⚫️インプラント周囲組織と歯周組織の違い
🔳インプラントと天然歯の相違点として、“天然歯は自己、インプラントは非自己である”ことが大前提となり、”インプラント周囲組織は非自己なる物体(異物)との間で代謝を繰り返している”のです。
🔳インプラント周囲組織と歯周組織の相違点
①結合組織中のコラーゲン含有量が多く、線維芽組織の量が少ない。
インプラント治療とは、骨に植立された非自己であるチタンのネジがつかわれています。
チタンは、飛行機やロケットにも使用されていて、軽量性があり、金属アレルギーなど人体にやさしく安全な金属で、生体適合性・強度・耐食性・耐熱性に優れています。そのネジが、骨膜、および粘膜を貫通して口腔内に突出しているという、生体では大変不思議な状態となっています。つまり、口腔内の粘膜に骨まで達する傷口を故意に存在させていて、その粘膜は傷ぎ治癒するときと同じ硬い状態になっているのです。インプラント周囲組織はまさに「瘢痕組織」に類似しているといえます。その瘢痕組織様形態であるインプラント周囲組織の結合組織の成分は、コラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ないと報告されています。
また、インプラント周囲粘膜上皮の増殖力は、天然歯の付着上皮と比較すると数分の1程度でり、天然歯の周囲粘膜に比べ代謝が弱いことが考えられています。そのため、インプラント周囲粘膜は炎症が生じやすく、治療しにくい状態と想定されます。
②血液供給量が少ない
天然歯において、血液は歯肉と骨縁上の結合組織では、歯槽突起側方の骨膜上血管、歯根膜の血管の2方向から供給されています。しかしながら、インプラント周囲組織には、セメント質がないため、歯根膜が存在しません。そのめ、インプラント周囲粘膜は、インプラント部位の骨の骨膜から生じた、より大きな血管の終末枝のみから血液が供給されています。
したがって、インプラントの骨膜上結合組織の血流は、歯周組織と比較して少ないと考えられています。このことにより、血液の免疫作用および再生能力が不十分になりすいため、インプラント周囲粘膜は炎症が生じやすく、治癒しにくい状態と想定されます。
③コラーゲン線維の走行
天然歯ではコラーゲン線維の走行が歯根に垂直よび平行であるのに対し、インプラントに
メント質が存在しないことから、骨から垂直に存在し、インプラントと平行に走行しています
。そのため、インプラント周囲粘膜は、歯肉に比べ、外からの侵襲に対し、防御機能が低いこ
とが想定されます。
つまり、インプラント周囲組織は、歯周組織
に比べて結合組織中の線維芽細胞の量および血液供給量が少なく、いったんインプラント周囲組織に炎症が起こると、急速に不可逆的に進行すると考えられます。
歯周組織よりも感染防御機構が劣るインプラント周囲組織で、とくに早期に炎症性変化を見つけて対処する必要があります。
施術時の注意点
マニアックなお話ですが、インプラント周囲の組織の成り立ちやマネジメントは、長期予後にとって非常に重要なのです。
周囲に骨がある、歯肉という軟組織があるということが重要で、インプラント治療では天然歯以上に、組織の厚みを考慮して施術をします。
骨が足りない場合は、人工の骨を入れて、高さや幅を増やします。
私たちは、GC社から出ている、サイトランスグラニュールといういう骨補填材を用いています。
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公式HPより
世界初の「炭酸アパタイト」が主成分とする、国内初の「インプラント周囲を含むしか領域での使用」が認められた顆粒状の骨補填材です。「炭酸アパタイト」は、骨の無機成分と同じ組成のため、患者さん自身の骨へ効率的に置換され、目標とした骨面の高さを維持します。また、インプラント体に対し、強固なオッセオインテグレーションの獲得を実現します。
生理食塩水や血液と混ぜて使用します。
主成分は炭酸アパタイトです。これは、人間の骨や歯を構成する無機成分であり、リン酸カルシウムの一種です。
生体由来材料のような感染リスクはありません。
人間の骨は有機成分(コラーゲン等)と無機成分(アパタイト)により構成されていますが、 本品は自家骨の無機成分と類似した組成の骨補填材になっています。
炭酸アパタイトの高い骨伝導能により、早期からサイトランス グラニュールの周囲が新生骨に覆われます。
炭酸アパタイトの吸収特性により、患者さん自身の骨にゆっくりと置き換わって行きます。
足場としての機能を維持しながら効率的な骨置換を実現します。
全ての作製工程を完全に滅菌環境下、国内で行なっています。
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以前はBio-ossという製品を用いていましたが、海外の製品で、取り寄せるのに時間がかかっていました。
サイトランスグラニュールは、入手のしやすさ、操作性も良いです。
何より、インプラントをよく施術されている歯科の先生方の評判が良いです。
私たちも導入し使っていますが、良好な治療結果を得ています。
⚫️患者さんとのコミュニケーション
最後に、インプラント治療にかかわらずですが、患者さんとのコミュニケーションについて、考えていることを書いておきます。
インプラント治療とは、歯を失った顎堤に人工歯根を植立することにより、咀嚼・咬合・審美性を補う治療で、生体にとっては人為的に人工物(異物)を体内に入れる治療です。そのため、異物が生体に排除されないように、オッセオインテグレーション(骨結合)をいかに持続させられるかによって、インプラントの長期にわたる安定が保証されます。ですから、インプラント治療では、このことをつねに頭に入れて治療にあたるよう心がけています。
インプラント治療を希望される患者さんもまた、「人工のものを体の中に入れるとはどういうことだろう?」と少なからず不安を抱いて来院されるでしょう。だいたい、大きいモニターで治療の説明をすることが多いです。モニターで見ると、何か巨大なネジが顎に入っていくイメージをされてしまうようで、誤解がないように模型や実寸、天然歯との比較をしつつお話をします。
また、最近ではインターネットの普及とともに、インプラント治療に関する誤った情報をそのまま理解されている患者さんも多く見受けられます。特に多いのはインプラントを入れらた骨が溶ける、といった謎のうわさがあるなと感じています。
そこで、インプラント治療を始めるにあたり、インプラント治療とはどういった治療なのか、インプラント治療の利点・欠点を正確に説明する必要があります。医療面接において当院では、インプラント治療を希望するに至った主訴、現病歴、既往歴などを把握し、患者さんとのコミュニケーションをはかり、信頼関係を築きます。
そして、治療に必要とされる検査を行い、検査結果の説明とインプラント以外の治療法を含めた治療計画の提案と、その際にかかる治療期間(回数)と治療費を患者さんに提示します。このように、患者さんへの十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)を得たうえで治療を進めていくようにしています。