⚫️顎関節症とは
顎関節やその周りにある筋肉が口を動かすと痛む、関節音がする、口が開かない、動かしにくいといった病気をいいます。
顎関節症になると深刻に受け止める方が多いかもしれません。顎関節のすぐ近くには耳があるため、少し関節が鳴っただけでも『パキッ!』と大きな音として聞こえます。食事やおしゃべりにも差し支えるので、不安感が大きいのでしょう。
間接雑音というのですが、大きい音でないにしても、ジャリっという音が聞こえるのはよくあることです。
顎関節症は肩こりや頭痛などいわゆる体調不良と関連付けられがちですが、こうした症状と顎関節症の因果関係は証明されていません。
たとえば、腰痛になったときに、「腰をかばって歩いていたから肩がこった」というのと同じような意味での関連性はあるかもしれません。しかし腰痛のある人がみんな肩こりになるわけではなく、まったく肩こりしない方もいるわけです。なので、腰痛であれば、まず腰痛治療のために整形外科に行き治療を受けますよね。
それと同じように顎関節症になったら、体調が悪くなるのではないかと心配するよりも、まずは顎関節症の心配をし、早くあごが楽にになるように必要な治療をきちんと受ける、このことがとても大事です。
顎関節や筋肉が痛んで口を開けられないのが開口障害です。指1本分も開かない場合もあります。
痛みがなく十分開口できる状態。
そこで、私たち歯科医師が顎関節症治療に当たる際には、あくまで顎関節やその周りにある筋肉の痛み、開口障害などを取り除くことを目的に行います。顎関節症は、顎関節やその周りの筋肉にかかる負担を減らして大事にしているのに、ひとりでに増悪してしまうような怖い病気ではありません。痛みや開口障害がある患者さんでも、経過観察だけで2年半後には88%が改善したという報告もあるほど悪化しにくい病気です。とはいえ、痛みや機能障害を放置しては生活に差し支えますので、私たちが早期の回復のために、まずはできるだけ簡単にでき、患者さんに負担の少ない方法でお手伝いさせていただきます。
あごを動かすと痛い、口が開かない、口が開けづらいなどの気になる症状がありましたら、歯科医院で検査や診療を受けて下さい。歯科医医では通常、顎関節症の初期治療の問診・パノラマエックス線検査・口腔内診察・触診・セルフエアの指導やマウスピースの制作などを受けることができ、かなりの人が改善します。
当医院では、それらに加え機器を用いたメディセル筋膜療法(筋膜リリース)もご案内しておりますので、まずはご相談下さい。
⚫️顎関節の仕組み
顎関節は、下顎骨(下あご)と側頭骨(こめかみの骨)のあいだの関節です。
軟骨でおおわれたラグビーボールのように突き出た形の下顎頭という部分と、側頭骨の下顎窩というくぼみでできていて、周りは靱帯や筋肉に囲まれています。下顎頭と下顎窩のあいだにには関節円板があって、動きには多少のゆとりがあり、回転だけでなく前後にスライドもできる特殊な関節です。
顎関節周囲の筋肉の走行はこのようになっています。歯を噛み締めながら、頬や側頭部を触ると、咬筋、側頭筋の筋肉の張りを感じられますよね。
私たちは食べる時に、下あごをパクパクと上下に動かすだけではなく、グラインドさせて奥歯ですりつぶすという複雑な動かし方をしています。これは顎関節が特殊な仕組みをしていて、下あごが上下左右、斜めそして前後に、かなり自在に動くおかげです。
下顎頭についている筋肉により、下顎がこの矢印のように動きます。
下顎頭、関節円板、関節包の状態。
また、顎関節は関節包というコラーゲン繊維の膜で覆われており、さらに靭帯でも補強されているため、下顎頭が下顎窩を離れて前へスライドしてもあごが外れずに済むのです。そして、下顎頭と下顎窩のあいだには、(コラーゲン繊維でできた)関節円板というクッションがあります。この関節円板があるおかげで、下顎頭の下顎窩はガリガリこすれずに、静かにスルスルと動くことができるというわけです。
下顎頭の動きは、耳の前に手を当てながら口を開けてみるとよくわかります。下顎頭が回転しながら移動していく様子が感じられます。
⚫️顎関節には4分類ある。
【顎関節症】とは、顎関節やその周辺の靭帯や筋肉のトラブルの総称で、具体的にはどんな問題が起きているのかは、患者さんによって異なります。そこで、日本顎関節学会という顎関節の専門家の学会では、顎関節症をトラブルの種類ごとに4分類しています。
ひとつは、咀嚼筋(噛むときに動く筋肉)などに痛みがあり、顎関節には問題がないタイプです。咬筋や側頭筋に鈍い痛みがあることご多く、口を開けたり筋肉を押すと痛みます。原因については不明な点が多く、外傷、歯科医院での開口、ストレスなどがきっかけともいわれ、痛みに対する感受性が鈍くなって慢性化することもあります。歯科医医で初期治療を受け、数ヶ月しても改善しない場合は、専門医を紹介します。
私たちは、メディセルの施術で頭頸部の筋肉の筋膜リリースを行います。筋肉が緊張することで、筋肉の繊維に老廃物が溜まっていきます。それを流そうとしてまた噛み締めて老廃物が溜まってしまうという循環になってしまいます。メディセルによって筋肉の緊張が緩まり、老廃物も流れていきますので、徐々に噛み締める程度が小さくなり、症状改善に役立っています。
また、顎関節の周りにある外側靭帯や関節包が肉離れや捻挫にらなって痛むタイプもあります。大あくびや硬い物を無理に噛んだときなどに起こりやすく、口を開けようとすると一時的に痛みますが、硬い食べ物を避けるなどして大事にしていると通常は数週間で改善してきます。
そして、下顎窩と下顎頭のあいだの関節円板のズレによって起きるトラブルもあり、もっとも多いのがこのタイプです。関節円板は、本来は下顎頭といっしょに動きますがなにかのきっかけでズレが生じて下顎頭に引っかかるようになります。すると軽度の場合はカクッという音のみですが、症状が進むと痛みも生じます。ブレが大きくなると関節円板が下顎頭の動きのジャマをして口が開かなくなったり、急性痛が起こることもあります。直接の原因は不明なことが多いですが、あごへの過剰な負担を取り除き、初期治療を受けていると、個人差はありますが、通常1ヶ月もすると痛みが軽減していきます。
ほかには、顎関節に過剰な負担が加わり続けたことなどが原因で、下顎頭の変形や周囲の組織の損傷が起きて動きにくいといった症状は、軽度のものから重度のものまで幅があります。ほかのタイプにくらべると治療に時間がかかることご多いですが、顎関節への負担を取り除くことによって顎関節が少しずつ動くようになると、骨の変形や周囲の組織の損傷が治ってきて、専門医による外科治療等が必要ないケースも多くあります。ただし、数ヵ月しても痛みが減らないようであれば、専門医に診てもらってほうがよいでしょう。
ご自分の症状がどのタイプかを知るには、歯科医師による診断が必要です。顎関節症だと思っていたら違う病気だったというケースもありますので、ますば歯科医院で検査と診断を受けましょう。
また 痛みが激しかったり、初期治療ではなかなか改善しないというかたは、歯科医院と連携している顎関節治療の専門医を紹介してもらい、より専門的な治療を受けることをおすすめします。