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口腔と全身疾患、関節リウマチについて

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、口腔内の病気と関節リウマチや全身疾患との関連についてです。

 

関節リウマチは、全国で70万人程の患者数であり、8割が女性に現れる病気です。

 発症したら、ステロイド剤・消炎鎮痛剤・免波抑制剤等を服用し続ける必要があります。

 近年では強力な効果のある生物学的製剤(レミケード・エンブレル等)が脚光を浴びていますが、これらの治療法は「感染症になりやすい」「治療費が月3~5万円以上と高額」といった難点があり、現在のリウマチにおける治療は、薬物を使用し、症状を抑えこむ対症療法が中心になっています。

 そんななか、体の使い方を変えて薬を減らしていくという独自の観点から医療のあり方を模索し、全国のリウマチ・アレルギー患者から支持を集めている一人の医師がいます。福岡県博多市に「みらいクリニック」を構える内科医、今井一彰氏です。

 今井氏は新薬などの薬剤による治療に疑問を感じ、数年にわたり漢方治療を試みる時期もありました。しかし、薬を飲み続けなければ良い状態が維持できないということへの疑問は解消することはありませんでした。

 「医学の東西を問わず、処方箋を通じた患者さんとのつながりを見直す必要があるだろう、そのために第三の道を考えなければならない」と思った頃、リウマチ患者に共通する特有の匂いに気づき、それが口腔内の炎症に起因すると分かったことが大きな転機になりました。

 今井氏は、匂いを消すには口を閉じる、唾液の分泌を促せばよいのではないかと考えました。

ところが、当時は口臭について周辺の歯科医院に聞いても確かな答えが得られません。やむなく独自に学びながら患者さんに指導を始めたのが10年以上前のこと。内科的な治療効果の意図

を持って歯科治療を依頼するようになったのは、ほんの数年前のことです。

⚫️上流医療とは

 上流医療」を理解するための象徴的なエピソードがあります。

宮城県気仙沼市の中心街から車で数十分。舞根湾に流れ込む大川の河口に畠山重篤氏の経営る牡蠣とホタテの養殖場、「水山養殖場」があります。

 畠山氏が海の異変に気づいたのは1970年前後のこと。夏に赤潮が発生し魚が捕れなくなったのです。「赤潮が湾の奥から発生するということは排水による川の汚れではないか」と畠山氏は思いました。84年、フランスの代表的な牡蠣生産地に視察に行くと、現地の養殖場は気仙沼市と同じようにローヌ川やシャロンド川などの河口域にあります。畠山氏は牡蠣の養殖にはあらためて川が重要であることを確信しました。

 しかし宮崎県は88年に新月ダム建設計画を発表。「これができたら気仙沼は死んでしまう」と、悩んだ末に畠山氏が辿り着いた結論は、大川の上流の室根山に木を植えることでした。この提案に70人の漁師が賛同し、89年に「牡蠣の森を慕う会」が誕生。大川の水源地である室根神社のそばで第1回の植祭が行われました。海をきれいにするには上流をきれいにすることが必要という畠山氏の考えは、北海道大学水産学部の松永勝彦教授(当時)の研究によって、←学的に森と川の関係が裏づけられ、新月ダム建築は廃案になったのです。

「河口域でおいしい牡蠣を育てるには、川の上流をきれいにしなければならない」という原理は、人の体でも同じことです。

 今井氏は人間の体の「鼻」と「口」が上流だとし、ます鼻と口をきれいにすることから全身を診る治療を考案しました。これを「上流医療」もしくは「源流医療」としています。

●口呼吸が引き起こす全身疾患

口呼吸が多く、乾燥が強い患者さんの口腔内写真。

わかりづらいですが、舌や粘膜は診察時、お口を開けていただくと乾いた質感になっています。

口臭が強く感じる程度あります。

 

口腔内に菌が増えやすいため、虫歯のリスクが高くなります。

修復されている箇所が多いです。

唾液には殺菌作用があるため、口呼吸で乾燥した状態だと

唾液の消化作用や殺菌作用が弱まってしまいます。

 

 上咽頭は呼吸をすると必ず汚れる部位で、風邪をひくと最初に痛くなる所といえば分かる方が多いのではと思います。上咽頭や歯肉のような粘膜には、リンパ組織が多く集まっています。

口腔の扁桃や歯肉などのように、細菌感染していながら同時に防御もしているという部位は人体でもあまり例がなく、これらの部位の感染と全身疾患の関係が顕著だった例は少なくありません。

 この重要な上咽頭部に炎症などの問題を抱えている患者の多くに共通する特徴は、「口呼吸」だと言われています。

 人間にとって本来、呼気も吸気も鼻だけで行うのが正しい呼吸法ですが、常に口で呼吸することが癖になっている人はとても多いです。日常的に口呼吸を続けていると、さまざまな病気の原因になります。口呼吸の習慣は、細菌を日々体内に取り込み、病巣感染となって身体の機能を蝕み、免疫力を徐々に下げていきます。

 口呼吸と関連すると考えられる疾患には、関節リウマチ、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、うつ病、化学物質過敏症、ドライマウス、慢性副鼻腔炎、ペリオ、いびき、睡眠時無呼吸症候群などがあげられます

 口呼吸する方の特徴は、以下のような特徴があります。

・いつも口を開けている

・口を閉じると、あごに梅干し状のふくらみと

 シワができる

・下唇が腫れぼったく、むくんでいる感じ

・左右の目の大きさが違う

・目がはれぼったく、むくんでいる感じ

・食べるときにクチャクチャ音を立てる

・朝起きたときに、喉がヒリヒリする

・朝起きたときに、口の中が乾いている

・口の中がよく乾く

・唇がよく乾く

・口をあけてものを食べる

・いびきや歯ぎしりをする

・口臭が強い

・たばこを吸っている

・激しいスポーツをしている

・前歯が出っ歯気味

・舌に歯形がついている

・二重顎のようになっている

・鼻血がよく出る

●生活習慣の改善は鼻呼吸から

 こうした治療の場合、常に問われるのがエビデンスの有無です。その一例として、今井氏は、いびきをかくお子さんのCRP(C反応性タンパク)は高いというデータを挙げられています。

なぜ口呼吸は悪くて鼻呼吸は良いのかというエビデンスについては、「人体造や、生物の進化の過程から当たり前なのだとしか今のところは、言いようがありませんもちろん、換気量や吸気の調温調湿においても鼻呼吸が当然良いのですが、それが全身の疾患とどのようにつながっているのかを解明するのが、現在の課題です」としています。

 上咽頭は呼吸すると必ず汚れる部位で、この部分の上皮細胞を洗浄し、炎症を制御することが大事ですが、うがいをしてもここまでは届きません。具体的な処置としては生理食塩水や次亜塩素酸などを点鼻するなどの方法が考えられますが、さらに大切なことは治療後の呼吸法など生活習慣の指導であると今井氏は述べています。

▪️呼吸の改善法

 当院では、「あいうべ体操」「口テープ」を患者さんに お勧めしています。

⚫️抜歯で失明?!ペーチェット病と歯科

 ベーチェット病は、消化管(とくに口腔内)と外陰部の潰瘍、皮膚症状(毛のう炎、結節性

紅斑)、眼症状(ぶどう膜炎)、関節炎や血管炎などの症状を呈する優性再発性炎症性疾患です。

 不良な口腔衛生状態に関連して白血球が活性化することによって発症・増悪する疾患があります。例えば、掌蹠膿疱症、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などです。これらは、口腔連鎖球菌が血液中に入ると白血球が活性化して発症や増悪の引き金になるという機序が共通す。

 ベーチェット病の患者さんが歯を抜いたあと、1日から2日後にぶどう膜炎が発症、または憎悪して視力が低下するというのはその典型例です。喫煙歴があり、う歯や歯周病など口腔衛生状態が不良であり、HLAIB51陽性といった遺伝的な素因も持っている場合は、発症のスクが高まります。

 目が見えなくなった患者さんはあわてて眼科に駆け込みますが、歯科の治療とは関係ないと思っていますので、トリガーとなった歯科治療のことは、眼科の先生には話しません。

 現在はレミケードなど強力な薬がありますが、ぶどう膜炎が重症の場合は失明に至ることもあります。べーチェット病の患者さんの場合は、予めコンヒチンという薬を1週間以上服用し、白血球を活性化しにくい状態にしておいて、抜歯すれば比較的安全です。歯科ではこういった情報は、知られていません。ベーチェット病の治療ガイドラインに載ってしかるべきと思いますし、こういった関連性があることはすべての歯科医師の方に知って頂くことを望んでいます。