歯周治療の流れのメインテナンス
歯周治療には、「動的治療」と「メインテナンス」の大きな2つのステージに分かれます。動的治療は、一般的な歯周病治療のイメージです。清掃指導や葉の表面についている歯石やバイオフィルムを除去し、口の中から感染源を除去していきます。歯周組織の炎症が改善され破壊された組織が修正されていきます。そしてこの動的治療には、歯周基本治療、歯周外科治療がふくまれます。
歯周基本治療で用いる器具の一種。歯根に付着している歯石を除去します。
それに対してメインテナンスではメインテナンス門家による定期的なプロフェッショナルケアと患者さん自身のよる毎日のセルフケアにより動的治療で獲得した健康を長期にわたって維持していくわけです。定期的なプロケアも結局は患者さんのセルフケアの及ばないところをサポートしたり、セルフケアを続けていくためのテクニックとモチベーションを提供するわけです。なので、メインテナンスをsupportive periodontal therapy (SPT)という言葉で置き換えることもあります。
動的治療とメインテナンスの違いは?
歯周病治療の流れは、まず、清掃指導や歯石除去といった歯周基本治療に始まり、歯周組織の状態を検査をして評価します。その後、必要に応じて歯周外科処置を行い、再度状態を検査して評価します。そこで治療の目的を達成できていれば、メンテナンスへ移行するのです。これが歯周病治療の教科書的な分類といえます。しかし、このようなステージ分けですと、メンテナンスの位置づけが弱いように感じます。メンテナンスはただのクリーニングではありません。
動的治療とメンテナンスで分けて考えているのは、それぞれの治療の目的が違うからです。一言で言うと動的治療とは良くなるための治療、メインテナンスは悪くならないための治療なのです。動的治療で良くなった歯周組織を悪くしないためにメインテナンスがあるわけです。動的治療では、自分の歯ぐき(歯肉)が良くなっていることを患者さん自身体験することができるので、それがモチベーションにつながり、より上を目指そうという上昇志向が生まれやすいです。しかし、メインテナンスに移ったとたんモチベーションが下がらないようにしないといけないので大変です。
治療前
歯肉の炎症が強く、多量の歯石、歯肉からの排膿、腫れが見られます。
治療後
歯肉が引き締まり、歯石も排膿もなくなりました。ここまでが動的治療で達成したことです。この後、メンテナスへ移行します。
悪くならないための治療の落とし穴
悪くならないための治療というのは、意識をしないとできるのもではありません。治療を控えめにすれば良いというわけではないのです。それでは単なるアンダートリートメント(不十分な治療)になるだけです。かといって良くなるための治療をそのまま続けていれば、オーバートリートメント(過剰な治療)になってしまいます。
メインテナンスで気をつけるべきポイントは①オーバープロービングをさける②オーバーブラッシングをさける③オーバーデブライドメントをさける④オーバーメディケーションをさけるです。
メインテナンスの必要性と有効性
超音波スケーラーやキュレットを使用してポッケト内から細菌を除去しても、時間が経つとまたいつか細菌が居座っています。歯周治療を受けたからといって歯周病菌が完全になくなることは稀です。動的治療で環境整備が十分できなかったような場合、たとえば深いポケットが残ってしまったり、根分岐部病変が残ってる場合や、患者さんのプラークコントロールが悪く歯肉に炎症が起きてしまう場合は、歯周病菌にとって復活にチャンス大です。どのくらいの期間で細菌が後戻りしてくるのかは条件しだいですが、プラークコントロールの良い患者さんで数か月、悪い患者さんで数週間です。患者さんのプラークコントロールのレベルによってリコール間隔を加減する根拠はこのあたりにあるわけです。また、口腔内環境の整備状況によっても変わってきます。深いポケットや根分岐部病変、多数歯補綴などがあれば細菌が増殖しやすいため、リコール間隔も短めに設定しなければなりません。
動的治療からメインテナンスに移行する基準
動的治療のゴール
歯周基本治療では患者さんにセルフケアの指導をするとともにSRPを中心ととした炎症のコントロール、咬合調整、固定などによる力のコントロールを行い、症状の改善を目指します。これで口腔内の環境が十分改善できればメインテナンスに移行します。一方歯周外科治療では、歯周基本治療で改善できなかった環境を外科的に改善していきます。SRP後でも残存するポッケトや根分岐部病変、根近接の問題などは外科的に骨形態や歯の形態を修正することで改善することができ、付着歯肉が少なくブラッシングしにくいような環境も、外科的に改善可能です。歯周外科治療で目的が達成されれば、動的治療のゴールということになります。
メインテナンスの分類と移行基準
①予防的メインテナンス
歯周病菌による破壊もほとんど見られず、患者さんによるセルフケアも良好な場合です。動的治療における究極のゴールあるいはそれに近いゴールを切ってる患者さんが対象となります。メインテナンスプログラムもセルフケアのチェックや歯肉炎上のバイオフィルムの破壊、PMTCなどがメインとなるのでリコールの間隔も一番長くなります。
②治療後メインテナンス
動的治療を終了した患者さんに対して行うメインテナンスです。歯周動的治療により獲得した健康を維持するものですが、歯周病菌による破壊があったわけなので歯周病菌の復活を阻止する必要があります。治療後のリコール間隔は基本的に三か月といわれていますが、残存するリスクによって加減する必要があります。
③試行的メインテナンス
本当は歯周外科をした方が良いが、さまざまな状況でそれをあえてしないで、より歯周病菌の侵襲の少ない治療を改善策として行います。歯周病菌の感染や歯周組織の破壊があり、しなければならないメインテナンスプログラムも多くなります。当然リコール間隔も短く設定した方が無難です。
④妥協的メインテナンス
さまざまな理由から積極的な治療ができない場合で、もっともリスクが高くなります。歯周病菌は大量に残存しているためメインテナンスプログラムもフルコースになりますし、リコール間隔のもっとも短く設定した方がいいでしょう。
メンテナンスの流れ
①問診
↓
②診査
↓
③セルフケアのチェック
↓
④プロケア(細菌バイオフィルム破壊、PMTC)
↓
⑤フッ化物歯面塗布
これは基本的な歯周病のメンテナンスの流れです。患者さんとの会話から始まり、診査、セルフケアのチェック、細菌バイオフィルムの破壊、フッ化物の塗布が大きな流れで、これは歯科衛生士が行います。そしてこのままですと私の出る幕がありませんので、細菌バイオフィルムの破壊プログラムが終了した時点で、診査結果を患者さんに説明し、次のメインテナンスまでの間隔を決定します。
このプログラムを限られた時間の中で行うには、ひとつひとつの処置を効率良くこなすとともに、その患者さんのとってそのときにもっとも大切な処置に時間を重点的に使うように時間配分することになります。
例えば、セルフケアが不十分なのでブラッシングの再指導に時間をかけるのか、プロービング(歯ぐきの検査)で出血が多いところを中心に歯ぐきの中の細菌バイオフィルムの破壊の時間を使うのかという具合です。このような時間配分の決定権は歯科衛生士が握っていて、その意味ではメインテナンスに与えられた時間配分は担当歯科衛生士が握っています。
私たちのクリニックでは、歯周基本治療、必要な場合歯周外科を行い、検査により再評価、メンテナンスという流れに則り、基本に忠実に施術を行っております。
詳細は
です。
歯周病でお悩みの方は、ぜひご相談ください。