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歯周病と心疾患について

2024年1月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

歯周病は多くの方が感染している病気です。
今回は他の病気との関連についてのお話です。


歯周病の患者さんの口腔内写真。

歯を支えている顎の骨の吸収が進んでいます。

歯周病と心臓病の関連について
 歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなります。この歯周ポケットの中で細菌群が歯肉組織に侵入し、生体はこれを異物、抗原と認識して、炎症・免疫応答が起こります。この際,炎症性組織となっている歯肉には豊富な新生血管があり、そこから歯周病関連細菌、細菌産生物、あるいは生体側で産生されるサイトカインと呼ばれる炎症性物質が血管内に入り込んでいき、血液を介して全身の臓器に運ばれ、さまざまな悪影響をもたらすことが考えられます。
 
歯周病と心臓病との関連性に関する疫学的調査により、歯周病に罹患している人は、心臓病に罹患する人、あるいはそれが原因で命を亡くされる人が多いという報告がある一方、両者の間には関連性がないという報告もあり、現段階ではまだはっきりと断定はできません。それでも近年,基礎研究領域では,歯周病から心臓病に影響を与える因子、経路に関する研究結果がいろいろ報告されるようになってきました。

①そもそも心臓病って?
 心臓病とは、心臓に発症する疾患の総称で心疾患とも呼ばれており、虚血性心疾患、心内膜炎,心筋炎、心臓弁膜症、心膜炎が主だったものです。
 厚生労働省の死因順位別死亡数の年次推移
2004年(平成16年)度死因順位推定値
第1位 男女ともに悪性新生物
第2位は心疾患
第3位は脳血管疾患であす。
 さらに、心臓病で死亡する人は毎年約15万人を超えており、徐々に増加する傾向にあります。虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に栄養や酸素を運んでいる血管(冠状動脈)に動脈硬化が起こり、血流が悪くなって起こる疾患で、代表的なものに狭心症と心筋梗塞があります。

②虚血性心疾患の原因
 虚血性心疾患は、血管の動脈硬化が元になって発症します。この疾患は、アテローム(粥腫)性動脈硬化症,中膜硬化症(メンケベルグ型動脈硬化),細動脈硬化症に分類されますが、虚血性心疾患の原因としては、大,中等大の動脈に多発するアテローム性動脈硬化症が主体となっていると考えられます。
 一般にアテローム性動脈硬化症は、長年にわたる不適切な食生活や運動不足,ストレスなどの生活習慣が大きく関わる生活習慣病です。多くの欧米諸国で死因の第1位が心臓病であることを考えると、日本人も食生活をはじめライフスタイルが欧米化し、その結果として、心臓病患者が増加したと考えられます。最近では高齢者ばかりでなく、30,40歳台でも虚血性心疾患に罹患する人が増えており、20歳台の男性でも動脈硬化が増加しています。
 近年では内臓脂肪蓄積が出発点となって、肥満、糖尿病,高脂血症,高血圧が相互に関係して悪化することが明らかとなり、メタボリックシンドロームという名称で国際的にも非常に注目されています。これらの疾患は、どれもがアテローム性動脈硬化症のリスクファクターですが、これらのうち2つ併せ持つ人は、まったく持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3~4つ併せ持つ人では、31倍にもなることが報告されており、脂肪細胞の機能の解明,なかでもアディポサイトカインの研究から、各病気の間の機序についていろいろなことがわかってきています。

③アテローム性動脈硬化症と炎症
 アテローム性動脈硬化症は炎症性疾患であるといえます。この過程が進行してアテロームが増大すると血管内腔は狭くなり、狭心症の状態になります。さらに、Tリンパ球や炎症性物質は、血管内皮の傷害、透過性の亢進,血栓の形成,内膜の肥厚をきたし,完全冠状動脈が閉塞して心筋梗塞となります。
 以上のような、傷害反応説は、マクロファージが活性化することから、炎症性疾患として歯周病の病因とも重複する部分が多く、部位は離れていますが、血流に乗って影響を及ぼしていることが推察されます。

④歯周病が心臓に影響する可能性としての機序
1.細菌あるいは細菌産生物による直接作用
 歯周病関連細菌のPorphyromonas gingivalis (Pg)が、アテローム性動脈硬化症に特異的な病原微生物として挙げられています。さらに、その他の歯周病関連細菌(Bacteroides forsythus, Actinobacillus actinomycetemcomitans, Prevotella intermedia)もアテローム中から検出されています。また,グラム陰性細菌の細胞壁構成成分のLPSは、直接血管内皮細胞を傷害すると同時に、炎症性サイトカインの産生を高めることにより、間接的に血管内皮細胞に作用すると考えられています。

2. 歯周病局所で産生された炎症性サイトカインによる直接作用

3. 歯周病局所の炎症性因子刺激により産生される急性期蛋白による間接作用
 敗血症等の急性炎症において、主として肝臓でC反応性タンパク(CRP),フィブリノーゲン、血清アミロイドAタンパク(SAA)等の急性期蛋白が産生されます。これらのタンパクは本来,抗炎症効果のために産生されますが、慢性的で持続的な炎症性刺激が加わると、炎症を助長する作用があります。すなわち、CRP は炎症局所へ移行し、炎症性サイトカインの誘導、補体の活性化により二次的な損傷を誘導します。フィブリノーゲンやフィブリンは、ヒト単球と結合して、サイトカインの発現を誘導します。また,SAAは脂質代謝産物との相互作用によりアテロームへの脂質の沈着を促進します。
 これらの急性期タンパクの増加は、心筋梗塞や心臓関連死と関連することが報告されていると同時に、歯周病や歯周病関連細菌とも関連のあることが確認されています。

4. 熱ショックタンパク
 熱ショックタンパク(heat shock protein: Hsp)は、環境、および代謝ストレスに反応して細胞内で産生されるタンパクです。その中で、Hsp60ファミリーは熱や炎症などの刺激でその発現が増強されます。このタンパクは、種を超えてアミノ酸配列の相同性が高いと同時に、免疫原性も高いという特徴をもちます。酸化低比重りポ蛋白、LPS,炎症性サイトカインは、血管内皮細胞のHsp60発現を増強します。歯周病関連細菌に感染して、体内に細菌由来のHSp60抗体が産生されますと、交叉反応性により,前述の血管内皮細胞に発現しているヒトHSP60と結合してしまいます。そして、このような抗原抗体反応が成立すると、血管内皮細胞の傷害,マクロファージ、T細胞の活性化が起こりその結果産生される炎症性サイトカインにより、さらに炎症が進展するという悪循環に陥ることが報告されています。実際、歯周病をもつ患者さんの血清中には高レベルのPgのHSP60抗体が検出されたという報告があります。

5.遺伝子多型
 一部の遺伝子が変異した遺伝子多型は,産生される分子の発現量や形に影響を与えることがあり、組胞の応答性を規定する可能性があります。たとえば、IL-1は歯周病および冠状動脈疾患の両疾患で、その病因に関与していますが、IL-1遺伝子群の多型性は、重度の歯周炎やアテロームとの関連性が示唆されています。このため、炎症に関連する因子の遺伝子多型が、歯周病と心臓血管疾患を結びつける生物学的背景である可能性があります。
 
まとめ
 歯周病と心臓病との関連性が示唆される報告についてその機序を中心に述べましたが、確実にその因果関係が証明されたものはありません。しかしながら、病態から想定されたメタボリックシンドロームの疾患概念が、脂肪細胞の肥大化によるアディポサイトカインを通して解明されつつあり、炎症反応を中心として解明されてきたアテローム性動脈硬化症との共通項が見つかりそうな雰囲気です。さらに心臓病は歯周病の病態とも共通項があり、これらの絡み合った経路を一つ一つ解きほぐしながら、病態の本質が解明され、治療法に至る研究が発展していくことが期待されます。

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