(Oral Potentially Malignant Disorders;OPMDs,)”という名前を聞いたことがあるでしょうか。

2017年にWHOにより新たに定義された“疾患概念”で,「口腔がんになりやすい口腔粘膜疾患の総称」を意味します。

これまでは“前がん病変、前がん状態”とよばれていた疾患を含んでいます。

 

 口腔がんは人口10万人あたり6人未満の希少がんと前述しましたが、

OPMDSの保有率は2.5%(100人に2,3人)です。

 口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)

  1. 白板症

  2. 紅板症

  3. 紅板白板症

  4. 口腔扁平苔癬

  5. 口腔カンジダ症

  6. 円板状エリテマトーデス

  7. 先天性角化不全症

  8. 日光角化症(光線角化症)

  9. 梅毒性舌炎

10. 口腔粘膜下線維症

11. 無煙タバコ角化症

12. リバーススモーキング関連口蓋病変

●頻度の高いOPMDs(特に注意)

1. 白板症

 

比較的頻度が高く,癌化の可能性が高い

(4.4~17.5%)ため注意を要する粘膜疾患です。文字どおり、板状に粘膜が白く分厚くなっている状態です.粘膜が分厚くなっているため、拭っても除去はできないのが特徴です。

 舌の辺縁や歯肉、頰粘膜に好発します。粘膜の白色肥厚の正体は角化です。義歯や補綴物の不適合や慢性刺で同様に粘膜が角化し、白く見えることがありますが、これは白板症ではありません。

 特に原因が明確でないにもかかわらず、粘膜が白色肥厚していれば、白板症を疑います。疣状になって大きくなったり拡大したり、濃を伴う場合はすでに癌化している可能性もあります。

2. 紅板症

 まれですが、癌化の可能性がきわめて高い(30~70%)ため注意を要します。鮮紅色で表面が斑状でビロード状の病変です、舌,口底,歯肉、粘膜などに見られます。

 発見時にすでに癌化している可能性がく、“口腔がん”に準じて扱う必要がある病変です。

3. 紅板白板症

 白板症のなかに赤みを伴う部分が存在する場合があり、これを紅白板症といいます。白板症のなかでも癌化しやすい状態ですので、特に注意が必要です。

4.口腔扁平苔癬

 頻度が高く、注意が必要な粘膜疾患です。粘膜にレース状の白斑を呈し、赤みを帯びる病変です。中年期以降の女性に多く、頬粘膜に好発します。発生原因に自己免疫系の異常が関与しているといわれており、免疫系の細胞が粘膜を攻撃するために炎症を起こす結果、このような症状をきたします。炎症の程度により「刺激物がしみる」「ヒリヒリした痛み」訴えることがあります。

 癌化の可能性は2〜6%と、さほど高くありませんが、目にする頻度も多いので発見した場合は、長期のフォローや症状の程度によっては口腔外科専門医へ紹介する必要があります。

5.口腔カンジタ症

 近年、高齢化が進んだことで頻度が高くなっています。口腔カンジダ症は、口腔粘膜が真菌(カビ)に感染することで起こります。

口腔カンジダ症といえば“ガーゼなどで拭い取れる”白斑が特徴ですが、白斑を伴わず“赤く、ただれたような”病変が広がる、いわゆる“赤い口腔カンジダ症”が存在することに注意が必要です。特に高齢者の場合、義歯の下部に白い口腔カンジダ症も、赤い口腔カンジダ症も発生していることが多く,慢性化して癌化の可能性が高くなります。高齢者の義歯下の粘膜の変化には注意が必要です。

⚫️きわめてまれなOPMDs(全身の疾患に伴うもの)

6.円板状エリテマトーデス

 皮膚に角化やびらんを伴う不規則な形態の紅斑性病変です。自己免疫疾患の1つですが、紫外線により悪化や発症することが知られています。口の中では口唇や頰粘膜に紅斑やびらんが出現し、癌化することがあります。

7.先天性角化不全症

 血球の減少を伴う爪の委縮、口腔の白板症,皮膚色素沈着を主徴とする先天性の疾患です。前記の症状は必ずしもそろうことはなく、不全型も多いとされています。口腔の白板症から癌化することが報告されています。

8 .日光角化症(光線角化症)

慢性の紫外線刺により皮膚細胞のDNA変異が生じて発症します。表面がザラザラした斑状になり、わずかに隆起する、皮膚がんの前駆病変でもあります.口唇は紫外線が当たりやすい場所であり、口腔がんに移行しやすいです。

9.梅毒性舌炎

近年、日本で梅毒感染が増加しているとの報告があります。梅毒に罹患すると早期の段階から特に舌に炎症を起こすことが知られており、病期によって紅斑や白斑などさまざまな症状を呈します。このような舌の症状を梅毒性舌炎といいますが、癌化しやすいことが報告されています。

⚫️日本では見られないOPMDs

 以下に示すものは、特別な喫煙状態により生じるもので、日本人に見られることはないと考えられていますが簡単に特徴だけ説明します。

10.口腔粘膜下線維症

 東南アジアで噛みタバコと同じくらいポピュラーな嗜好品である“ビンロウジュ”によって口腔粘膜下が固くなる疾患です。頰粘膜に出現します。

11.無煙タバコ角化症

世界的には無煙タバコの1種である噛みタバコを嗜好する習慣があり、噛みタバコにより口腔粘膜表面の著しい角化が生じます。これも頼粘膜に好発します.

“無煙タバコ”というと電子タバコをイメージしがちですが、そうではありません。電子タバコも通常のタバコ同様のリスクがあると考えられています。

12.リバーススモーキング関連口蓋病変

 喫煙の特別な方法として、「タバコの火のついたほうを口の中に入れて喫煙する」というリバーススモーキングというものがあります。特に、口蓋に火傷とともに高度の炎症を起こし、慢性化すると癌化します。

⚫️鑑別できたほうがよい頻度の高い口腔粘膜疾患

 癌化する可能性のない、日常よく遭遇する口腔粘膜疾患について紹介します。

1.褥瘡性漬瘍

 不適合な義歯や補綴物により、舌や粘膜に傷が生じ,そこから細菌感染により清瘍が拡大します。補綴物などの刺激を改善すると、7日程度で消失します。原因が明らかになっていることが重要です。

2.再発性アフタ

特に原因となるものがないにもかかわらず、口唇や舌などに周期的にできる口内炎を指して、再発性アフタとよびます。直径数mm大の類円形の浅い潰瘍です。周囲に発赤を伴うこと(紅量)が特徴です。7~14日くらいで自然に消退するのが特徴です。

3.溝状舌

舌背部に多数の溝が生じる状態を指して、溝状舌といいます。遺伝的素因で生じると考えられています。加齢とともに明らかに溝が深くなってくるため、不安に思われる患者さんも多くおられます。治療の必要はありません。

4 地図状舌

 舌背部に地図状の模様をきたす状態を地図状舌といいます。中央部が鮮紅色でその周囲に白色の縁取りを示す大小の斑が現われ、日によって形状が変化します。原因不明ですが、自覚症状がないことが多く、治療の必要はありません。

5.エプーリス

 歯肉上に発生した”炎症性”の増殖物のことです。歯肉に発生する増殖性変化としてもっとも多いものです。

 エプーリスの粘膜表面はツルツルしていて正常粘膜色で,歯肉から有茎性に増殖してくることが特徴です。

※良性、悪性かは腫瘤の辺縁を上方に持ち上げ、腫瘤が茎性であることを確かめます。癌は正常組織に浸潤し、下広の腫瘤であるのに対し、エプーリスは、歯肉に茎状に付着しています。

 

口腔内の変化が気になったら、まずネットなどで調べる方が多いです。

気になったら歯科受診し、必要な検査と診断されると安心と思います。

当院へのご相談はこちらから。

歯石のつきやすさ、糖尿病と歯周病、砂糖についてのお話

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、歯周病と全身疾患、糖尿病について詳しくお話ししていきます。

甘いものと健康管理については、聞いたことありますでしょうか。

今は様々なおやつや甘味料が世に溢れていますから、

それらを全く避けて生きていくことは不可能です。

自炊で徹底することはやろうと思えばできますが、

他の人と集まり、食事をするような機会がありますし、その場で自分だけ食べないのも変ですよね。

実は、砂糖の弊害ってたくさんあるので、それについてもお話ししていきます。

 

⚫️歯石は、いわば「細菌の化石」。

 

歯石自体がむし歯や歯周病を起こすことはありませんが、デコボコした表面は細菌の温床となります。歯石を放置すると、結果的に歯周病が悪化することになります。
歯石とは、簡単にいうとプラーク(細菌のかたまり)が唾液中のミネラルなどの影響により、石のように固まって歯にこびりついたもので、いわば「細菌の化石」です。歯石そのものに大きな害はありませんが、表面がザラザラしているのでプラークが付着しやすくなります。
歯石を放置すると、そこにプラークがたまり、周りの歯ぐきに炎症を起こして歯周病になったり、悪化する可能性が高くなります。

ネットなどで「歯石は取らないほうがいい」という話を目にすることがあります。「歯石には歯を固定する効果があり、取ってしまうと歯がぐらつく」というのが理由ですが、これは間違い。まず歯を固定することそのものに、歯をもたせる効果はありません。それよりも、歯をきれいにして細菌をつきにくくすることが大切です。歯石がベッタリついていると歯みがきがしづらくなり、結果的に歯周病が悪化してしまいます。
歯石を取ると、歯と歯のあいだにすき間が空いたようになったり、歯がしみることがあります。歯と歯のあいだのすき間は、歯石がついていた時点ですでに空いていたと考えられます。つまり歯周病の進行により歯ぐきが下がり、歯と歯のあいだにすき間ができて、そこに歯石が入り込んでいたのです。歯石がなくなると歯間ブラシなどが入りやすくなるので、掃除が容易になります。
また、歯がしみるようになるのは、歯石が歯の表面の凹みなどのなかにも入り込んでいるので、取るときにどうしても歯の表面が一層削られてしまうからです。歯がしみる症状は、歯みがきをしっかり続けるうちにほとんどが治まっていきます。
お口のなかには、みがいていても、どうしても歯石がつきやすい場所があります。それは唾液腺(唾液の出口)の近くにある歯で、たとえば舌下腺は舌の裏側にあるため、下の前歯の裏側は歯石がつきやすいです。一方、上の奥歯の表側も、耳下腺が近くにあるため、歯石ができやすいです。歯石はプラークが唾液中のミネラルとくっついて形成されるので、少量のプラークでも、唾液腺の近くにある歯には歯石がつきやすいのです。
さて、これまで歯ぐきの上にできる歯石、専門用語でいえば「歯肉縁上歯石」についてお話ししてきましたが、じつは歯ぐきの溝のなか、歯の根元にも歯石はできます。
これは「歯肉縁下歯石」といい、色は黒く、歯ぐきの上にできる歯石より硬いことが多いです。表面はザラザラしていて、歯周病を悪化させる細菌をたくさん含んだプラークが付着します。しかも歯ぐきの深いところに入り込んでいるので、いくら歯みがきをがんばっても取れません。
歯ぐきの上にあるにしろ下にあるにしろ、歯石は患者さんの手では取れないので、歯科医院で取ってもらう必要があります。取ってもらったあとは、歯石が再びつくられないよう、しっかり歯みがきをしましょう。歯みがきのしかたも歯科医院でチェックしてもらうといいですよ。

 

⚫️糖尿病の入り口はお口にあり!

ラーメンにはテンションが上がりますね。

しかし、健康的ではありません。わかっちゃいるけど・・・

 

 

「医者さんで糖尿病のお話」というと、場違いな感じがするかもしれませんが、じつは糖尿病とお口にはとても深~い関係があるのです。
1つ目の共通点は「病気の古さ」。人類で一番古い病気はむし歯といわれていますが、糖尿病も古く、3千年以上昔の古文書に記されています。時代を重ねるごとに患者数が激増している点もよく似ています。日本歯周病患者は成人の8割、糖尿病患者は予備軍も含めると成人の4割にも達するといわれています。糖尿病のかたは歯周病になりやすく、また重症化しやすいため、必ず歯医者さんに定期通院しなければなりません。
2つ目は「歯に悪い食べ物は糖尿病にもよくない」ということ。昔は砂糖は希少品でしたが、いまの時代はお菓子や菓子パン、清涼飲料水などがあふれており、小さな子どもからお年寄りに至るまで、国民全員が毎日、口にしています。砂糖はむし歯菌が喜ぶだけでなく、血糖値の急上昇にもつながりますので、そのまま摂り続けていると糖尿病まっしぐらとなってしまいます。逆に、噛みごたえのある野菜や玄米など、「歯にやさしい食べ物は糖尿病になりにくい」ことも覚えておきましょう。

砂糖の弊害

医科の先生とお話しする機会がありますが、

西洋医学での対処療法だけでなく、東洋医学の原因除去のアプローチをとっている先生方もたくさんいらっしゃいます。非常に勉強になりますし、私たち歯科の診療室でも、患者さんの健康管理のため、効果的にカウンセリングする上で参考になっています。

例えば、清涼飲料水を常飲しているようなお子さんは、歯が大体ボロボロに変わっていきます。口腔内が酸性に傾いたままで、歯がどんどん溶けていく現象が起きます。

歯が丈夫で、清涼飲料水や菓子パンなどを取り続けている場合、次に多い問題が実はうつ病であるとのこと。砂糖の多い食生活により、短鎖脂肪酸を作れる腸内細菌が減ってしまい、この短鎖脂肪酸が腸内で少なくなると、うつ傾向になりやすいのです。

その他の弊害が、糖尿病です。こういう病気は、動物では見られないものです。

なぜかというと、野生の動物は砂糖のように甘いものを摂りたくても摂れません。

昔の人も、現代のようにしょっちゅう砂糖を取れませんでしたので、

このような病気は以前はなかったわけです。

甘いものを摂ると、血管の内壁がダメージを受けます。内出血が起こりやすいため、脳出血やくも膜下出血のリスクが高まります。

記念のケーキなんかはいいものですよね・・・

 

また、甘いものを食べると、例えばお菓子やジュースなどですが、血糖値を下げるインシュリンというホルモンがたくさん出ます。必ず下がりすぎるので、今度は血糖値を上げるホルモンが働きます。副腎にあるコルチゾールや、グルカゴンというホルモンを使って、徐々に血糖値を上げていくという現象が起きます。このコルチゾールやグルカゴンの働きは糖新生と言って、体の中の内臓や筋肉を壊しながらブドウ糖を出すようにします。この時、筋肉には窒素が含まれているので、アンモニアができてしまいます。脂肪を分解するとケトンができます。この2つは、両方とも発癌物質なのです。なので、甘いものを食べていて、血糖値の急上昇・急降下が生じている状態を高血糖スパイクと言いますが、これを生活習慣のように長く続けている人は、糖尿病に関係なく癌になりやすいです。1度に大量に摂るよりも、1日に何回も高頻度でとっている方が、癌になりやすいです。甘いものは、脳の快楽報酬系に入るので、依存性があります。大脳の前頭前野にドーパミンが出て、多幸感が得られます。なので、ケーキとかを食べると脳が幸せに感じるのです。インシュリンが出るのはそれから15〜20分後。そこから血糖値が下がって、グルカゴンとかが出てくると、今度はイライラ、不機嫌の状態になります。で、また甘いものを食べてしまうというループに陥るのです。

子供の歯ぐきのトラブル

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、子どもの歯ぐきの病気と、その特徴についてのお話です。

 

来院された時、歯の表面に何日も付着しているような汚れが多かった口腔内。

ブラシで清掃したところ、歯茎の赤みが強く、出血が多かったです。

 

⚫️子どもは歯周炎にならないのか?

 子どもに認められる歯周疾患は,デンタルプラークの蓄積が原因となる歯肉炎(プラーク性

歯肉炎)がほとんどで、歯周炎はごくまれです。

1歳半までの30%以上の子どもが、歯肉の発赤・腫脹を伴うプラーク性歯肉炎に罹患しているといわれています。その後,成長とともにプラーク性歯肉炎は増加しつづけ、思春期には半数以上にも及びます。それでも、成人になるまでにアタッチメントロスや歯槽骨の破壊を伴う歯周炎を発症することはほとんどありません。

 子どもの口腔内からは歯周病菌があまり検出されず、歯周組織の抵抗力も強いため、歯周炎を発症しにくいようです。しかし、成長するにつれて歯周病菌が増加していくだけでなく、歯周組織の抵抗力が低下していきます。そのようななかで、プラーク性歯肉炎は歯周炎を誘発するリスクファクターになるため、子どものうちから歯周状態の健康を意識しておくことが大切です。

●歯周病菌と歯周組織のバランス

子どもの歯周組織は抵抗力が強く、病原性の高い歯周病菌が存在することもまれです。そのため、デンタルプラークが蓄積しても、歯肉炎(プラーク性歯肉炎)を引き起こすだけで、歯周炎まで発症することはほとんどありません。しかし、プラーク性歯肉炎を放置したまま油断していると、子どもが成人になったときに、病原性の高い歯周病菌の定着と歯周組織の抵抗力の低下を生じて、歯周炎が引き起こされます。

⚫️歯周病菌の出現

 デンタルプラークは歯肉緑上プラークと歯肉

縁下プラークに分類され、それぞれの環境の違いにより構成される細菌の種類が異なります。

歯肉緑上プラークは歯面に形成され、酸素が浸透しやすい環境下で生存できるう蝕の原因菌をはじめとする口腔レンサ球菌などが生息しています。それに対して、歯肉縁下プラークが形成される歯肉溝は、構造的に酸素が侵入しにくい環境であるため、空気を嫌う多くの歯周病菌は歯肉溝に生息します。子どもでは歯肉縁上プラークの構成菌は成人とあまり変わりませんが、歯肉溝に存在する菌は成人とは大きく異なり、歯周病菌はあまり検出されません。

 しかし、歯周病にかかわる菌は成人になってから突如出現するわけではありません。子どものうちに定着する歯周病原性の弱い菌が、思春期になって現れる病原性のやや強い菌の定着のために必要であるとされています。さらに、成人になって出現する病原性の高い菌の定着に、小児期および思春期に形成された菌がかかわると考えられています。また、歯周病菌は保護者から子どもに伝播することが知られており、重度の歯肉炎に罹患した子どものデンタルプラークからは多くの歯周病菌種が検出されることがあります。したがって、子どもの歯肉炎を放置することは、歯周病菌の定着時期を早め,歯周炎を発症するリスクを高めることになります。

●歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラーク

う蝕の原因や歯周病性の低い滞在菌は歯肉縁上プラークに生息しているのに対して、病原性の高い歯周病菌は歯肉炎縁下プラークに生息しています。子どもでは歯肉溝が浅く歯周病にかかわる菌は少ないですが、口腔衛生状態の悪い子どもでは病原性の高い歯周病菌が存在することがあります。

⚫️子どもの歯周炎

1. プラーク性歯肉炎

子どもの歯肉炎は、プラーク性歯肉炎がほとんどであるため,デンタルプラークを除去することで容易に解決できます。プラーク性歯肉炎を有する子どもでは,デンタルプラーク除去時に歯肉に痛みや出血を伴います。そのため,子どもは歯磨きを嫌がり、歯肉炎をさらに悪化させるという悪循環に陥ることがあります。また,子どもや保護者の十分な協力が得られなければ,歯肉炎が一時的に改善したとしてもすぐに再発します。子どもに歯磨きを習慣化させるためには、歯科衛生士が子どもや保護者に根気よく指導を行うことが必要です。

 萌出途中の永久歯の歯肉炎は、深い歯肉溝にデンタルプラークが蓄積することで容易に生じ,特に萌出性歯肉炎とよばれています。萌出性歯肉炎の好発部位は大臼歯ですが、前歯や小臼歯に生じることもあります。また、小学校高学年から中学生ごろには,ホルモンの変調,受験やクラブ活動による不規則な生活、口腔衛生に対する関心の低さなどが重なり、歯肉炎の罹患率が高くなることから、特に思春期性歯肉炎とよばれています。萌出性歯肉炎や思春期性歯肉炎による疼痛や炎症が頭著な場合には、抗菌薬や鎮痛薬を処方することもあります。これらの歯肉炎を発症する年代では、歯科受診の機会が少なくなる傾向にあるため、定期検診の重要性をよくご理解いただくことが大切です。

2.口呼吸由来の歯肉炎

 口呼吸由来の歯肉炎は上顎前歯部に好発し,露出した唇側歯肉が乾燥することにより発赤や

腫脹を生じます。口呼吸は、口唇閉鎖不全、歯列不正、気道の狭窄、鼻疾患などさまざまな原因により生じるため、原因を明確にして除去することが必要です。

 口呼吸由来の歯肉炎は,プラーク沈着が直接の原因ではありませんが、口腔衛生状態が不良なほど悪化するため,口腔内を清潔に保つことも大切です。

3.   歯肉増殖

 歯肉増殖は薬物の副作用や遺伝的要因に分類され、全顎的に歯肉肥大を認めます。薬物性の歯肉増殖は、てんかん発作の治療に用いる抗けいれん薬のフェニトイン、臓器移植の拒絶反応を抑える免疫抑制剤のシクロスポリン、高血圧や狭心症の治療に用いられるカルシウム拮抗薬のニフェジピンなどの服用により生じます。

 増殖した歯肉は非炎症性で硬く、歯冠を完全に覆うこともあり、歯肉切除を行わなければ改善させることは困難です。歯肉増殖の直接の原因はデンタルプラークではありませんが,歯肉

切除を行ったとしてもプラークコントロールが不十分であれば再発しやすくなります。

清掃状態をチェックするための染め出し液。

磨き残しがある部位について、患者さんと共有することで

普段お掃除ができてるようでできていないところを改善していきます。

小児歯科だけでなく、大人の方の歯周病治療や健診時にも必ず染め出しを行なっております。

 

 

4.歯肉退縮

  (咬合性外傷由来,機械的刺激由来)

 歯肉退縮は,叢生により唇側転位した下顎の

永久前歯の唇側に多く認められます。このような歯は、歯ブラシが他の歯よりも強くたることに加え、唇側の歯槽骨が非常に薄いために容易に歯肉退縮を生じます。

 また,特定の歯が歯ぎしりなどで強い咬合力を受けると。歯周組織に炎症を生じて歯肉退縮を引き起こすことがあります。ブラッシング指導や咬合調整だけでは改善が期待できない場合には、矯正治療で歯を適切な位置に移動させる必要があります。

⚫️子どもの歯肉炎

1.慢性歯周炎

 小児期に原因不明の重度の歯周炎を発症することがごくまれにあります。小児期の歯周炎は、乳歯と永久歯のそれぞれに認められ、短時間のうちに歯槽骨吸収や歯の動揺を生じることが多いです。

 小児期の歯周炎は全身疾患と関連していることがあり、遺伝性のものと免疫系に関連するものに分類されます。遺伝性のものとして、家族性周期性好中球減少症、ダウン症候群、白血球

接着能不全症候群、パピヨン・ルフェーブル症候群、チェディアック・東症候群、組織球症症候群などがあげられます。一方、免疫系に関連する疾患としては、白血病や糖尿病などがあげられます。これらの疾患をもつ患者さんは、小児科領域から紹介されて歯科領域でフォローすることが多いです。

 上記の全身疾患を有する子どもは、病原性の高い歯周病菌が存在しなくても、歯周組織の抵抗性が極端に弱いために歯周炎を発症します。

歯周炎の原因が全身状態に起因するため、歯周組織に対する治療で歯槽骨の吸収を抑えることは困難です。それでも、歯科医院ではスケーリングや抗菌薬の局所投与を行い,歯周炎の悪化を遅らせる必要があります。歯周組織の痛みや歯の動揺などの症状が改善しない場合には、該当する歯は自然脱落や抜歯の対象になることもあります。

 

小児患者さんのブラッシング用歯ブラシ。

毛先が柔らかく、歯肉炎のある状態でも用いやすいタイプです。

 

2.  非炎症性歯周病変

  (低ホスファターゼ症)

 デンタルプラークの蓄積による炎症が原因でない歯周疾患のことを「非炎症性歯周病変」というよび方が使われはじめています。たとえば、低ホスファターゼ症がこれに該当します。低ホスファターゼ症は、遺伝子の変異により血中のアルカリホスファターゼ活性が低下して骨の形成不全を生じる疾患であり、歯科的には乳歯の早期脱落が特徴的です。乳歯の早期脱落は、セメント質形成不全により乳歯と歯槽骨との結合が不十分であることに起因します。

 乳歯が早期脱落した症例では印象採得が可能になるころから、咀嚼や発音、審美性の改善のために小児義歯を装着します。これまで低ホスファターゼ症は、予後不良の難病とされてきましたが、近年開発された酵素補充療法という治療法により患者さんの寿命やQOLが向上してきています。

 低ホスファターゼ症では早期発見が重要であり、疑われる症例はできるだけ早期に小児科領域に紹介することが推奨されます。歯だけにしか症状が出ない症例もありますが、歯科領域から小児科領域に早期に紹介することができたおかげで、全身に生じていた骨の異常を早期に発見できた症例も存在します。

口腔と全身疾患、関節リウマチについて

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、口腔内の病気と関節リウマチや全身疾患との関連についてです。

 

関節リウマチは、全国で70万人程の患者数であり、8割が女性に現れる病気です。

 発症したら、ステロイド剤・消炎鎮痛剤・免波抑制剤等を服用し続ける必要があります。

 近年では強力な効果のある生物学的製剤(レミケード・エンブレル等)が脚光を浴びていますが、これらの治療法は「感染症になりやすい」「治療費が月3~5万円以上と高額」といった難点があり、現在のリウマチにおける治療は、薬物を使用し、症状を抑えこむ対症療法が中心になっています。

 そんななか、体の使い方を変えて薬を減らしていくという独自の観点から医療のあり方を模索し、全国のリウマチ・アレルギー患者から支持を集めている一人の医師がいます。福岡県博多市に「みらいクリニック」を構える内科医、今井一彰氏です。

 今井氏は新薬などの薬剤による治療に疑問を感じ、数年にわたり漢方治療を試みる時期もありました。しかし、薬を飲み続けなければ良い状態が維持できないということへの疑問は解消することはありませんでした。

 「医学の東西を問わず、処方箋を通じた患者さんとのつながりを見直す必要があるだろう、そのために第三の道を考えなければならない」と思った頃、リウマチ患者に共通する特有の匂いに気づき、それが口腔内の炎症に起因すると分かったことが大きな転機になりました。

 今井氏は、匂いを消すには口を閉じる、唾液の分泌を促せばよいのではないかと考えました。

ところが、当時は口臭について周辺の歯科医院に聞いても確かな答えが得られません。やむなく独自に学びながら患者さんに指導を始めたのが10年以上前のこと。内科的な治療効果の意図

を持って歯科治療を依頼するようになったのは、ほんの数年前のことです。

⚫️上流医療とは

 上流医療」を理解するための象徴的なエピソードがあります。

宮城県気仙沼市の中心街から車で数十分。舞根湾に流れ込む大川の河口に畠山重篤氏の経営る牡蠣とホタテの養殖場、「水山養殖場」があります。

 畠山氏が海の異変に気づいたのは1970年前後のこと。夏に赤潮が発生し魚が捕れなくなったのです。「赤潮が湾の奥から発生するということは排水による川の汚れではないか」と畠山氏は思いました。84年、フランスの代表的な牡蠣生産地に視察に行くと、現地の養殖場は気仙沼市と同じようにローヌ川やシャロンド川などの河口域にあります。畠山氏は牡蠣の養殖にはあらためて川が重要であることを確信しました。

 しかし宮崎県は88年に新月ダム建設計画を発表。「これができたら気仙沼は死んでしまう」と、悩んだ末に畠山氏が辿り着いた結論は、大川の上流の室根山に木を植えることでした。この提案に70人の漁師が賛同し、89年に「牡蠣の森を慕う会」が誕生。大川の水源地である室根神社のそばで第1回の植祭が行われました。海をきれいにするには上流をきれいにすることが必要という畠山氏の考えは、北海道大学水産学部の松永勝彦教授(当時)の研究によって、←学的に森と川の関係が裏づけられ、新月ダム建築は廃案になったのです。

「河口域でおいしい牡蠣を育てるには、川の上流をきれいにしなければならない」という原理は、人の体でも同じことです。

 今井氏は人間の体の「鼻」と「口」が上流だとし、ます鼻と口をきれいにすることから全身を診る治療を考案しました。これを「上流医療」もしくは「源流医療」としています。

●口呼吸が引き起こす全身疾患

口呼吸が多く、乾燥が強い患者さんの口腔内写真。

わかりづらいですが、舌や粘膜は診察時、お口を開けていただくと乾いた質感になっています。

口臭が強く感じる程度あります。

 

口腔内に菌が増えやすいため、虫歯のリスクが高くなります。

修復されている箇所が多いです。

唾液には殺菌作用があるため、口呼吸で乾燥した状態だと

唾液の消化作用や殺菌作用が弱まってしまいます。

 

 上咽頭は呼吸をすると必ず汚れる部位で、風邪をひくと最初に痛くなる所といえば分かる方が多いのではと思います。上咽頭や歯肉のような粘膜には、リンパ組織が多く集まっています。

口腔の扁桃や歯肉などのように、細菌感染していながら同時に防御もしているという部位は人体でもあまり例がなく、これらの部位の感染と全身疾患の関係が顕著だった例は少なくありません。

 この重要な上咽頭部に炎症などの問題を抱えている患者の多くに共通する特徴は、「口呼吸」だと言われています。

 人間にとって本来、呼気も吸気も鼻だけで行うのが正しい呼吸法ですが、常に口で呼吸することが癖になっている人はとても多いです。日常的に口呼吸を続けていると、さまざまな病気の原因になります。口呼吸の習慣は、細菌を日々体内に取り込み、病巣感染となって身体の機能を蝕み、免疫力を徐々に下げていきます。

 口呼吸と関連すると考えられる疾患には、関節リウマチ、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、うつ病、化学物質過敏症、ドライマウス、慢性副鼻腔炎、ペリオ、いびき、睡眠時無呼吸症候群などがあげられます

 口呼吸する方の特徴は、以下のような特徴があります。

・いつも口を開けている

・口を閉じると、あごに梅干し状のふくらみと

 シワができる

・下唇が腫れぼったく、むくんでいる感じ

・左右の目の大きさが違う

・目がはれぼったく、むくんでいる感じ

・食べるときにクチャクチャ音を立てる

・朝起きたときに、喉がヒリヒリする

・朝起きたときに、口の中が乾いている

・口の中がよく乾く

・唇がよく乾く

・口をあけてものを食べる

・いびきや歯ぎしりをする

・口臭が強い

・たばこを吸っている

・激しいスポーツをしている

・前歯が出っ歯気味

・舌に歯形がついている

・二重顎のようになっている

・鼻血がよく出る

●生活習慣の改善は鼻呼吸から

 こうした治療の場合、常に問われるのがエビデンスの有無です。その一例として、今井氏は、いびきをかくお子さんのCRP(C反応性タンパク)は高いというデータを挙げられています。

なぜ口呼吸は悪くて鼻呼吸は良いのかというエビデンスについては、「人体造や、生物の進化の過程から当たり前なのだとしか今のところは、言いようがありませんもちろん、換気量や吸気の調温調湿においても鼻呼吸が当然良いのですが、それが全身の疾患とどのようにつながっているのかを解明するのが、現在の課題です」としています。

 上咽頭は呼吸すると必ず汚れる部位で、この部分の上皮細胞を洗浄し、炎症を制御することが大事ですが、うがいをしてもここまでは届きません。具体的な処置としては生理食塩水や次亜塩素酸などを点鼻するなどの方法が考えられますが、さらに大切なことは治療後の呼吸法など生活習慣の指導であると今井氏は述べています。

▪️呼吸の改善法

 当院では、「あいうべ体操」「口テープ」を患者さんに お勧めしています。

⚫️抜歯で失明?!ペーチェット病と歯科

 ベーチェット病は、消化管(とくに口腔内)と外陰部の潰瘍、皮膚症状(毛のう炎、結節性

紅斑)、眼症状(ぶどう膜炎)、関節炎や血管炎などの症状を呈する優性再発性炎症性疾患です。

 不良な口腔衛生状態に関連して白血球が活性化することによって発症・増悪する疾患があります。例えば、掌蹠膿疱症、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などです。これらは、口腔連鎖球菌が血液中に入ると白血球が活性化して発症や増悪の引き金になるという機序が共通す。

 ベーチェット病の患者さんが歯を抜いたあと、1日から2日後にぶどう膜炎が発症、または憎悪して視力が低下するというのはその典型例です。喫煙歴があり、う歯や歯周病など口腔衛生状態が不良であり、HLAIB51陽性といった遺伝的な素因も持っている場合は、発症のスクが高まります。

 目が見えなくなった患者さんはあわてて眼科に駆け込みますが、歯科の治療とは関係ないと思っていますので、トリガーとなった歯科治療のことは、眼科の先生には話しません。

 現在はレミケードなど強力な薬がありますが、ぶどう膜炎が重症の場合は失明に至ることもあります。べーチェット病の患者さんの場合は、予めコンヒチンという薬を1週間以上服用し、白血球を活性化しにくい状態にしておいて、抜歯すれば比較的安全です。歯科ではこういった情報は、知られていません。ベーチェット病の治療ガイドラインに載ってしかるべきと思いますし、こういった関連性があることはすべての歯科医師の方に知って頂くことを望んでいます。

ドライマウス

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、口腔内の乾燥、口呼吸についてのお話です。

 

⚫️口臭歯周病の原因になるドライマウス

 唾液の量が減少し、口の中が乾きやすくなるドライマウス(口腔乾燥症)。唾液の量が減少すると、口内に細菌が繁殖しやすくなり、さまざまな口腔トラブルを引き起こす原因になります。

 唾液量の不足により口内の殺菌作用が低下すると、それまで抑えられていた細菌が活発に繁殖し始めます。細菌が増加すると、細菌の活動によって発生する酸(乳酸)や毒素(エンドトキシン)も増加することになります。酸は歯の表面のエナメル質を溶解し、虫歯を発生させ、毒素は歯肉(歯周組織)に炎症をもたらし、歯周病を作る原因になります。

 また、細菌が活発に活動することにより、臭いを発生させる代謝産物も多く生じ、口臭の原因にもなります。

 ドライマウスはどんな人がなりやすいのでしょうか?

 カフェインやアルコール、ニコチンの過剰摂取は、ドライマウスの原因になります。

これらの物質は高い利尿作用があり、体内に脱水症状を来します。脱水症状になると、唾液量が減少し、口腔乾燥を引き起こすというわけです。コーヒーなどのカフェインが多く含まれる嗜好品や、アルコールをよく摂取する方、喫煙習慣のある方は注意が必要です。

 また、男女の比率でいうと、ドライマウスは、女性が多いのです。

 とくに閉経後、女性のドライマウスは進行していきます。

 女性は閉経後体内にあるエストロゲンの量が低下します。エストロゲンは、女性ホルモンの一種です。

 エストロゲンが低下すると、唾液の量も減少することで知られています。

 その他、無理なダイエットで水分や食物を過剰に制限することにより、水分摂取量が低下し、唾液の分泌が抑制されて、ドライマウスを引き起こすこともあります。

⚫️ドライマウスを予防するには

 ドライマウスは、口の中が乾燥する症状です。ドライマウスを予防するには、口の中を乾燥させないようにすることが大切です。

 それにはまず、「口呼吸」を止めること。ドライマウスの人のほとんどは、口で息をする「ロ呼吸」です。口がいつも開いていたり、唇や口の中がよく乾くという症状が見られます。噛み合わせが悪いと、口を閉じにくくなり、口呼吸になりやすくなります。

 口呼吸は、ドライマウスだけでなく、イビキや睡眠時無呼吸症候群、アレルギーや膠原病、関節リウマチや身体のさまざまな疾患の原因になります。

 口呼吸から鼻呼吸にすることで、口内の乾燥を防ぐことができ、さまざまな症状が観和されます。

 あとは、唾液の分泌量がへらないように、適切な水分補給をすること。カフェインやアルコール、ニコチンなど、体内の水分を奪ってしまうような物質の過剰摂取は、避けるべきです。

⚫️口呼吸予防 【あいうべ体操】

 

 口呼吸の改善には、「あいうべ体操」が効果的です。

「あいうべ体操」は、内科医の今井一彰氏が考案した、口呼吸を改善するための体操です。

「あいうべ体操」をしっかり継続している人は、自然に鼻で呼吸ができるようになります。

 口を閉じて鼻で呼吸するためには、口の周りの筋肉と舌を突き出す筋肉を鍛える必要ごあります。また、筋肉のポンプ作用によっね、唾液の分泌が促されます。

 あいうべ体操のうち、「あいう」は口の周りの筋肉の、「べ」は舌を突き出す筋肉のトレーニングです。

 まず、口を楕円形にして、喉の奥が見えるまで大きく開き、「あ1」と言います。つぎに、前歯を出して、首の筋が浮き出るくらい口をグッと横に開いて、「いー」と言います。「う」は口を閉じる筋肉の体操で、唇を尖らせて前に突き出して、「うー」と言います。最後の「べ」では、舌の付け根が引っ張られるくらい、思い切り舌を前に突き出して、「ベー」と言いましょう。

【あいうべ体操手順】

①「あー」と口を大きく開く

②「いー」と口を大きく横に広げる

③「うー」と口を強く前に突き出す

④「べー」と舌を突き出して伸ばす

①〜④を、1セットとし、1日30セットを目安に毎日続ける

 この体操は、真剣に行うとかなり疲れます。慣れるまでは、2〜3度に分けたほうが続けやすいでしょう。

 また、「あいうべ体操」は、しゃべるときより口をしっかり、大きく動かす必要がありますが、無理は禁物です。

 とくに顎関節症の人や顎を開けると痛むという場合は、回数を減らすか、「いー」「うー」のみを繰り返してみてください。「いー」「うー」の部分の体操は、関節に負担がかからないため、何回行っても大丈夫です。

 唾液の分泌が増えることで免疫力が上がるので、いろんな病気の予防にもなります。

 あいうべ体操で口呼吸を改善し、体そのものが強くなり、今まで飲んでいた薬を卒業したという人も少なくありません。

 

 

⚫️顎関節症や肩こり、頭痛などの原因になるブラキシズム

食いしばり、噛み締めにより噛み合わせの筋肉は過緊張し、筋肉痛状態になります。

顎の関節にも良くない影響が及んでしまうのです。

 

 歯ぎしりがひどい。顎が痛む。慢性的な肩こりや頭痛がある。それは、歯の「ブラキシズム」によるものかもしれません。

 Bruxism:ブラキシズムとは咀嚼筋(咬むための筋肉)が無意識に異常な動きをする異常運動のことです。口腔悪習癖と呼ばれている悪い癖のひとつにも分類され、言葉の語源はギリシや語のBrychein から得ています。

 睡眠中の「歯ぎしり」や、強い力で必要以上に噛みしめてしまう「食いしばり」がこれに当たります。ブラキシズムは、歯の摩耗や折損、顎の関節の障害など重大なトラブルを引き起こします。

 無意識下の異常運動には3つの要素があり、歯をすり合わせるグラインディング、食いしばるクレンチング、上下の歯をカチカチと小刻みに接触させるタッピングがあります。

 朝起きると顎が疲れていたり、歯に負担がかかっていることがあります。これは睡眠中に過度の力が加わっているため起こる症状です。ブラキシズムは、噛み合わせの問題もありますが、

最も大きな原因は精神的ストレスであるとされています。つまり、誰でも起こり得る可能性があるということです。歯ぎしりやくいしばりの習慣が長期化すると、歯や顎にふたんがかかり、重症化します。

 歯が折れる、割れる、抜けるほか、口があかない、顎が痛いなどの顎関節症は、その代表例です。ほかにも、頭痛、首や肩こり、腰痛、めまい、耳鳴りなどさまざまなな症状の原因になります。

 

歯が折れていても外からは見えませんよね。

歯根は接している歯はこのような状態で、歯茎の中で完全に割れているところには、

口腔内の良くない菌の感染が顎の骨に及びますので、

痛みや歯茎の腫れが生じることが多いです。

 

 ブラキシズムは無意識で行われているので、夜間の歯ぎしりで、家族などに「歯ぎしりがすごい」「うるさい」などと指摘されたりする以外は、なかなか自覚することが難しいでしょう。

 ブラキシズムの治療には、マウスピースやプレートなど防止装置を使用し歯の磨耗や就寝時の騒音を防ぐ対策療法がよく使われます。ほかにも、噛み合わせ治療や矯正治療、薬物療法もあります。

 家族に夜間の歯ぎしりの騒音で指摘を受けている、顎が疲れたり痛むことごよくある、慢性的な肩こりや頭痛がある!そんな症状が見られる患者さんがいる場合には、ブラキシズムを疑ってみましょう。そして、重症化し生活に支障をきたす前に、早めに歯科医への受診を促して欲しいです。

⚫️舌と顎が大きく関わる睡眠時無呼吸症候群

 「睡眠時無呼吸症候群」という病気が広く知られるようになってきました。睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、「睡眠中10秒以上の呼吸停止が1時間あたり5回以上。もしくは7時間以上の睡眠で30回以上起きること」と定義されています。

 重篤の場合、心筋梗塞や脳梗塞などによる突発死、成長ホルモンの30%減少などの影響が明らかにされています。

 ここで言う無呼吸の状態とは、いびきがやんでいるときで、定義では10秒以上となっていますが、通常20〜30秒くらい、ひどい場合には1分から2分近く続く人もいるようです。

 また、30回どころか、ひと晩に100回も無呼吸を繰り返す場合もあります。

 無呼吸というのはいわば窒息状態ですから、こんな長い間、無呼吸でいたら、苦しくないはずがありません。無呼吸のあとに爆発音のような大いびきをかくのは、酸素を体内に供給しようと、大きく空気を吸い込もうとするためで、激しくもがくような動きを伴なうこともしばしばです。

 一般的に、睡眠時無呼吸症候群は、肥満体型の人がなりやすいと言われてきます。睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である上気道が閉塞するとこにより起こります。上気道は、鼻腔、アデノイド、口蓋扁桃、軟口蓋、舌根部で構成されています。上気道は首回りの脂肪の沈着により閉塞しやすくなります。ですので、痩せることが睡眠時無呼吸症候群を治す、予防する方法と考えている方も多いようです。しかし、欧米人の患者にはたしかに肥満体型の人は多いのですが、日本では痩せていると人でも睡眠時無呼吸症候群になるケースが多くみられています。

 上気道が閉塞する原因は他にもあります。それは「舌」と「顎」です。噛み合わせが深い(過蓋咬合)状態だと、舌と歯列のバランスが悪くなり、舌は後退し、喉の方向に押し出されやすくなります。また、下顎が小さい(小下顎状症)と、口の中の容積ぎ小さくなり、舌は喉の方へ押し出されやすくなります。その結果、気道には狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となるのです。

 また、出っ歯(上顎前突)、噛んだときに前歯に隙間がある(開咬)症状がらみられると、口は閉じにくくなり、口を開けたままでいることが多くなります。

 口を開けたまま寝てします(口呼吸)と、重力の作用で下顎は後退し、舌は後ろ(喉の方向)に押し出されやすくなります。結果、気道は狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となります。

 歯科医で行う治療としては、マウスピースを用いて行う方法が一般的です。寝ているときに装着し、舌や顎が後退するのを防ぎます。

歯肉の性状、口呼吸、食と栄養について

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、歯肉の状態の詳しいお話、食事の栄養についてです。

 

⚫️健康な歯肉・炎症のある歯肉

 

【健康な歯肉】

健康な歯肉は薄いピンク色で、セメント質と歯肉を結合するコラーゲンの機能が歯肉上皮を引っ張っているというスティップリングが点状に見えます。歯間乳頭は歯間空隙にフィットし引き締まった三角形をしています。

 

【炎症のある歯肉】

炎症のある歯肉は、辺縁が赤く丸みがあります。歯間乳頭は歯間空隙からはみ出るように赤く膨れ、スティップリングが消失しているのがわかります。

▶︎拡大して見ると・・・

健康な歯肉にエアーをかけて観察すると、硬く引き締まって歯面に密着しており弾力があるため、プローブで触った跡はすぐ元に戻ります。そして、スティップリングは大きさが一つひとつ異なるようすや、歯冠側からの観察では立体的な小窩になっているようすを確認できます。
一方、プラークに反応して炎症が起きた歯肉は、毛細血管が怒張し血管透過性が亢進して組織液が増えるため、赤く膨らんでいます。炎症の起きた歯肉では、毛細血管が線状に走行しているようすは見えにくくなることが多いですが、辺縁歯肉に赤い点としてはっきり見えることもあります。そしてここにプローブを挿入すると、容易に出血しBOP(+)となるのです。また、歯肉に密着しておらず弾力がなくなり、プローブで押した跡やポケットに挿入した跡がしばらく残ります。スティップリングは消失していますが、炎症がある歯肉でも確認される場合があり、健康を判断するうえでの十分な指標にはならないといわれています。

▪️炎症がある部位には肉芽組織が見られることもある

歯肉溝内に肉芽組織も観察すると赤く柔らかく、表面に顆粒状の膨らみが見えるときは、肉芽組織は、傷の治癒欠損した組織の補充、異物の処理に大切なはたらきをしますが、炎症(特に慢性炎症または炎症の治癒期)にも見られることがあります。
マイクロスコープは視軸と光軸がほぼ同軸で、深いポケット内も非常に明るく拡大して観察することができます。もともとこの部位にBOP(検査器具で触ったときの出血)はなかったため、肉眼だけで観察したのでは、正常に治癒してると判断してしまうこともあります。
肉芽組織が生じた原因は不明ですが、これは、部位の歯肉が正常でまないことを示しています。肉芽組織が観察されたら、その後も継続に観察を行い、治癒に至るのか、歯周炎が残存しているのかを判断する材料の一つにしています。

▪️パッと見ると、健康そうでも炎症があるかも…?!

一見、歯肉が薄いピンク色で硬く引き締まっているように見えても、炎症を生じている場合があります。
拡大してよく見ると、辺縁歯肉が丸みを帯びて歯面に密着しておらず、エアーをかけると歯面との間にわずかな隙間があることがわかりました。プローブを挿入するとプラークの付着が確認でき、BOPが確認できたことからも、炎症を生じている可能性があると考えられます。

炎症のあるなしで、このような違いがあるのですね。

ちなみに、口呼吸と歯肉の炎症って関係なさそうですが、

口呼吸で口腔内が乾燥するため、菌が増えて炎症しやすくなってしまいます。

気づかないだけで、多くの人が口呼吸をしてしまっています。

どのように改善したらよいのでしょうか?

 

⚫️口呼吸をやめるために効果が認められている方法は?

 

口唇閉鎖力がポイント

リットレメーターという機器です。

シンプルな構造ですが、これで小児患者さんの口唇閉鎖の力がどの程度か、

検査することができます。

 

 

▪️一時しのぎの方法ではなく、口輪筋を主とした筋群を鍛えることによって口唇閉鎖力を改善することが有効だと思われます。

鼻咽腔の機能に異常がなく、上下前歯の被蓋関係や骨格的な関係に不調和がないのに口呼吸の癖がある方の場合、口唇を閉じる力である「口唇閉鎖力」が低下している可能性が高いと思われます。口唇閉鎖力は、口呼吸の方は健常者に比べて有意に低く、60歳前後から低下傾向が見られることがわかっています。また、口唇閉鎖力は、特に高齢者においては食べこぼしや流涎と関連し、他の身体機能や疾患などの影響を受けやすいとも考えられています。
口呼吸の改善方法としては、鼻に特殊なテープを貼って鼻腔を広げる方法や、口に絆創膏を貼って寝る方法などがありますが、どれも一時しのぎに過ぎません。訓練などを行って、口輪筋を主とした筋群を鍛えることによって口唇閉鎖力を改善することが、口呼吸を鼻呼吸に変えるのに有効だと思われます。
自主訓練について、日本摂食の下リハビリテーション学会がまとめた訓練法を紹介します。自分で口唇を動かす口唇川練としては、指で口唇をつまんで外側に膨らませるように伸び縮みさせて口輪筋を伸ばす「口唇伸展」があります。また、口唇突出(「ウー」と発音して行う)
と口角引き(「イー」と発音して行う)を繰り返す運動も有効です。さらなる効果を望むなら、抵抗法として負荷をかけた運動を行うとよいでしょう。これは、舌圧子や木べら、ストロー、定規などを口唇で強く挟んで保持する方法です。
また、臼歯部でしっかり咬んだ状態で、前歯と口唇の間に紐を付けたボタンを挿入し、口唇でしっかり挟んだ状態で紐を引っ張ってボタンが口腔外へ飛び出さないよう口唇に力を込める訓練である「ボタンプル法」も有効だと思われます。
その他として、最近では口閉鎖訓練のためのさまざまな器具が市販されており、これらを用いた訓練法も考案されています。いずれの訓練も、やり過ぎはよくありません。各食事前(1日2~3回)に5分程度行うのがよいとされています。

⚫️食と栄養の疑問
カフェインは天然に存在する成分の1つで、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆などに含まれており、さまざまな効能を持つことが明らかになってきていますが、摂りすぎると心拍数の増加、不眠症、頭痛、吐き気などをもたらすこともあります。海外では健康への影響を検討し、妊婦・子どものカフェイン摂取目安量を示している国や機関があります。
日本では、カフェインの感受性に個人差が大きいため、健康に及ぼす影響を正確に評価することは難しいということで、カフェインの1日の摂取許容量が数字として明確に定められていませんが、「妊婦の方、お子さんはカフェインを摂り過ぎないように留意してください」と注意喚起が行われています。
そこで、最近注目されてきているのが、「デカフェ」飲料です。デカフェとは、本来カフェインを含んでいる飲食物からカフェインを取り除く、あるいは通常カフェインを添加する飲食物に添加を行わないことで、カフェインを含んでいないものをいいます。カフェインの除去方法には、①有機溶媒による抽出法、②水による抽出法、③超臨界二酸化炭素抽出法がありますが、
①は有機溶媒の残留の危険性があることから日本では許可されていません。③はカフェイン以外の成分に損失が少なく、コーヒー豆本来の香りなどを守ることができる点や、二酸化炭素を使用するため安全性が高い点から、現在主流になっているようです。
日本では、デカフェに対する明確な基準はありませんが、コーヒー飲料などの表示に関する公正競争規約によると、デカフェと表示できる商品はカフェイン含有量が10%未満とされています。メーカーや商品によってカフェイン含有量は異なるため、利用の際には実際にどれだけ含まれているかの確認が必要です。
以上の点から、デカフェコーヒーは、妊娠中・授乳中の女性や体の小さな子どもたちも利用して問題はありません。ただし、カフェインが含まれているのはコーヒーだけではなく、紅茶、緑茶、ココア、ウーロン茶のほか、これらを原料としている食品にも含まれています。カフェインは原料由来成分で本来表示義務がないため、コーヒー以外のデカフェ表示商品については、正確な含有量を知ることができないのが現状です。気になる方は、メーカーに確認するなどしてから利用すとよいでしょう。

高齢者の栄養摂取

2024年8月29日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は高齢の方の栄養摂取についてのお話です。

 

⚫️高齢者の栄養と食事・食形態

NYUの留学中に食べたステーキ。赤身で食べ応えがありました。

高齢の方の栄養摂取について、補綴の勉強会でも取り扱われる問題であります。

歯が弱っていたり、噛めない入れ歯を装着されておられる場合、

柔らかく炊いたお米や麺が多くなりがちであると。

この写真のような塊である必要はありませんが、とにかくタンパク質不足になる方が多いとのこと。

 

 

プロテインやビタミンでも栄養摂取できるという意見もありますが、

楽しみがないですね。

 

 

 高齢者にとって「口から食べる」ことは生活の楽しみであり、生きがいでもあります。しかし、ときに食事という行為が命取りになってしまうこともあります。その原因の1つは、「本人の摂食感下機能に合わない食事をとること」です。食事中にむせ込みが生じたり、食事時間が長くなったりする場合、「食事が摂食の下機能に合っていない可能性」が考えられます。そして、これらの問題に対して何も対策を講じなければ、いずれは誤嚥性肺炎や窒息を引き起こしてしまうかもしれません。

 もう1点、機能に合わない食事をとることの弊害として、「食欲低下や偏食などによって食事量が減少し、低栄養(栄養失調)や脱水が生じてしまうこと」があげられます。高齢者は成人に比べて体内水分量が減少することから、もともと蓄えている水分量が少ないために脱水状態に陥りやすくなります。そのため、食欲不振やの下障害による水分摂取量の減少には注意が必要です。また。高齢者のなかには喉の渇きを感じづらくなっていたり、トイレに行<のが億劫で水分を控えてしまったりする方も少なからずいるため、心疾患などによる制限がない限り、季節に関係なく水分は十分に摂取する必要があります。

 

●低栄養

 

—低栄養の問題点—

 低栄養の問題点

低栄養になると、体重や筋肉量が減少することでADL (日常生活動作:Activity of Daily Life)が低下し,寝たきり状態になってしまう可能性があります。また,免疫力が低下して風邪などの感染症に罹りやすくなったり。重症化して肺炎になったりするリスクが高くなります。誤嚥も肺炎のリスク要因ですが、栄養状態がよく、免疫力が低下していなければ,たとえ誤嚥をしても肺炎にまで至らない場合もあるのです.ほかにも。低栄養により(床ずれ)ができたり、傷や病気の治りが遅くなったりします。

 低栄養は、特別なきっかけで生じるわけではなく,ちょっとした不注意で簡単に陥ってしまいます。たとえば「歯が抜けた」「義歯が合わない」などは高齢者に容易に起こりうることですが、それがきっかけとなって歯ごたえのある食べ物を避けたり、食欲が低下したりすると、食事量が減少し、栄養バランスが偏ってきます。そのため必要な栄養量を確保できなくなり、低栄養状態に陥ってしまいます。

 特に問題視されているのは,PEM (Protein Energy Malnutrition)といわれる,タンパク質とエネルギー不足の低栄養状態です。高齢になると肉類を敬遠しがちですが、その理由の1つに「噛みにくさ」「飲み込みにくさ」があります.肉や魚など筋肉のもととなるタンパク質を摂取して栄養状態を維持するためには,歯の治療だけでなく、肉や魚を食べやすくする工夫も考ラス要があります。

 

—低栄養のリスク評価—

 

 高齢者の栄養状態を評価するには、まずは体重(kg) を測ることから始まります。加えてBMI(体格指数:Body Mass Index)と体重減少率を算出します。

BMIと体重減少率は、高齢者の低栄養のリスク評価を行う指標となります。BMIは「体重(kg)→(身長(m) 身長(m))」で求められ、18.5~25未満を標準とし、25以上は肥満。18.5未満をやせとしています。

体重減少率は,「(通常体重(kg)一現体重(kg))→通常体重(kg)100」で求められ、どのくらいの期間で体重減少が起こったかによってリスクが異なります。診療室においても、高齢者の体重を把握することが必要でしょう。

 

このくらい歯があり、しかも修復された跡がないような口腔内だと、

病気のリスクが低いと考えられます。

 

咬合が崩壊してしまった患者さんのレントゲン写真。

残っている歯も揺れが大きく、残すことが難しい部分があります。

下の歯が残っている側は、上の歯茎の吸収が著明です。

力の問題が顎の骨の吸収を進行させると考えられます。

このような状態だと、義歯を入れて安定させるのが非常に難しいです。

天然の歯のようには噛めないですし、ここまでになる前に歯科を受診し、治療を受ける必要がありました。

 

—高齢者の必要栄養量とは?—

 

 

 高齢者が必要とする1日の栄養量はどのくらいでしょうか。厚生労働省が示している日本人の食事摂取基準の一部ですが、18~29歳の成人期と比較して、70歳以上では必要エネルギー量は減少します。これは、加齢による除脂肪組織(筋肉や骨など)が減少することで基礎代謝が低下するためです。しかし、タンパク質をはじめとするほかの栄養素は、同等量の摂取が必要であることがわかります。つまり,高齢になっても、肉や魚の摂取量を若いときより減らす必要はないということです。

 

—必要栄養量を確保する方法—

 

 十分なエネルギー量とタンパク質量を摂取しないと,PEMとよばれる低栄養状態になること、また水分量の摂取不足は脱水を引き起こすことは冒頭で述べました。そこで、1日に必要なエネルギー量とタンパク質量。水分量を確保するためのポイントを以下にあげます。

 

①できるかぎり欠食をしない

 

 朝.昼.夕と規則正しく食事を摂るようにします。体調の悪いときや食欲のないときでも、レトルト食品や果物、デザート類をすこしでもいいので食べるほうがよいでしょう.体調の崩れをきっかけに欠食が慢性化することがありますが、そうなると摂取栄養量が不足しつづけてしまうことになります。

 

②間食を取り入れる、少量頻回食にする

 

1回で1食分の量を食べられないという場合は、1日3食にこだわらず、間食を摂ったり、5食にするなど食事回数を増やしたりすることで、1日の必要量を補給するようにします。

 

③毎食タンパク質を含む食品を取り入れる

 

 肉,魚卵,大豆製品、乳製品のいずれかを毎食摂ることで、筋肉のもととなるタンパク質を補給します。

 

④水分補給はこまめに

 

 水分はこまめに摂取するようにします。食事が十分摂れていて、食事時にお茶などの飲み物を摂取している場合でも,食事時以外で計500mLくらいは摂取できるとよいでしょう。

 

⑤栄養バランスを考える

 

 エネルギー源となる主食,筋肉のもとになるタンパク源を補給する主菜、身体の調子を整えるビタミン・ミネラル類を補給する副菜や汁物、というように、一汁二菜または一汁三菜を目安にしましょう 。すべてを手作りしなくても、スーパーの総菜やレトルト食品。冷凍食品などを取り入れながら、なるべく多品目の食材を食べるようにします。

 

⑥栄養補助食品を活用する

 

 通常の食事量が摂れない場合は、少量でも必要なエネルギー量やタンパク質量などを摂取できる、栄養補助食品を活用してもよいでしょう。

 

●摂食嚥下機能に適した食形態とは?

 

 「噛みにくい」「飲み込みにくい」と感じている高齢者が必要栄養量を確実に摂取するためには、摂食の下機能に合った食形態に調整する必要があります。では,噛みにくい、飲み込みにくい場合はどのような工夫が必要か考えてみましょう。

 「パンがパサパサして食べづらい」という場合は、飲み物やスープに浸したり,フレンチトーストにしたりすると食べやすくなります。また、まとまりにくくばらつきやすい米飯は,ひきわり納豆やとろろなど粘りがあるものといっしょに摂ることで,ばらつきやすさが軽減されます。

 

●その他の工夫

 

 認知機能の低下や覚醒状態の悪化などにより食事が進まない場合は、「はっきりとした味つけにする」「香辛料などを利用して香りを強くする」「体温と差がある温度にする」などの刺激があったほうがよいでしょう。

 また、好きなものや好きな味、なじみのある料理を中心にした献立にしたり、きれいな器に盛りつけたりすることで,食欲が増進されて食事が進むこともあります。こうした工夫は医学的ではないかもしれませんが、高齢者の食事を提案するうえで、本人や家族の「語り(ナラティブ)」から得られる情報がとても重要です。食形態を含む食事内容の提案は、摂食嚥下機能評価に基づいて行うことが大前提ですが、本人や家族の嗜好や生活スタイルに合わなければ、難しいです。食事はあくまで生活の一部です。高齢者が食事を楽しめるようなサポートができるといいですね。

お口のメンテナンスについて

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

虫歯や歯周病、歯がないところを補う治療を行い、
一旦治療が終了しました!となったら、
良い状態を保っていくためにメンテナンスを開始します。

 

予防の味方 V7ブラシ

 


ケア用品の一つ、V7歯ブラシ:歯周病、虫歯が始まりやすい歯と歯の間に毛先が入っていく、つまようじ法という磨き方に特化した歯ブラシです。大人の方のメンテナンスに用いています。他の歯ブラシと動かし方が違い、コツが要りますが、軽く動かしても歯と歯の間の歯肉がマッサージされ、清掃効果の高さを感じます。なんと言ってもめちゃくちゃ気持ち良くスッキリできます。

 

◼️メンテナンスの分類

 

①予防的メインテナンス
(preventive maintenance)
②治療後メインテナンス
(post-treatment maintenance)
③試行的メインテナンス
(trial maintenance)
④妥協的メインテナンス
(compromised maintenance)

▪️予防的メインテナンスでは、まだほとんど特異的な歯周病菌の感染の経験もなく、したがって歯周組織の破壊もほとんど認められません。歯肉炎を認めることはありますが、プラークの非特異的蓄積によるものでプラークコントロールにより改善します。
メインテナンスプログラムの中心はセルフケアの強化と歯肉縁上のプロケアとなります。
▪️治療後メインテナンスでは、歯周病菌の感染による破壊の既往があって、それに対して歯周治療を行った患者さんに対するメインテナンスということになります。動的治療によってどれだけ改善し、どれだけ問題が残ったかによってメインテナンスプログラムが変わってきます。
▪️試行的メインテナンスでも歯周病菌の感染と破壊の既往があるのですが、望ましい歯周治療を行わず、より侵襲の少ない次善の治療でメインテナンスに移行している場合になります。問題を抱えていますのでトラブルが起こるようでしたら用意している次のオプションに移行することになります。
それに対して妥協的メインテナンスでは、さまざまな理由で積極的な動的治療が行えずメインテナンスに移行していますので、もっともリスクの高い状態になっています。
それでは次項より順を追って各メインテナンスについて詳しく解説をしていきましょう。

歯周病の進行は見た目ではわかりにくいこともあります。歯の周りの顎の骨が、炎症により溶けていくのが歯周病です。

 

●予防的メンテナンスの特徴

 

予防的メインテナンスの患者さんは、今までに歯周病菌の感染の経験がほとんどありません。そのため歯周組織の破壊もほとんどなく、炎症があっても歯肉炎程度です。その炎症は可逆的ですので歯周動的治療で健康な状態に戻りやすいわけです。もちろん歯石が沈着していたり、患者さんのプラークコントロールに問題があったりしますので、動的治療では歯肉縁上、歯肉縁下の両方に治療介入が必要になる場合もあるでしょうが、メインテナンスに移行してからのケアの中心は歯肉縁上になります。治療後のメインテナンスと違う点は動的治療におけるわれわれの介入が最小限であるということです。つまり元々リスクが低い患者さんで、その低いリスクを維持していくのが予防的メインテナンスということになります。
動的治療中の歯肉溝は仮性ポケット(pseudo-pocket)といわれるような形態をとっています。必要に応じて根面デブライドメントとセルフケアの強化を行うことにより、それらのポケットはシャローサルカス(shallow sulcus)になります。エックス線写真診断では骨吸収はほとんど認められず、隣接面における骨頂は CEJ(セメントエナメル境)から1~2mm離れたところにあります。動的治療前のポケットも4、5mm程度にとどまることが多く、炎症の程度によってBOP が認められます。動的治療により歯肉
溝は3mm以下に収まり、BOPもかなり軽減しますので、セルフケアレベルの向上を確認のうえ予防的メインテナンスに移行することになります。
予防的メインテナンス患者さんの歯肉溝のほとんどはシャローサルカスです(Schallhorn
RG. 歯周治療成功への道歯周外科をどう考えるか。1990年国際歯学学術会議10周年記念講演より)。これは本来その患者さんの持つ健康な歯肉溝で、プロービング値は3mm以下、上皮性付着の幅は約1mm、BOP や排膿がなく、骨頂から歯肉頂までの距離つまり歯肉の厚みが最低限になっていますので、歯肉退縮のリスクも少ないといわれています。なぜなら歯肉はそれ以上薄くなれないわけですから、さらに歯肉退縮を起こそうと思えば骨吸収が起こることが条件になりますが、浅い歯肉溝には骨吸収の元凶である歯周病菌がほとんど住み着いていないため、いったんできあがったシャローサルカスは歯肉退縮を起こしにくいわけです。
メインテナンスに移行するときに歯肉溝がシャローサルカスになっているのはもっとも望ましいことで、患者さんのセルフケアもわれわれの行うプロケアも容易です。そのため予防的メインテナンスは、もっともリスクの低いメインテナンスといえるでしょう。つまり究極のゴールに近い動的治療のゴールを切っているわけです。メインテナンス中は歯周病菌の定着、感染を起こさないよう歯肉縁上を中心にケアしていくことになります。

メンテナンスで清掃し、歯面を滑沢に、プラークが再形成されにくい状態にします。

 

●予防的メインメンテナスにおけるメインテナンスプログラム

 

予防的メインテナンス患者さんは歯肉縁下にはほとんど問題がありませんので、セルフケアのチェックと歯肉縁上のバイオフィルム破壊、PMTC を中心としたメインテナンスプログラムになります。治療時間ももっとも短く済ませることができるでしょう。
まずプラークの残っているところやBOPを認めるところを中心にケアしていきますが、これはいわゆるアンダーブラッシングのチェックということになります。もちろん見た目で炎症が起こっているところもこれに含まれます。


メンテナンスの患者さんの口腔内写真:歯肉は引き締まっており、ピンク色で健康的です。

予防的メインテナンス患者さんの口腔内は、非常にケアの行き届いている場合もよくあります。歯面はピカピカでプロービングしても出血もしないし、すべて3mm以下です。このような口腔内であればブラッシングの指導なんてまったく必要ないと思ってしまいます。しかしここに大きな落とし穴があります。そうです。このような場合は往々にして患者さんはオーバーブラッシングに陥っていることがあるのです。その初期症状をいかに察知するかも非常に大切なことになります。歯肉退縮が進んでいるようなところはないか、知覚過敏が起こっているところや歯肉に傷があるようなところがないか、注意深く観察する必要があります。歯ブラシの毛はどれくらいで開いてくるかとか、歯ブラシの種類が硬いものに変わっていないか、持ち方や動かし方が変わっていないかもチェックしましょう。もしブラッシング圧に不安があるようでしたら、術者磨きをすることで患者さんに正しいブラッシング圧を体験してもらうのもいい方法です。このように見た目パーフェクトでわれわれのかかわれるようなところがないように感じる患者さんでも、必ずどこかにチェックするべきところがあるはずです。
プロケアとして行う細菌バイオフィルム破壊も歯肉縁上を中心に行います。BOP が続いているような部位があれば、歯肉縁下歯石の取り残しがないかどうか確認する必要があるでしょう。PMTCもオーバーPMTCにならないように注意しなければなりません。着色の強いような患者さんは別ですが、そうでなければ研磨性の低いペーストで回転数、側方圧をコントロールしながら、気持ちの良い PMICを心がけています。
知覚過敏を起こしている患者さんや、オーバーブラッシングの結果歯肉退縮を起こしている患者さんの場合、最後にフッ化物歯面塗布を行います。う蝕のリスクの高い患者さんの場合は、フッ化物歯面塗布は必須です。

 

●予防的メインテナンスのリコール間隔

 

歯周病菌もほとんどいなくて、歯周組織の環境も整っている予防的メインテナンスは、もっともリスクが低いため、リコール間隔はもっとも長く設定できます。おそらく半年や1年という間隔でも健康を維持できる可能性は高いと思われます。ただし、私個人の意見としては、予防的メインテナンスであってもできれば3ヵ月か4ヵ月に一度は定期健診をしたいところです。というのも予防的メインテナンスでは、患者さんのセルフケアのウェイトが大部分を占めますので、そのセルフケアのレベルがうまく維持できているのかどうかをこまめにチェックしたいからです。あまり期間をあけ過ぎると、いつのまにかもとのブラッシングに戻っていてがっかりということもあります。このあたりは、その患者さんの生活の中でどれだけセルフケアが習慣にまで変容しているかということにかかってぎすので、いきなり長いリコール間隔に設定するのではなく、安定していれば少しずつ間隔を伸ばしていく方が無難でしょう。

基本的に3ヶ月ごとの来院で問題ない方が多いです。

 

●予防的メインテナンスにおける悪化

 

予防的メインテナンスであっても悪化することはあります。ただしいきなり骨吸収を起こして深い垂直性骨欠損ができることはありません。まずは歯肉炎が起こることから始まります。この時点ですぐに対処すれば元の健康な歯肉溝、つまりシャローサルカスに戻ります。プロービング値が大きくなったり、プロービング時に出血するようなところをていねいに細菌バイオフィルム破壊を行い、セルフケアの再強化をしましょう。場合によっては少しリコール間隔を短くして、安定を確認してから元のリコール間隔に戻すことも必要かもしれません。
また歯肉退縮が進む場合もあるでしょう。どちらかというとこちらの方が可能性が高いかもしれません。予防的メインテナンスで定期的におみえになる患者さんは、完璧主義者が多いように感じるからです。磨きすぎによる弊害が起こってきていることをお伝えして、その原因を患者さんと一緒に考えていきます。硬い市販の歯ブラシに換えていたり、ブラッシング圧やブラッシング時間が変わっていないかなど具体的な原因を探し、それに対する指導をするように心がけます。

定期健診ご希望の方が多く来院されています。お問い合わせはお気軽にこちらからお願いいたします。

口腔機能、その成り立ち

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

なぜ、歯科診療室で口腔機能をみることが重要なのか?
ヒトは、どのように口腔機能を発達させるのか?
についてのお話です。


下の前歯の方が上の前歯よりも出ている、逆被蓋の状態。不正咬合の一種。

 

⚫️ヒトの口腔の発達は母胎内から始まる!

 

口は、「呼吸」と「嚥下」という,ヒトが生きていくうえでなくてはならない2つの機能を担う器官です。そのため、これらの機能は胎生期のかなり初期から発達しています。
受精後,胎児は胎生24週には吸啜の動きが出現し,28週ころには吸啜との下が同期するようになります。吸啜の動きを自分の指で繰り返し練習することで、出生後すぐに哺乳を行い。栄養を摂取することができるのです。このように、胎児の吸啜・嚥下運動は、母胎内ですでに感覚・運動系の発達として獲得されています。そして,出生後の食べる機能(摂食嚥下機能)もまた,感覚・運動系の発達としてなされていきます。
この機能は、口腔と咽頭の形態発育との関連がとても深いのです。ヒトの哺乳期の口腔や咽頭は,吸啜(哺乳)を行うのに適した形態をしていますが、その後離乳が始まり、固形の食べ物が食べられるようになるにしたがって口や顎が成長し、ものを噛んで食べるのにふさわしい形態に発達していくのです。

 

●成長・発達による口・喉の変化(嚥下時)

 

①乳児のころ(乳児嚥下)
哺乳期の舌は前後の動きが主であり、喉の位置(気管と食道の入り口)は高い。
②離乳食が始まったころ
舌は上下に動いて食べ物をつぶすようになり、下唇が内側にめくれ込む動きもみられる。
③乳歯が生えはじめたころ
舌のさらに複雑な動きができるようになり、下唇のめくれ込みはみられなくなる。また、喉の位置も下がり、発声のための音をつくる空間ができていく。

 

●”食べる機能”発達の原則

 

食べる機能(摂食嚥下機能)の発達には、原則があるとされます。それは、「個体と環境の相互作用」です。子ども本人の「発達する力」と、周りを取り巻く「環境」からの刺激がバランスよく働きかけあうことで,感覚・運動の統合がなされ、食べるために必要な機能の発達が促進されます。また、食べる機能の発達には適切な時期があり、年齢が低いほど内発的な力が旺盛です。しかし、最適な時期を過ぎたとしても,時間がかかるかもしれませんが食べる機能の獲得はなされていくと考えられており、何歳になってもあきらめるべきではありません。

乳歯列から成長し、生え替わりの途中の時期。このように乳歯の間の隙間が目立ってきます。永久歯への生え変わりに向けて、顎が成長していきます。

 

●“食べる機能”の発達の順序とは?

 

食べる機能はある一定の順番で発達していきます。全身の姿勢や運動に関連する粗大運動の発達では、じめに頸定し(首がすわり),座位がとれるようにり、つかまり立ちをし,一人歩きをする,といった番がありますが、食べる機能も同様で、哺乳からしなり咀嚼機能が獲得されるわけではなく、口唇を閉たり、舌が前後から上下,左右へと動いたりするこができるようになりながら咀の動きが獲得されてきます。そして、その動きには”予行性”があることもいわれています。これは、「獲得された動きを十分に経験することで、次の段階の機能が獲得されやすくなる」ということです。つまり、そのとき食べられる形、軟らかさの食事を十分に食べているうちに、次の段階の機能が自然と引き出されてくるということなのです.

 

●口腔機能の発達はヒトそれぞれ

 

機能の発達は、日々順調に進んでいくわけではありません。階段を上がったり降りたり、あるいは螺旋階段を登るように遠まわりしながら伸びていく場合もあります。ヒトほど個人差の大きい動物はいないといわれるほど、食べる機能の発達過程にも個人差があります.これは機能面のみならず、歯の萌出時期や口腔形態の違い,個人の性格や家庭環境による違いなど、さまざまな要因が影響するためです。したがって、同じ月齢,年齢で比較することは意味がないばかりか、かえって弊害を招くことが多くなります。
このように、ヒトは自分のもっている力に加え、実にさまざまな要因の影響を受けながら口の機能を発達させていきます。このことは、健康な子どもも発達に遅れのある子どもも、変わりはないのです。


下の前歯が見えないほど深く噛み込んでいる、過蓋咬合の状態。顎の成長に影響があります。

 

⚫️人は、どのように老いるのか?
●いま来院している高齢者はいずれ通院不可能となる

 

日本人はどのように老いていくのでしょうか?全国の高齢者を20年間追跡調査し(N=5717),高齢者の自立度の変化パターンを調べた報告があります。その調査によると、男性では
60歳代前半から一気に自立度を低下させるパターンは19%で、脳血管疾患への罹患など全身疾患がその原因となります。一方で,75歳以降に徐々に身体機能の低下を示すのは約70%であり、加齢とともにその発症率を増すさまざまな疾患に加え、低栄養に伴う筋力の低下などが原因と考えられます。
高齢者の多くが憧れる“ぴんぴんころり (亡くなる直前まで元気に生活すること)”は10%程度にすぎず、多くの高齢者が徐々に身体機能・認知機能を低下させ、自立度を低下させていることがわかります。手段的日常生活動作について援助が必要。加えて基礎的日常生活動作についても援助を必要とする。
「手段日常生活動作」とは、買い物や洗濯などの家事や、交通機関を利用した外出や服薬管理、金銭の管理など高次の生活機能を維持するために必要な能力です。一方、「基礎的日常生活動作」は、食事や着替え、就寝・起床、入浴やトイレに行くなどの基本的な生活動作を示しています。つまり、70%の人が80歳を前にして、齲蝕や歯周病の予防が可能な口腔衛生管理ができなくなる恐れがあり,80歳代前半には外来受診が困難になるといえます。また、晩年まで自立を維持できる10%の人を除いて、期間の長短はあるにしろほぼすべての人が自立した生活が困難な時期を過ごすことになり、歯科医院への通院が不可能となることを示しています。
60歳代前半から一気に自立度を低下させる19%の多くは、病気などで一気に通院が困難になった方たちで,皆さんが診療室に勤めている限りはお会いすることはないかもしれません。一方で、いま、元気に来院してくれている高齢者のなかには、もうすぐに、約70%のコースに乗っている人たちも多くいるはずです。
つまり、高齢者についてはある意味,ほぼすべての人が通院不可能になることを考えて,歯科治療の計画を立てる必要があります。次のリコールやメインテナンスの際には、もしかしたら体調を崩して診療室に来ることが困難になっているかもしれませんし,「次の診療の機会は訪問診療で…」ということになる可能性もおおいにあるのです。

 

●口腔機能は低下する〜診療室でも早めの対応を!

 

すべての人の口腔機能は低下します。70歳の患者さんも80歳の患者さんもいつまでも口だけが健康というわけにはいきません。誰もが老いたくはありませんし、いつまでも若いままでいることを望みます。しかし、残念ながらすべての人に老いは訪れ、身体機能。認知機能の低下に伴って口腔機能も低下し。口腔衛生管理が徐々に困難になってきます。手を細かく動かすことが困難になり、口腔器官の運動能が低下することで自浄作用も低下し、口腔内が不潔になりがちになります。
つまり、高齢者の口の機能の低下に気づき、早い段階で改善・予防することができれば、齲蝕や歯周病の予防となるだけではなく、その後の口腔機能をできる限り維持し、最期まで自分の口で食事を楽しむことにもつながってくるのです。

 

●運動障害性咀嚼障害とは?

 

咀嚼障害は、その原因から「器質性咀嚼障害」と「運動障害性咀嚼障害」に分けることができます。器質性咀嚼障害とは、歯をはじめとする咀嚼器官の欠損によって起こる咀嚼障害です。この器質性咀嚼障害に対しては、義歯などの補綴治療による咬合回復が咀い機能改善のための唯一の方法となります。
一方,避けては通れない生理的老化により身体機能は低下を示し、また、依然日本人の死亡原因の上位を占める脳血管疾患などによっても身体機能は障害されます。これら身体機能の低下や障害は、口腔にも及んで咀嚼障害を引き起こし、これを「運動障害性咀嚼障害」とよびます。この場合には、一般的な歯科治療による咬合回復に加えて,筋肉に負荷を与え運動機能の回復を目指すレジスタンス訓練や,巧緻性の訓練の実施も必須となり、歯科診療室においても「器質性咀噂障害」と「運動障害性咀嚼障害」の両面からアプローチしていくことが求められています。
このように、社会が高齢化し、歯科においても齲蝕・歯周病などの口腔疾患だけではなく「口腔機能」にもアプローチすることが重要視されています。

口腔機能の発達や、機能障害を回復するリハビリなど、お問い合わせはお気軽にこちらからお願いします。

メンテナンスの始まり

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


メンテナンスで用いる機材の一部:手前の小さいブラシは超音波で汚れを除去するサスブラシです。


エアフロー:審美的にも清掃効果を感じやすい機器です。パウダーを吹き付けて着色除去します。

 

◼️治療後メインテナンスの始まり

 

 

●治療後メインテナンスとは?

 

歯周動的治療をして歯周病の進行リスク、再発リスクを下げたうえでメインテナンスに移行するのが、歯周治療の原則です。ということは基本的にはすべて動的治療をするわけですから、わざわざ「治療後メインテナンス」というメインテナンスを設ける必要はないような気がします。歯周病のメインテナンスのすべてが治療後メインテナンスなわけですから。では、なぜ設けるのでしょうか。
メインテナンスに移行するときのリスクの程度は患者さんによってさまざまです。動的治療のゴールの設定にはある幅があって、その幅があるためにメインテナンスにも幅が出てきます。この幅の中に現れるのが治療後メインテナンスというもので厳密な言葉の使い方にこだわると、メインテナンスはすべて治療後メインテナンスということになってしまいますので注意が必要です。
予防的メインテナンスの患者さんは元々初診時にリスクが低いわけですから、動的治療のゴールも究極のゴールになっていて、場合によってはほとんど自力でそのすばらしいゴールを切られる患者さんもいらっしゃいます。動的治療における私たちの関与がもっとも少ないメインテナンスです。それに対して治療後メインテナンスでは最初はリスクが高く、それを動的治療によりリスクを下げた後に行うメインテナンスということになります。その場合の動的治療は、その患者さんにとって望ましいと思われるような治療オプションを採用しています。同じようにリスクの高い患者さんに動的治療をする場合でも、次善の策をしている試行的メインテナンスやほとんど手をつけていな(手をつけられない)妥協的メインテナンスとはリスクの下がり方が異なってきます。
このように治療後メインテナンスは初診時にリスクの高い患者さんに対して動的治療をしっかり行った後のメインテナンスということになりますので、どのような症例に対してどのような動的治療を行ったかによって、リスクの程度や治療のポイント、メインテナンスプログラムの内容などに違いが出てきます。そこで動的治療の内容によってこの治療後メインテナンスも分類していきます。

 

●歯周動的治療の分類

 

メインテナンスの話の途中ですが動的治療に逆戻りしてみましょう。それは、動的治療を理解していないと治療後メインテナンスが理解できないからです。歯周動的治療の分類にもいくつかあります。
歯周治療では、ポケットをいかに浅くしていくかという大きなテーマがあります。そして病的歯肉溝(ポケット、pocket)から健康歯肉溝(サルカス、sulcus)にする場合、サルカスにはシャローサルカス(shallow sulcus)とディープサルカス(deepsulcus)の2種類があって、そのどちらを目指すのかというテーマもあります。この2つのテーマを同時に考えることで動的治療の理解を深めてみましょう。
ポケットが浅くなる!つまりプローピング値が小さくなるときには、大きく分けて2つの治り方があります。1つが歯肉退縮(gingival recession)で、もう1つが付着の獲得(attachment gain)です。プロービング値というのは歯肉頂からプロープ先端までの距離ですから、歯肉頂が下がるかプロープ先端が入らなくなるかすれば、プロービング値が小さくなります。前者が歯肉退縮、後者が付着の獲得となるわけです。付着の獲得というのは軟組織による付着が治療後に起こるということで、上皮性の付着による獲得と結合組織性付着による獲得の2種類がありますが、多くは上皮性の付着による付着の獲得が起こります。
この場合、通常は1mm程度の長さの上皮性付着が数mmと長く付着しますので、長い接合上皮(longjunctional epithelium、LJE)による治癒といわれます。
さて、歯肉退縮と付着の獲得という治癒の経過をとるとどのような治癒形態となるでしょうか?結論をいいますと、歯肉退縮ではシャローサルカス、付着の組ではデープサルカスンというパターンで考えればいいでしょう。これで先に述べた2つのテーマが結びつきました。
さて、一般論を理解したところで各論に移りましょう。歯周動的治療は、非外科療法と外科療法に大きく分かれます。まずは非外科療法から見ていきます。
非外科療法は根面デブライドメントを中心にした治療になります。動的治療における根面デブライドメントは従来のSRPとなりますので、ここではSRPという言葉を使うことにします。このSRPを行うとどのような治癒が起こるのでしょうか?実は非常に多様な治癒の仕方をしますので一言では表現できません。シャローサルカス、ディープサルカス両方の可能性があるのです。詳細は後述しますが、浮腫性の歯肉や水平性骨欠損の症例ですとシャローサルカス、線維性の歯肉や垂直性骨欠損の症例ですとディープサルカスができやすいという傾向があります。もちろんあまり深いポケットでは、ちゃんと治癒せずポケットの残存ということもあります。
では外科療法ではどうでしょう?外科療法には切除療法、組織付着療法、再生療法、歯周形成外科療法の4種類がありますので、順を追って見ていきます。
まず切除療法はどうでしょう?これは歯肉弁根尖側移動術に代表される歯周外科ですが、これらの治療法を採用すると歯肉退縮が起こり、術後シャローサルカスができます。通常骨整形により骨を生理的な形態に修正し、フラップ断端を骨頂に位置づけることによりもっとも浅い歯肉溝、つまりシャローサルカスができあがります。
改良型ウィッドマンフラップに代表される組織付着療法では逆に付着の獲得で治りますので、術後はディープサルカスによる治癒が起こります。この場合骨整形は行わず、SRPをしっかり行った後フラップをできるだけ元の根面上に戻すようにすることにより、長い接合上皮による治癒が起こるわけです。
再生療法では垂直性骨欠損部に膜や骨移植材、エムドゲインなどを適用して新たに組織を誘導してきますので、主に付着の獲得による治癒となります。ただ前述の組織付着療法と違って結合組織性付着ができる可能性が高くなっています。再生療法単独ではある程度上皮の埋入などがあってディープサルカスとして治ることが多いように思いますが、仕上げに切除療法をすることにより、組織が再生したうえにシャローサルカスができます。
最後に歯周形成外科療法ですが、これもいくつか種類があるので、結合組織移植術を用いた根面被覆術だけに絞って話をします。歯肉退縮を起こした根面に結合組織移植をすることで歯肉を元に戻そうという治療法ですが、移植片と根面は多くの場合長い接合上皮で治癒しているようです。つまり上皮性付着による付着の獲得が起こり、その結果できあがる歯肉溝はディープサルカスということになります。
このように動的治療と一言でいっても内容は多岐に渡りそれぞれによって治癒の仕方が違うわけですから、それを治療後メインテナンスとしてメインテナンスしていく場合も単純ではありません。つまり非外科療法後の治療後メインテナンスや外科療法後の治療後メインテナンスがあって、外科療法も4種類分かれるわけですから、切除療法後、組織付着療法後、再生療法後、歯周形成外科後の治療後メインテナンスが存在することになります。


超音波で歯石を除去する機器:外科療法、非外科療法ともに用います。外科というとたいそうな手術を想像されるかもしれませんが、実際は歯肉に隠れた感染源を除去する目的の小規模な手術です。歯科領域の虫歯治療、歯周病治療とは、原因を除去する外科の部分が多いと感じます。

 

●治療後メインテナンスの特徴

 

治療後メインテナンスを受ける患者さんの初診時は歯周病菌が繁殖し、すでに歯周組織の破壊が進んでいます。付着の喪失や骨の喪失、場合によっては歯の喪失をされていることもあるでしょう。つまり予防的メインテナンスに比べて初診時のリスクがかなり高いということになります。そのため積極的な動的治療が必要になり、その動的治療も症例によっていろいろ使い分けていくことになります。
動的治療後の治癒形態は多岐にわたります。動的治療で採用したオプションによってももちろん異なりますし、思い通りに治らないことがあるというのも臨床です。もちろん同じ口腔内でもさまざまな治癒形態が混在するわけです。予防的メインテナンスの患者さんの口腔内はシャローサルカスがほとんどと考えていいでしょうが、治療後メインテナンスの患者さんではシャローサルカスとディープサルカスが混在します。試行的メインテナンスや妥協的メインテナンスの患者さんに比べてポケットの残存は少ないのですが、理想的に事が進まないことも経験します。このように治療後メインテナンスでは、動的治療でどれだけ改善できたかによってメインテナンス移行時のリスクが異なってくることになります。


染め出し液、清掃用ペースト:歯科受診時に汚れを染め出したりされていますか?私たちはよほど小さなお子さんでない限り、基本的に染め出しを行います。理由は、患者さん自ら効果的に清掃できるようにサポートしていきたいからです。メンテナンスも汚れが付着しやすい部位が視覚的にわかりますので、やりやすいです。

 

●治療後メインテナンスのリコール間隔

 

通常、治療後メインテナンスのリコール間隔の基本は、3ヵ月といわれています。3ヵ月に一度というメインテナンスをしていれば、動的治療の内容にかかわらず悪化を防ぐことができたという論文が発表されています。この場合、動的治療の内容にかかわらずというところがミソで、これにより治療後メインテナンスのリコール間隔は3ヵ月ということになるわけです。
もちろん動的治療も理想どおりにできないこともあるわけですし、そのような場合は3ヵ月よりも短くする方が無難でしょう。また動的治療終了後いきなり3ヵ月リコールに移行するのではなく、最初は1ヵ月など、短めに設定する方が良いです。

私たちは、定期健診の施術時間を60分とり、歯肉も歯もスッキリ気持ち良い施術を行なっております。
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