こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、インビザラインの歯の動かし方と実際の症例についてのお話です。
インビザライン症例
歯が重なって生えている、叢生の改善ため治療を行いました。
術前術後の口腔内写真から見ていきます。
✳︎術後の歯に、一部アタッチメント(樹脂の突起)が残った状態での撮影です。
正面
術前
術後
右側
術前
術後
左側
術前
術後
上顎
術前
左上犬歯を抜歯しました。
術後
下顎
術前
右下中切歯を抜歯しました。
術後
叢生を改善するために
抜歯せずに、良い仕上がりで早く治療が終われたらとても良いです。ただ、叢生を改善するためには、狭いところに並んでいる歯をきれいに並べていくためのスペースが必要となります。
まずは、身体に侵襲の少ないことからスペース作りをしていきます。
①詰め物、被せ物を仮の材料に変える。
矯正治療後に、詰め物や被せ物をやりかえる予定のところは、最初から仮の材料に置き換えておきます。これにより元の歯の幅を減らすことができます。
②臼歯の遠心移動
臼歯を奥の方へ移動させ、葉を並べるスペースを作ります。MAXで上顎は4mm 、下顎は3mmまでとされています。例えば、矯正治療に先立ち親知らずを抜歯することも多いですが、その場合は第二大臼歯の後ろの骨がスカスカの状態になりますから、より遠心移動がしやすい状況になります。
遠心移動の際、歯を動かしやすくする目的で、頬側にアタッチメントをつけます。
③側方拡大
歯列を横に拡大することで、前歯のガタつきをきれいに並べるスペースを作ります。片方でMAX2mmまでです。
④IPR
歯と歯の間を機械で削り、スペースを作ります。一つの歯の面を1mm以上削ると、しみやすくなったりする健康上の問題が発生します。インビザラインのIPRの最大量は、一つの歯間につき0.5mmの設定ですので、健康上の問題にはなりません。
IPRを最大限に行うと、上顎で14.1mm、下顎で12.1mmのスペースを作り出すことができます。
インビザライン治療用の口腔内スキャナー(iTero)で口腔内をスキャンし、pcで矯正治療のシミュレーションをする際、1本ずつ正確な歯の幅径がわかります。IPRを行う際は、その中でもボルトン分析という項目もチェックし、周りや反対側の同じ歯と比較して、幅径が大きめの歯に対しIPRを行うプランにすると、バランスをとりやすいです。
IPRは基本、最初のプラン、30枚くらいで1回、追加の修正プランで1回で終わらせるようにしています。
細いバーを用いて、歯と歯の摩擦抵抗が大きいところに、歯肉縁下0.5mmまでIPRをします。
抜歯して矯正治療する上で考慮すること
①抜歯した方が患者さんにとってメリットが大きいか。
上に挙げた4つの方法を駆使して、患者さんの主訴が解消できるかという点が重要です。そこには、治療期間や費用とのバランスも入ってきます。例えば、4つの方法を全てやり尽くしたとしても、実現できないような治療ゴールなら意味がありませんし、抜歯を併用することで大幅に治療期間短縮と費用削減ができるのであれば、そちらの方がメリットが大きいと判断できます。
基本的に上下顎全体を触っていくような矯正治療であれば、一度のマウスピース作成だけで最後までシミュレーション通り行くことはなく、3回程度は修正のマウスピースをオーダーし、仕上げていきます。大体最初の計画で小臼歯抜歯したスペースは、30枚くらいでその半分のスペースを埋めていくくらいのイメージです。
ちなみに、マウスピース26枚で半年、54枚で一年かかります。
②主訴が上顎前突だけなのか。
上顎前突は、いわゆる出っ歯のこと。オーバージェットという出っ歯の指標があるのですが、上顎前歯が下顎前歯より何mm出ているか、という意味です。これが5mm以上ある場合、上顎の歯を抜歯した上で前歯を引っ込めるメリットが大きいと考えられます。
特に、臼歯関係が正常であるⅠ級においては、出っ歯のケースで奥歯の遠心移動を行うと、せっかく整っている臼歯関係が変わってしまうため、抜歯矯正が良好な結果となります。
③抜歯したところの隙間。
大体上顎抜歯矯正では前から4番目の第一小臼歯を抜歯します。犬歯と第二小臼歯が隣り合う関係に仕上がるのですが、必ずそこに隙間が残ります。目で見てわかるほどではなく、1mm以下のほんのわずかな隙間です。患者さん自身も普段の生活で気になることはないと思われます。
前歯の叢生の治療時の注意点
①唇側に出さない。
私たちアジア人の顎の骨の特徴でもありますが、欧米人と比較すると唇側の顎の骨が薄いです。CT撮影することでより正確に確認できます。矯正治療で前歯を唇側に出していくと、骨のないところに根が露出してくるため、最悪抜け落ちることになります。治療計画作成時に、前歯をこれ以上唇側に出さないように注意しています。
もちろん、前歯が歯列のアーチより舌側に位置している場合は唇側に出して揃えます。
②IPRをしっかり入れる。
歯の軸が捻転しているような時、歯と歯の重なりが大きいような状態とすると、IPRを0.5mmしっかり入れて、摩擦をとっていくことが重要です。
③1本抜歯を検討。
アーチから最も離れている歯や、根管治療など大きい治療介入されている歯を選んで抜歯を行い、できたスペースを使って歯を並べることも検討していきます。
アライナーの歯のうらに突起がある?
上顎前歯の裏に突起が設定されることが多いです。ほとんどのケースに用いられているのではないかと考えられます。
これは、バイトランプという仕組みです。
実は、アライナー装着した状態で過ごすだけで、上下顎奥歯は1.0mm〜1.5mm程度圧下させる力がかかります、圧下というのは、歯を顎の骨に押し込む力のことです。この理由は、上下顎の歯に装着したアライナー自体の厚みがあるからです。
歯列全体はきれいに整ってきているのに、奥歯が噛み合わなくなってきたというのは、アライナー矯正治療あるあると呼ばれているくらいです。
バイトランプが設置されていると、上下顎の歯を合わせたときに下の前歯の先端とバイトランプが先に接触するため、臼歯を圧下させる力がかかりにくくなります。
噛み合わせを仕上げる際に、シーソーの原理で、前歯がバイトランプで接触し、臼歯は逆に挺出(顎の骨から上に出てくること)が生じます。
奥歯の噛み合わせが弱くならないよう、治療計画作成時にもあらかじめ他の対策をしています。
インビザライン矯正では、上下の歯の接触強さを設定できるため、最初から奥歯の咬合接触を強くなるような歯の動きを盛り込みます。どうやっても奥歯は圧下されやすいため、このような計画にしておいて、最終的には生体がかみやすい位置まで落ち着いてきます。
他のバイトランプの目的としては、
・前歯の高さを揃えるレベリング
・逆被蓋改善
・歯並びに影響する舌の癖を解消する
・歯並びのカーブ(スピーの湾曲)の改善
が挙げられます。
治療がスタートしてから重要なこと
毎日アライナーを装着する日々がスタートするわけですが、マウスピース矯正治療全てに共通することとして、患者さんに装着する・しないが委ねられるわけで、
「なんとなくつけるの忘れちゃった」
という感じだと、シミュレーション通りに歯は動いてきません。あくまでも1日20〜22時間装着されていたら1週間で次のアライナーに変えるということが重要です。
「じゃあ、1日あまりつけられないから、1ヶ月くらいつけてたら十分動いてる?」
と聞かれたこともあります。アライナー自体が劣化して目に見えない範囲で後戻りが生じますので、やはり良くないです。
チューイーをしっかり噛んで装着しましょう
治療スタート時にチューイーという白いゴムを渡しています。
アライナーを外し、食後、歯磨きしてまた装着するのは毎日やることですよね。
必ずチューイーを使ってアライナーがしっかり適合するように噛み込んで入れる必要があります。
これで、治療計画の再現性が非常に高まります。
毎回面倒に思われるかもしれませんが、アライナーが甘く入っているか、しっかり適合しているかで治療経過に大きく差が出てきます。何より、治療期間の無駄な延長につながりますので、チューイーを常に持ち歩き、装着時に必ず使用することが重要です。
当院の矯正治療のお問い合わせはこちらからお願いします。