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こんにちは、こさか歯科クリニックです。

インプラント治療例

 

今回は、欠損と合金の被せ物の虫歯の再発に対して、
インプラントとセラミックで治療をした例についてです。

 

術前口腔内写真

 


術前上顎:虫歯の進行により残根状態のところがあります。


術前下顎:奥歯は虫歯により欠損になっています。


術前左側:噛み合わせのない奥歯が伸びてきています。


術前右側:左側と同様に、歯の病的移動が見られます。

 

術前CT

長期間歯の欠損が放置されていたため、

噛み合わせのない歯の病的移動が見られます。

 

治療後口腔内写真

術後口腔内写真上顎:インプラントとセラミック治療

 

術後口腔内写真下顎:インプラントとセラミック治療

術後口腔内写真左側:噛み合わせの面を揃えて治療をしています。

 

術後口腔内写真右側:両側の臼歯部でしっかりと噛み合わせを作ります。

 

インプラント治療の準備について

まずは術前の検査と診断から行います。

CT撮影

インプラント治療を行う際、骨のあるところにインプラントを位置付けることができるか、CTで十分に確認をします。

すでに抜歯されていて、何ヶ月、何年も経過している場合は、骨の形態はなだらかになっており、

ある程度高さと幅が吸収して縮小していることが多いです。

骨って吸収する?何のこと?と思われたかもしれません。実は、歯の根がなくなった部分は、

ほっとくと自然に吸収して小さくなってきます。

インプラント治療を必要とする場合、虫歯や歯周病で歯を失っていることがほとんどです。

前歯の欠損の場合、事故で歯が折れてしまったということもあります。

炎症により骨が吸収していることが多いですし、

私たちアジア人の唇側の顎の骨は薄いので、

インプラント治療をする際、よく骨造成を行い、足りない骨幅を補っていく必要があります。

 

骨造成

抜歯し、その周囲にある炎症性の組織を除去します。

同時にインプラントを埋入するのですが、足りない骨を補う骨造成もセットで行います。

GCのサイトランスグラニュールという材料を使用しています。

主成分は炭酸アパタイトで、国内初のインプラント治療に適応が認められた、

顆粒状の骨補填剤です。

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世界初の「炭酸アパタイト」が主成分とする、国内初の「インプラント周囲を含むしか領域での使用」が認められた顆粒状の骨補填材です。「炭酸アパタイト」は、骨の無機成分と同じ組成のため、患者さん自身の骨へ効率的に置換され、目標とした骨面の高さを維持します。また、インプラント体に対し、強固なオッセオインテグレーションの獲得を実現します。

公式サイトより

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生物由来原料ではないことが大きなポイントと考えております。

以前よく用いられていた骨補填剤は、ウシ由来の成分であったりしました。

サイトランスグラニュールはその点、完全化学合成によるものですから安心です。

何より、インプラント治療において、良好な結果を得ていること、

実際使用している歯科医師からの評価も高いことから、私たちも導入することになりました。

骨造成の際に使う特殊な膜

インプラント埋入し、骨が足りない部位に骨補填剤を転入した後、

そのまま軟組織を縫合して終わるとどうなるかというと、

骨造成したところに軟組織が入り込み、意図したエリアの骨造成ができないのです。

そこで、非吸収性フッ素樹脂(d-PTFE)オープンバリア・メンブレンというものを用いて、

軟組織が入り込まないように骨造成部位をカバーし、その上から軟組織を縫合します。

これは非常に優れもので、骨造成をする部分の軟組織が完全に閉鎖しなくても、

バクテリアの侵入を防いでくれるメリットがあります。

縫い合わせた傷口は、一般的には開いてほしくないわけですが、このメンブレンを用いると、

傷口が開いてメンブレンが露出しても、感染が生じるわけではないので、そのまま治癒を待つことになります。

大体術後4週くらいの間にメンブレンが自然に浮いてきますので、ピンセットで除去をして終わりです。非常に使い勝手が良い材料であります。

 

ノーベルガイド

この投稿コーナーでも何回か触れたことがありますが、正確な位置のインプラント埋入は、実は術後の被せ物の寿命に大きく関わることです。

インプラントの角度、位置は、術者の少しの手のブレ、手術用ドリルのブレによって大きく左右されます。

私たちは、せっかく治療したところが長持ちして欲しいので、インプラント治療に手術用のガイドであるノーベルガイドをよく用いています。

CTデータを元に、インプラントの被せ物の形態を決め、それが口腔内で機能するために理想的なインプラントの位置を逆算してプランニングします。

そのシミュレーションをノーベルバイオケア社におくり、手術用のガイドが送られてきます。

半透明でインプラント埋入位置が再現されている金属のスリーブが内在しています。

この写真のガイドは、上顎に4箇所、10度以内の角度でインプラントが位置付けられるようにしたものです。人間ではそのような手術をフリーハンドで行うことは不可能です。

ではガイドを用いない時はあるのかというと、少ないですが条件が整っている場合にガイドなしでも施術をします。骨幅や高さ、軟組織、審美性にある程度ゆとりがあり、許容範囲が大きい場合です。

ただ、基本的にはシミュレーションした位置を口腔内でも再現できるように、ダイドを用いるのが良いと考えています。

 

治療が終わったら

インプラントの被せ物が入り、そこから患者さんの新たな生活がスタートします。私たちは、インプラントが特別強くも弱くもないです、とお伝えしています。この意味合いとしては、インプラントは虫歯にはならないですが、お手入れを全くしなければ、周りの歯と同様に歯周病と同じ状態になるため、ケアはしっかりしましょうねという意味です。

よく誤解されている方がおられますが、インプラントを入れたところが特別骨が溶けてなくなっていくという都市伝説のような話があります。インプラントは歯周病と同じ状態になりうるのですが、もしそうなったときは、周りの歯も同様に歯周病でダメになっているわけで、だから特別強くも弱くもない、とお話しているのです。

 

虫歯予防に効果的なフッ素。インプラントには??

インプラントにフッ化物のケアは材質的に合わないと考えられています。

これもメリットデメリットを考慮して、ケア用品を用いる必要があります。

例えば、口腔内にほとんど天然の歯が残っており、数本インプラントで補綴されている箇所があるとします。このような場合、フッ化物のケアは、大部分を占める天然歯の虫歯予防のメリットが大きいため、積極的に用いると良いでしょう。

反対に、上顎がALL on 4、下顎がインプラントオーバーデンチャーといった、ほとんどあるいは全ての歯がインプラントによる補綴装置の場合、そもそもフッ化物のケアをするメリットがないか非常に小さいため、必要ないという判断になります。

 

どこで治療を受けるのが良いか

インプラントは非常に良い治療ですし、もっと世の中に広まって欲しいです。周りにインプラント治療を受けた方がおられて、そのクリニックの評判が良ければ一度相談に行かれたら良いと思います。

私たちのクリニックでも、お気軽にご相談いただけたら幸いです。

ご予約はこちらからお願いします。

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口腔がん

2024年10月29日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

前回に引き続き、口腔内の病気についてのトピックです。

 

⚫️口腔がんには前触れがある

—口腔潜在的悪性疾患を知っていますか—

 “口腔潜在的悪性疾患(Oral Potentially Malignant Disorders;OPMDs,)”という名前を聞いたことがあるでしょうか。

2017年にWHOにより新たに定義された“疾患概念”で,「口腔がんになりやすい口腔粘膜疾患の総称」を意味します。

これまでは“前がん病変、前がん状態”とよばれていた疾患を含んでいます。

 

 口腔がんは人口10万人あたり6人未満の希少がんと前述しましたが、

OPMDSの保有率は2.5%(100人に2,3人)です。

 口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)

  1. 白板症

  2. 紅板症

  3. 紅板白板症

  4. 口腔扁平苔癬

  5. 口腔カンジダ症

  6. 円板状エリテマトーデス

  7. 先天性角化不全症

  8. 日光角化症(光線角化症)

  9. 梅毒性舌炎

10. 口腔粘膜下線維症

11. 無煙タバコ角化症

12. リバーススモーキング関連口蓋病変

●頻度の高いOPMDs(特に注意)

1. 白板症

 

比較的頻度が高く,癌化の可能性が高い

(4.4~17.5%)ため注意を要する粘膜疾患です。文字どおり、板状に粘膜が白く分厚くなっている状態です.粘膜が分厚くなっているため、拭っても除去はできないのが特徴です。

 舌の辺縁や歯肉、頰粘膜に好発します。粘膜の白色肥厚の正体は角化です。義歯や補綴物の不適合や慢性刺で同様に粘膜が角化し、白く見えることがありますが、これは白板症ではありません。

 特に原因が明確でないにもかかわらず、粘膜が白色肥厚していれば、白板症を疑います。疣状になって大きくなったり拡大したり、濃を伴う場合はすでに癌化している可能性もあります。

2. 紅板症

 まれですが、癌化の可能性がきわめて高い(30~70%)ため注意を要します。鮮紅色で表面が斑状でビロード状の病変です、舌,口底,歯肉、粘膜などに見られます。

 発見時にすでに癌化している可能性がく、“口腔がん”に準じて扱う必要がある病変です。

3. 紅板白板症

 白板症のなかに赤みを伴う部分が存在する場合があり、これを紅白板症といいます。白板症のなかでも癌化しやすい状態ですので、特に注意が必要です。

4.口腔扁平苔癬

 頻度が高く、注意が必要な粘膜疾患です。粘膜にレース状の白斑を呈し、赤みを帯びる病変です。中年期以降の女性に多く、頬粘膜に好発します。発生原因に自己免疫系の異常が関与しているといわれており、免疫系の細胞が粘膜を攻撃するために炎症を起こす結果、このような症状をきたします。炎症の程度により「刺激物がしみる」「ヒリヒリした痛み」訴えることがあります。

 癌化の可能性は2〜6%と、さほど高くありませんが、目にする頻度も多いので発見した場合は、長期のフォローや症状の程度によっては口腔外科専門医へ紹介する必要があります。

5.口腔カンジタ症

 近年、高齢化が進んだことで頻度が高くなっています。口腔カンジダ症は、口腔粘膜が真菌(カビ)に感染することで起こります。

口腔カンジダ症といえば“ガーゼなどで拭い取れる”白斑が特徴ですが、白斑を伴わず“赤く、ただれたような”病変が広がる、いわゆる“赤い口腔カンジダ症”が存在することに注意が必要です。特に高齢者の場合、義歯の下部に白い口腔カンジダ症も、赤い口腔カンジダ症も発生していることが多く,慢性化して癌化の可能性が高くなります。高齢者の義歯下の粘膜の変化には注意が必要です。

⚫️きわめてまれなOPMDs(全身の疾患に伴うもの)

6.円板状エリテマトーデス

 皮膚に角化やびらんを伴う不規則な形態の紅斑性病変です。自己免疫疾患の1つですが、紫外線により悪化や発症することが知られています。口の中では口唇や頰粘膜に紅斑やびらんが出現し、癌化することがあります。

7.先天性角化不全症

 血球の減少を伴う爪の委縮、口腔の白板症,皮膚色素沈着を主徴とする先天性の疾患です。前記の症状は必ずしもそろうことはなく、不全型も多いとされています。口腔の白板症から癌化することが報告されています。

8 .日光角化症(光線角化症)

慢性の紫外線刺により皮膚細胞のDNA変異が生じて発症します。表面がザラザラした斑状になり、わずかに隆起する、皮膚がんの前駆病変でもあります.口唇は紫外線が当たりやすい場所であり、口腔がんに移行しやすいです。

9.梅毒性舌炎

近年、日本で梅毒感染が増加しているとの報告があります。梅毒に罹患すると早期の段階から特に舌に炎症を起こすことが知られており、病期によって紅斑や白斑などさまざまな症状を呈します。このような舌の症状を梅毒性舌炎といいますが、癌化しやすいことが報告されています。

⚫️日本では見られないOPMDs

 以下に示すものは、特別な喫煙状態により生じるもので、日本人に見られることはないと考えられていますが簡単に特徴だけ説明します。

10.口腔粘膜下線維症

 東南アジアで噛みタバコと同じくらいポピュラーな嗜好品である“ビンロウジュ”によって口腔粘膜下が固くなる疾患です。頰粘膜に出現します。

11.無煙タバコ角化症

世界的には無煙タバコの1種である噛みタバコを嗜好する習慣があり、噛みタバコにより口腔粘膜表面の著しい角化が生じます。これも頼粘膜に好発します.

“無煙タバコ”というと電子タバコをイメージしがちですが、そうではありません。電子タバコも通常のタバコ同様のリスクがあると考えられています。

12.リバーススモーキング関連口蓋病変

 喫煙の特別な方法として、「タバコの火のついたほうを口の中に入れて喫煙する」というリバーススモーキングというものがあります。特に、口蓋に火傷とともに高度の炎症を起こし、慢性化すると癌化します。

⚫️鑑別できたほうがよい頻度の高い口腔粘膜疾患

 癌化する可能性のない、日常よく遭遇する口腔粘膜疾患について紹介します。

1.褥瘡性漬瘍

 不適合な義歯や補綴物により、舌や粘膜に傷が生じ,そこから細菌感染により清瘍が拡大します。補綴物などの刺激を改善すると、7日程度で消失します。原因が明らかになっていることが重要です。

2.再発性アフタ

特に原因となるものがないにもかかわらず、口唇や舌などに周期的にできる口内炎を指して、再発性アフタとよびます。直径数mm大の類円形の浅い潰瘍です。周囲に発赤を伴うこと(紅量)が特徴です。7~14日くらいで自然に消退するのが特徴です。

3.溝状舌

舌背部に多数の溝が生じる状態を指して、溝状舌といいます。遺伝的素因で生じると考えられています。加齢とともに明らかに溝が深くなってくるため、不安に思われる患者さんも多くおられます。治療の必要はありません。

4 地図状舌

 舌背部に地図状の模様をきたす状態を地図状舌といいます。中央部が鮮紅色でその周囲に白色の縁取りを示す大小の斑が現われ、日によって形状が変化します。原因不明ですが、自覚症状がないことが多く、治療の必要はありません。

5.エプーリス

 歯肉上に発生した”炎症性”の増殖物のことです。歯肉に発生する増殖性変化としてもっとも多いものです。

 エプーリスの粘膜表面はツルツルしていて正常粘膜色で,歯肉から有茎性に増殖してくることが特徴です。

※良性、悪性かは腫瘤の辺縁を上方に持ち上げ、腫瘤が茎性であることを確かめます。癌は正常組織に浸潤し、下広の腫瘤であるのに対し、エプーリスは、歯肉に茎状に付着しています。

 

口腔内の変化が気になったら、まずネットなどで調べる方が多いです。

気になったら歯科受診し、必要な検査と診断されると安心と思います。

当院へのご相談はこちらから。

ホワイトニングQ&A

2024年10月18日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、ホワイトニングに関するご質問が多い事項についての記事です。

ホワイトニング症例

術前の口腔内写真:歯の色調と、虫歯、歯の欠損のお悩みがありました。

術後口腔内写真:ホワイトニングで色調を明るく、白くしました。

歯の欠損や虫歯は審美的なセラミック治療、インプラント治療を行いました。

 

Q.ホワイトニングって安全?

ホワイトニングで使用される薬剤、過酸化水素(HP)、過酸化尿素(CP)は医薬品です。過酸化水素の3%溶液は、オキシドールとしてもよく知られています。ホワイトニングについての研究は1844年と100年以上前から行われており、アメリカでは約30年以上前に実用化され、安全性は確立されています。
ホワイトニングにより歯自体が溶けたり、もろくなったりすることはありません。

Q.ホワイトニングの禁忌症はある?

・無カタラーゼ症

過酸化水素を分解する酵素「カタラーゼ」を生まれつきもたない無カタラーゼ症の患者さんは、ホワイトニングをしてはいけません。

・妊娠中、授乳中

過酸化水素や過酸化尿素を用いたホワイトニングによる胎児・乳児への影響は人体実験をするわけにもいかず、明確な報告がありません。万が一のトラブルに備えて、ホワイトニングを控えるのが望ましいでしょう。

・小児

乳歯のホワイトニングについて、これも人体実験をすることはできないので影響があるか明確ではありません。

・光線過敏症

オフィスホワイトニングの光照射を行うことができません。

Q.ホワイトニングの副作用はある?
・歯肉や口唇に薬剤がついた場合
歯肉が白っぽくなり、痛みを感じたりします。直ちに洗浄し、ビタミン含有の軟膏を塗布します。衣服に過酸化水素が付着しても、直ちに水洗します。

・象牙質知覚過敏症
知覚過敏というワードはよく聞くと思います。歯に一過性の刺激を与えて30秒から1分以上の疼痛が出るもの、とDrグロースマンの定義があります。エナメル質に生じた亀裂などを通じて、歯にフリーラジカルが浸透し、歯髄を刺激することにより生じます。
ホワイトニングを一旦中断し、硝酸カリウムなどを含む知覚過敏抑制剤で対処します。必要な場合、鎮痛剤を処方することもあります。

Q.今の自分の歯の色って普通?黄ばんでる?
歯の色は、通常透明なエナメル質を透過して、象牙質の淡黄色が見えている状態です。歯の表面の正常にも左右されます。微妙な曲面をしており、常に唾液で湿潤状態ですので、室内、日光の下、曇りの天気、照明などによっても見え方が異なります。同じ歯でも、エナメル質・象牙質の厚さ、歯頸部、歯冠中央、切縁など部位によっても色調が異なります。
では、気になる日本人の平均的な歯の色についてですが、国際照明委員会が定めたCIE Lab表色系を使って、日本人の中切歯(上顎前歯)の平均歯冠色を測定した報告があります。
L(明度):明るさの指標。数値が大きいほど明るく、小さいほど暗い。  日本人平均70±9
a(赤み):赤色の指標。数値が大きいほど明るく、小さいほど緑色。  日本人平均2.5±3
b(黄色み):黄色の指標。数値が大きいほど明るく、小さいほど青い。 日本人平均:18±12

写真 シェードガイド:歯の明るさの色見本として、歯科医院で最も多く使用されています。

臨床では、
術前と術後の口腔内写真を撮影
シェードガイドを使って患者さんと一緒に歯の色を確認、記録
この2つの方法でシェードテイキングを行います。
ホワイトニング以外でも、被せ物や詰め物の色あわせで用います。

・VITAシェードガイド
歯の明るさ順に配列されている16段階のシェードガイドで、昔から広く使われています。
明るさの順にB1>A1>B2>D2>A 2>C1>C2>D3>A3>D4>B3>A3.5>B4>C3>A4>C4
日本人の平均がA2~A3程度です。

・ブリーチシェードガイド
VITAシェードガイドの「B1より上の明るさを記録するために、ホワイトニング用のブリーチシェードガイドがあります。
明るさの順にBL1>BL2>BL3>BL4
これらのシェードになると、周りから見ても明らかに歯が白く、褒められるレベルです。

Q.ホワイトニングした後、何かメンテナンスが必要?
ホワイトニングシステムにもよりますが、私たちのポリリン酸ホワイトニングでは以下のようなメンテナンスを推奨しています。
・セルフケアの指導
せっかく白くなった歯を長持ちさせたいので、適したケア用品をケア用品をおすすめしています。ルシェロホワイト、ブリリアントモアがおすすめです。私たちも使用していて、ホワイトニングの白さを保ちやすい実感があります。

・プロフェッショナルケア
虫歯・歯周病予防のためにも、歯科受診し定期的に口腔内の精察と清掃していくことが重要です。クリーニングすることによりホワイトニング剤の浸透がよくなるため、白さがアップしやすいです。

・修復物の再製
ホワイトニングした後、天然の歯の部分が白くなるにつれ、樹脂などの詰め物の色が黄色く目立つことがあります。ホワイトニング前の歯面には合っていても意味がありませんよね。詰め物のやりかえをされると仕上がりがとてもよくなります。

Q.ホワイトニングで注意しなければならない歯の状況とは?
・歯肉が下がっている
ホワイトニングによる歯肉の位置の変化はありません。オフィスホワイトニング中に薬剤が付着しないよう注意します。

・知覚過敏がすでにある
知覚過敏抑制剤の使用や、薬剤の濃度と作用時間を少なくする対応をします。

・エナメル質の亀裂
知覚過敏の場合と同様の対策が必要です。

・歯面に帯状の着色が見られる
ホワイトニング直後に一時的に帯状の部分が強調されることがあります。続けていくと差が気にならなくなりますが、要注意です。

・修復物の範囲
ホワイトニングで変化するのは天然の歯の部分のみですので、どこが天然の歯で、どのように修復物が入っているかをしっかり確認する必要があります。例えば、すべて被せ物が入っているような前歯の状態ですと、ホワイトニングでは何も変化はありません。セラミック修復のやりかえで対応が必要です。

・失活歯(根管治療すみの歯)
根管治療され、裏側をレジン充填されて終わっている歯もよく見られます。暗く歯が変色していることも多いです。ホワイトニング剤を表から浸透させて改善することは不可能なので、セラミック修復が必要です。

・テトラサイクリン歯
F3まではホワイトニングをすすめて行きます。F4になるとホワイトニングでは解消が難しくなりますので、セラミック修復が妥当です。

 

ホワイトニングする前に、

どのような歯の色の種類があるか、ホワイトニング剤が作用しやすいのはどんな状態か、

などのトピックです。

 

黄色・薄茶色系

●原因:ベンゼン環の二重結合への化学反応によ

   る着色、象牙質の色調反映

●ホワイトニング効果が出やすい

黄色系や薄茶色系の着色のほとんどは、ホワイトニングの効果が出て白い歯にすることが可能です。VITA Classicalシェードガイド(VITA)でいうと、A系統の黄色系、B系統の茶色系です。これらは、ベンゼン環の二重結合への化学反応による着色(例:ニンジンに含まれるBカロチンの赤色)が多いと考えられ、同じ化学反応によるホワイトニングの効果が出やすいのです。また、象牙質の色調反映が原因の場合もあります。

グレー系

●原因:金属系の着色

●ホワイトニング剤が反応しないため、着色が

   落ちにくい・落ちない

グレー系は、ホワイトニングの効果が出にくく白くなりにくい代表的な着色です。グレー

系の色は、金属系の着色が疑われるもの(アマルガム充填の酸化、テトラサイクリン系抗生物質[F3以上])で、確実なホワイトニングの効果は期待できません。同シェードガイドでいうとC系統です。金属結合にはホワイトニング剤が反応しないため、着色が落ちない、あるいは落ちにくいと判断できます。

濃茶色系

●原因:喫煙、茶しぶなどの嗜好食による長時間

   の着色

●ホワイトニング効果が出るまで時間がかかる

濃茶色系の着色は、ホワイトニングの効果が高まるまでに時間がかかることが多いです。

同シェードガイドでいうとD系統です。喫煙、茶しぶなどの嗜好食による長時間の着色が原因であるため、黄色系・薄茶色系より時間がかかると考えられます。

※たとえば、50歳の方は20歳の方と比べ、これまで歯に着色が積み重なった期間を約2倍と考えます。ホワイトニング効果が出るのも2倍以上かかると考えて下さい。

 

⚫️ホワイトニングが「痛い」「しみる」と思う理由。

 

 

 ホワイトニング剤の過酸化水素濃度と知覚過敏の強さは比例関係にあります。過酸化水素濃度が高くなるにしたがいフリーラジカルの量は多くなり、エナメル質に到達する確率が高くなります。その結果、歯をより白くすることごできます。しかしその反面、より象牙質に近い部分までホワイトニング剤が到達するとこによって、象牙質への刺激も強く起こり、痛みが出現することがあります。

 また、照射ライトの光が強くなれば、発生する熱も上昇しホワイトニング効果は高まりますが強い光が当たることによってエナメル質の温度が上昇すると、歯髄が敏感になり痛みを生じやすくなります。

 ちなみに、通常、歯髄は60°以上になると壊死を起こすと言われています。使用するライトにらよって大きく変わりますが、発熱量が低いLEDライトであれば歯髄の温度は40°以上になることはないと考えられます。

▪️知覚過敏の有無を確認します。

 まず、ホワイトニング施術前の時点で、歯にエアーをかけて痛みが出たり、冷たいものを口に含んで痛みが出たりする場合は、すでに知覚過敏が起きているということです。ばしめから知覚過敏のある患者さんに対しては、先に知覚過敏の治療を行い、治療してからホワイトニングを施術することが望ましいでしょう。

▪️施術後の飲食物に気を付けましょう。

 酸味は歯髄神経を刺激し、知覚過敏様症状があるときは痛みを誘発することがあります。そのため、オフィスホワイトニングの翌日まで、あるいはホームホワイトニングの直後に、できるだけ冷たいものや熱いもの、酸っぱいものを口にしないようにし、ホワイトニング施術後の違和感や痛みを予防します。

コーヒーは着色しやすい嗜好品の一つですが、

当院のポリリン酸ホワイトニングは、術後の飲食物の制限はございません。

歯石のつきやすさ、糖尿病と歯周病、砂糖についてのお話

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、歯周病と全身疾患、糖尿病について詳しくお話ししていきます。

甘いものと健康管理については、聞いたことありますでしょうか。

今は様々なおやつや甘味料が世に溢れていますから、

それらを全く避けて生きていくことは不可能です。

自炊で徹底することはやろうと思えばできますが、

他の人と集まり、食事をするような機会がありますし、その場で自分だけ食べないのも変ですよね。

実は、砂糖の弊害ってたくさんあるので、それについてもお話ししていきます。

 

⚫️歯石は、いわば「細菌の化石」。

 

歯石自体がむし歯や歯周病を起こすことはありませんが、デコボコした表面は細菌の温床となります。歯石を放置すると、結果的に歯周病が悪化することになります。
歯石とは、簡単にいうとプラーク(細菌のかたまり)が唾液中のミネラルなどの影響により、石のように固まって歯にこびりついたもので、いわば「細菌の化石」です。歯石そのものに大きな害はありませんが、表面がザラザラしているのでプラークが付着しやすくなります。
歯石を放置すると、そこにプラークがたまり、周りの歯ぐきに炎症を起こして歯周病になったり、悪化する可能性が高くなります。

ネットなどで「歯石は取らないほうがいい」という話を目にすることがあります。「歯石には歯を固定する効果があり、取ってしまうと歯がぐらつく」というのが理由ですが、これは間違い。まず歯を固定することそのものに、歯をもたせる効果はありません。それよりも、歯をきれいにして細菌をつきにくくすることが大切です。歯石がベッタリついていると歯みがきがしづらくなり、結果的に歯周病が悪化してしまいます。
歯石を取ると、歯と歯のあいだにすき間が空いたようになったり、歯がしみることがあります。歯と歯のあいだのすき間は、歯石がついていた時点ですでに空いていたと考えられます。つまり歯周病の進行により歯ぐきが下がり、歯と歯のあいだにすき間ができて、そこに歯石が入り込んでいたのです。歯石がなくなると歯間ブラシなどが入りやすくなるので、掃除が容易になります。
また、歯がしみるようになるのは、歯石が歯の表面の凹みなどのなかにも入り込んでいるので、取るときにどうしても歯の表面が一層削られてしまうからです。歯がしみる症状は、歯みがきをしっかり続けるうちにほとんどが治まっていきます。
お口のなかには、みがいていても、どうしても歯石がつきやすい場所があります。それは唾液腺(唾液の出口)の近くにある歯で、たとえば舌下腺は舌の裏側にあるため、下の前歯の裏側は歯石がつきやすいです。一方、上の奥歯の表側も、耳下腺が近くにあるため、歯石ができやすいです。歯石はプラークが唾液中のミネラルとくっついて形成されるので、少量のプラークでも、唾液腺の近くにある歯には歯石がつきやすいのです。
さて、これまで歯ぐきの上にできる歯石、専門用語でいえば「歯肉縁上歯石」についてお話ししてきましたが、じつは歯ぐきの溝のなか、歯の根元にも歯石はできます。
これは「歯肉縁下歯石」といい、色は黒く、歯ぐきの上にできる歯石より硬いことが多いです。表面はザラザラしていて、歯周病を悪化させる細菌をたくさん含んだプラークが付着します。しかも歯ぐきの深いところに入り込んでいるので、いくら歯みがきをがんばっても取れません。
歯ぐきの上にあるにしろ下にあるにしろ、歯石は患者さんの手では取れないので、歯科医院で取ってもらう必要があります。取ってもらったあとは、歯石が再びつくられないよう、しっかり歯みがきをしましょう。歯みがきのしかたも歯科医院でチェックしてもらうといいですよ。

 

⚫️糖尿病の入り口はお口にあり!

ラーメンにはテンションが上がりますね。

しかし、健康的ではありません。わかっちゃいるけど・・・

 

 

「医者さんで糖尿病のお話」というと、場違いな感じがするかもしれませんが、じつは糖尿病とお口にはとても深~い関係があるのです。
1つ目の共通点は「病気の古さ」。人類で一番古い病気はむし歯といわれていますが、糖尿病も古く、3千年以上昔の古文書に記されています。時代を重ねるごとに患者数が激増している点もよく似ています。日本歯周病患者は成人の8割、糖尿病患者は予備軍も含めると成人の4割にも達するといわれています。糖尿病のかたは歯周病になりやすく、また重症化しやすいため、必ず歯医者さんに定期通院しなければなりません。
2つ目は「歯に悪い食べ物は糖尿病にもよくない」ということ。昔は砂糖は希少品でしたが、いまの時代はお菓子や菓子パン、清涼飲料水などがあふれており、小さな子どもからお年寄りに至るまで、国民全員が毎日、口にしています。砂糖はむし歯菌が喜ぶだけでなく、血糖値の急上昇にもつながりますので、そのまま摂り続けていると糖尿病まっしぐらとなってしまいます。逆に、噛みごたえのある野菜や玄米など、「歯にやさしい食べ物は糖尿病になりにくい」ことも覚えておきましょう。

砂糖の弊害

医科の先生とお話しする機会がありますが、

西洋医学での対処療法だけでなく、東洋医学の原因除去のアプローチをとっている先生方もたくさんいらっしゃいます。非常に勉強になりますし、私たち歯科の診療室でも、患者さんの健康管理のため、効果的にカウンセリングする上で参考になっています。

例えば、清涼飲料水を常飲しているようなお子さんは、歯が大体ボロボロに変わっていきます。口腔内が酸性に傾いたままで、歯がどんどん溶けていく現象が起きます。

歯が丈夫で、清涼飲料水や菓子パンなどを取り続けている場合、次に多い問題が実はうつ病であるとのこと。砂糖の多い食生活により、短鎖脂肪酸を作れる腸内細菌が減ってしまい、この短鎖脂肪酸が腸内で少なくなると、うつ傾向になりやすいのです。

その他の弊害が、糖尿病です。こういう病気は、動物では見られないものです。

なぜかというと、野生の動物は砂糖のように甘いものを摂りたくても摂れません。

昔の人も、現代のようにしょっちゅう砂糖を取れませんでしたので、

このような病気は以前はなかったわけです。

甘いものを摂ると、血管の内壁がダメージを受けます。内出血が起こりやすいため、脳出血やくも膜下出血のリスクが高まります。

記念のケーキなんかはいいものですよね・・・

 

また、甘いものを食べると、例えばお菓子やジュースなどですが、血糖値を下げるインシュリンというホルモンがたくさん出ます。必ず下がりすぎるので、今度は血糖値を上げるホルモンが働きます。副腎にあるコルチゾールや、グルカゴンというホルモンを使って、徐々に血糖値を上げていくという現象が起きます。このコルチゾールやグルカゴンの働きは糖新生と言って、体の中の内臓や筋肉を壊しながらブドウ糖を出すようにします。この時、筋肉には窒素が含まれているので、アンモニアができてしまいます。脂肪を分解するとケトンができます。この2つは、両方とも発癌物質なのです。なので、甘いものを食べていて、血糖値の急上昇・急降下が生じている状態を高血糖スパイクと言いますが、これを生活習慣のように長く続けている人は、糖尿病に関係なく癌になりやすいです。1度に大量に摂るよりも、1日に何回も高頻度でとっている方が、癌になりやすいです。甘いものは、脳の快楽報酬系に入るので、依存性があります。大脳の前頭前野にドーパミンが出て、多幸感が得られます。なので、ケーキとかを食べると脳が幸せに感じるのです。インシュリンが出るのはそれから15〜20分後。そこから血糖値が下がって、グルカゴンとかが出てくると、今度はイライラ、不機嫌の状態になります。で、また甘いものを食べてしまうというループに陥るのです。

睡眠時無呼吸症候群、口呼吸、歯根膜について

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

健康に関するトピックです。

⚫️自宅でもできる睡眠時無呼吸症候群予防

 睡眠時無呼吸症は、何らかの原因により舌の根元が喉を塞ぐことから起こります。

舌根はこのような構造になっています。

 

 つまり、「舌が下がっている」ことが原因なわけです。舌は筋肉ですから、自分で意識して鍛えることも可能です。

 いびきが気になる人は、口周りや舌の筋肉を鍛えることができる「あいうべ体操」を普段から心がけることで、症状がかなり改善されます。

 睡眠時無呼吸症候群は、口呼吸の癖がある人もなりやすいとされています。口周りの筋肉を鍛え、口を閉じて鼻で呼吸することができるようになる「あいうべ体操」は、睡眠時無呼吸症候群の予防として最適と言えます。

⚫️掌蹠膿疱症と口呼吸

 皮膚病のひとつである「掌蹠膿疱症」。手掌、足底に無菌性の膿疱が反復して出現する、慢性難治性の疾患です。

 この病気の原因は明らかにされていませんが、膿疱は無菌性であることから、金属アレルギーや病巣感染が大きな誘因となるのではと考えられています。

 病巣感染とは、「身体のどこかに限局した慢性炎病があり、それ自体は異常を引き起こさないが(あっても軽徴)、まったく関係のなさそうな臓器に、反応性の器質的・機能的な二次疾患を引き起こす病態」です。

 病巣感染の一次病巣は、扁桃と口腔内でそのほとんどを占めていることはすでに述べた通りです。口呼吸を続けていると、上咽頭や扁桃部が細菌感染を起こし、免疫システムに異常を来します。その結果、風邪をひきやすくなったり、掌蹠膿疱症やアトピー、その他さまざまなアレルギー疾患となって現れるのです。

 扁桃は、風邪をひいて喉が痛くなったり、疲れが溜まったときに腫れたり、身体防御機能が落ちるとよく症状を示すところです。慢性的に細菌が侵入してしまう場所です。

 また、口腔内は体の中で最も細菌が棲みつきやすい場所です。口呼吸は、口腔乾燥症によって歯周病や口内炎を発症し、「歯性病巣感染」としてさまざまな臓器における疾患の起点となります。

 掌蹠膿疱症などの皮膚疾患は、病巣感染を無くすことによって、ステロイド剤などの薬剤を

使用しなくても、治療をすることが可能です。

 病巣感染を取り除き、鼻うがいと鼻呼吸を心がけてもらうことで、治る可能性は非常に高くなります。

⚫️咀嚼運動と脳の関係

 NHKの人気番組で、咀嚼運動が脳に与える影響が紹介されました。

 ほぼ寝たきり状態だった高齢者の歯を治療して口から食事を摂れるようにすると、なんと自立歩行するまで回復したというのです。

 また、終日ベッドに横たわり、介護者の問いかけにも反応しなかった男性に、歯科医師が義歯を製作して装着すると、QOLが劇的に回復しました。「気力が甦った」といきいきとした表情で述べる男性の姿が印象的でした。

 ある大学の研究では、歯の本数が少ない人ほどアルツハイマー症で脳内の海馬が萎縮していたことも明らかにされました。

 番組内で、東北福祉大学の渡邉識教授は、「噛むことは脳を活性化するだけでなく、体のバランスを取る重要な役割を担う、生きるために必要な力」と、結論づけています。

 歯の組織には、歯根膜という歯槽骨をつなぐ繊維性合組織が存在します。咀嚼と脳をつなぐ重要な働きをするのが、この歯根膜です。歯根膜は、歯と歯槽骨をつなぐという役割以外にも、「噛み応え」を感じるという役割や、咀嚼の際には歯にかかる衝撃を和らげる役割があります。それだけではありません。歯根膜は、脳内の三叉神経につながっているのです。

 咀嚼運動にらよって発生した刺激は、歯根膜から三叉神経を通して脳の中枢に送られます。そして、脳内の運動、感覚、記憶、思考、意欲を司る前頭前野まだ活性化させます。

 本来、食べるという行為は、非常に刺激的な作業です。味覚においては、舌の味蕾ご食べ物の味を電気信号に換え、顔面神経、舌咽神経、延髄、視床を経て大脳の味覚野に送られ、海馬、扁桃体、前頭前野へ伝えられます。脳には過去の記憶ぎ保存されているので、味とともに食事にまつわる思い出が蘇ります。まさに脳を活性化する大切な作業なのです。

 高齢者ほど噛むことによって脳の連合野が顕著に活性化することも明らかになりました。脳の連合野は、五感情報や運動情報などを、より高次のレベルで処理する領域です。積極的な咀嚼が加齢による衰えに歯止めをかける、いわばアンチエイジング効果が期待できることになります。

 また、認知症によるコミュニケーション力の喪失や徘徊行動などを見ると、前頭前野の働きに直結していることがよく分かります。脳の神経細胞は加齢によって減少するものですが、脳に刺激を与えて活性化させれば、残った神経細胞によって脳の機能を維持することができるのです。

 歯が抜けると歯根膜も失われますが、その場合には口腔内の軟組織が歯根膜の代わりを果たすことが明らかになっています。義歯でも噛むことができれば、脳は活性化します。

 近年では、義歯を装着することによって車椅子を使用していた高齢者が自立歩行できるようになった事例を日本歯科医師会が再三にわたり紹介しています。理由として、食物の経口摂取が可能になって体力が回復したことに加え、正しい咬合を回復したことで身体のバランスを取りやすくなったことが、大きな理由として指摘されています。

⚫️子どもと歯根膜

 

 

 噛み合わせが悪い不正咬合の子どもは、集中力が低下する、学力が伸びないなど、脳への悪影響が見られることがあります。

 それには口呼吸がひとつの原因になっていることは、すでに述べた通りです。本来なら鼻から入れる乾燥して冷えた空気が脳を冷却してくれますが、不正咬合により口が閉じられない状

 また、噛み合わせが悪い状態というのは、ちゃんと噛めていない状態なわけです。ということは、歯根膜に刺激が伝達されていないのです。歯根膜に刺激が伝達されないと、脳にも十分に刺激が伝わっていきません。ちゃんと噛めてい状態なわけです。ということは、歯根膜に刺激が伝達されていないのです。歯根膜に刺激が伝達されないと、脳にも十分に刺激が伝わっていきません。ちゃんとと噛めない、咀嚼がしにくい、というのも、子どもの集中力や学力低下の立派な原因です。

 だからこそ、子どものうちから矯正治療をしてちゃんと噛めるような歯にすることが大事なのですが、矯正治療は根本的な解決にまで結びつきません。編正治療で見た目を美しくできても、正しい咀嚼ができない状態、口呼吸のままの状態では、脳への悪影響は継続されていくからです。

 不正咬合でなくても、正しい咀嚼ができない子どもは多く見られます。子どもが好む柔らかい食べ物が多くなったせいか、昔ほど「よく噛んで食べる」ことの大切さを子どもに伝えている家庭は少ないように感じます。

 子どもたちがこれから先の長い人生、生涯にわたって心身の健康を維持していけるように、口呼吸の大切さや咀嚼の大切さを、周りの大人たちは伝えていかなければいけません。

 

⚫️セロトニンと歯根膜

 人間の精神面に大きな影響を与える神経伝達物質であるセロトニン。このセロトニンが不足すると、うつ病などの精神疾患に陥りやすいと言われています。

 セロトニン研究の第一人者である有田秀穂氏は、うつ病治療において代表的な治療薬とされ

るSSRIの使用を「あくまで対症療法に過ぎない」とし、「生活習慣を改善しなければ本質的な治癒には至らない」と述べています。セロトニン神経を活性化させるために効果のとのひとつとして、有田氏はリズムを伴う運動を挙げ、「咀嚼」をその代表例と指摘しています。咀嚼運動の前後の状態を調べると、脳内に増加したセロトニンが血管内に輩出されていることが確かめられています。

⚫️ダイエットと歯根膜

 歯根膜は、ダイエットや肥満防止にも関わっています。噛む回数が増えると、脳にヒスタミンという物質が分泌されます。ヒスタミンは、脳の満腹中枢を刺激し、脂肪を燃やす脳内物質なので、噛む回数を増やし、歯根膜への伝達をしっかり行うことで、痩せるというわけです。

噛むときに大切なのは、柔らかい食べ物でもしっかり噛むことを心がけ、必要以上に固いものを噛もうとしないことです。噛み過ぎは、歯の摩耗を招きます。

子供の歯ぐきのトラブル

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、子どもの歯ぐきの病気と、その特徴についてのお話です。

 

来院された時、歯の表面に何日も付着しているような汚れが多かった口腔内。

ブラシで清掃したところ、歯茎の赤みが強く、出血が多かったです。

 

⚫️子どもは歯周炎にならないのか?

 子どもに認められる歯周疾患は,デンタルプラークの蓄積が原因となる歯肉炎(プラーク性

歯肉炎)がほとんどで、歯周炎はごくまれです。

1歳半までの30%以上の子どもが、歯肉の発赤・腫脹を伴うプラーク性歯肉炎に罹患しているといわれています。その後,成長とともにプラーク性歯肉炎は増加しつづけ、思春期には半数以上にも及びます。それでも、成人になるまでにアタッチメントロスや歯槽骨の破壊を伴う歯周炎を発症することはほとんどありません。

 子どもの口腔内からは歯周病菌があまり検出されず、歯周組織の抵抗力も強いため、歯周炎を発症しにくいようです。しかし、成長するにつれて歯周病菌が増加していくだけでなく、歯周組織の抵抗力が低下していきます。そのようななかで、プラーク性歯肉炎は歯周炎を誘発するリスクファクターになるため、子どものうちから歯周状態の健康を意識しておくことが大切です。

●歯周病菌と歯周組織のバランス

子どもの歯周組織は抵抗力が強く、病原性の高い歯周病菌が存在することもまれです。そのため、デンタルプラークが蓄積しても、歯肉炎(プラーク性歯肉炎)を引き起こすだけで、歯周炎まで発症することはほとんどありません。しかし、プラーク性歯肉炎を放置したまま油断していると、子どもが成人になったときに、病原性の高い歯周病菌の定着と歯周組織の抵抗力の低下を生じて、歯周炎が引き起こされます。

⚫️歯周病菌の出現

 デンタルプラークは歯肉緑上プラークと歯肉

縁下プラークに分類され、それぞれの環境の違いにより構成される細菌の種類が異なります。

歯肉緑上プラークは歯面に形成され、酸素が浸透しやすい環境下で生存できるう蝕の原因菌をはじめとする口腔レンサ球菌などが生息しています。それに対して、歯肉縁下プラークが形成される歯肉溝は、構造的に酸素が侵入しにくい環境であるため、空気を嫌う多くの歯周病菌は歯肉溝に生息します。子どもでは歯肉縁上プラークの構成菌は成人とあまり変わりませんが、歯肉溝に存在する菌は成人とは大きく異なり、歯周病菌はあまり検出されません。

 しかし、歯周病にかかわる菌は成人になってから突如出現するわけではありません。子どものうちに定着する歯周病原性の弱い菌が、思春期になって現れる病原性のやや強い菌の定着のために必要であるとされています。さらに、成人になって出現する病原性の高い菌の定着に、小児期および思春期に形成された菌がかかわると考えられています。また、歯周病菌は保護者から子どもに伝播することが知られており、重度の歯肉炎に罹患した子どものデンタルプラークからは多くの歯周病菌種が検出されることがあります。したがって、子どもの歯肉炎を放置することは、歯周病菌の定着時期を早め,歯周炎を発症するリスクを高めることになります。

●歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラーク

う蝕の原因や歯周病性の低い滞在菌は歯肉縁上プラークに生息しているのに対して、病原性の高い歯周病菌は歯肉炎縁下プラークに生息しています。子どもでは歯肉溝が浅く歯周病にかかわる菌は少ないですが、口腔衛生状態の悪い子どもでは病原性の高い歯周病菌が存在することがあります。

⚫️子どもの歯周炎

1. プラーク性歯肉炎

子どもの歯肉炎は、プラーク性歯肉炎がほとんどであるため,デンタルプラークを除去することで容易に解決できます。プラーク性歯肉炎を有する子どもでは,デンタルプラーク除去時に歯肉に痛みや出血を伴います。そのため,子どもは歯磨きを嫌がり、歯肉炎をさらに悪化させるという悪循環に陥ることがあります。また,子どもや保護者の十分な協力が得られなければ,歯肉炎が一時的に改善したとしてもすぐに再発します。子どもに歯磨きを習慣化させるためには、歯科衛生士が子どもや保護者に根気よく指導を行うことが必要です。

 萌出途中の永久歯の歯肉炎は、深い歯肉溝にデンタルプラークが蓄積することで容易に生じ,特に萌出性歯肉炎とよばれています。萌出性歯肉炎の好発部位は大臼歯ですが、前歯や小臼歯に生じることもあります。また、小学校高学年から中学生ごろには,ホルモンの変調,受験やクラブ活動による不規則な生活、口腔衛生に対する関心の低さなどが重なり、歯肉炎の罹患率が高くなることから、特に思春期性歯肉炎とよばれています。萌出性歯肉炎や思春期性歯肉炎による疼痛や炎症が頭著な場合には、抗菌薬や鎮痛薬を処方することもあります。これらの歯肉炎を発症する年代では、歯科受診の機会が少なくなる傾向にあるため、定期検診の重要性をよくご理解いただくことが大切です。

2.口呼吸由来の歯肉炎

 口呼吸由来の歯肉炎は上顎前歯部に好発し,露出した唇側歯肉が乾燥することにより発赤や

腫脹を生じます。口呼吸は、口唇閉鎖不全、歯列不正、気道の狭窄、鼻疾患などさまざまな原因により生じるため、原因を明確にして除去することが必要です。

 口呼吸由来の歯肉炎は,プラーク沈着が直接の原因ではありませんが、口腔衛生状態が不良なほど悪化するため,口腔内を清潔に保つことも大切です。

3.   歯肉増殖

 歯肉増殖は薬物の副作用や遺伝的要因に分類され、全顎的に歯肉肥大を認めます。薬物性の歯肉増殖は、てんかん発作の治療に用いる抗けいれん薬のフェニトイン、臓器移植の拒絶反応を抑える免疫抑制剤のシクロスポリン、高血圧や狭心症の治療に用いられるカルシウム拮抗薬のニフェジピンなどの服用により生じます。

 増殖した歯肉は非炎症性で硬く、歯冠を完全に覆うこともあり、歯肉切除を行わなければ改善させることは困難です。歯肉増殖の直接の原因はデンタルプラークではありませんが,歯肉

切除を行ったとしてもプラークコントロールが不十分であれば再発しやすくなります。

清掃状態をチェックするための染め出し液。

磨き残しがある部位について、患者さんと共有することで

普段お掃除ができてるようでできていないところを改善していきます。

小児歯科だけでなく、大人の方の歯周病治療や健診時にも必ず染め出しを行なっております。

 

 

4.歯肉退縮

  (咬合性外傷由来,機械的刺激由来)

 歯肉退縮は,叢生により唇側転位した下顎の

永久前歯の唇側に多く認められます。このような歯は、歯ブラシが他の歯よりも強くたることに加え、唇側の歯槽骨が非常に薄いために容易に歯肉退縮を生じます。

 また,特定の歯が歯ぎしりなどで強い咬合力を受けると。歯周組織に炎症を生じて歯肉退縮を引き起こすことがあります。ブラッシング指導や咬合調整だけでは改善が期待できない場合には、矯正治療で歯を適切な位置に移動させる必要があります。

⚫️子どもの歯肉炎

1.慢性歯周炎

 小児期に原因不明の重度の歯周炎を発症することがごくまれにあります。小児期の歯周炎は、乳歯と永久歯のそれぞれに認められ、短時間のうちに歯槽骨吸収や歯の動揺を生じることが多いです。

 小児期の歯周炎は全身疾患と関連していることがあり、遺伝性のものと免疫系に関連するものに分類されます。遺伝性のものとして、家族性周期性好中球減少症、ダウン症候群、白血球

接着能不全症候群、パピヨン・ルフェーブル症候群、チェディアック・東症候群、組織球症症候群などがあげられます。一方、免疫系に関連する疾患としては、白血病や糖尿病などがあげられます。これらの疾患をもつ患者さんは、小児科領域から紹介されて歯科領域でフォローすることが多いです。

 上記の全身疾患を有する子どもは、病原性の高い歯周病菌が存在しなくても、歯周組織の抵抗性が極端に弱いために歯周炎を発症します。

歯周炎の原因が全身状態に起因するため、歯周組織に対する治療で歯槽骨の吸収を抑えることは困難です。それでも、歯科医院ではスケーリングや抗菌薬の局所投与を行い,歯周炎の悪化を遅らせる必要があります。歯周組織の痛みや歯の動揺などの症状が改善しない場合には、該当する歯は自然脱落や抜歯の対象になることもあります。

 

小児患者さんのブラッシング用歯ブラシ。

毛先が柔らかく、歯肉炎のある状態でも用いやすいタイプです。

 

2.  非炎症性歯周病変

  (低ホスファターゼ症)

 デンタルプラークの蓄積による炎症が原因でない歯周疾患のことを「非炎症性歯周病変」というよび方が使われはじめています。たとえば、低ホスファターゼ症がこれに該当します。低ホスファターゼ症は、遺伝子の変異により血中のアルカリホスファターゼ活性が低下して骨の形成不全を生じる疾患であり、歯科的には乳歯の早期脱落が特徴的です。乳歯の早期脱落は、セメント質形成不全により乳歯と歯槽骨との結合が不十分であることに起因します。

 乳歯が早期脱落した症例では印象採得が可能になるころから、咀嚼や発音、審美性の改善のために小児義歯を装着します。これまで低ホスファターゼ症は、予後不良の難病とされてきましたが、近年開発された酵素補充療法という治療法により患者さんの寿命やQOLが向上してきています。

 低ホスファターゼ症では早期発見が重要であり、疑われる症例はできるだけ早期に小児科領域に紹介することが推奨されます。歯だけにしか症状が出ない症例もありますが、歯科領域から小児科領域に早期に紹介することができたおかげで、全身に生じていた骨の異常を早期に発見できた症例も存在します。

口腔と全身疾患、関節リウマチについて

2024年10月9日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

 

今回は、口腔内の病気と関節リウマチや全身疾患との関連についてです。

 

関節リウマチは、全国で70万人程の患者数であり、8割が女性に現れる病気です。

 発症したら、ステロイド剤・消炎鎮痛剤・免波抑制剤等を服用し続ける必要があります。

 近年では強力な効果のある生物学的製剤(レミケード・エンブレル等)が脚光を浴びていますが、これらの治療法は「感染症になりやすい」「治療費が月3~5万円以上と高額」といった難点があり、現在のリウマチにおける治療は、薬物を使用し、症状を抑えこむ対症療法が中心になっています。

 そんななか、体の使い方を変えて薬を減らしていくという独自の観点から医療のあり方を模索し、全国のリウマチ・アレルギー患者から支持を集めている一人の医師がいます。福岡県博多市に「みらいクリニック」を構える内科医、今井一彰氏です。

 今井氏は新薬などの薬剤による治療に疑問を感じ、数年にわたり漢方治療を試みる時期もありました。しかし、薬を飲み続けなければ良い状態が維持できないということへの疑問は解消することはありませんでした。

 「医学の東西を問わず、処方箋を通じた患者さんとのつながりを見直す必要があるだろう、そのために第三の道を考えなければならない」と思った頃、リウマチ患者に共通する特有の匂いに気づき、それが口腔内の炎症に起因すると分かったことが大きな転機になりました。

 今井氏は、匂いを消すには口を閉じる、唾液の分泌を促せばよいのではないかと考えました。

ところが、当時は口臭について周辺の歯科医院に聞いても確かな答えが得られません。やむなく独自に学びながら患者さんに指導を始めたのが10年以上前のこと。内科的な治療効果の意図

を持って歯科治療を依頼するようになったのは、ほんの数年前のことです。

⚫️上流医療とは

 上流医療」を理解するための象徴的なエピソードがあります。

宮城県気仙沼市の中心街から車で数十分。舞根湾に流れ込む大川の河口に畠山重篤氏の経営る牡蠣とホタテの養殖場、「水山養殖場」があります。

 畠山氏が海の異変に気づいたのは1970年前後のこと。夏に赤潮が発生し魚が捕れなくなったのです。「赤潮が湾の奥から発生するということは排水による川の汚れではないか」と畠山氏は思いました。84年、フランスの代表的な牡蠣生産地に視察に行くと、現地の養殖場は気仙沼市と同じようにローヌ川やシャロンド川などの河口域にあります。畠山氏は牡蠣の養殖にはあらためて川が重要であることを確信しました。

 しかし宮崎県は88年に新月ダム建設計画を発表。「これができたら気仙沼は死んでしまう」と、悩んだ末に畠山氏が辿り着いた結論は、大川の上流の室根山に木を植えることでした。この提案に70人の漁師が賛同し、89年に「牡蠣の森を慕う会」が誕生。大川の水源地である室根神社のそばで第1回の植祭が行われました。海をきれいにするには上流をきれいにすることが必要という畠山氏の考えは、北海道大学水産学部の松永勝彦教授(当時)の研究によって、←学的に森と川の関係が裏づけられ、新月ダム建築は廃案になったのです。

「河口域でおいしい牡蠣を育てるには、川の上流をきれいにしなければならない」という原理は、人の体でも同じことです。

 今井氏は人間の体の「鼻」と「口」が上流だとし、ます鼻と口をきれいにすることから全身を診る治療を考案しました。これを「上流医療」もしくは「源流医療」としています。

●口呼吸が引き起こす全身疾患

口呼吸が多く、乾燥が強い患者さんの口腔内写真。

わかりづらいですが、舌や粘膜は診察時、お口を開けていただくと乾いた質感になっています。

口臭が強く感じる程度あります。

 

口腔内に菌が増えやすいため、虫歯のリスクが高くなります。

修復されている箇所が多いです。

唾液には殺菌作用があるため、口呼吸で乾燥した状態だと

唾液の消化作用や殺菌作用が弱まってしまいます。

 

 上咽頭は呼吸をすると必ず汚れる部位で、風邪をひくと最初に痛くなる所といえば分かる方が多いのではと思います。上咽頭や歯肉のような粘膜には、リンパ組織が多く集まっています。

口腔の扁桃や歯肉などのように、細菌感染していながら同時に防御もしているという部位は人体でもあまり例がなく、これらの部位の感染と全身疾患の関係が顕著だった例は少なくありません。

 この重要な上咽頭部に炎症などの問題を抱えている患者の多くに共通する特徴は、「口呼吸」だと言われています。

 人間にとって本来、呼気も吸気も鼻だけで行うのが正しい呼吸法ですが、常に口で呼吸することが癖になっている人はとても多いです。日常的に口呼吸を続けていると、さまざまな病気の原因になります。口呼吸の習慣は、細菌を日々体内に取り込み、病巣感染となって身体の機能を蝕み、免疫力を徐々に下げていきます。

 口呼吸と関連すると考えられる疾患には、関節リウマチ、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、うつ病、化学物質過敏症、ドライマウス、慢性副鼻腔炎、ペリオ、いびき、睡眠時無呼吸症候群などがあげられます

 口呼吸する方の特徴は、以下のような特徴があります。

・いつも口を開けている

・口を閉じると、あごに梅干し状のふくらみと

 シワができる

・下唇が腫れぼったく、むくんでいる感じ

・左右の目の大きさが違う

・目がはれぼったく、むくんでいる感じ

・食べるときにクチャクチャ音を立てる

・朝起きたときに、喉がヒリヒリする

・朝起きたときに、口の中が乾いている

・口の中がよく乾く

・唇がよく乾く

・口をあけてものを食べる

・いびきや歯ぎしりをする

・口臭が強い

・たばこを吸っている

・激しいスポーツをしている

・前歯が出っ歯気味

・舌に歯形がついている

・二重顎のようになっている

・鼻血がよく出る

●生活習慣の改善は鼻呼吸から

 こうした治療の場合、常に問われるのがエビデンスの有無です。その一例として、今井氏は、いびきをかくお子さんのCRP(C反応性タンパク)は高いというデータを挙げられています。

なぜ口呼吸は悪くて鼻呼吸は良いのかというエビデンスについては、「人体造や、生物の進化の過程から当たり前なのだとしか今のところは、言いようがありませんもちろん、換気量や吸気の調温調湿においても鼻呼吸が当然良いのですが、それが全身の疾患とどのようにつながっているのかを解明するのが、現在の課題です」としています。

 上咽頭は呼吸すると必ず汚れる部位で、この部分の上皮細胞を洗浄し、炎症を制御することが大事ですが、うがいをしてもここまでは届きません。具体的な処置としては生理食塩水や次亜塩素酸などを点鼻するなどの方法が考えられますが、さらに大切なことは治療後の呼吸法など生活習慣の指導であると今井氏は述べています。

▪️呼吸の改善法

 当院では、「あいうべ体操」「口テープ」を患者さんに お勧めしています。

⚫️抜歯で失明?!ペーチェット病と歯科

 ベーチェット病は、消化管(とくに口腔内)と外陰部の潰瘍、皮膚症状(毛のう炎、結節性

紅斑)、眼症状(ぶどう膜炎)、関節炎や血管炎などの症状を呈する優性再発性炎症性疾患です。

 不良な口腔衛生状態に関連して白血球が活性化することによって発症・増悪する疾患があります。例えば、掌蹠膿疱症、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などです。これらは、口腔連鎖球菌が血液中に入ると白血球が活性化して発症や増悪の引き金になるという機序が共通す。

 ベーチェット病の患者さんが歯を抜いたあと、1日から2日後にぶどう膜炎が発症、または憎悪して視力が低下するというのはその典型例です。喫煙歴があり、う歯や歯周病など口腔衛生状態が不良であり、HLAIB51陽性といった遺伝的な素因も持っている場合は、発症のスクが高まります。

 目が見えなくなった患者さんはあわてて眼科に駆け込みますが、歯科の治療とは関係ないと思っていますので、トリガーとなった歯科治療のことは、眼科の先生には話しません。

 現在はレミケードなど強力な薬がありますが、ぶどう膜炎が重症の場合は失明に至ることもあります。べーチェット病の患者さんの場合は、予めコンヒチンという薬を1週間以上服用し、白血球を活性化しにくい状態にしておいて、抜歯すれば比較的安全です。歯科ではこういった情報は、知られていません。ベーチェット病の治療ガイドラインに載ってしかるべきと思いますし、こういった関連性があることはすべての歯科医師の方に知って頂くことを望んでいます。

高齢者の栄養摂取

2024年8月29日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は高齢の方の栄養摂取についてのお話です。

 

⚫️高齢者の栄養と食事・食形態

NYUの留学中に食べたステーキ。赤身で食べ応えがありました。

高齢の方の栄養摂取について、補綴の勉強会でも取り扱われる問題であります。

歯が弱っていたり、噛めない入れ歯を装着されておられる場合、

柔らかく炊いたお米や麺が多くなりがちであると。

この写真のような塊である必要はありませんが、とにかくタンパク質不足になる方が多いとのこと。

 

 

プロテインやビタミンでも栄養摂取できるという意見もありますが、

楽しみがないですね。

 

 

 高齢者にとって「口から食べる」ことは生活の楽しみであり、生きがいでもあります。しかし、ときに食事という行為が命取りになってしまうこともあります。その原因の1つは、「本人の摂食感下機能に合わない食事をとること」です。食事中にむせ込みが生じたり、食事時間が長くなったりする場合、「食事が摂食の下機能に合っていない可能性」が考えられます。そして、これらの問題に対して何も対策を講じなければ、いずれは誤嚥性肺炎や窒息を引き起こしてしまうかもしれません。

 もう1点、機能に合わない食事をとることの弊害として、「食欲低下や偏食などによって食事量が減少し、低栄養(栄養失調)や脱水が生じてしまうこと」があげられます。高齢者は成人に比べて体内水分量が減少することから、もともと蓄えている水分量が少ないために脱水状態に陥りやすくなります。そのため、食欲不振やの下障害による水分摂取量の減少には注意が必要です。また。高齢者のなかには喉の渇きを感じづらくなっていたり、トイレに行<のが億劫で水分を控えてしまったりする方も少なからずいるため、心疾患などによる制限がない限り、季節に関係なく水分は十分に摂取する必要があります。

 

●低栄養

 

—低栄養の問題点—

 低栄養の問題点

低栄養になると、体重や筋肉量が減少することでADL (日常生活動作:Activity of Daily Life)が低下し,寝たきり状態になってしまう可能性があります。また,免疫力が低下して風邪などの感染症に罹りやすくなったり。重症化して肺炎になったりするリスクが高くなります。誤嚥も肺炎のリスク要因ですが、栄養状態がよく、免疫力が低下していなければ,たとえ誤嚥をしても肺炎にまで至らない場合もあるのです.ほかにも。低栄養により(床ずれ)ができたり、傷や病気の治りが遅くなったりします。

 低栄養は、特別なきっかけで生じるわけではなく,ちょっとした不注意で簡単に陥ってしまいます。たとえば「歯が抜けた」「義歯が合わない」などは高齢者に容易に起こりうることですが、それがきっかけとなって歯ごたえのある食べ物を避けたり、食欲が低下したりすると、食事量が減少し、栄養バランスが偏ってきます。そのため必要な栄養量を確保できなくなり、低栄養状態に陥ってしまいます。

 特に問題視されているのは,PEM (Protein Energy Malnutrition)といわれる,タンパク質とエネルギー不足の低栄養状態です。高齢になると肉類を敬遠しがちですが、その理由の1つに「噛みにくさ」「飲み込みにくさ」があります.肉や魚など筋肉のもととなるタンパク質を摂取して栄養状態を維持するためには,歯の治療だけでなく、肉や魚を食べやすくする工夫も考ラス要があります。

 

—低栄養のリスク評価—

 

 高齢者の栄養状態を評価するには、まずは体重(kg) を測ることから始まります。加えてBMI(体格指数:Body Mass Index)と体重減少率を算出します。

BMIと体重減少率は、高齢者の低栄養のリスク評価を行う指標となります。BMIは「体重(kg)→(身長(m) 身長(m))」で求められ、18.5~25未満を標準とし、25以上は肥満。18.5未満をやせとしています。

体重減少率は,「(通常体重(kg)一現体重(kg))→通常体重(kg)100」で求められ、どのくらいの期間で体重減少が起こったかによってリスクが異なります。診療室においても、高齢者の体重を把握することが必要でしょう。

 

このくらい歯があり、しかも修復された跡がないような口腔内だと、

病気のリスクが低いと考えられます。

 

咬合が崩壊してしまった患者さんのレントゲン写真。

残っている歯も揺れが大きく、残すことが難しい部分があります。

下の歯が残っている側は、上の歯茎の吸収が著明です。

力の問題が顎の骨の吸収を進行させると考えられます。

このような状態だと、義歯を入れて安定させるのが非常に難しいです。

天然の歯のようには噛めないですし、ここまでになる前に歯科を受診し、治療を受ける必要がありました。

 

—高齢者の必要栄養量とは?—

 

 

 高齢者が必要とする1日の栄養量はどのくらいでしょうか。厚生労働省が示している日本人の食事摂取基準の一部ですが、18~29歳の成人期と比較して、70歳以上では必要エネルギー量は減少します。これは、加齢による除脂肪組織(筋肉や骨など)が減少することで基礎代謝が低下するためです。しかし、タンパク質をはじめとするほかの栄養素は、同等量の摂取が必要であることがわかります。つまり,高齢になっても、肉や魚の摂取量を若いときより減らす必要はないということです。

 

—必要栄養量を確保する方法—

 

 十分なエネルギー量とタンパク質量を摂取しないと,PEMとよばれる低栄養状態になること、また水分量の摂取不足は脱水を引き起こすことは冒頭で述べました。そこで、1日に必要なエネルギー量とタンパク質量。水分量を確保するためのポイントを以下にあげます。

 

①できるかぎり欠食をしない

 

 朝.昼.夕と規則正しく食事を摂るようにします。体調の悪いときや食欲のないときでも、レトルト食品や果物、デザート類をすこしでもいいので食べるほうがよいでしょう.体調の崩れをきっかけに欠食が慢性化することがありますが、そうなると摂取栄養量が不足しつづけてしまうことになります。

 

②間食を取り入れる、少量頻回食にする

 

1回で1食分の量を食べられないという場合は、1日3食にこだわらず、間食を摂ったり、5食にするなど食事回数を増やしたりすることで、1日の必要量を補給するようにします。

 

③毎食タンパク質を含む食品を取り入れる

 

 肉,魚卵,大豆製品、乳製品のいずれかを毎食摂ることで、筋肉のもととなるタンパク質を補給します。

 

④水分補給はこまめに

 

 水分はこまめに摂取するようにします。食事が十分摂れていて、食事時にお茶などの飲み物を摂取している場合でも,食事時以外で計500mLくらいは摂取できるとよいでしょう。

 

⑤栄養バランスを考える

 

 エネルギー源となる主食,筋肉のもとになるタンパク源を補給する主菜、身体の調子を整えるビタミン・ミネラル類を補給する副菜や汁物、というように、一汁二菜または一汁三菜を目安にしましょう 。すべてを手作りしなくても、スーパーの総菜やレトルト食品。冷凍食品などを取り入れながら、なるべく多品目の食材を食べるようにします。

 

⑥栄養補助食品を活用する

 

 通常の食事量が摂れない場合は、少量でも必要なエネルギー量やタンパク質量などを摂取できる、栄養補助食品を活用してもよいでしょう。

 

●摂食嚥下機能に適した食形態とは?

 

 「噛みにくい」「飲み込みにくい」と感じている高齢者が必要栄養量を確実に摂取するためには、摂食の下機能に合った食形態に調整する必要があります。では,噛みにくい、飲み込みにくい場合はどのような工夫が必要か考えてみましょう。

 「パンがパサパサして食べづらい」という場合は、飲み物やスープに浸したり,フレンチトーストにしたりすると食べやすくなります。また、まとまりにくくばらつきやすい米飯は,ひきわり納豆やとろろなど粘りがあるものといっしょに摂ることで,ばらつきやすさが軽減されます。

 

●その他の工夫

 

 認知機能の低下や覚醒状態の悪化などにより食事が進まない場合は、「はっきりとした味つけにする」「香辛料などを利用して香りを強くする」「体温と差がある温度にする」などの刺激があったほうがよいでしょう。

 また、好きなものや好きな味、なじみのある料理を中心にした献立にしたり、きれいな器に盛りつけたりすることで,食欲が増進されて食事が進むこともあります。こうした工夫は医学的ではないかもしれませんが、高齢者の食事を提案するうえで、本人や家族の「語り(ナラティブ)」から得られる情報がとても重要です。食形態を含む食事内容の提案は、摂食嚥下機能評価に基づいて行うことが大前提ですが、本人や家族の嗜好や生活スタイルに合わなければ、難しいです。食事はあくまで生活の一部です。高齢者が食事を楽しめるようなサポートができるといいですね。

成人期以降〜高齢の方の口腔機能について

2024年7月27日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

口腔機能についてのトピックです。

⚫️成人期以降(高齢者)の口腔機能の変化
—まずは知っておきたい!食べることのメカニズム—

 

①食べ物の認識

 

NY大学の短期留学中、よく食べていたチキンオーバーライス。

初めて見る食べ物ですし、見た目はぐちゃっとしていてどんな味かわからないわけです。

それに対して、よく食べるものは目で見て食物の性状や味、温度も予想できます。

ちなみにこのチキンオーバーライスは、外食した中でもピカイチのお味でした。

本来、私たちがものを食べるとき、捕食すること前に過去の経験などからその食べ物はどのようなものか(噛む必要がある食品なのか?舌で押しつぶして食べるものなのか?嚥下だけで対応するものなのか?など)について、食べ物を見る、触る、匂いを嗅ぐなどして判断します。

 

②食べ物の取り込みと咀嚼

 

前歯は、ものを噛み切る「咬断」に向いた、シャベルのような形状をしています。

 

食べ物を口腔内に取り込む前に、口唇や前歯によって適当な大きさに切り取られ、舌は食べ物を迎えるかのように切歯の付近まで突出します。この際にも口唇や舌は食べ物の物性や温度などを感知して、その後の処理方法にかかわる情報を得ます。ある程度の固さをもち、咀嚼のが必要な食品に対しては、舌で受け取った後。すばやく咀嚼する側の歯の上に舌で食べ物を移動させ、舌と顎の動きの協調運動により上下の歯列で粉砕処理します。プリンのような軟らかい食品の場合、舌と口蓋で押しつぶすように処理されます。このとき、鼻腔は咽頭と交通し、呼吸をすることが可能です。

 

奥歯はものを噛み砕くために適した形態です。

特に第一大臼歯は、7割くらいの人がものを最初に噛み砕く機能を有しており、

主機能部位と呼ばれる噛み合わせのエリアがあります。

 

③食塊形成と飲み込みの開始

 

咀嚼が進んで口の中にバラバラに粉砕した食べ物は、そのまま飲もうとすると誤嚥してしまうことがあります。なぜなら、嚥下の際に私たちが息を止めていられる時間は0.5秒ときわめて短いためです。口の中でバラバラに広がった状態で飲もうとすると,早く喉に向かうもの、後から向かうものも含め、0.5秒に間に合わなくなってしまいます。そこで,バラバラに広がった食べ物を舌で上手に一塊にまとめあげることが必要になります(食塊形成)、この際に、唾液と十分に混ぜられるとより飲み込みやすくなります。
食べ物が一塊にまとめられると、軟口蓋が持ち上がることで鼻咽腔が閉鎖されます。この際に舌の前方が強く口蓋に押しつけられ、波打つように動かしながら咽頭に食べ物を押し込みます。

 

 

④咽頭(のど)への送り込み

 

舌の後方は口蓋や軟口蓋に向かって動き、食べ物を押し込みます.食べ物は一気に咽頭の下方に流れ込みます。そのとき、気管の入り口にある喉頭蓋が倒れ込み、同時に声帯など気管を保護するいくつかの構造物が閉鎖し、気管を閉じます.これにより、食べ物が気管に入り込むのを防止します(この食べ物を飲み込む間,息が止まっている時間が0.5秒)。

 

⑤食道への送り込み

 

舌根部は咽頭の後壁に向かって食べ物を押し込み、咽頭の後壁は前方に張り出すことで食道への押し込みを助けます。

 

 

⑥飲み込みの完了

 

食べ物は、すべて食道内に押し込まれました。あとは食道の蠕動運動により胃に向かいます.食べ物が食道に押し込まれたと同時に、喉頭蓋は跳ね上がって気道が開放され、呼吸が再開されます。

 

—高齢期にみられる口腔機能の変化—

 

成人期以降に起きる口腔機能の問題としては、一度獲得した機能が生理的に低下したり、病気が原因で失われたりすることがあげられます。

 

—筋力の低下–

 

加齢とともに全身の筋力は低下します。これは、生理的に起こる筋肉量の低下に加えて、低栄養などによる筋肉量の減少からも影響を受けます。この変化は、口腔や咽頭の筋肉にとっても例外ではありません。ロ腔や咽頭の筋力が低下することで、結果、噛む機能や飲み込む機能も低下するのです。特に舌は筋肉の塊ですので,舌の筋力の低下は、噛む機能。飲み込む機能に加えて、話す機能に影響を与えます。

 

—唾液の減少—

 

唾液は、噛んだ後の食べ物に湿り気を与え、まとまりやすく変化させるのに必須です。また、食べ物の味を含んだ物質を、味を感じる細胞(味蕾)に届けるのは、唾液の役目です。唾液の分泌量は、加齢そのものでは大きく変化しないといわれています。しかし,高齢者が服用している薬の多くは唾液の分泌を妨げる作用をもっています。特に「多剤服用患者」とよばれる。
多くの薬を飲んでいる高齢者では、唾液分泌が薬の影響を受けている場合が多くなります。

 

–喪失歯の増加—

 

現在、80歳で20本の歯を有する人の割合は、50%を超えているといわれています。しかしながら、いまだに残りの50%の人は歯を喪失し、義歯などの補綴装置を使うことで口腔機能を保っているといえます。しかし、義歯による咀嚼機能の回復には限界があり、組織機能の面では天然歯の有意性は揺るぎません。つまり、喪失歯の増加は咀嚼機能の低下につながるといえます。

 

⚫️口腔機能が低下することによる問題

 

—摂食嚥下障害—

 

高齢になると、加齢による機能の低下に加えて、複数の全身疾患をもっていたり、多種多様な薬を服用していたりするため、摂食嚥下障害になる危険性が非常に高まります。高齢者に多いの嚥下障害の症状としては、咀嚼ができない、食べこぼし、嚥下反射が遅くなる、食道の入口の開きが悪くなる、飲み込むのに時間がかかる、唾液が少なくなる,むせたときに咳をすることが下手になる、などがあります。また、摂食嚥下機能に影響を及ぼす副作用がある服用薬としてアトロピンなどの抗コリン薬、三環系抗うつ薬、抗てんかん薬などがあり、注意が必要です。

 

—誤嚥—

 

気道と食道はこのように交差しているので、

摂食嚥下の過程で誤って食物が気管内に入らないよう、

筋肉が協調運動をしているのです。

食物が通る際は、通常気管へ入らないように蓋がされるわけです。

声帯を越えて気管内に唾液や食べ物が侵入することを「誤嚥」といいます。声帯を越えなく喉頭内にこれらが入り込んでしまった際には、「喉頭侵入」といいます。食べ物や唾液が誤嚥や設
喉頭侵入を示すと、それを喀出するために咳嗽反射が起こり、「むせ込み」がみられます。ですから「むせ」がみられた際には,誤嚥や喉頭侵入を起こしていると考えて間違いありません。一方で、誤嚥してもむせず、睡眠中に無自覚に唾液とともに細菌が気管や肺に入る場合もあり、「むせなし誤嘸(不顕性誤嚥)」とよばれています。

 

—窒息—

 

「窒息」とは、空気の道である気道、すなわち口から咽頭、喉頭、気管にかけての道に食べ物が詰まり、呼吸ができなくなったことを指します。この窒息は、命の危険に直結するために注意が必要です。窒息事故は、さまざまな食品によって起こります。死亡に至た窒息事故の原因食品を消費者庁の報告からみてみると、1位である「餅」についで,「米飯」「パン」「肉」「魚介類」と続き、われわれ日本人が普段から食べてい食品が並びます。特に嚥下機能が低下した高齢者おいては、窒息への配慮が必要です。

 

—脱水・低栄養—

 

私たちが1日に食べたり飲んだりしている食事やお茶の量を想像してみてください。3度の食事に加えて、おやつや夜食、紅茶やコーヒーなどを頻繁に摂取していると結構な量になることがわかります。1日分を並べれば、テーブルいっぱいになるような量です。一方。摂食嚥下障害がある人では、十分な食事を摂ることが難しくなれば、当然「低栄養(栄養障害)」に陥ります。
「嚥下障害の人はスプーン1杯の水で溺れる」という言葉があります。通常、水というと誰しも飲みやすいものと思いがちです。しかし、嚥下障害の人にとって、水は動きが速く口腔内でバラバラに広がることから。もっとも誤嚥をしやすく、飲みにくいものなのです.水は、私たちが生きていくために毎日摂取しなければならない重要なものです。嚥下障害になり、水やお茶,みそ汁などの水分を摂るときにむせるようになると、知らず知らずのうちに摂取量が減少し。「脱水」につながります。

 

—食べる楽しみの消失—

 

「生きるために食べよ、食べるために生きるな」・ギリシアの哲学者・ソクラテスの名言としていまも残るこの言葉は、日々、忙しく働く私たちにも教訓を与えてくれます。しかし、「食べることは生きることである」ことも事実で、特に摂食嚥下障害患者さんにとっては、食べることが制限されるなか、「食事を楽しめない人生なんて!」と思うのも無理はありません。
食べるものに制限があっても、食べる楽しみを味わってもらえるような支援を継続することが必要です。

ホワイトニングの仕組みについて

2024年7月6日

こんにちは、こさか歯科クリニックです。

今回は、ホワイトニングの薬剤がどのようにして歯に作用し、白くしていくのか説明していきます。

 

ホワイトニング施術写真


ホワイトニング術前写真


オフィスホワイトニングでは、薬剤を歯面に塗布した後、このように専用のライトを照射します。


オフィスホワイトニング術後写真。

過酸化水素・過酸化尿素によるホワイトニングの仕組み

・フリーラジカルによる作用

ホワイトニング剤に含まれる過酸化水素(HP)・過酸化尿素(CP)を歯面に塗布すると、口腔内で分解され、フリーラジカルを発生します。
このとき、熱を加えるとより反応が促進されるので、オフィスホワイトニングでは専用のライト照射を行なっています。
過酸化尿素は過酸化水素と尿素が弱く結合した物質であり、唾液中の水分との接触と温度により、尿素と過酸化水素水に分解します。
これらの色素分子が、歯の着色の原因となっている色素分子と結合して、無色透明にさせることで歯が白くなります。このうち、過酸化水素の方が過酸化尿素より分解が早く、効果は早くあらわれるがなくなるのも早いという特徴があります。このため、オフィスホワイトニングでよく使用されます。逆に、過酸化尿素はホームホワイトニングに配合されていることが多いです。

 

・マスキング効果

ホワイトニングシステムによりますが、使用薬剤の成分により一時的に歯のカルシウム成分が溶け出して、エナメル質の表面が凸凹になる現象が起きます。その結果、光の乱反射がしょうじ、内部の象牙質の色が見えにくくなる「すりガラス状」になり、歯が白く見えるのがマスキング効果と呼ばれます。しかし、数時間のうちにカルシウムが元に戻るため、マスキング効果は一時的なものです。

・歯の乾燥+ペリクルが剥がれることによるもの
ホワイトニング直後は歯のペリクル(タンパク質の保護膜)が一時的に剥がれ、歯が乾燥しているため表面が白っぽく見える現象があります。ペリクルが再生する24時間程度で元に戻ります。

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ホワイトニング剤の成分

 

歯科用ホワイトニング剤は各社から出されていますが、基本的に以下のような成分で構成されています。

・有効成分

過酸化水素
過酸化尿素

 

・基剤:マトリックスキャリア

 

過酸化水素・過酸化尿素を含ませる、ベースとなる材料のことです。ホワイトニング剤の性状は、歯面に塗布した時を考えると、適度な流動性を持ち、尚且つ塗布しやすいことが重要です。歯肉に流れてしまうようなフローが良い状態は望ましくありません。シリカ、グリセリン、ポリアクリル酸などが挙げられます。

 

・知覚過敏抑制剤

硝酸カルシウム、酸化アルミニウムなどです。ホワイトニング施術による知覚過敏を抑制する効果があります。

・その他の成分
炭酸水素ナトリウム、クエン酸、香料、中性フッ化ナトリウムなど。

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ホワイトニング効果を上げるために必要なこと

以下のような点が大切です。

・歯のクリーニング

薬剤の有効成分を十分作用させるため、事前のクリーニングを徹底的に行います。

 

・過酸化水素、過酸化尿素

 

これらの有効成分の濃度を高めることは重要です。一般的に高濃度は効果が高いですが、そのかわりしみやすい副作用があります。

 

・作用時間

 

時間が長いほど反応は進みます。ただし、分解が終わるとそれ以上は反応しません。メーカー推奨の使用時間が効果的であり、延長すれば良いというわけではないようです。

 

・アルカリ性の環境

 

ホワイトニング剤が反応するpHは、アルカリ性の方が反応がよく、効果が期待できます。このため、水酸化カルシウムなどのアルカリ性薬剤を歯面に塗っておく方法もあります。

 

・加熱

 

熱により反応スピードが上がります。10℃上がると2倍のスピードになると考えられています。オフィスホワイトニングで専用ライトを照射し、お口周りをタオルでカバーしますが、加熱効果を期待しています。照射のライトがまぶしいため、目隠しのゴーグルやタオルもします。ライトで熱を加え過ぎると痛みも出やすくなるため、注意が必要です。オフィスホワイトニング直前に、薬剤のジェルは熱湯につけて温めて使用します。


オフィスホワイトニングで、薬剤を歯面に塗布する直前までこのように沸騰したお湯に薬剤をつけています。

 

・密閉環境

 

ホワイトニングは、フリーラジカルがいかに歯質に多く入り込むかで効果が決まります。密閉環境の方が、分解したフリーラジカルが大気中に飛ばずに、歯質内に入り込む確率が高まります。そのため、ホームホワイトニングの場合はマウスピースで空気に触れにくくできますので密閉効果が期待できます。オフィスホワイトニングでは、密閉することができません。


オフィスホワイトニングはこのように歯面に薬剤を塗布しますので、解放されています。


ホームホワイトニングはマウスピース内部にジェルを入れて、歯に密接するように作用させますので、密閉された効果が大きいです。

 

・消費期限

 

ホワイトニングジェルは、時間が経つと効果が弱まります。成分が分解するためです。標準的な保存期間は約1年半ですが、メーカーにより異なります。

私たちが使用しているポリリン酸ホワイトニングのジェルは、このような個別包装になっており、保存期間よりも前に使い切れます。

また、保管温度にも影響を受けます。冷暗所が望ましいので、冷蔵庫に保管をしています。ホワイトニングに限らず、歯科材料には適正な室内温度があるため、それぞれの材料の特性を活かすためには、添付文書に記載されている事項に注意して取り扱うのが間違いないです。歯科材料でよくあるのが、粉と液、A液とB液を混和し、使用することです。目分量で使用するのはダメですね。

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オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの違い

 

 

・オフィスホワイトニング

 

歯科有資格者の管理下で行われる安全なホワイトニングです。30〜35%の過酸化水素配合ジェルとライトを使用します。

✳︎メリット
即効性が高い
1回の来院である程度白くできる
自分で管理しなくて良い
✳︎デメリット
効果の持続が3〜6ヶ月と、ホームホワイトニングよりも短い
奥歯は白くできない
白さの限界がB1シェード

 

・ホームホワイトニング

 

10〜15%の過酸化尿素、または過酸化水素のジェルをマウスピースに入れ、自宅で行なってもらう方法です。
✳︎メリット
効果が長持ちする。半年から1年程度。
色むらが取れ、つやや透明感が出る。
通院回数が少ない
白さの限界値がオフィスのみより高い。
✳︎デメリット
自分で管理しなければならない。
効果が出るまで時間がかかる。

 

・デュアルホワイトニング

 

オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する方法です。クリーニングを同時に行うことで、さらに効果が高まります。オフィスホワイトニング、ホームホワイトニング両方のデメリットを補える最良の方法と考えられます。目標達成率も高いです。
効果が持続しやすいですし、クリニックで専門的な管理のもとで行えるメリットが大きいです。

ホワイトニングは気軽に始められるものですが、歯の状態によっては事前の清掃や病気があった場合の治療が必要かもしれませんので、
まずはお問合せしていただき、口腔内の診察からさせていただきます。