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子供の歯ぐきのトラブル

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、子どもの歯ぐきの病気と、その特徴についてのお話です。

 

来院された時、歯の表面に何日も付着しているような汚れが多かった口腔内。

ブラシで清掃したところ、歯茎の赤みが強く、出血が多かったです。

 

⚫️子どもは歯周炎にならないのか?

 子どもに認められる歯周疾患は,デンタルプラークの蓄積が原因となる歯肉炎(プラーク性

歯肉炎)がほとんどで、歯周炎はごくまれです。

1歳半までの30%以上の子どもが、歯肉の発赤・腫脹を伴うプラーク性歯肉炎に罹患しているといわれています。その後,成長とともにプラーク性歯肉炎は増加しつづけ、思春期には半数以上にも及びます。それでも、成人になるまでにアタッチメントロスや歯槽骨の破壊を伴う歯周炎を発症することはほとんどありません。

 子どもの口腔内からは歯周病菌があまり検出されず、歯周組織の抵抗力も強いため、歯周炎を発症しにくいようです。しかし、成長するにつれて歯周病菌が増加していくだけでなく、歯周組織の抵抗力が低下していきます。そのようななかで、プラーク性歯肉炎は歯周炎を誘発するリスクファクターになるため、子どものうちから歯周状態の健康を意識しておくことが大切です。

●歯周病菌と歯周組織のバランス

子どもの歯周組織は抵抗力が強く、病原性の高い歯周病菌が存在することもまれです。そのため、デンタルプラークが蓄積しても、歯肉炎(プラーク性歯肉炎)を引き起こすだけで、歯周炎まで発症することはほとんどありません。しかし、プラーク性歯肉炎を放置したまま油断していると、子どもが成人になったときに、病原性の高い歯周病菌の定着と歯周組織の抵抗力の低下を生じて、歯周炎が引き起こされます。

⚫️歯周病菌の出現

 デンタルプラークは歯肉緑上プラークと歯肉

縁下プラークに分類され、それぞれの環境の違いにより構成される細菌の種類が異なります。

歯肉緑上プラークは歯面に形成され、酸素が浸透しやすい環境下で生存できるう蝕の原因菌をはじめとする口腔レンサ球菌などが生息しています。それに対して、歯肉縁下プラークが形成される歯肉溝は、構造的に酸素が侵入しにくい環境であるため、空気を嫌う多くの歯周病菌は歯肉溝に生息します。子どもでは歯肉縁上プラークの構成菌は成人とあまり変わりませんが、歯肉溝に存在する菌は成人とは大きく異なり、歯周病菌はあまり検出されません。

 しかし、歯周病にかかわる菌は成人になってから突如出現するわけではありません。子どものうちに定着する歯周病原性の弱い菌が、思春期になって現れる病原性のやや強い菌の定着のために必要であるとされています。さらに、成人になって出現する病原性の高い菌の定着に、小児期および思春期に形成された菌がかかわると考えられています。また、歯周病菌は保護者から子どもに伝播することが知られており、重度の歯肉炎に罹患した子どものデンタルプラークからは多くの歯周病菌種が検出されることがあります。したがって、子どもの歯肉炎を放置することは、歯周病菌の定着時期を早め,歯周炎を発症するリスクを高めることになります。

●歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラーク

う蝕の原因や歯周病性の低い滞在菌は歯肉縁上プラークに生息しているのに対して、病原性の高い歯周病菌は歯肉炎縁下プラークに生息しています。子どもでは歯肉溝が浅く歯周病にかかわる菌は少ないですが、口腔衛生状態の悪い子どもでは病原性の高い歯周病菌が存在することがあります。

⚫️子どもの歯周炎

1. プラーク性歯肉炎

子どもの歯肉炎は、プラーク性歯肉炎がほとんどであるため,デンタルプラークを除去することで容易に解決できます。プラーク性歯肉炎を有する子どもでは,デンタルプラーク除去時に歯肉に痛みや出血を伴います。そのため,子どもは歯磨きを嫌がり、歯肉炎をさらに悪化させるという悪循環に陥ることがあります。また,子どもや保護者の十分な協力が得られなければ,歯肉炎が一時的に改善したとしてもすぐに再発します。子どもに歯磨きを習慣化させるためには、歯科衛生士が子どもや保護者に根気よく指導を行うことが必要です。

 萌出途中の永久歯の歯肉炎は、深い歯肉溝にデンタルプラークが蓄積することで容易に生じ,特に萌出性歯肉炎とよばれています。萌出性歯肉炎の好発部位は大臼歯ですが、前歯や小臼歯に生じることもあります。また、小学校高学年から中学生ごろには,ホルモンの変調,受験やクラブ活動による不規則な生活、口腔衛生に対する関心の低さなどが重なり、歯肉炎の罹患率が高くなることから、特に思春期性歯肉炎とよばれています。萌出性歯肉炎や思春期性歯肉炎による疼痛や炎症が頭著な場合には、抗菌薬や鎮痛薬を処方することもあります。これらの歯肉炎を発症する年代では、歯科受診の機会が少なくなる傾向にあるため、定期検診の重要性をよくご理解いただくことが大切です。

2.口呼吸由来の歯肉炎

 口呼吸由来の歯肉炎は上顎前歯部に好発し,露出した唇側歯肉が乾燥することにより発赤や

腫脹を生じます。口呼吸は、口唇閉鎖不全、歯列不正、気道の狭窄、鼻疾患などさまざまな原因により生じるため、原因を明確にして除去することが必要です。

 口呼吸由来の歯肉炎は,プラーク沈着が直接の原因ではありませんが、口腔衛生状態が不良なほど悪化するため,口腔内を清潔に保つことも大切です。

3.   歯肉増殖

 歯肉増殖は薬物の副作用や遺伝的要因に分類され、全顎的に歯肉肥大を認めます。薬物性の歯肉増殖は、てんかん発作の治療に用いる抗けいれん薬のフェニトイン、臓器移植の拒絶反応を抑える免疫抑制剤のシクロスポリン、高血圧や狭心症の治療に用いられるカルシウム拮抗薬のニフェジピンなどの服用により生じます。

 増殖した歯肉は非炎症性で硬く、歯冠を完全に覆うこともあり、歯肉切除を行わなければ改善させることは困難です。歯肉増殖の直接の原因はデンタルプラークではありませんが,歯肉

切除を行ったとしてもプラークコントロールが不十分であれば再発しやすくなります。

清掃状態をチェックするための染め出し液。

磨き残しがある部位について、患者さんと共有することで

普段お掃除ができてるようでできていないところを改善していきます。

小児歯科だけでなく、大人の方の歯周病治療や健診時にも必ず染め出しを行なっております。

 

 

4.歯肉退縮

  (咬合性外傷由来,機械的刺激由来)

 歯肉退縮は,叢生により唇側転位した下顎の

永久前歯の唇側に多く認められます。このような歯は、歯ブラシが他の歯よりも強くたることに加え、唇側の歯槽骨が非常に薄いために容易に歯肉退縮を生じます。

 また,特定の歯が歯ぎしりなどで強い咬合力を受けると。歯周組織に炎症を生じて歯肉退縮を引き起こすことがあります。ブラッシング指導や咬合調整だけでは改善が期待できない場合には、矯正治療で歯を適切な位置に移動させる必要があります。

⚫️子どもの歯肉炎

1.慢性歯周炎

 小児期に原因不明の重度の歯周炎を発症することがごくまれにあります。小児期の歯周炎は、乳歯と永久歯のそれぞれに認められ、短時間のうちに歯槽骨吸収や歯の動揺を生じることが多いです。

 小児期の歯周炎は全身疾患と関連していることがあり、遺伝性のものと免疫系に関連するものに分類されます。遺伝性のものとして、家族性周期性好中球減少症、ダウン症候群、白血球

接着能不全症候群、パピヨン・ルフェーブル症候群、チェディアック・東症候群、組織球症症候群などがあげられます。一方、免疫系に関連する疾患としては、白血病や糖尿病などがあげられます。これらの疾患をもつ患者さんは、小児科領域から紹介されて歯科領域でフォローすることが多いです。

 上記の全身疾患を有する子どもは、病原性の高い歯周病菌が存在しなくても、歯周組織の抵抗性が極端に弱いために歯周炎を発症します。

歯周炎の原因が全身状態に起因するため、歯周組織に対する治療で歯槽骨の吸収を抑えることは困難です。それでも、歯科医院ではスケーリングや抗菌薬の局所投与を行い,歯周炎の悪化を遅らせる必要があります。歯周組織の痛みや歯の動揺などの症状が改善しない場合には、該当する歯は自然脱落や抜歯の対象になることもあります。

 

小児患者さんのブラッシング用歯ブラシ。

毛先が柔らかく、歯肉炎のある状態でも用いやすいタイプです。

 

2.  非炎症性歯周病変

  (低ホスファターゼ症)

 デンタルプラークの蓄積による炎症が原因でない歯周疾患のことを「非炎症性歯周病変」というよび方が使われはじめています。たとえば、低ホスファターゼ症がこれに該当します。低ホスファターゼ症は、遺伝子の変異により血中のアルカリホスファターゼ活性が低下して骨の形成不全を生じる疾患であり、歯科的には乳歯の早期脱落が特徴的です。乳歯の早期脱落は、セメント質形成不全により乳歯と歯槽骨との結合が不十分であることに起因します。

 乳歯が早期脱落した症例では印象採得が可能になるころから、咀嚼や発音、審美性の改善のために小児義歯を装着します。これまで低ホスファターゼ症は、予後不良の難病とされてきましたが、近年開発された酵素補充療法という治療法により患者さんの寿命やQOLが向上してきています。

 低ホスファターゼ症では早期発見が重要であり、疑われる症例はできるだけ早期に小児科領域に紹介することが推奨されます。歯だけにしか症状が出ない症例もありますが、歯科領域から小児科領域に早期に紹介することができたおかげで、全身に生じていた骨の異常を早期に発見できた症例も存在します。

口腔と全身疾患、関節リウマチについて

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、口腔内の病気と関節リウマチや全身疾患との関連についてです。

 

関節リウマチは、全国で70万人程の患者数であり、8割が女性に現れる病気です。

 発症したら、ステロイド剤・消炎鎮痛剤・免波抑制剤等を服用し続ける必要があります。

 近年では強力な効果のある生物学的製剤(レミケード・エンブレル等)が脚光を浴びていますが、これらの治療法は「感染症になりやすい」「治療費が月3~5万円以上と高額」といった難点があり、現在のリウマチにおける治療は、薬物を使用し、症状を抑えこむ対症療法が中心になっています。

 そんななか、体の使い方を変えて薬を減らしていくという独自の観点から医療のあり方を模索し、全国のリウマチ・アレルギー患者から支持を集めている一人の医師がいます。福岡県博多市に「みらいクリニック」を構える内科医、今井一彰氏です。

 今井氏は新薬などの薬剤による治療に疑問を感じ、数年にわたり漢方治療を試みる時期もありました。しかし、薬を飲み続けなければ良い状態が維持できないということへの疑問は解消することはありませんでした。

 「医学の東西を問わず、処方箋を通じた患者さんとのつながりを見直す必要があるだろう、そのために第三の道を考えなければならない」と思った頃、リウマチ患者に共通する特有の匂いに気づき、それが口腔内の炎症に起因すると分かったことが大きな転機になりました。

 今井氏は、匂いを消すには口を閉じる、唾液の分泌を促せばよいのではないかと考えました。

ところが、当時は口臭について周辺の歯科医院に聞いても確かな答えが得られません。やむなく独自に学びながら患者さんに指導を始めたのが10年以上前のこと。内科的な治療効果の意図

を持って歯科治療を依頼するようになったのは、ほんの数年前のことです。

⚫️上流医療とは

 上流医療」を理解するための象徴的なエピソードがあります。

宮城県気仙沼市の中心街から車で数十分。舞根湾に流れ込む大川の河口に畠山重篤氏の経営る牡蠣とホタテの養殖場、「水山養殖場」があります。

 畠山氏が海の異変に気づいたのは1970年前後のこと。夏に赤潮が発生し魚が捕れなくなったのです。「赤潮が湾の奥から発生するということは排水による川の汚れではないか」と畠山氏は思いました。84年、フランスの代表的な牡蠣生産地に視察に行くと、現地の養殖場は気仙沼市と同じようにローヌ川やシャロンド川などの河口域にあります。畠山氏は牡蠣の養殖にはあらためて川が重要であることを確信しました。

 しかし宮崎県は88年に新月ダム建設計画を発表。「これができたら気仙沼は死んでしまう」と、悩んだ末に畠山氏が辿り着いた結論は、大川の上流の室根山に木を植えることでした。この提案に70人の漁師が賛同し、89年に「牡蠣の森を慕う会」が誕生。大川の水源地である室根神社のそばで第1回の植祭が行われました。海をきれいにするには上流をきれいにすることが必要という畠山氏の考えは、北海道大学水産学部の松永勝彦教授(当時)の研究によって、←学的に森と川の関係が裏づけられ、新月ダム建築は廃案になったのです。

「河口域でおいしい牡蠣を育てるには、川の上流をきれいにしなければならない」という原理は、人の体でも同じことです。

 今井氏は人間の体の「鼻」と「口」が上流だとし、ます鼻と口をきれいにすることから全身を診る治療を考案しました。これを「上流医療」もしくは「源流医療」としています。

●口呼吸が引き起こす全身疾患

口呼吸が多く、乾燥が強い患者さんの口腔内写真。

わかりづらいですが、舌や粘膜は診察時、お口を開けていただくと乾いた質感になっています。

口臭が強く感じる程度あります。

 

口腔内に菌が増えやすいため、虫歯のリスクが高くなります。

修復されている箇所が多いです。

唾液には殺菌作用があるため、口呼吸で乾燥した状態だと

唾液の消化作用や殺菌作用が弱まってしまいます。

 

 上咽頭は呼吸をすると必ず汚れる部位で、風邪をひくと最初に痛くなる所といえば分かる方が多いのではと思います。上咽頭や歯肉のような粘膜には、リンパ組織が多く集まっています。

口腔の扁桃や歯肉などのように、細菌感染していながら同時に防御もしているという部位は人体でもあまり例がなく、これらの部位の感染と全身疾患の関係が顕著だった例は少なくありません。

 この重要な上咽頭部に炎症などの問題を抱えている患者の多くに共通する特徴は、「口呼吸」だと言われています。

 人間にとって本来、呼気も吸気も鼻だけで行うのが正しい呼吸法ですが、常に口で呼吸することが癖になっている人はとても多いです。日常的に口呼吸を続けていると、さまざまな病気の原因になります。口呼吸の習慣は、細菌を日々体内に取り込み、病巣感染となって身体の機能を蝕み、免疫力を徐々に下げていきます。

 口呼吸と関連すると考えられる疾患には、関節リウマチ、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、うつ病、化学物質過敏症、ドライマウス、慢性副鼻腔炎、ペリオ、いびき、睡眠時無呼吸症候群などがあげられます

 口呼吸する方の特徴は、以下のような特徴があります。

・いつも口を開けている

・口を閉じると、あごに梅干し状のふくらみと

 シワができる

・下唇が腫れぼったく、むくんでいる感じ

・左右の目の大きさが違う

・目がはれぼったく、むくんでいる感じ

・食べるときにクチャクチャ音を立てる

・朝起きたときに、喉がヒリヒリする

・朝起きたときに、口の中が乾いている

・口の中がよく乾く

・唇がよく乾く

・口をあけてものを食べる

・いびきや歯ぎしりをする

・口臭が強い

・たばこを吸っている

・激しいスポーツをしている

・前歯が出っ歯気味

・舌に歯形がついている

・二重顎のようになっている

・鼻血がよく出る

●生活習慣の改善は鼻呼吸から

 こうした治療の場合、常に問われるのがエビデンスの有無です。その一例として、今井氏は、いびきをかくお子さんのCRP(C反応性タンパク)は高いというデータを挙げられています。

なぜ口呼吸は悪くて鼻呼吸は良いのかというエビデンスについては、「人体造や、生物の進化の過程から当たり前なのだとしか今のところは、言いようがありませんもちろん、換気量や吸気の調温調湿においても鼻呼吸が当然良いのですが、それが全身の疾患とどのようにつながっているのかを解明するのが、現在の課題です」としています。

 上咽頭は呼吸すると必ず汚れる部位で、この部分の上皮細胞を洗浄し、炎症を制御することが大事ですが、うがいをしてもここまでは届きません。具体的な処置としては生理食塩水や次亜塩素酸などを点鼻するなどの方法が考えられますが、さらに大切なことは治療後の呼吸法など生活習慣の指導であると今井氏は述べています。

▪️呼吸の改善法

 当院では、「あいうべ体操」「口テープ」を患者さんに お勧めしています。

⚫️抜歯で失明?!ペーチェット病と歯科

 ベーチェット病は、消化管(とくに口腔内)と外陰部の潰瘍、皮膚症状(毛のう炎、結節性

紅斑)、眼症状(ぶどう膜炎)、関節炎や血管炎などの症状を呈する優性再発性炎症性疾患です。

 不良な口腔衛生状態に関連して白血球が活性化することによって発症・増悪する疾患があります。例えば、掌蹠膿疱症、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などです。これらは、口腔連鎖球菌が血液中に入ると白血球が活性化して発症や増悪の引き金になるという機序が共通す。

 ベーチェット病の患者さんが歯を抜いたあと、1日から2日後にぶどう膜炎が発症、または憎悪して視力が低下するというのはその典型例です。喫煙歴があり、う歯や歯周病など口腔衛生状態が不良であり、HLAIB51陽性といった遺伝的な素因も持っている場合は、発症のスクが高まります。

 目が見えなくなった患者さんはあわてて眼科に駆け込みますが、歯科の治療とは関係ないと思っていますので、トリガーとなった歯科治療のことは、眼科の先生には話しません。

 現在はレミケードなど強力な薬がありますが、ぶどう膜炎が重症の場合は失明に至ることもあります。べーチェット病の患者さんの場合は、予めコンヒチンという薬を1週間以上服用し、白血球を活性化しにくい状態にしておいて、抜歯すれば比較的安全です。歯科ではこういった情報は、知られていません。ベーチェット病の治療ガイドラインに載ってしかるべきと思いますし、こういった関連性があることはすべての歯科医師の方に知って頂くことを望んでいます。

ドライマウス

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、口腔内の乾燥、口呼吸についてのお話です。

 

⚫️口臭歯周病の原因になるドライマウス

 唾液の量が減少し、口の中が乾きやすくなるドライマウス(口腔乾燥症)。唾液の量が減少すると、口内に細菌が繁殖しやすくなり、さまざまな口腔トラブルを引き起こす原因になります。

 唾液量の不足により口内の殺菌作用が低下すると、それまで抑えられていた細菌が活発に繁殖し始めます。細菌が増加すると、細菌の活動によって発生する酸(乳酸)や毒素(エンドトキシン)も増加することになります。酸は歯の表面のエナメル質を溶解し、虫歯を発生させ、毒素は歯肉(歯周組織)に炎症をもたらし、歯周病を作る原因になります。

 また、細菌が活発に活動することにより、臭いを発生させる代謝産物も多く生じ、口臭の原因にもなります。

 ドライマウスはどんな人がなりやすいのでしょうか?

 カフェインやアルコール、ニコチンの過剰摂取は、ドライマウスの原因になります。

これらの物質は高い利尿作用があり、体内に脱水症状を来します。脱水症状になると、唾液量が減少し、口腔乾燥を引き起こすというわけです。コーヒーなどのカフェインが多く含まれる嗜好品や、アルコールをよく摂取する方、喫煙習慣のある方は注意が必要です。

 また、男女の比率でいうと、ドライマウスは、女性が多いのです。

 とくに閉経後、女性のドライマウスは進行していきます。

 女性は閉経後体内にあるエストロゲンの量が低下します。エストロゲンは、女性ホルモンの一種です。

 エストロゲンが低下すると、唾液の量も減少することで知られています。

 その他、無理なダイエットで水分や食物を過剰に制限することにより、水分摂取量が低下し、唾液の分泌が抑制されて、ドライマウスを引き起こすこともあります。

⚫️ドライマウスを予防するには

 ドライマウスは、口の中が乾燥する症状です。ドライマウスを予防するには、口の中を乾燥させないようにすることが大切です。

 それにはまず、「口呼吸」を止めること。ドライマウスの人のほとんどは、口で息をする「ロ呼吸」です。口がいつも開いていたり、唇や口の中がよく乾くという症状が見られます。噛み合わせが悪いと、口を閉じにくくなり、口呼吸になりやすくなります。

 口呼吸は、ドライマウスだけでなく、イビキや睡眠時無呼吸症候群、アレルギーや膠原病、関節リウマチや身体のさまざまな疾患の原因になります。

 口呼吸から鼻呼吸にすることで、口内の乾燥を防ぐことができ、さまざまな症状が観和されます。

 あとは、唾液の分泌量がへらないように、適切な水分補給をすること。カフェインやアルコール、ニコチンなど、体内の水分を奪ってしまうような物質の過剰摂取は、避けるべきです。

⚫️口呼吸予防 【あいうべ体操】

 

 口呼吸の改善には、「あいうべ体操」が効果的です。

「あいうべ体操」は、内科医の今井一彰氏が考案した、口呼吸を改善するための体操です。

「あいうべ体操」をしっかり継続している人は、自然に鼻で呼吸ができるようになります。

 口を閉じて鼻で呼吸するためには、口の周りの筋肉と舌を突き出す筋肉を鍛える必要ごあります。また、筋肉のポンプ作用によっね、唾液の分泌が促されます。

 あいうべ体操のうち、「あいう」は口の周りの筋肉の、「べ」は舌を突き出す筋肉のトレーニングです。

 まず、口を楕円形にして、喉の奥が見えるまで大きく開き、「あ1」と言います。つぎに、前歯を出して、首の筋が浮き出るくらい口をグッと横に開いて、「いー」と言います。「う」は口を閉じる筋肉の体操で、唇を尖らせて前に突き出して、「うー」と言います。最後の「べ」では、舌の付け根が引っ張られるくらい、思い切り舌を前に突き出して、「ベー」と言いましょう。

【あいうべ体操手順】

①「あー」と口を大きく開く

②「いー」と口を大きく横に広げる

③「うー」と口を強く前に突き出す

④「べー」と舌を突き出して伸ばす

①〜④を、1セットとし、1日30セットを目安に毎日続ける

 この体操は、真剣に行うとかなり疲れます。慣れるまでは、2〜3度に分けたほうが続けやすいでしょう。

 また、「あいうべ体操」は、しゃべるときより口をしっかり、大きく動かす必要がありますが、無理は禁物です。

 とくに顎関節症の人や顎を開けると痛むという場合は、回数を減らすか、「いー」「うー」のみを繰り返してみてください。「いー」「うー」の部分の体操は、関節に負担がかからないため、何回行っても大丈夫です。

 唾液の分泌が増えることで免疫力が上がるので、いろんな病気の予防にもなります。

 あいうべ体操で口呼吸を改善し、体そのものが強くなり、今まで飲んでいた薬を卒業したという人も少なくありません。

 

 

⚫️顎関節症や肩こり、頭痛などの原因になるブラキシズム

食いしばり、噛み締めにより噛み合わせの筋肉は過緊張し、筋肉痛状態になります。

顎の関節にも良くない影響が及んでしまうのです。

 

 歯ぎしりがひどい。顎が痛む。慢性的な肩こりや頭痛がある。それは、歯の「ブラキシズム」によるものかもしれません。

 Bruxism:ブラキシズムとは咀嚼筋(咬むための筋肉)が無意識に異常な動きをする異常運動のことです。口腔悪習癖と呼ばれている悪い癖のひとつにも分類され、言葉の語源はギリシや語のBrychein から得ています。

 睡眠中の「歯ぎしり」や、強い力で必要以上に噛みしめてしまう「食いしばり」がこれに当たります。ブラキシズムは、歯の摩耗や折損、顎の関節の障害など重大なトラブルを引き起こします。

 無意識下の異常運動には3つの要素があり、歯をすり合わせるグラインディング、食いしばるクレンチング、上下の歯をカチカチと小刻みに接触させるタッピングがあります。

 朝起きると顎が疲れていたり、歯に負担がかかっていることがあります。これは睡眠中に過度の力が加わっているため起こる症状です。ブラキシズムは、噛み合わせの問題もありますが、

最も大きな原因は精神的ストレスであるとされています。つまり、誰でも起こり得る可能性があるということです。歯ぎしりやくいしばりの習慣が長期化すると、歯や顎にふたんがかかり、重症化します。

 歯が折れる、割れる、抜けるほか、口があかない、顎が痛いなどの顎関節症は、その代表例です。ほかにも、頭痛、首や肩こり、腰痛、めまい、耳鳴りなどさまざまなな症状の原因になります。

 

歯が折れていても外からは見えませんよね。

歯根は接している歯はこのような状態で、歯茎の中で完全に割れているところには、

口腔内の良くない菌の感染が顎の骨に及びますので、

痛みや歯茎の腫れが生じることが多いです。

 

 ブラキシズムは無意識で行われているので、夜間の歯ぎしりで、家族などに「歯ぎしりがすごい」「うるさい」などと指摘されたりする以外は、なかなか自覚することが難しいでしょう。

 ブラキシズムの治療には、マウスピースやプレートなど防止装置を使用し歯の磨耗や就寝時の騒音を防ぐ対策療法がよく使われます。ほかにも、噛み合わせ治療や矯正治療、薬物療法もあります。

 家族に夜間の歯ぎしりの騒音で指摘を受けている、顎が疲れたり痛むことごよくある、慢性的な肩こりや頭痛がある!そんな症状が見られる患者さんがいる場合には、ブラキシズムを疑ってみましょう。そして、重症化し生活に支障をきたす前に、早めに歯科医への受診を促して欲しいです。

⚫️舌と顎が大きく関わる睡眠時無呼吸症候群

 「睡眠時無呼吸症候群」という病気が広く知られるようになってきました。睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、「睡眠中10秒以上の呼吸停止が1時間あたり5回以上。もしくは7時間以上の睡眠で30回以上起きること」と定義されています。

 重篤の場合、心筋梗塞や脳梗塞などによる突発死、成長ホルモンの30%減少などの影響が明らかにされています。

 ここで言う無呼吸の状態とは、いびきがやんでいるときで、定義では10秒以上となっていますが、通常20〜30秒くらい、ひどい場合には1分から2分近く続く人もいるようです。

 また、30回どころか、ひと晩に100回も無呼吸を繰り返す場合もあります。

 無呼吸というのはいわば窒息状態ですから、こんな長い間、無呼吸でいたら、苦しくないはずがありません。無呼吸のあとに爆発音のような大いびきをかくのは、酸素を体内に供給しようと、大きく空気を吸い込もうとするためで、激しくもがくような動きを伴なうこともしばしばです。

 一般的に、睡眠時無呼吸症候群は、肥満体型の人がなりやすいと言われてきます。睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である上気道が閉塞するとこにより起こります。上気道は、鼻腔、アデノイド、口蓋扁桃、軟口蓋、舌根部で構成されています。上気道は首回りの脂肪の沈着により閉塞しやすくなります。ですので、痩せることが睡眠時無呼吸症候群を治す、予防する方法と考えている方も多いようです。しかし、欧米人の患者にはたしかに肥満体型の人は多いのですが、日本では痩せていると人でも睡眠時無呼吸症候群になるケースが多くみられています。

 上気道が閉塞する原因は他にもあります。それは「舌」と「顎」です。噛み合わせが深い(過蓋咬合)状態だと、舌と歯列のバランスが悪くなり、舌は後退し、喉の方向に押し出されやすくなります。また、下顎が小さい(小下顎状症)と、口の中の容積ぎ小さくなり、舌は喉の方へ押し出されやすくなります。その結果、気道には狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となるのです。

 また、出っ歯(上顎前突)、噛んだときに前歯に隙間がある(開咬)症状がらみられると、口は閉じにくくなり、口を開けたままでいることが多くなります。

 口を開けたまま寝てします(口呼吸)と、重力の作用で下顎は後退し、舌は後ろ(喉の方向)に押し出されやすくなります。結果、気道は狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となります。

 歯科医で行う治療としては、マウスピースを用いて行う方法が一般的です。寝ているときに装着し、舌や顎が後退するのを防ぎます。

歯肉の性状、口呼吸、食と栄養について

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、歯肉の状態の詳しいお話、食事の栄養についてです。

 

⚫️健康な歯肉・炎症のある歯肉

 

【健康な歯肉】

健康な歯肉は薄いピンク色で、セメント質と歯肉を結合するコラーゲンの機能が歯肉上皮を引っ張っているというスティップリングが点状に見えます。歯間乳頭は歯間空隙にフィットし引き締まった三角形をしています。

 

【炎症のある歯肉】

炎症のある歯肉は、辺縁が赤く丸みがあります。歯間乳頭は歯間空隙からはみ出るように赤く膨れ、スティップリングが消失しているのがわかります。

▶︎拡大して見ると・・・

健康な歯肉にエアーをかけて観察すると、硬く引き締まって歯面に密着しており弾力があるため、プローブで触った跡はすぐ元に戻ります。そして、スティップリングは大きさが一つひとつ異なるようすや、歯冠側からの観察では立体的な小窩になっているようすを確認できます。
一方、プラークに反応して炎症が起きた歯肉は、毛細血管が怒張し血管透過性が亢進して組織液が増えるため、赤く膨らんでいます。炎症の起きた歯肉では、毛細血管が線状に走行しているようすは見えにくくなることが多いですが、辺縁歯肉に赤い点としてはっきり見えることもあります。そしてここにプローブを挿入すると、容易に出血しBOP(+)となるのです。また、歯肉に密着しておらず弾力がなくなり、プローブで押した跡やポケットに挿入した跡がしばらく残ります。スティップリングは消失していますが、炎症がある歯肉でも確認される場合があり、健康を判断するうえでの十分な指標にはならないといわれています。

▪️炎症がある部位には肉芽組織が見られることもある

歯肉溝内に肉芽組織も観察すると赤く柔らかく、表面に顆粒状の膨らみが見えるときは、肉芽組織は、傷の治癒欠損した組織の補充、異物の処理に大切なはたらきをしますが、炎症(特に慢性炎症または炎症の治癒期)にも見られることがあります。
マイクロスコープは視軸と光軸がほぼ同軸で、深いポケット内も非常に明るく拡大して観察することができます。もともとこの部位にBOP(検査器具で触ったときの出血)はなかったため、肉眼だけで観察したのでは、正常に治癒してると判断してしまうこともあります。
肉芽組織が生じた原因は不明ですが、これは、部位の歯肉が正常でまないことを示しています。肉芽組織が観察されたら、その後も継続に観察を行い、治癒に至るのか、歯周炎が残存しているのかを判断する材料の一つにしています。

▪️パッと見ると、健康そうでも炎症があるかも…?!

一見、歯肉が薄いピンク色で硬く引き締まっているように見えても、炎症を生じている場合があります。
拡大してよく見ると、辺縁歯肉が丸みを帯びて歯面に密着しておらず、エアーをかけると歯面との間にわずかな隙間があることがわかりました。プローブを挿入するとプラークの付着が確認でき、BOPが確認できたことからも、炎症を生じている可能性があると考えられます。

炎症のあるなしで、このような違いがあるのですね。

ちなみに、口呼吸と歯肉の炎症って関係なさそうですが、

口呼吸で口腔内が乾燥するため、菌が増えて炎症しやすくなってしまいます。

気づかないだけで、多くの人が口呼吸をしてしまっています。

どのように改善したらよいのでしょうか?

 

⚫️口呼吸をやめるために効果が認められている方法は?

 

口唇閉鎖力がポイント

リットレメーターという機器です。

シンプルな構造ですが、これで小児患者さんの口唇閉鎖の力がどの程度か、

検査することができます。

 

 

▪️一時しのぎの方法ではなく、口輪筋を主とした筋群を鍛えることによって口唇閉鎖力を改善することが有効だと思われます。

鼻咽腔の機能に異常がなく、上下前歯の被蓋関係や骨格的な関係に不調和がないのに口呼吸の癖がある方の場合、口唇を閉じる力である「口唇閉鎖力」が低下している可能性が高いと思われます。口唇閉鎖力は、口呼吸の方は健常者に比べて有意に低く、60歳前後から低下傾向が見られることがわかっています。また、口唇閉鎖力は、特に高齢者においては食べこぼしや流涎と関連し、他の身体機能や疾患などの影響を受けやすいとも考えられています。
口呼吸の改善方法としては、鼻に特殊なテープを貼って鼻腔を広げる方法や、口に絆創膏を貼って寝る方法などがありますが、どれも一時しのぎに過ぎません。訓練などを行って、口輪筋を主とした筋群を鍛えることによって口唇閉鎖力を改善することが、口呼吸を鼻呼吸に変えるのに有効だと思われます。
自主訓練について、日本摂食の下リハビリテーション学会がまとめた訓練法を紹介します。自分で口唇を動かす口唇川練としては、指で口唇をつまんで外側に膨らませるように伸び縮みさせて口輪筋を伸ばす「口唇伸展」があります。また、口唇突出(「ウー」と発音して行う)
と口角引き(「イー」と発音して行う)を繰り返す運動も有効です。さらなる効果を望むなら、抵抗法として負荷をかけた運動を行うとよいでしょう。これは、舌圧子や木べら、ストロー、定規などを口唇で強く挟んで保持する方法です。
また、臼歯部でしっかり咬んだ状態で、前歯と口唇の間に紐を付けたボタンを挿入し、口唇でしっかり挟んだ状態で紐を引っ張ってボタンが口腔外へ飛び出さないよう口唇に力を込める訓練である「ボタンプル法」も有効だと思われます。
その他として、最近では口閉鎖訓練のためのさまざまな器具が市販されており、これらを用いた訓練法も考案されています。いずれの訓練も、やり過ぎはよくありません。各食事前(1日2~3回)に5分程度行うのがよいとされています。

⚫️食と栄養の疑問
カフェインは天然に存在する成分の1つで、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆などに含まれており、さまざまな効能を持つことが明らかになってきていますが、摂りすぎると心拍数の増加、不眠症、頭痛、吐き気などをもたらすこともあります。海外では健康への影響を検討し、妊婦・子どものカフェイン摂取目安量を示している国や機関があります。
日本では、カフェインの感受性に個人差が大きいため、健康に及ぼす影響を正確に評価することは難しいということで、カフェインの1日の摂取許容量が数字として明確に定められていませんが、「妊婦の方、お子さんはカフェインを摂り過ぎないように留意してください」と注意喚起が行われています。
そこで、最近注目されてきているのが、「デカフェ」飲料です。デカフェとは、本来カフェインを含んでいる飲食物からカフェインを取り除く、あるいは通常カフェインを添加する飲食物に添加を行わないことで、カフェインを含んでいないものをいいます。カフェインの除去方法には、①有機溶媒による抽出法、②水による抽出法、③超臨界二酸化炭素抽出法がありますが、
①は有機溶媒の残留の危険性があることから日本では許可されていません。③はカフェイン以外の成分に損失が少なく、コーヒー豆本来の香りなどを守ることができる点や、二酸化炭素を使用するため安全性が高い点から、現在主流になっているようです。
日本では、デカフェに対する明確な基準はありませんが、コーヒー飲料などの表示に関する公正競争規約によると、デカフェと表示できる商品はカフェイン含有量が10%未満とされています。メーカーや商品によってカフェイン含有量は異なるため、利用の際には実際にどれだけ含まれているかの確認が必要です。
以上の点から、デカフェコーヒーは、妊娠中・授乳中の女性や体の小さな子どもたちも利用して問題はありません。ただし、カフェインが含まれているのはコーヒーだけではなく、紅茶、緑茶、ココア、ウーロン茶のほか、これらを原料としている食品にも含まれています。カフェインは原料由来成分で本来表示義務がないため、コーヒー以外のデカフェ表示商品については、正確な含有量を知ることができないのが現状です。気になる方は、メーカーに確認するなどしてから利用すとよいでしょう。

肥満と歯科の関連について1回目

2024年4月24日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

肥満と歯科の病気の関連についてのお話1回目です。
まずは、肥満や脂肪についてです。

 

●肥満とは?

 

▪️肥満とは、中性脂肪(ほとんどがトリグリセリド)が脂肪組織に過剰に蓄積した状態と定義されます。これは、エネルギーの摂取がその消費に対し過剰な状態が続くことによって生じます。食事と運動のバランスが悪く、食事の量に対して運動量が少ないと、余ったエネルギーは脂肪となって体内に蓄えられます。非常に優れた生理学的なシステムによって脂肪は蓄えられていくのです。このエネルギー貯蔵システムは、太古から人や動物に必要なものとして築き上げられてきました。人が安定して食料を得ることができるようになったのは、農耕を始めた新石器時代からなので、せいぜい1万年ほど前で、それ以前は狩猟が食料を得る主な手段でした。狩猟では、日々安定して食料を得ることは困難ですが、狩りが成功すると大量の食料が手に入ります。当時は保存する方法もありませんので、食べられるだけ食べて中性脂肪に変換して体内に蓄積することのよって,飢えに備えてきたわけです。脂肪細胞のおよそ80%は中性脂肪です。中性脂肪のエネルギー変換率は非常に高く、1gで9.2キロカロリーのエネルギーに相当します。ヒトはこのエネルギー貯蔵システムを備えることによって何度かの氷河期を乗りこえてきたのです。

 

気になる肥満とダイエット

 

細い体型に憧れてダイエットする方は多いですよね。この世にはあらゆるダイエットが存在していますが、カロリーとダイエットの関係には、
・摂取カロリー<消費カロリー ならば痩せ、 ・摂取カロリー>消費カロリーならば太り、
・摂取カロリー=消費カロリーならば維持
という原則があります。
ここで言う痩せたとか太ったとかは、体重の増減なわけですが、健康的に痩せていくとしたら、栄養価を考慮する必要があります。栄養価が足りなければ、人間が生きていくために消費するエネルギーである代謝が落ちてしまいます。痩せたけど身体に不調をきたすなら、本末転倒であります。
3大栄養素である、タンパク質、脂質、炭水化物の割合をバランスよく取っていくことが必要です。このマクロバランスをすっ飛ばして、「〇〇を飲んでいればあとは好きに食べてOK!」とかいうダイエットはインチキなので、騙されてはいけません。過激なダイエットでは、確かに一時的に痩せることができます。ですがいつまで続けるのでしょう?元に戻した瞬間からリバウンド王になってしまいますよ。もし、ダイエットのストレスから過食と拒食のサイクルに入ってしまうと、健康被害が心配です。
さらに、ダイエットネタを続けますと、ランニングなどの有酸素運動をイメージされる方も多いのではないでしょうか?カロリー消費以外にもリフレッシュできたりする側面があります。しかし、ランニングのような有酸素運動を主軸としたダイエットが効果的かというと、そうでもないようです。ランニングの消費カロリーは、おおよそ体重✖️距離で、例えば60kgの人が10km走ったら600kcalということになります。一方で、体脂肪を1kg落とそうと思ったら約7200kcal消費しなくてはなりません。マラソン3回分でやっと1kgの体脂肪が除去されるわけです。また、身体の恒常性維持(ホメオスタシス)がありますから、習慣的にランニングするような場合、燃費のよくない身体に変わってくるのです。痩せにくい身体という意味です。こういうわけで、健康的に痩せていくことを考えると、筋肉量が落ちないようにトレーニングやタンパク質を意識して摂取し、脂質や炭水化物の取りすぎを避けていくのが適切であるということです。

 

歯科的にダイエットに効果的なことって?

 

固形のものをよく噛むことが重要です。まず、固形って何?って話ですが、栄養ゼリーやプロテインドリンクのみだと、口腔内で固形物を咀嚼する過程がないわけです。口腔内でものを噛み砕き、唾液と混ぜる過程で、食物は消化の第一段階を通ります。同じものを摂るにしても、歯でしっかり噛まないと、その食物の栄養吸収状態は悪くなるわけです。リアルフードをしっかりかみましょう。噛めないくらい歯の状態が良くないのであれば、歯科でちゃんと噛めるように治しましょう。

そうは言ってもタンパク質摂取に便利なプロテイン。ドリンクになりますが、口腔内で咀嚼しつつ飲み込むと良いでしょう。こちらはWPIと言って、乳糖不耐症の方でもお腹がゴロゴロしないホエイプロテインであります。チョコ味がとても美味しく仕上がっています。個人的にはザバスやマイプロテイン、ビーレジェンドよりもコクがありチョコドリンクとしても美味しい部類ではないでしょうか!ち


さらに、トレーニングネタ。院長室には懸垂とディップスが可能なこのようなスタンドが設置してあります。上半身を鍛えるのにうってつけです。脚はスクワットのいろんな種類をしてバランスよくトレーニングするように心がけています。
どうして懸垂とディップスなのか?というと、まず、歯科の職業病といっても良い、猫背になりがちな姿勢が関係しています。診療台でも、入れ歯などを機械で調整する際も、カルテの入力をする際も、意識をしないと前屈みの姿勢になりがちです。口の中を覗き込むような体勢になることも多いです。これに対して懸垂はバランスよく背中の筋肉を発達、維持できる運動であります。運動強度は高いですので、私は最初1回しかできませんでした。背中のトレーニング以前に、手のひらの皮が痛くてそんなに回数できなかったです。やり続けることで背中はもちろん、バーを握る手や肩の後ろの筋肉も使われていますので、健康的にスタイルアップが可能となります。手の皮も鍛えられて、分厚くなります。手の皮が鍛えられて日常生活のメリットはほとんどないですが、アスレチックなどで登る系のアクティビティの際、恩恵を感じられます。
ディップスは大胸筋に効かせる良い運動です。身体の前側と後ろ側両方をバランスよく整える必要がありますので、セットで行うと良いでしょう。
そのほかに、レッグレイズと言って身体のミドルセクション(腹筋群)の運動もできますので、1台このようなスタンドがあればかなり良いトレーニングができるわけです
。思い立ったらパッとできますので、自宅トレーニングしたいなっていう場合、おすすめの機材です。Amazonで1〜2万円だったと思います。

 

脂肪組織について

 

脂肪組織にはいろいろな役割があります。まず、脂肪の合成や分解でエネルギーの出し入れを行います。また油にしか溶けない脂溶性物質の貯蔵庫となります。ラクダの背中のこぶは脂肪のかたまりです。つまり脂肪組織は、まず冷蔵庫みたいな働きをしています。山や海の遭難でたいてい女性のほうが長く生き残っているのは、女性のほうが脂肪が多いためだといわれています。次に脂肪組織はアンドロゲンからエストロゲン、つまり女性ホルモンをつくることが知られていましたが、近年、脂肪組織はさまざまな生理活性物質をつくり出す,巨大な臓器であることがわかってきました。これについては疾患との関連のところで詳しく述べます。このような生理的な役割以外にも保温、外力からの保護、美容などの役割があります。
体重の維持には食事と運動のバランスが大切ですが、もうひとつ忘れてはならないことがあります。それはエネルギーの消費は運動だけではないということです。私たちはたとえ眠っていても、心臓は重くし呼吸もしなければなりません。体温も維持しなくてはなりませんし、新陳代謝で古い細胞は不要物となり新しい細胞と少しずつ置き換わっていきます。基礎代謝といいますがこのようなことにも然エネルギーが必要となります。そこで注意しなければならないのは、私たちの体の基礎代謝に必要なエネルギーは、年齢とともに低下していくということです。つまり、食事の量と運動量がうまくバランスがとれていても、年をとるにつれ少しずつ減少した基礎代謝の分だけエネルギーが余ってしまいます。通常は年齢とともに運動する機会も減るので、若い時と同じ量を食べ続けていると、気がついたらずいぶん脂肪組織が蓄えられているということになるのです。これがいわゆる中年太りがおこりやすい理由です。ただ高齢になると栄養の取り込みが悪くなり体重は減少していきます。そのための蓄えとも考えられますので、疾患の危険因子とならない程度の多少の中年太りはむしろ歓迎されるべきかもしれません。
一般に太り気味の方ほど骨量も多いようですが、過度のダイエットは骨密度の低下につながります。骨は成長期に作られ、20歳以降、骨密度は徐々に低下していきますので、若いうちにしっかりと食事をとり運動をすることで骨を蓄えておかなければなりません。若い女性は少しも太っていなにもかかわらずダイエットを行うことがありますが、肥満でない方の成長期のダイエットは骨粗鬆症の予備軍を増やしていることになります。あたりまえのことですが健康体重を維持することが大切なのです。

歯科治療に関係大アリ?骨粗鬆症

2024年2月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

全身疾患と歯科の関連のトピックです。

●骨粗鬆症とは、どんな病気でしょうか?

 

1993年,「骨粗鬆症は、低骨量で、かつ骨組織の微細構造が変化し、そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態」と定義されました。
すなわち、1990年代になり、高い精度、低被曝量,短時間での骨密度測定装置が実用化され、広く普及したことによる骨密度を重視した診断でした。
しかし、1990年代後半頃より、骨粗鬆症の進行に伴う骨折は、骨密度だけで、予測できず、骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善には、少なくとも、1年が必要となることなど、骨密度だけに偏重した評後の問題点が指摘されてきました。その後,生化学代謝マーカーによる骨代謝回転の評価により、骨密度としての変化があらわれる前段階での早期で迅速な判定が可能になってきました。
そこで、骨密度が低くないのに発生する骨折の問題や骨粗鬆症の薬物治療による骨密度の改善例と変化のない例での骨折リスクの抑制率に主要がないことなどの報告から、現在は、以下のように考えられています。
すなわち、2000年の米国国立公衆衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のコンセンサス会議で、
「骨粗鬆症は、骨強度(骨密度と骨の質)の低下によって骨折リスクが高くなる骨格の疾患」と定義されました。この骨強度は、従来から重視されていた骨密度と骨質の双方を総合的に評価して決定されるものです。


歯科でのパノラマX線写真で、皮質骨の厚みから骨粗鬆症のスクリーニングをすることができます。
骨粗鬆症の治療中の方で、投薬状況によっては抜歯などの外科処置を避けるよう、注意が必要です。

 

1. 骨粗鬆症の特徴を理解する

 

骨粗鬆症には、閉経期以降の女性や高年齢の男性に多くみられる原発性骨粗鬆症や、若い人でも、栄養不良や運動不足、副腎ステロイド剤などの影響で罹患する続発性骨粗鬆症があります。いずれも、日常のライフスタイルが大きく影響することから,歯周病と同様に、生活習慣病の一つと考えられています。
す。
骨は20~40歳ごろをピークに、加齢とともに生理的に骨量が減少します。特に、女性では、閉経後5~10年の間に年間骨量減少率3%以上の,急速な骨量減少が起こり、10年間の平均骨量減少率は、20%を越えると報告されています。各年代の推定人口から算出した40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2000年783万人から2001年819万人へと増加していることが推定されています。
一方、わが国の人口は、2004年11月現在,約1億2.771万人を超え、そのうち、65歳以上の高齢者は、2.493万人(19%)、また、75歳以上の後期高齢者は、1,100万人(8.7%)で、ますます超高齢化が進んできています。そのような高齢化に伴い。骨粗鬆症患者は増加し、しかも、無自覚に進行することから、骨折(特に、大腿骨頸部骨折、推計2002年約117,900人)が急増し、寝たきり老人の大きな一因になっています。寝たきりの原因は、脳卒中、老衰に次いで、第3位が骨粗鬆症による骨折です。そして、骨折後は、40%は退院できず寝たきりになったり、骨折後1年以内に、10~20%が死亡するなど、不可逆的に、患者の自立度(ADL:activities ofdaily living)と満足度(QOL:quality of life)が著しく低下し、老人性痴呆などの合併症を生じさせます。したがって、発育期に十分に骨量を増加させ、その後は、骨粗鬆症発症前の骨量減少者を早期に識別し,ライフスタイルの改善や骨粗鬆症の薬物治療などの予防策を講じることにより、その発症・進行を予防する必要性が強調されてきています。

 

 2. 骨粗鬆症の症状を理解する一特徴的な「圧迫骨折」を知ろう!

 

骨粗鬆症は、単なる「骨の老化現象」ではなく、骨の病的変化を主とする疾患ですが、病状が進行するまで顕著な自覚症状がない「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」といわれ、ゆっくりと静かに進行し、腰や背中が痛くなったり(腰痛),背中が曲がったり(身長低下)して自覚するようになります。
その後、さらに放置し進行すると、背中や腰の激しい痛みで寝込んでしまったり、ちょっと転んだだけで手首や足の付け根(好発部位:橈骨末端,上腕骨近位部、大腿骨頸部)の骨折を起こして寝たきりの原因になります。
また、背中や腰が痛むのは、骨粗鬆症化(スカスカになった状態)した脊椎に体重などの負荷がかかることにより、脊椎が潰れてしまうからです。ポキッと折れることだけが骨折ではなく、このような骨折が、「圧迫骨折」といわれ、経時的にゆっくり進行します。圧迫骨折を起こすため、背中が曲がったり、身長が短縮します。一般的に,閉経後2cm以上の身長低下は、骨粗鬆症の存在を示唆する所見であると同時に、脊椎変形に伴う満足度低下の重要な指標にもなるといわれています。

3. 骨粗鬆症の診断はどうやっているのでしょうか

 

従来は、脊椎✕像で骨量減少が認められ、脊椎圧迫骨折のある症例が骨粗鬆症と診断されていました。しかし、脊椎圧迫骨折のない段階での早期診断により、本症の予防や早期治療が可能になることから、1994年 WHO研究班は、骨密度を指標とした新しい診断基準を提唱しました。すなわち、骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の2.5SD 以下の症例を、原発性骨粗鬆症と診断しました。しかし、この診断基準では、白人の骨醤度が指標となることから、1996年日本骨代謝学会では、骨粗鬆症の診療や研究に従事している整形外科、内科(老人科,老年科),婦人科、放射線科およびスポーツ医学から、日本人における包括的な診断基準を作成し、その後2000年にさらに、改訂を加えました。新しく設けられた原発性骨粗鬆症の診断基準は、従訂を加えましたる。
産の診動基準は、従来の診断基準とは異なり、骨折が生じていなくても、設定された骨折閾値以下に骨量減少をきたした病態までも骨粗鬆症に包括しています。すなわち、骨密度と脊椎X線像の2つの指標を用いた点、若年基準値からの変化率を用いた点、さらに鑑別診断の重要性を強調した点が特徴です。

 

4.骨密度測定にはどんな方法があるのでしょうか

 

骨密度測定は、骨粗鬆症の診断,治療効果の判
・骨折リスクの予知のため、現在、中手骨に対して,MD法(microdensitometry),改良型MD法[DIP i (digital image processing) , CXD 法
(computed X-ray densitometry)], 橈骨や踵骨に対して、単一エネルギーX線吸収法(single energy X-ray absorptiometry : SXA),全身骨,橈骨,腰椎,大腿骨に対して,二重エネルギーX線吸収測法定 (dual energy X-ray :DXA)
橈骨や腰椎の海綿骨には、定量的CT 法(quantitativecomputed tomography: QCT),さらに、踵骨に対して,定量的超音波法(ultrasound bone densitometry: QUS)など、種々の骨量測定装置が開発され、市販されています。
現在の原発性骨粗鬆症の診断基準に準じると、骨密度測定は、DXA 法による腰椎骨密度が第
1選択になります。しかし、高齢者で,脊椎変形などのため腰椎骨密度が適切でない場合は、DXA 法による大腿骨頚部骨密度を測定します。また、検診などでの骨粗鬆症のスクリーニングには、CXD 法や定量的超音波法が適用されています。一方、男性では、大腿骨頸部骨密度の方が、腰椎骨密度より骨折の判別に有用とされているので、DXA法による腰椎に加え、同時に大腿骨頸部骨密度を測定します。

 

 5.骨粗鬆症の治療は、どんなことをするのでしょうか

 

骨粗鬆症の予防と治療の目標は、前述のように骨折の防止です。骨粗鬆症では、まず、日常生活の中で骨量を増やす努力をすることが大切です。予防法でもある3原則「食事、運動。日光浴」は、治療の段階でも重要になります。初期の骨量減少であれば、予防を心がけることで骨量が増える可能性があります。しかし、さらに骨量減少が進むと薬物療法が必要になります。その場合でも、3原則に留意しないと薬の効果がみられません。どんな薬を選んで、いつから薬物療法を始めるかは、年齢や症状の進み具合により総合的に判断されます現在使われている薬は。骨吸収抑制薬(骨の吸収を抑在使われている薬は、骨吸収抑制薬(骨の吸収抑える薬),骨形成促進薬(骨の形成を促進する薬),骨の吸収と形成の骨代謝を調節する薬の3つに大別されます。

 

 6. 骨粗鬆症をまとめると

 

前述のように、40歳以上の女性の骨粗鬆症域人口は、2001年819万人と試算されています。しかし,大多数を占める閉経後骨粗鬆症患者は、骨折を起こすまで自覚症状がないため、医科を受診する機会が少なく、骨粗鬆症治療を受けている患者数は、200万人に満たないといわれています。いいかえれば、歯科疾患の治療のために歯科を受診する潜在的骨粗鬆症患者は、決して少なくないと考えられます。
女性の身体は、初潮を迎えたあと、周期的に女性ホルモンが分泌され、その後、更年期(閉経前後の約10年間,45~55歳頃),閉経を迎え、女性ホルモンの分泌量が激減し,急激な骨量低下を来します。この時に現れる不快症状の集合が、「更年期障害」とされています。したがって、更年期障害の典型的な症状やその後の骨粗鬆症に関する前兆を見極めて、そのリスクを軽減させるようにアドバイスし、歯周組織の健康と同時に、骨の健康を促すことが必要です。

インプラント治療を行うにあたっての全身的な注意点

2024年2月11日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。


上顎に4本インプラント埋入し、入れ歯を組み合わせる治療例の写真

インプラント治療を行う際、特別注意が必要なことがあります。
全身疾患についても注意が必要なことの一つです。
治療の際の臨床検査の意義としては以下のことが挙げられます。
①リスクの明確化
②リスクを反映した治療計画、治療精度の向上
③患者さんによる自己管理の徹底と維持→治療後の長期安定
④加齢、病的変化への対応
特に治療に対する安全性に加えて、治療後のリスクを軽減する意味でも、臨床検査とその共有が重要です。

全ての患者さんの術前スクリーニング的な検査として、
・血液、尿検査
・デンタル、パノラマX線写真撮影
・CTによる3次元的画像診断
があります。

さらに、一部の患者さんを対象として、
・骨代謝マーカー
・歯の喪失原因の検査:細菌検査、力学的検査
・アレルギー検査:パッチテスト
があります。

インプラント治療を行うにあたっては、血液検査、ヘモグロビンA1c(HbAic)が6.5%未満、
空腹時血糖值13m/L未満にコントロールされていることが必要です。
これは、インプラント手術時だけではなく、メインテナンス時も同様です。そのため、メインテナンス時、定期的に血液検査データのHbAic値を確認することが重
要となります。

ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白で、身体のすみずみまで酸素を運ぶ役割があります。
このヘモグロビン(血色素)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンですが、
グリコヘモグロビンについて、その1つのヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病と関係しています。
赤血球の寿命は約120日(4ヵ月)なので、すなわち、血糖値は血液検査時の全身状態を示しています
一方、HbAIC値は血液検査の日から1〜2ヵ月前の血糖の状態を示し、糖尿病の状態を知るのに重要な検査値です。

 

骨粗鬆症

 

骨粗鬆症による全身の骨量減少と歯槽骨吸収との関連性については不明ですが、
骨粗鬆症の既往をもつ場合には、顎骨の骨量減少も考慮してインプラント手術やメインテナンスを進めていく必要があります。

一方、骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート(BP)系薬剤の投与を受けている患者さんで、
抜歯などの外科的侵襲により、顎骨壊死、顎骨骨髄炎の発症が近年報告され、問題となっています。

BP系薬剤には注射剤と経口剤があり、注射剤で顎骨壊死、顎骨骨髄炎が多く報告されていますが、
経口剤においても同様な報告があるので注意が必要です。
BP系薬剤による、顎骨壊死、顎骨骨髄炎のリスクファクターとしては、外科的侵襲のある歯科治療(抜歯、インプラント手術など)や
不適合な義歯だけではなく、口腔の不衛生も報告されています。
そのため、インプラントのメインテナンスに際し、服用している薬剤などの十分な問診とその知識が必要です。

 

・精神神経症

 

医療面接が不可能な精神的疾患のある患者さんには、治療内容を十分に理解していただくことが困難なため、
インプラント治療は難しいと思われます。また、不定愁訴や異常に不安感がある患者においても、
メインテナンス時にインプラント周囲炎などの問題を生じる可能性があるため、歯科医師だけではなく、
歯科衛生士も慎重にインフォームド・コンセントを行う必要があります。

 

生活習慣

 

1.喫煙

 

喫煙は、インプラントの長期経過に大きな影響を与えるリスクファクターの1つです。
なぜなら、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質により、末梢血管障害や免疫障害を起こし、
インプラント周囲炎に影響を与えるからです。
そのため、インプラント治療を開始する際は、喫煙の有無、喫煙歴について問診し、禁煙指導が重要となります。

インプラント手術時においては、埋入されたインプラント部の骨結合不良や創部治癒不全などの
問題が起きないようにするため、禁煙を徹底させます。

一般的な手術時禁煙プロトコールは、インプラント手術に際して、喫煙者にインプラント手術前3週間、手術後8週間の禁煙を指示しています。
期間設定は、喫煙による頭蓋顔面での手術創傷治癒への影響についての研究結果がいくつか報告されているからです。
実際、喫煙者にとってこれだけの期間の禁煙は変難しいことですが、手術前後の禁煙が成ことで継続的に断煙できるようになり、
「インプラント手術をきっかけにタバコを止められた」
という患者も少なくありません。
しかし、手術に際して禁煙した患者でも、喫煙を再開してしまうこともあります。
歯科医師、歯科衛生士はメインテナンス時にも、禁煙(喫煙)状況を確認して、必要に応じて禁煙の再指導を行う必要があります。

当院でのインプラント治療における禁煙指導の流れとして、まず、喫煙がインプラント治療のリスクファクターであることを十分に説明します。
禁煙指導の際には、喫煙によるインプラントの予後への影響をデータで具体的に説明し、禁煙を促します。

また、製薬会社のホームページなども利用し、禁煙意識を高めることも1つの方法です。
具体的な禁煙の方法として、ニコチンガムやニコチンパッチなどの禁煙補助薬を用いた禁煙方法であるニコチン代替療法があげられます。

このように禁煙指導を行っても、インプラント治療中からメインテナンスの時期まで一貫して禁煙できない患者さんは、
大きなリスクがあると考えられます。
その場合、非喫煙者よりもインプラント周囲炎を起こす可能性が高いことを十分に説明し、理解してもらい、
リコール間隔を短くするなど、早期に炎症性変化を発見できるようにすることが重要です。

 

・ストレス

 

ストレスがインプラント治療に悪影響を及ぼす明らかな報告はありません。しかし、ストレスが歯周炎に何らかの影響を及ぼしていることは知られています。
とくに、ストレスが直接的および間接的に歯周組織に影響を与えていることが報告されています。
まず、直接的な要因としては、ストレスなど精神的な原因による顎の動きです。つまり、就寝時のブラキシズムなどの悪習癖は、
直接的に歯周組織、とくに歯槽骨に破壊的な影響を及ぼします。
インプラント周囲組織においても、同様な現象生じることが予想されます。
また、間接的な要因として、代表的なものをあげます。
1つ目は、ストレスにより副腎皮ホルモンの分泌が高まり、免疫応答として白血球の作用が減弱することで、
歯周組織の持つ抵抗力が低下することです。この現象は、インプラント周囲組織の血液供給量が、歯織と比較して少ないことを考えると、
インプラント周囲炎のリスクといえます。

インプラント周囲組織は歯周組織よりも不利な条件であることが容易に想像できます。
2つ目は、ストレスにより自律神経系の交感神経が優位となるため、血液循環量が低下し、唾液分泌量も低下することです。
このことから、口腔内の洗浄、抗菌作用が低下し、歯周炎およびインプラント周囲炎を生じる可能性があります。
以上のことから、ストレスがインプラント周囲組織に悪影響を与える可能性が高いことが想定されます。
私たち歯科医療従事者は、メインテナンス時にインプラント周囲炎や歯周炎の原因の一つとして、
これら精神的な原因もあることを忘れずに、的確な目で口腔内組織を診ることが重要です。

口腔内に発現する力により、歯や歯周組織、筋肉や関節にも良くない影響が生じることがあります。
私たちの社会にはさまざまな程度のストレスがあり、感受性は人それぞれです。
インプラント治療においても、あまりストレスが強く感じられる方にとっては、
リスクとなってしまいますので、あまり溜め込みすぎないよう、
上手にストレス管理ができると良いでしょう。
噛み締め、食いしばり対策として、私たちはメディセルの施術を行っています。
これは、誰でも無意識のうちに行っている、噛み締め、食いしばりの運動を
筋肉の緊張を緩めることで解消していく療法です。
治療の案内はこちらです。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

気になる口臭&歯周病が妊娠へ与える影響について

2024年2月7日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お口の中で気になることといえば、
歯の色と口臭が挙げられます。常にネットの検索上位にあります。
今回は、口臭について先にお話しします。

 

気になる口臭、どこから来てる?

 

原因を胃腸の不調であると思われるかもしれませんが、口臭の原因は約9割がお口にあり、
特に歯周病は独特の嫌な臭いがします。
フリスクなどの強烈なミントもありますが、それば一時しのぎですので、
歯周病治療とセルフケアで改善したいですね。
なかなかご自身では気付きにくいですし、周りの人もデリケートな話題のため指摘しづらいです。

 

口臭には種類があります

 


プラーク、歯石がたくさんついていて、歯周病が進行している口腔内。


歯周病の独特の口臭があります。
この写真の口腔内のようだったら、歯周病など口の中の病気が原因の口臭が不快に感じられるようになります。
実は、口臭には他にも種類があります。
まず、健康な人でも生理的口臭があります。緊張したり、寝起きなどは唾液分泌量が少ないため少し臭いがありますが、
これはすぐに元に戻りますので気にすることはありません。

次に、食事によるものです。具体的にはニンニクやお酒などによるものです。
身体の病気が原因の口臭は、内臓の重篤な疾患によるものです。その病気によって発生した臭い物質が身体をめぐって呼気として出ていることになりますので、
口臭以前にその重篤な疾患に対しての治療が優先となります。

つまり、圧倒的に多いのは歯周病による口臭であり、それは治療とケアで改善可能です。
「しばらく歯石をとってないな」
「最近歯ブラシで血が出る」
といったことはありませんか?定期的に歯科受診し、口臭をスッキリさせましょう。

 

⚫️本当はコワイ、妊娠初期の歯周病
歯周病と早産・低体重児出産の関連性

 

◼️はじめに

 

お口の中の疾患である歯周病が、糖尿病,肺炎。心臓の病気などに関連するかもしれないということは、最近知られてきています。しかし,お口から遠く離れた産婦人科領域の疾患,しかも妊娠に関連する病気にも影響する可能性があるということは、あまり知らない人が多いのではないでしょうか。
その,歯周病と関係する産科領域の疾患として挙げられているのが早期低体重児出産です。

 

⚫️歯周病と関係するといわれている早期低体重児出産とは何でしょうか?

 

早期低体重児出産とは、分娩時期より早い、妊娠22週以降37週未満で出産する“早産”と、2,500g未満の小さい赤ちゃんを出産する“低体重児出産”のことです。早産で産まれた赤ちゃんは、低体重児であることが多いとされています。その理由は、おなかの赤ちゃんの体重が2,500gまで成長するのは平均妊娠34週程度といわれているためです。
日本では、厚生労働省の平成16年の人口動態調査から分かるように、低体重児の出生率年々のびてきています。これは医療技術の発達によるものだと思われます。以前なら助かる確率が低かった低体重児出産の赤ちゃんの多くが、現代の医療技術により救われていることは非常にすばらしいことです。しかし、低体重児出産の赤ちゃんは、おなかにいた期間が短いほど未熟性が強くなり、産まれた後に特別な管理が必要なことが多いとされています。また、成長していく過程においても、さまざまな疾患に対するリスクが高いこともいわれています。
そのため、できるだけ長くおなかの中で育てることが、赤ちゃんにとって望ましいことだと思われます。
早産・低体重児出産の原因は、頸管無力症,絨毛羊膜炎、妊娠中毒症などの疾患が挙げられています。また、危険因子としては、年齢,喫煙、アルコール、ドラッグ、人種,早産の既往等があります。しかし、これらの疾患や危険因子が全く見あたらない、原因不明の妊婦さんも数多く存在します。

 

⚫️歯周病と早期低体重児の関連性に関する報告

 

▪️歯周病の治療が早期低体重児出産の防止に効果がある!!

 

2002年以降には、歯周病の治療をすることで早産・低体重児出産が少なくなったという報告がいくつか存在します。
最新のものでは、2005年に Lopezらが、870名の妊婦さんを対象に、妊娠中に歯周病治療を行ったグループ(553名)と行わなかったグループ(281名)それぞれで、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率を調べました。その結果、歯周病治療を行わなかったグループと比較し、行ったグループでは、早産,低体重児出産、早期低体重児出産の発現率が、早産では5.65%から1.42%へ(p=0.001),低体重児出産では1.15%から0.71%へ(p=0.79),早期低体重児出産では6.71から2.14%へ(p=0.002)と減少したことが示されました。
これらの報告により,歯周病が早期低体重児出産に大きく関わることだけではなく、歯周病の治療が出産によい効果をもたらす可能性も示されました。

妊産婦さんが歯周病にかかっていると、歯周病でない妊産婦さんの7.5倍〜7.9倍もの確率で早期、低体重児出産が起こる危険率は、上がるという報告がありました。
炎症物質が子宮に到達すると、刺激を受けて子宮が出産予定日より前に子宮収縮を引き起こし早産、低体重児出産になると言われています。
これまで歯周病と早期低体重児出産との関連性に関して過去に発表された論文等を詳しくみてきました。そこからも分かるように、日本におけるその関連性はまだ確立されているわけではありません。しかし、最近の世界各国からの報告では、歯周病は早産に対しては2.3倍,早期低体重児出産に対しては、5.3倍の危険率があることが明らかにされました。このことからも、歯周病が早期低体重児出産に関連している可能性はあるとわれわれは考えています。
妊娠・出産は、女性にとって人生の大きなイベントの1つです。母子ともに健康な状態で出産を終えることは、母親だけでなくその家族、地域社会の願いでもあります。そのため、妊婦さんは少しでも異常妊娠,異常出産の危険性を減らしたいと思っているはずです。歯周病は予防可能な、そして妊娠中も治療可能な病気です。実際、外国からの報告でも歯周治療が出産によい効果を与える可能性も示されています。
しかし、残念なことにこのような歯周病と早期低体重児出産の関連性に関しては、歯科医療従事者の間でもよく知られていないのが現状です。今後は、歯周病が早期低体重児出産の危険因子となりうる可能性を、多くの妊婦さんに伝えていくことはもちろんのこと、歯科医療従事者、医療従事者、行政にも知ってもらうことが大切になってくるのではないでしょうか。
妊婦さんのお口の状態を良くすることは、母親本人だけでなく,生まれてくる子供、社会の口腔内健康状態の向上につながる可能性があります。その意味でも、将来,より多くの報告により、歯周病と早期体重児出産の関連性が確立され、広く知られるようになることが望まれます。

 

●妊産婦の口腔ケアの重要性について

 

妊娠すれば、タバコやアルコール、夜更かしなどの悪習慣を改め、食事にも気を配るなど、誰でも良い親になろうと努力します。妊娠そして育児期は健康に対するモチベーションが非常に高まる時期であり、自分自身のこれまでの生活や食習慣を改善することができる絶好の時期であるといえます。妊娠を契機として、母親が歯科をはじめ各種疾病に関する正しい予防知識と好ましい健康観を獲得することができれば,自分自身のみならず、生まれ来る子どもや家族の生涯にわたる健康と幸せづくりに繋がることが期待できるのです。

診断のための資料とりについて

2023年11月20日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

私たちは初診時や治療経過、メンテナンスなどのタイミングで、お口の資料取りを行なっています。
レントゲン撮影、歯周組織検査、口腔内写真、顔貌写真です。
レントゲンで写るものは、硬い組織です。
口腔内でいうと顎の骨、歯、顎の関節、上顎洞などです。
虫歯や歯周病、顎の関節の病気、歯の根の病気を画像診断するためです。

歯周組織検査というのは、成人の方ならご経験あるかもしれませんが、
歯と歯ぐきの境目の溝の深さを測定し、歯周病の状態を判定する検査です。
歯周ポケットが〇〇mmある、ということも重要な検査の項目ですし、
ポケット測定した際の歯ぐきからの出血の程度も重要です。
歯の揺れの程度も記録します。

口腔内写真は、このようなものです。

正面、左右、上下顎咬合面をカメラとミラーを用いて撮影します。
顔貌写真も正面、側方から撮影します。
なぜ、顔の写真が必要なのか?と思われるかもしれません。
そこで、口腔内の状態とともに、表情も変化する現象についてお話しします。

 

なぜ、患者さんの表情を診る必要があるのか?

 

口腔機能関連器官に起こる加齢変化を診ています。年齢を経ると口腔周囲の筋組織が変性します。また、歯の喪失がある場合、
咬合力の低下を招きます。私たちが食事をとるときに無意識に動かしている筋肉は、歯の喪失があると機能しにくくなります。
たとえば頬筋は臼歯などの喪失により変性し、口腔前庭部の食塊の咬合面への押し戻し機能の低下が生じます。
臼歯の咬合面の摩耗や歯の喪失によって噛み合わせの高さ(咬合高径)の減少を引き起こし、口腔容積が減ります。
舌の稼働空間が小さくなるのです。舌が動かしにくくなり、嚥下反射も弱くなります。

噛み合わせの高さが低下しているため、下顔面が短くなっている状態。


口周りのシワが深くなる、筋肉が衰え、はりがなくなる印象に変わっていきます。

高齢者の20%は、口底部に液体を貯めてから嚥下するタイプになりますが、このタイプになると、舌の運動量を大きくする必要があるため、
嚥下に時間がかかるようになります。
咀嚼筋は退化し、顔面の表情筋は垂れ下がり、口腔全体に加齢変化が起こります。

このように複雑な症状をかかえる高齢者、あるいは高齢者予備軍の60代の患者さんはたくさんおられます。

 

入れ歯を使い続けることにより、身体は代償を払っている?

 

入れ歯で生活されている方の歯茎を見ると、顎の骨吸収をともなうことが多いです。
抜歯をして義歯を装着すれば、初めの1年間で骨の高さが4mm 減少するという研究もあります。(1996年 World Workshop in Periodontics)

歯がない側の下顎の骨は、高さがなくなっています。

25年間に及んで義歯を装着された患者のレントゲン撮影による長期研究によると、この間に連続続的な骨吸収が起き、
上顎は約4倍の骨吸収が生じると報告されています。(Warrerら1995年)

合わない義歯を入れられていたため、上顎の歯がない部分は、骨の高さがなくなっています。
つまり、歯槽骨を維持するためには歯の存在が不可欠であり、入れ歯は骨吸収を加速させる、ということです。
以前、歯やインプラントにかかる力がどのように骨に伝わるかを解析した研究発表を見ました。
噛んだ時の力は、顎の骨の広い範囲に散っていくような画像でした。
歯やインプラントは顎の骨に植っているために、
このような力の伝わり方になるのだと理解できました。
だから、身体は骨をしっかりさせようと反応し、歯槽骨が維持されるわけです。

骨吸収により、口腔内の加齢変化は加速していきます。
合わない入れ歯がある場合には、骨の吸収が早まり、
また、患者さんも抜歯後に適合の悪い義歯を使用することで、さらに骨が吸収することの説明を受けていない場合もあります。
ほとんどの入れ歯の患者さんは、そのような事実を理解されていません。

私たちは、歯の保存だけでなく抜歯後の骨の保存も考慮した治療計画を立てねばなりません。
また、義歯が引き起こす危険性も十分に説明する必要があります。
患者さんは、ご自身の体験として、入れ歯の引っかかっている歯がダメになることを知っておられます。
「入れ歯ってだんだん大きくなるよね」
「入れ歯が浮いてきて噛めないけど、そういうものだよね」

このような状況を経た場合、噛むための筋肉の短縮を招き、咀嚼力の低下を起こし、顔面諸筋は下垂し、表情に多くの退化が見られます。

私たちは資料とりでお顔の写真を撮影するのは、受診に至るまでの表情の状態を把握するためです。
そして、治療がすすみ、治療用の仮歯などでリハビリをするときに、スムーズにトレーニングを行うことができます。
表情の特徴を分析し患者さんと共有することが、治療する上で重要であります。

 

唾液分泌低下は味覚障害、口腔乾燥につながる

 

上顎義歯を装着すると、奥歯の領域にある唾液腺を圧迫してしまいます。
加齢とともに唾液分泌量は低下するうえ、その唾液腺を義歯が圧迫するため、
より唾液がでにくくなります。
そのようにして、口腔内には以下のような変化が生じます。
(1)口腔内の湿潤が低下し食塊の滑りが悪くなるため、粘膜へ食物が付きやすく、咽頭へ食塊を送りづらくなる。
(2)食塊に十分な水分を混ぜ込むことができなくなり、むせやすくなり、味がわかりにくい。誤嚥のリスクが高まる。
(3)味覚の低下。。

 

口腔周囲筋トレーニングについて

 

健康寿命を伸ばすことへの関心は増加しています。
歯を失うことなく、予防管理していくことが最重要であります。
他科疾患の罹患率も減り、人生における医療費は大きく削減できます。
歯がグラグラしたり、抜けてきたりして、ああやばいなー歯医者行こうってなる場合が多いです。
非常に勿体無いです。それに、噛めない状態、合わない入れ歯の状態でずっと過ごされていると、
身体の代償として、筋肉の機能低下、顎骨の吸収が生じます。
入れ歯の名医と言われる先生でも、なんでもかんでもなおせるわけではありません。
過度に吸収してしまった歯茎に対しては、入れ歯が浮いてくるのは必然ですし、
インプラントも場合によっては難しくなるでしょう。
歯の欠損を放置することで、結果的に寝たきり→不健康で楽しめない人生となってしまいます。
本当は、入れ歯やインプラントがないお口が一番いいです。

では、歯周病や事故で歯を失ってしまった場合、
1ヶ月くらいで出来上がる保険の入れ歯で機能回復できるのでしょうか。
しっかり歯があった頃くらいに噛めるようにするには、ある程度の高額な治療費がかかってしまいます。
はっきり言って、健康はお金で買えるのです。
幸せな人生のために必要なこととして、
・健康
・人間関係
・経済
・楽しみ
・承認
など、いくつか要素が考えられます。
全て満たされていたらとても充実した人生と言えますね。
口腔内のトラブルから、寝たきりになってしまったとしたらどうでしょう。
健康を失えば、ベッド1つ分の人生と思うと、健康って当たり前じゃなくて、ありがたいことだなと思いますね。

オーラルフレイル:口の中の問題から全身の虚弱を招きます。

現在、若年労働者の減少とともに、高齢者でも現役で社会参加しなければならない状況になった今こそ、
お口の中から予防に取り組むこと、
治療が必要になったら身体の代償を払うような治療は避けること、
しっかり噛める状態を作り、維持していくこと
が大切ですね。

顎関節症に良くない生活習慣

2023年10月3日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、私たちが知らず知らずのうちにやってしまている、顎のためによくない生活習慣について解説します。

 

⚫️クセや習慣を見直しましょう!

 

顎関節症を発症・増悪させる原因を減らすために、日常生活で何気なく行なっているクセや習慣を見直しましょう。気づいて改善していくと症状がグッと楽になります。
ぜひお試しください!

①背筋を伸ばしましょう。

 

つい猫背になっていませんか?猫背にねるとあごが前に出て、顎関節に負担がかかりがちです。とくに仕事や勉強で長時間集中するかたは注意が必要です。ふだんの何気ないクセを見直していきましょう。

 

②上下の歯を離そう。

 

 


何かに集中するときに、無意識に歯を噛み締めてしまうことがありますね。
仕事や家事!運転中や勉強中に歯を噛み締めたり!上下の歯を触らせてはいませんか?上下の歯が触るのは、食事を含めても、通常1日20分程度と言われてきます。上下の歯を触らせるクセがあると、あごの筋肉を疲労させてしまいます。

 

歯を破壊する、TCH(Tooth Contacting Habit) 上下歯列接触癖

 

上下の歯を接触してしまう癖で、TCHというものがあります。これは、歯を接触させないと気が済まない癖みたいなもので、食いしばりや噛み締めとはまた異なります。弱い力でずーっとカチカチしてしまう癖です。お口にとってはとても被害が大きい癖で、厄介です。

TCHの患者さんの口腔内です。最初に来院されたとき、すでに歯が病的に磨耗し、修復物の度重なる脱離とやりかえがあった様子。
「私、歯がカチカチいうんです。なんとかなりませんか?」
とのことでした。上下の歯は、食事以外では接触していないのが自然な状態であります。TCHについて説明し、日中の注意することなどを指導していきます。例えば、目につくところに「歯を合わせない!」と書いて貼っておいたりします。単純ですが、一定の効果が期待できる療法であります。

しばらく来院が途絶え、久しぶりに口腔内をチェックしました。TCH対策はご自身でされておらず、「歯をカチカチさせちゃうのよね」とお話ししながら、診療室でもカチカチカチカチさせておられました。歯の破壊が進み、修復物が破損、脱離、噛み合わせが乱れてきています。

同じ方の下顎の写真。歯の両側の歯茎が異様に盛り上がっていますね。これは、骨隆起という出っ張りです。歯が噛み合う現象に対応して、身体が骨を添加させて分厚くさせている反応です。

 

③睡眠を十分取りましょう。

 

睡眠不足になると緊張状態に陥りやすく、リラックスしにくくなります。また、睡眠の質な悪いと歯ぎしりが増えることがわかっています。生活のリズムを整えて十分な睡眠を取りましょう。うつぶせや高めの枕は避け、できるだけ上向きで寝ましょう。

④仕事の合間に休憩しましょう。

 

仕事や家事、勉強の合間に休憩を取りましょう。緊張したり集中している時間が長く続くと、あごの周りの筋肉も緊張しがちです。お茶を飲んだり、軽くストレッチをするなどして一息つきましょう。

⑤うつぶせで、読書をしない。

 

うつぶせ読書は、下あごが前に突きでてあごに負担がかかります。読者はつい同じ姿勢を長時間続けやすく、何気なく続けているうちにあごを傷めてしまいます。読書はよい姿勢でしましょう。

 

⑥頬杖をやめましょう。

 

テレビを見ながら、おしゃべりしながら、つい頬杖をついていませんか?偏った力があごに加わって余分な負担をかけるだけでなく、バランスを取るためにあごの筋肉が緊張し筋疲労の原因になります。
お子さんにも注意が必要で、小さい頃から頬杖の習慣があると、頬の外側からの圧力の影響により、歯並びがそこだけ凹んでいく変化が生じます。たかが頬杖、、と侮ってはいけませんね。

 

⑦電話の肩ばさみをやめましょう。

 

電話の肩ばさみは、あごの筋肉を疲れさせ、偏った力をあごにかけてしまいます。また、長電話はあごの疲れの原因に。口を開けると音がしてり、あごに違和感のあるかたは、ひとまず長電話を控えましょう。

 

⑧硬い食べ物は控えましょう。

 


痛みのあるかたはもちろん、あごを動かすと音がしたり違和感のあるかたは、なるべく硬い物・大きな物を食べるのは控えて、しばらくあごを養生させましょう。せんべい、スルメなどはもちろん、フランスパンなども避けたほうがよいでしょう。

顎の症状が気になる方は、ガムも控えた方が安心ですね。

 

⚫️治療の前にご相談ください。

 

 

顎関節症になったことがあったり、違和感が出やすいと感じているかたが歯科医院においでになると、「ずっと口を開けていると、あごが痛くなってしまわないかな」とご心配だと思います。
たしかに歯科医院では、治療をするにもメインテナンスをするにも、口を開けていただかなないわけにはいきません。しかし、もともと人間の口を開ける筋肉は、繰り返し小刻みに食べ物を噛むような動きは得意でも、歯科治療のときのように長く口を開けて維持するとこは苦手です。つまり長時間口を開けていると、顎関節やあごの筋肉に負担をかけてしまい、顎関節症の症状を引き起こしてしまうことがあります。
そこで一般歯科では、顎関節症ですでに痛みがあり口を開けるのがつらいという患者さんの場合、よほど治療に緊急性がないかぎり、顎関節症の治療を最優先し、症状が楽になってきてから!むし歯や歯周病などの治療を進めさせていただいています。
また、顎関節症に以前なったことがあるという患者さんも、口を長く開け続けることで再発してしまってもたいへんです。こうした患者さんには、1回の治療時間を短めにしたり、治療の途中で休憩を入れ、あごのストレッチをしていただくなどの配慮をさせていただいています。
1回の治療時間を短くする場合は、通常より何度か多めに通っていただかなくてはなりませんが、その分患者さんの状態に合わせてじっくりと経過観察をしながら治療を進めることができます。ぜひご協力をお願いいたします。
また、口を開けているとすぐに疲れてしまい、ご自分で口を開けているのがつらいという患者さんには、バイトブロックという開口器を使わせていただくこともできます。咀嚼筋の緊張の強い患者さんの場合、比較的短時間で口が閉じ気味になってくることがありますので、必要に応じて使用します。
診察を受けるにあたり顎関節症が心配でしたら、問診票に書いていただくか、診療の際に歯科医師や歯科衛生士に必ずお伝えいただきますようにお願いします。
歯科医院においでになる患者さんが、口を急に開けたときに捻挫や肉離れのような状態になって筋肉を傷めてしまうことがありますが、これは咀嚼筋が疲労しこわばっているかたなどによく見られるケースです。
こうしたトラブルがご心配なかたは、スポーツの前の準備体操のように、歯科治療をはじめる前に口を開けるストレッチをするとよいでしょう。硬くなっている筋肉がよく伸び血液循環がよくなって、捻挫や肉離れの予防になり、口を開けるのも楽になります。
治療後に、口が疲れたなと感じたときにも、帰宅後に咀嚼筋のあたりを温めたり、何度かストレッチをするとだいぶ楽になっていきます。ぜひ参考になさってください。

顎のストレッチ療法の一つ。手によって開口し、顎の関節の可動域を広げて行くやり方です。その時の症状により、無理ない範囲で運動療法をお伝えすることもあります。