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ホワイトニングの基礎知識

2024年7月4日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

歯の色が気になるというご相談は多いです。
今回は、歯の色がどのように変化するかというトピックです。

 

症例写真

 


変色を気にされている患者さんの初診時の口腔内写真。実は歯の色の変化には様々な要因があります。
こちらの方はホワイトニングでこのように色調改善しました。

オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを組み合わせて背術を行いました。

さて、このようにホワイトニングで改善できるケースは多いですが、適応のケースとそうでないケースがございます。
一体、歯はどのような原因で色が気になるようになるのでしょうか?

 

歯が着色する原因とは

歯が着色する原因には、大きく分けて外部由来のものと内部由来のものがあります。

 

○外部由来のもの

 

・飲食物による着色 → 歯のクリーニングで対応

 

コーヒー、お茶、ワインなどのタンニン系化合物を含んだ飲み物が特につきやすいです。コーヒーなどは、アイスよりもホットの方がつきやすいようです。ミルクを入れるとマシになります。

コーヒー   カフェインの取りすぎは良くありませんが、身体に良い効果も多く、適量を楽しみたいですね。着色したくない方は、アイスをストローで飲むと、歯の表側につきにくいのではないでしょうか。

 

・喫煙による着色 → 歯のクリーニング、ホワイトニングで対応

 

タバコのニコチン(ヤニ)の大半が歯の表面のエナメル質に沈着しますが、クリーニングで除去します。長期間にわたる喫煙では、歯質の内部に浸透しており、ホワイトニングが効果的です。

 

・虫歯による着色 → 虫歯治療、ホワイトニングで対応

 

虫歯は、お口の中の虫歯の原因菌による感染症です。糖を虫歯が取り込み、その代謝産物として酸が放出されます。酸によって歯が溶けているのが虫歯の穴となっているのです。虫歯のイメージは歯に穴が開く、欠けると言ったものですね。しかし、いきなり大きな穴が開くわけではなく、虫歯のなりかけの状態というのがあります。これは、歯の表面のエナメル質の脱灰と言います。酸でダメージを受けてはいますが、まだ穴はあいていない状態で、見た目は白濁しています。ホワイトスポットと呼ばれています。脱灰した歯質に、着色しやすい飲食物などが浸透し、さらに色が変わっていく現象が起きます。


虫歯で歯の色が変わっていますね。

見た目のインパクトはありますが、これだけわかりやすく黒く穴があいていても、痛みがないことも多いです。

 

・口腔清掃不良による着色  → 歯のクリーニング、ホワイトニングで対応

 

色素を生成する菌がお口に存在しますので、清掃不良により歯の表面が緑色、黒色に変わっていきます。


汚れが多く、歯の表面正常がザラザラ、ヌルヌルしています。


汚れで歯の形も変わってしまうほど、沈着が多いです。

 

 

・薬剤による着色  → 歯のクリーニング、ホワイトニング、セラミック治療で対応

 

ヨード系うがい薬(イソジンなど)、銀イオンなど金属イオン配合の口腔ケア用品、クロルヘキシジン系洗口剤(リステリン、コンクールなども金属イオンが含まれています)

コンクール  着色するほど使っているとしたら、量的な問題もあると思われます。

 

 

・金属の詰め物、被せ物による着色 → セラミック治療で対応

 

合金の土台(メタルコア)、アマルガム、合金の被せ物、部分的な詰め物など、保険診療で認められている合金は口腔内で腐食しますので、金属イオンが溶け出し、歯肉や歯質が変色することが多いです。

メタルタトゥー :歯も歯肉にも黒ずみが出てくることがほとんどです。歯肉にも金属イオンによる黒ずみが目立つ状態。外科的に切除します。

 

 

・光重合型コンポジットレジン  → 再修復、セラミック治療で対応

 

樹脂の詰め物のことです。光重合触媒として配合されているアミン系化合物により、経年的に変色します。研磨などで光沢感を戻すことは可能です。ホワイトニングは適応でなく、再修復が必要です。

詰め物の縁が目立つようになると、穴はあいていなくても詰め物やりかえを希望される方が多いです。

 

 

○内部由来のもの

 

・加齢による歯の着色  → ホワイトニングで対応

 

加齢によりエナメル質がすり減って薄くなると、象牙質は歯髄を守るため第二象牙質という組織を作ります。象牙質の厚みが増し、その結果、黄色い色が透けて黄ばみが目立つようになります。
元々の象牙質の色は決まっていますので、下顎前歯でエナメル質が薄いような場合は注意が必要です。また、エナメル質はほとんど無機質で構成されていますが、その隙間に着色物質が入り込み、歯の変色としてあらわれることもあります。

 

・エナメル質形成不全症 → CR充填、セラミック治療で対応

 

生まれつきエナメル質の一部に線条や白濁が見られたり、重度の場合は象牙質が露出し歯が褐色となります。

 

 

・先天性ポルフィリン症 → セラミック治療で対応

 

象牙質のカルシウムにポルフィリンが沈着し、歯冠がピンク〜赤褐色に変色します。

 

・低フォスファターゼ血症 → セラミック治療で対応

 

カルシウムーリン代謝が阻害され、歯が黒褐色に変色します。

 

・失活歯 → ウォーキングブリーチ、セラミック治療で対応

 

失活歯というのは、根管治療すみの歯のことです。元々あった歯髄は治療により除去されている状態なのですが、その血液や歯髄組織の変性物が象牙質の構造に入り込み、緑色・灰色・黒色などに変色すると考えられています。

 

・内部吸収 → 根管治療で対応

 

外傷による出血や感染により、歯髄側から肉芽組織が増殖し、象牙質が吸収されている状態。外から見ると、内部の吸収している様子は見えません。レントゲンで歯の根の中から穴があいてくるような所見になります。

内部吸収のレントゲン写真。歯の根の中央に黒い影が認められます。

 

 

・斑状歯 → 変色が強い場合はセラミック治療

 

エナメル質表面に不定形の白濁、褐色の色調変化が生じます。

 

 

・テトラサイクリン  → 複数回のホワイトニング、セラミック治療で対応

 

出生児〜6歳くらいまでの歯の形成期に、テトラサイクリン系抗生剤を投与されている場合、歯にグレー系〜黒色の強い変色が生じます。左右対称に発現する特徴があります。
『 ファインマンのテトラサイクリン変色の分類』
F1 淡い黄色、褐色、灰色で歯冠全体が一様に着色されていて、縞模様は見られない。
F2  F1よりかは濃く、歯冠全体が一様に着色されていて、縞模様は見られない。
F3  濃い灰色、青みがかった灰色で縞模様を伴うもの。
F4  着色が強く、縞模様も著明なもの。

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○歯科医院でなくてもホワイトニングできる?

 

現在、ホワイトニングには様々なシステムが使用されていますが、基本的に歯の内部から白くなるのは 、過酸化水素・過酸化尿素が含まれたホワイトニングです。こちらは医薬品ですので、日本では歯科医院でしか使用が認められていません。エステ店、セルフホワイトニング店で行われているホワイトニングの効果が弱いのは、このような取り扱えるシステムの差があるからです。

私たちのホワイトニング治療の説明動画です。
現在はポリリン酸ホワイトニングを行っており、より白く、明るくなる効果がたかいシステムを採用しています。

ホワイトニングを検討されている方へ

2024年7月4日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

歯科関係でネット検索するとき、世間の人々が気になる順で言うと、
・歯の色、白さ
・口臭
が必ず上位にきます。

今回は気になる歯の色調と、ホワイトニングについてのトピックです。


私たちのホワイトニングの機器、オフィスホワイトニング専用の照射機です。

ホワイトニングの流れ
まずは、ホワイトニングのきっかけや一番気になる項目を確認します。これは、一人ひとり気になる歯の部位や目指したい色調が異なるため、そのことを確認するのはとても重要なのです。ホワイトニングをご希望される方で、歯を白くしたいけれどこんなことが気になるんだよなぁという項目は以下のような事項が挙げられます。

 

一度で結果が出て欲しい。
痛みなく、丁寧に施術してほしい。
歯がしみるのは避けたい。
食事、飲み物の制限がない方がいい。
施術を受けながらリラックスできたらいいな。
良心的な価格設定であって欲しい。
メニューの押し付けがないのがいい。
こちらの話を聞いてもらいたい。
わかりやすく説明を受けたい。

ネット上の様々な情報を調べた上で来院される方もいらっしゃいますので、
実際のホワイトニングの正しい情報提供と、
一人ひとりのご希望に応えるため、最初のカウンセリングをしっかり行っております。

 

・5W

 

When いつから気になりますか?
いつまでに白くしたいですか?
Where 具体的にどの歯の色が気になりますか?
Who 誰と比較して?
例えば理想となる芸能人の白さはありませんか?
What ホームケアでホワイトニング効果のあるものは使っていますか?
Why なぜ白くしたいですか?

 

・1H

 

How どんな風な白さになりたいですか?
今までホワイトニング体験ある方は、どんなシステムで効果はどうでしたか?

数々のホワイトニングシステムがありますので、既往歴もとても重要ですね。

 

・体調の確認

 

ホワイトニングが可能が判断するため、妊娠、授乳中の確認をします。オフィスホワイトニングは、専用のライト照射の時間、同じ姿勢で施術台を倒しておく必要があります。

 

・飲み物の確認

 

当院のホワイトニングの特徴として、飲み物の制限がないことをお伝えします。嗜好品は人それぞれですので、特に着色しやすい習慣がないかチェックをします。コーヒー、喫煙などです。意外かもしれませんが、最も着色しやすい飲み物は赤ワイン、2番目が紅茶、3番目がお茶、4番目がコーヒーなのです。
ポリリン酸ホワイトニングは、他のホワイトニングのシステムと異なり、食事制限はございません。上記の飲み物を常飲されているような場合、茶渋のような着色はつきやすいため、ホワイトニング効果の高い歯磨きペーストを併用すると良いと考えられます。


私たちがケアでおすすめする歯磨きペースト、GCルシェロホワイト。ホワイトニング後に白さを保つのに最も効果的です!歯にダメージを与える研磨剤が含まれていないこともおすすめポイントです。

 

・視診

 

嗜好品のうち、着色しやすいものを日常的に摂取されていると、特に歯の裏側に着色汚れが目立ってきます。また、歯の黄ばみの原因が嗜好品であるのか、歯の内部が原因なのか確認をします。虫歯や歯周病は、ホワイトニング施術までに問題を解決しておきます。
前歯の修復治療がある場合、ホワイトニングでご希望の色調になった後、その白さに合わせて修復すると、仕上がり良いです。

 

・黄ばみの原因と状況確認

 

①着色がある場合

 

お茶、コーヒーの着色が強く付着している場合、まず全体を清掃する必要があります。超音波の機械、またはパウダーを吹きつけて着色除去をする機械をよく用います。表面の汚れを取らないと、汚れがついた状態でホワイトニングの薬剤を作用させても効果的に白くできません。

 

②歯の内部の黄ばみ

 

まず歯の構造がどうなっているかについて説明します。私たちが見えている歯の表面は、エナメル質と言って半透明、乳白色をしています。ガラスやセラミックのように透けて中が見えるような組織です。その内側に象牙質があります。象牙質の色調は黄色いので、歯の内部の黄ばみというのは、象牙質が透けて見えて黄色い色調になっているということです。例えて言うなら、黄色い肌着の上に白いTシャツを着ているイメージです。これは、遺伝や年齢によってあります。20歳くらいが一番白く見えるようです。徐々に加齢と共に歯の色調が白くなくなっていく現象が起こりますが、食事や歯磨きなど何十年も時が経つにつれ、表面のエナメル質は摩耗し、中の象牙質が歯の中の歯髄を守ろうと分厚い組織に変化していくためです。

 

③歯周病の場合

 

歯石や細菌がバイオフィルムを形成している状態ですので、歯周病治療を行い、感染源を除去します。歯石は軽石のような構造をしており、その中に歯周病の原因菌をとどめておきやすい状況になっています。それに、歯石やバイオフィルムの上からホワイトニングの薬剤を作用させても効果が得られません。ですので、徹底的に歯周病治療を行い、状態を良くしてからホワイトニングをスタートさせます。


歯周病治療で用いる歯石除去用の器具。歯根の表面に固く付着した感染源を除去し、滑沢な性状にしてバイオフィルム形成されにくいようにします。

 

・シェードチェック

 

歯の色調について、現状と目標を決めます。患者さんに手鏡を持ってもらい、シェードガイド(色見本)とご自身の歯の現時点での色調を確認します。この時、患者さんご自身が一番黄色いと感じるところがどのシェードか見てもらいます。16段階の明るさがあり、その中で言うと日本人の平均はA2というシェードです。患者さんがシェードガイドを見てもらった時に、このくらいが白いと感じるシェードを選んでいただきます。大体A1~B1くらいだと、周りの人から歯が白いと気づかれます。
シェードガイドの中にはブリーチカラーという段階があります。これら4つの色調は明らかに白いですので、人から歯が特に白いと褒められることになるでしょう。その人によって、また年齢、肌の色、シェードの微妙な違いで似合う、似合わないが変わります。例えば、黒人の方は特別歯が白いわけではありませんが、肌とのコントラストにより特に歯が白く見えます。BL1くらい真っ白だと、新庄さんや清原さんのように歯だけ浮いてしまい、周りの人に違和感を与えてしまいます。
ここで一旦目標設定を「このくらいのシェードを目指したい!」という感じで行います。現在のシェードとのギャップがありますから、その目標に達するまでの期間をお伝えします。

 

オフィス・ホームの2つのホワイトニング

 

オフィスホワイトニングは、クリニックで行います。薬剤を歯の表面に塗布し、専用のライトを照射して歯を白くします。即効性があるのが特徴です。目標とするシェードと現在の状態のギャップが大きい場合、ホームホワイトニングと併用して行うことがほとんどです。これは、ご自身の歯型にジェルを入れて、1日30分から40分程度はめていただくというやり方です。オフィスホワイトニングは早めに白さが実感できます。後戻り防止と、内部の白くする目的でホームホワイトニングを同時期に行います。相乗効果で白くなり、早期の目標達成が期待できます。私たちはホワイトニング施術の様々なケースの実績がありますので、施術する歯科衛生士から、どのくらいの期間で目標達成できそうか案内するようにしています。
ホワイトニングできる状態になったとして、ホームホワイトニングは開始する前に一旦お口の歯型をとる必要があります。その次に来院された時、ホワイトニング用のトレーと、ホームホワイトニング用ジェル(シリンジに入っています)をお渡しするという流れです。


ホームホワイトニング用のシリンジです。1本で約2週間分です。

私たちのホワイトニングの施術は
こちら
の動画をご覧ください。

ご予約はWEBで可能です。

お子さんの食べ方、気になることはありませんか?

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

小児の患者さんの、口腔機能についてのトピックです。
ご家庭でお食事される時、ふとした時、
「よく見たらうちの子、食事中の癖が強いな」
「いつも口がポカンって開いてる」
「舌がよく出てる」
「食事でよく噛めてないようで、時間がかかる」
「他のお友達と比べて、永久歯の生え変わりが進んでないな」
と気づかれることがあるかもしれません。
実は、それらはお口の発達不全につながっているのです。

 

リットレメーター

 


お口がよく開いているお子さんの、口唇閉鎖機能を検査するリットレメーター:マウスピースを唇で保持してもらい、どのくらいまで引っ張れるかテストをします。診断の一つの根拠になります。実は口が常に開いていると、口臭がキツくなる、虫歯や歯肉炎が悪化しやすい、アレルギーになりやすいなどよくないことにつながります。

 

⚫️食べることの問題

 

—噛まない—
①歯は生えそろっているか?

 

食べ物を噛んで食べるには、臼歯の咬み合わせが重要です。摂食機能の発達から事例をみると,通常2歳であれば咀嚼機能は獲得されていますが,歯の萌出状態によっては繊維の多い野菜や肉、かまぼこなどの練り製品は咀嚼しきれずに口の中に残ってしまう場合があります。そうすると,丸のみや口から出してしまうといった行動につながりやすくなります。萌出前の歯肉しかない時期や生えはじめの時期、また永久歯への交換の時期には、食事のメニューの選択の配慮が必要です。

 

②弱い力でもすりつぶせるか?

 

咀嚼機能の発達にも個人差があり、2歳でもまだ十分に機能が育っていない可能性があります。口の動きを観察し、「左右の口角は非対称に動いているか」「噛んでいる顎のほうに、口唇や顎は引っ張られているか」「舌は横に動いているか」を確認します。
これらができていなければ、まだ咀嚼機能が十分に育っていない可能性があります。


小児の方に、というわけではないですが、咀嚼能力を検査する機器がこちらです。検査用のグミを噛んでもらい、どの程度噛み砕けたか、センサーで確認できるものです。歯を失って機能に影響が出ている方の診断と、治療後の咀嚼機能を評価する基準に用いられます。

 

③かじりとりはできるか?

 

咀嚼するためには、まず自分の前歯で自分の口に合った一口量をかじりとることが大切です。それによって、前歯の歯根膜に食べ物の感覚が伝わり、口に入る食べ物の固さや量を感知し、その後の咀嚼運動へとつながっていきます。逆に、前歯でかじらず口の奥にポーンと放り込むような食べ方をしていると,口の中の感覚情報が得られず、咀嚼運動が引き出されにくくなります。

 

④食べることを急かされていないか?

 

咀嚼しないことの弊害は、「丸のみ」につながることです、臼歯が生えそろい、咀嚼機能が獲得されているにもかかわらずあまり噛まない場合。環境に原因があることも多いようです。「急いで食べなさい」などと急かされていたり、あるいは兄弟や姉妹と争うように食べていたりなど、早食いせざるをえないような環境にあるのかもしれません。早食いが定着すると窒息事故にもつながる恐れがあります。心身ともにリラックスして食事ができる環境を整えてあげることが大切です。
また。食べるのが速い。噛む回数が少ないことは、肥満の原因となります。よく噛むことは食べ物のおいしさを引き出し。消化吸収を助け、満腹中枢に作用して満腹感を得ることにつながります。子どものころからしっかり噛んで食べる習慣をつけ、生活習慣病にならないように指導しましょう。
※正常な咀嚼機能の見方
①咀嚼しているほうへ口唇.顎.舌が寄るのがみ
られる。
②歯の上の食べ物を舌と頬で支えている。

 

—口に溜めて飲み込まない—
①口の機能の発育段階と食べ物の形・固さは合っているか?

 

「食べる意欲はありそうなのに、口に溜めたまま飲み込まない」…..そのような場合は、食べ物の形・固さが摂食機能の発達段階に合っていない可能性があります。たとえば、小学校入学前の6歳では、咀嚼機能も十分に育ち、第一乳臼歯の萌出とともに咀嚼の力は強くなりますが、まだ大人と同じくらいの力までは身についておらず、固い食べ物を何でも食べられるわけではありません。同時に、前歯の交換も始まるため、前歯が動揺していたり、抜けていたりすることから、かじりとりができない時期でもあります。その結果として、口の中の食べ物をうまく飲み込めずに、口に溜めたままになってしまうことも考えられます。このような時期に摂食機能に合わない固い食べ物ばかり食べさせていると、口に溜めたままになってしまうか,あるいは無理に丸のみする癖がついてしまいます。子どものそのときどきの口の環境や摂食機能の状態に合わせて、食べられる形・固さの食べ物を与え、すこしずつ機能を伸ばしていくようにします。
※摂食機能の発育段階に適さない形・固さの食べ物を与えると、正常な摂食が困難になってしまいます。

 

②食べる意欲はあるか?生活は乱れていないか?

 

子どもは同じ年齢でも個人差が大きく、食欲もまちまちです。食欲旺盛な子もいれば、小食の子もいます。子どもが小食の場合,親は「ちゃんと栄養が摂れているのかしら?」と心配しがちです。そうすると。「もっと食べなさい」と食事の量を増やしたり、追いかけ回して食べさせようとしたりしてしまい。子どもにとっては食事が苦しいものになっている可能性があります。また,間食(おやつ)やジュースを摂る量が多くなっている場合は、つねに満腹で食べる意欲も育ちません。それでも食べなくてはいけない状況になると,結果的に「口に溜めたまま飲み込まない」ということになってしまいます。
外遊びや友だちとの遊びをとおして適度に運動をさせ、自然に空腹感を味わえるような生活リズムをつくることも大切です。

 

—食べるときに舌がいつも出る—
①嚥下はきちんとできているか?

 

口が開きっぱなしで,の嚥下時に舌が出るということは、まだ「乳児の下」をしていると考えられます。通常、離乳食が開始された5~6カ月ころには、口を閉じての下する「成人の下」が獲得されますが、哺乳を継続しているお子さんだと、舌の使い方が哺乳のときのまま残ってしまうことがあります。その場合,まずは哺乳瓶をやめて、水分をスプーンやコップから飲むように促していきます。もし、哺乳瓶の使用をやめてしばらく経っても乳児嚥下が改善されなければ、成人嚥下を覚えてもらう練習が必要かもしれません。その場合,口唇と顎をしっかり閉じた状態での嚥下できるよう、お母さんなどの指で、口唇を閉じる介助を試みるようにします。

 

②口唇の力はあるか? いつも口が開いたままか?

 

咀嚼の動きはできているようなので、幼児食程度の固さのものでも食べられるかもしれません。しかし,口を閉じるための筋肉,特に口輪筋が低緊張であるといつも口が開きっぱなしになり、そのためにの下時に舌が出てしまう可能性もあります。また、鼻炎などで鼻から呼吸ができない場合は口呼吸となりますので、やはり口が開きっぱなしとなり、安静時の筋肉の緊張度にも影響が出てしまいます。


「うちの子、いつも口開いてるんです」というお話は、診療室でよく聞きます。お口や顔面の成長は、生まれた時からの授乳をどうしていくか、から考える必要があります。母乳が可能な場合は、赤ちゃんが顔を真っ赤にしておっぱいを飲む、この行為自体に非常に意味があります。一生懸命吸っていくことにより、骨が正常に成長していきます。
よくないのは、小さい力で飲みやすいようにと哺乳瓶の吸い口を大きくすることです。楽に飲めるようにと考慮されたものかもしれませんが、発育にとっては逆効果のものなので、使用されない方が良いです。

 

③食べ物は咀幅機能に合っているか?

 

「咀嚼はできるけれど舌を出しての下してしまう」・・・・・・このような場合、いったいどのような食べ物が合っているのでしょうか、ここで大切なのは「咀嚼の動きがどこまでできているのか」ということです。咀嚼の動きというのは、顎や舌が側方に動くことだけを指すのではありません。顎や舌とともに口唇や頰も上手に協調させながら、奥歯で食べ物を十分にすりつぶし,唾液と混ぜ、そして舌の上で一塊にすることができなければ、上手には飲み込めません。したがって、咀嚼しきれない食べ物を飲み込もうとするために、舌が出てしまっている可能性が考えられます.そのような場合は、咀嚼機能に食べ物が合っていない (食べ物が固すぎる)可能性が高いので、咀嚼できる軟らかいものに変えていくようにしましょう同時に、舌を出さずに嚥下する機能を獲得するためにのアプローチを行っていきます。
摂食機能の発達には、ある程度順番があります。しかしときには,この順番が違ってしまうこともあります。本人の発達段階に合わせて摂食機能を促すことが原則ですが、安全面を考慮しながら、獲得している咀嚼機能を大切に育てていくことも考えていくようにしましょう。
ほかにも、食行動の問題は、齲蝕など口腔内の痛みが原因のことも考えられます。まずは口腔内にこうした器質的な問題がないかをチェックし、そのうえで機能面の対応をしていきましょう。

 

小児の口腔機能発達不全の診断基準

 

○離乳前    以下の2つ以上該当する
・お口ポカン
・小帯付着異常
・授乳時間、回数のムラ
・スプーンを押し出す癖
・離乳がすすまない

○離乳後    Aから1つ以上、Bから2つ以上該当する
A:歯の萌出の遅れ、歯列不正、偏咀嚼、虫歯があって咀嚼に影響ある、強く噛みしめられない、咀嚼時間が長すぎる
B:舌突出癖、口唇閉鎖不全、小帯の異常、舌や口唇、指吸いなどの癖あり、食べる量や回数のムラあり、構音の異常。

口腔機能発達不全に対する検査、筋機能訓練、生活習慣指導は、保険診療でも認められております。
お子さんのお口が気になったら、こちらからお気軽にご相談ください。

子供の口腔機能の発達

2024年7月2日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

お子さんのお口周りの発達についてのトピックです。

 

口周りの癖が原因で治療対象となったケース

 

 


上唇を噛む癖があるお子さん:上唇を口の中に巻き込むように遊ぶ癖があったために、上の前歯が内側へ傾斜して受け口になっています。



小児矯正と口周りの筋機能訓練を行います。親御さんにも、矯正治療のマウスピースの取り扱い、お子さんのフォローをお願いしながらすすめます。


4ヶ月で正常咬合に変わりました。

 

⚫️子どもの口腔機能の発達

 

—離乳の準備期—
●原始反射

 

乳児は、出生直後からみられる原始反射によむて哺乳を行うことで栄養を摂取します。また、原始反射が出現している時期では、口唇、舌、顎などの口腔諸器官の一体動作により哺乳動作が行なわれています。これらは乳児自身の意思とは関係なく、不随運動で行われます。
乳児の時期は、口を開口させて乳首を取り込み、舌を下唇の上に置きながら舌の蠕動様の動きで乳汁を摂り取り込む、このときの口蓋には、「吸啜窩」という乳首がちょうど安定するようなくぼみがある。

・原始反射・・・乳児に備わっている、特有の刺激に応えて示す中枢神経系由来の反射行動。

 

●指しゃぶり・おもちゃしゃぶり

 

多くの乳児は,生後2カ月ごろから随意的に指しゃりを始めますが。手指の発達によって徐々にしゃぶりは減少していきます。さらに,4カ月ごろこなると上肢と手指の発達に伴い,おもちゃなどをロこもっていく行動(おもちゃしゃぶり)がみられはじめます。指しゃぶりやおもちゃしゃぶりによりさまざまな物性が口腔内に入ることで、口唇,舌,顎を随意的に動かすようになり、「原始反射を消失させて離乳食を開始するための準備運動」としても重要な行動と考えられています。そのため,離乳食開始時期に保護者から「離乳食をベロで押し出して食べてくれないんです」「うまく食べ物を喉のほうにもっていけないみたいなんです」というような質問があったときには,原始反射の残存を確認したり、指しゃぶりやおもちゃしゃぶりをしているか(あるいは,していたか)を確認しています。

 

 

—離乳期以降—

 

原始反射は、おおよそ離乳食を開始する5〜6カ月ごろには消失していきます。このころから身体の成長、発育が著しくなるとともに、摂食機能の獲得にもさまざまな変化がみられるため。
問診,観察を細かく行う必要性があります。離乳食が始まったら、歯の萌出程度と併せて口腔の形態、口腔機能の獲得をみていきます。
いずれの段階においても発達の程度には個人差が大きく、子どものもつ意欲によっても左右される場合があります。発達を促すためには、次に獲得する機能がすこしみえはじめた時点で次のステップにチャレンジし、学習するということも重要です。
しかし、あまり急ぎすぎても子どもがついていけなくなるため、保護者こ方は「自分の子はほかの子より遅れている」という不安になると思いますが、子どもの口腔発達には個人差があること忘れずに急がず発達段階を踏まえたアプローチをしていきましょう 。

 

⚫️子どもの口腔習癖
—指しゃぶり—

 

「指しゃぶり」は、授乳期の乳児には大切な行為であり,幼児期になってもおよそ20~40%にみられる生理的なものです、この指しゃぶりは、お母さんのお腹の中にいる胎生15〜20週から始まっています。そして、乳児は出生後。2~3カ月かけて自分の指を口にもっていけるようになり。盛んに指しゃぶりを行うようになります。このころは原始反射である哺乳反射が優位ですので,指しゃぶりも反射の動きで行われています。しかし,やがて大脳上位の発達がなされるとともに、哺乳反射が消えていくため。
徐々に随意的な動きに変わっていきます。また、哺乳反射の消失に伴い、5~6カ月ごろには哺乳機能から摂食機能へ移行していきます。
指しゃぶりは哺乳に通じる行為であり、心理的満足感や情緒の安定にもつながると考えられています。乳児は、はじめのうちは感覚の発達した器官である口への刺激として指しゃぶりを盛んに行っていますが、やがて1歳を過ぎてひとり歩きができるようになると、ほかに興味が広がり、徐々に指しゃぶりがなくなっていくことが多いようです.
これらのことを考えると、5カ月ぐらいのお子さんの指しゃぶりはまだやめさせる必要はありません。むしろ、口の機能や情緒の発達にとっては大切な行為ですから。無理にやめさせるのは逆効果になる恐れがあります。指しゃぶりが歯並びに影響してくるのは乳歯が萌出してからであり、遅くとも4歳までにやめれば後の歯並びに影響はないというのが一般的な見解です。
もし4歳以降~学童期にかけても指しゃぶりを行っている場合には、口腔機能や顎顔面の形態への影響が深刻になります。しかし、この時期においても指しゃぶりを行っているということは、生活環境や社会環境などの影響。心理的な問題など、多くの要素が関係していると考えられます.その行為だけに目を向けても解決することは難しく、小児科医や小児歯科医、矯正歯科医,言語聴覚士,臨床心理士など、専門職からの支援が必要です。

・哺乳反射・・・一連の乳汁摂取のために反射運動、胎生期の後半には獲得される原始反射であり、探索反射.口唇反射.呼吸反射.咬反射がある。

 

—口呼吸—

 

口呼吸の関連因子は多様ですが、幼少時の指しゃぶりが長期化することにより上顎前突や開咬が引き起こされ、その結果として口唇閉鎖不全が起こり、口呼吸となる可能性も指摘されています。全身への影響としては、鼻腔を通じた加温・加湿や防塵機能が働かないため呼吸器系の粘膜保護が作用せず、風邪などの感染症に罹りやすくなります。また、口呼吸の子どもでは下顎と舌が下行して顔面が上向きになり、頭部が前へ出るような不良姿勢になりやすいという報告もあります 。
このように、口呼吸は口腔顔面のみならず全身にも影響を及ぼす可能性がありますが、どのように対応したらよいでしょうか?耳鼻科疾患がある場合は、まずその治療が最優先でしょう.鼻呼吸を促すためにも,鼻孔の通過をよくしておく必要があります。もし、耳鼻科疾患がなく、ほかに口唇閉鎖を阻害する因子(筋緊張を低下させるような薬の服用等)がなけれは、口唇閉鎖力をつけるトレーニングや、鼻呼吸を促すトレーニングを行いましょう。
「口を閉じて!」と注意することも必要ですが、あまり言いすぎるとかえって逆効果になることがあります。すでに上顎前突になってしまっていたり。口輪筋の筋力が弱かったりする場合には、「口で言われて頭でわかっていてもできない!」という状況だからです。本人の負担にならないよう自覚させながら。楽しんでできるトレーニングプログラムを立てていきましょう!

 

—離乳食を嫌がる—
●離乳食開始の時期

 

離乳食は、首の座りがしっかりしている,支えてあげると座れる、食べ物に興味を示す、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなるなど、子どもの育ちをみて開始します。離乳食を始めてみたものの。まだ身体や口や心の準備が整っていなしために食べることを嫌がってしまうことがあります。

 

●食べる機能の育ちと離乳食の固さのずれ

 

舌や顎の動かし方の発達に伴って、食べることのできる固さが変わってきます。そのため、食べる機能の育ちと食べ物の固さがずれていると,離乳食を嫌がる原因になることがあります。保護者には、調理した離乳食を子どもに食べさせる前に,自身の舌を使って試食するようにしてみましょう。さらに,子どもが食べているときの口元の動きを観察し、発達とそれに合った離乳食の固さにしましょう。食べる機能の育ちに合った固さにすることで食べやすくねります。

 

 

●食への興味を伸ばす

 

何にでも興味津々の子どもは、食べることにもワクワクしています。見た目や匂いに興味をもつだけでなく、”触ってみたい”とも感じていますが、手が器用になる以前の、微妙な力加減が難しい時期には、ほとんどの食材はグチャ、とつぶれてしまいます。そこでテーブルや服や床が汚れてしまうため、保護者がつい先まわりして食べ物に触れないように手の届かないところに避けたり、汚さないよう注意したりしてしまうことがあります.手づかみでのかじりとりは自食のスタートとして、手の経験だけでなく、手と口の動きの連動を学習するためにも必要であることですので、触れるための食材を準備するなど、十分に手づかみ食べを経験させるようにしましょう。

 

—あまり食べない—

 

保護者のなかには、「子どもが離乳食をあまり食べない」という悩みをもっている方がいますがまずは、食べる機能と食べ物の形態が合っているかを確認しましょう 。
食欲や食べる量の差は、体格.性格.体力などによる個人差もあります。そのときの体調(眠い.空腹でない.便秘.疲れているなど)、好き嫌い(新しいものが苦手、味,形態など)などさまざまな要因が考えられます。特に、離乳食の時期は、本人が気持ちを言葉で伝えることはできないので、なぜ食べないのかがわからず保護者が悩んでしまうことも多くあるでしょう。量だけにとらわれず、総合的な判断が必要です。
子どもの身体的な発育については成長曲線を確認し、問題がないようであれば、焦らず見守るようにしましょう。

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