こんにちは、こさか歯科クリニックです。
まずはインプラント症例のお話からです。
右下奥の第二大臼歯が虫歯でボロボロでしたので、抜歯してインプラントで治療を行った症例です。
術前
術前パノラマ:右下奥歯が虫歯で小さい根のみになっています。
術前咬合面:奥歯は小さく、黒くなっています。
術前右側:上顎の奥歯が噛み合う相手がいません。
患者さんは、もともと歯があった頃の方が噛みやすかったので、治療で歯を作りたいとのご希望でした。
術後
術後パノラマ:右下奥にインプラント埋入、上部構造があります。
術後咬合面:インプラントの上部構造はスクリュー固定のため、ネジの穴を封鎖したあとがあります。
術後右側:噛み合わせが回復しています。
歯が大きく欠けてしばらくそのまま慣れていた時もあったけど、治療してかみやすくなったとおっしゃられていました。
奥の歯が1本なくなってしまった後、そのままで過ごす方もおられます。
積極的に治療で歯を補うとしたら、インプラントで歯を作るか、部分入れ歯を作って装着することになります。
奥だけ1本の部分入れ歯を作った経験がありません。しっかり噛めないどころか違和感が増すだけで、生活の質はむしろ下がってしまいます。
インプラントを絶対すすめることもしていません。噛みづらいなとか実感されている方には、ご案内しています。
感じ方は人それぞれですし、その方の生活スタイルや年齢などは、積極的な治療に踏み切るかどうかの大きい判断材料になります。
歯がなくなった側は、反対側で自然と噛んでいくことになります。歯がそろっていて噛みやすいからでしょう。
利き腕と同じように、噛むときも左右どちらかを主体に噛んでいることが多いですが、
噛み合う歯が少ない場合、歯が少ない側で咀嚼する機会が減ってしまいますので、
お顔の形も変わってきてしまいます。
これは、咀嚼する時の筋肉をどのくらい使っているかによります。当然使っていない側は筋肉が衰えてしまいますので、
お顔がたるんでくるわけです。
お顔の筋肉とシワも関係があります。
顔の筋肉とシワの関係って?
みなさんは、「時間がないから」といって食事を短時間ですませてはいませんか?現代はやわらかい食べ物が好まれ、あまり噛まない食習慣になってきています。
しかし、顔の筋肉を使ってしっかり噛まないと、頬がたるんでほうれい線が目立ち、口角も下がってきてしまいます。すると、全体的に老けた顔に見えてしまい、ときには、不機嫌ではないのに、周囲の人に「怒っているのかな?」と思われてしまうことも。
顔の筋肉を衰えさせず、若々しい顔でいるためにも、1番大切なことは、「よく噛むこと」です。そして、「よく歌うこと」「よくしゃべること」も筋肉の衰えの予防に繋がります。
食べ物を噛むときに動く咀嚼筋の一部でもある「側頭筋」と「咬筋」を自分の手で触って、よく噛むことの大切さを意識しましょう。手をあてて噛みながら、軽く噛んだとき、ギューッと噛みしめたときの筋肉の動く大きさの違いを感じてみるとよいでしょう。
咀嚼筋が衰えると大きなシワの原因になります。食事のとき筋肉を使ってしっかりと噛んで、おくちを動かすことが若さの秘訣です!
▪️咀嚼筋の一部
【側頭筋】ちょうどこめかみの部分にある筋肉です。手のひら全体で触ってみてください。衰えると目元や瞼が下がってしまいます。
【咬筋】耳の前(頬側)にある筋肉です。机の上でほおづえをつくようにして触ってみるとわかりやすいです。衰えると頬がたるんで、ほうれい線が深く刻まれてしまいます。
▪️おくちのまわりの筋肉の一部
【口角挙筋】上あごの犬歯付近から小鼻の横周辺までに位置しています。目元と口角を繋いでいて、口角を上に引き上げる働きがあります。口角が下がったと感じるときは、口角挙筋が衰えている可能性が高いでしょう。
【口角下制筋】下唇の両側から下顎にかけて扇のように広がっており、上唇と口角を下に引っ張る役割を持っています。奥歯でものをかむときに使われる筋肉です。この筋肉が凝り固まると年齢を感じさせてる顔つきになってしまい、発達しすぎてしまうと、口角を下に引っ張る力が強くなって、口が「への字」になってしまいます。
特に奥歯は噛み合わせ、咀嚼の要と言っていい部位でありますので、
1本、2本失ってしまうと噛みづらくなってしまいます。
筋肉が衰えてしまい、お顔が変わってきます。
Q.インプラントは一生モノ?
一生モノではありません。
インプラントはチタンという生体に対して極めて親和性の高い材質です。顎の骨に埋入しても炎症は起こさず、骨の組織と直接結合する「オッセオインテグレーション」という現象が起きます。
現在のインプラントは近代インプラント治療が始まった時と比較して、高い成功率を達成できるレベルになっています。一度くっついたインプラントがどれだけ長持ちするかは、個人差があります。噛み合わせの力や他の歯がどれだけ残っているか、骨の質、嗜好品などの生活習慣、食いしばりの習癖の程度など、予後を左右する条件は様々でありますので、どれだけ長持ちするかを正確に予測できません。
そうは言っても、通常は10〜20年は抜けずに機能すると認識しています。40〜50年機能し続けているインプラントの報告もあります。
Q.インプラントと天然の歯とはどう違う?
周囲組織とのくっつき方が違います。
インプラントは骨の組織と直接結合します。天然歯は歯根膜という構造を有しており、それを介して骨の組織と結合しています。歯根膜はすごいです。これが噛み合わせの超精密なセンサーの役割があります。また、歯根膜自体に血流がありますので、歯根膜が健康な状態であれば、骨の再生を促すことができます。自家歯牙移植をして、移植した歯の周りに骨ができてくっついてくるのは、歯根膜のおかげです。
一方、インプラントは歯根膜の構造がないですから、骨がなかったらGBRといって骨を人工的に増成する施術を行います。また、噛み合わせの摩耗などで、インプラントの部分だけが強く噛み合っている状態だと、噛み合う相手の歯がダメージを受けやすくなります。
このような理由で、もしインプラント治療が一通り終わったあと、噛めるからと言って全く歯科での検診を受けずに過ごしていると、歯根膜のないインプラントならではのトラブル、噛み合わせの力によるトラブルが生じる可能性があります。
ですので、定期的に噛み合わせをチェックしたり、必要な調整を行いながらインプラントと付き合っていくことが重要です。
このようにインプラントにはまだ天然の歯には追いついていないというのは明らかであります。
では、治療を進めても問題ないのかというと、私の考えはこうです。
インプラントは100点満点ではないけれども、10〜20年という長い間、ブリッジや入れ歯から解放され、
周りの歯は負担がかからず長持ちすることができたり、なんでも美味しく食事ができるのであれば、
治療として十分な効果があると言える。
たとえトラブルがあったとしても、上部構造をやりかえたり、インプラントを埋入しなおすことで、回復ができる。
これにより、歯根膜のないインプラントでも、多くの人のQOLの向上に役立てる。
歯周病や虫歯、事故により歯を失ってしまった場合、その場の金額の安さだけで入れ歯治療を選んでしまうようなことは、
非常にもったいなく思います。
噛めずに食事に制限がある方、ぜひお気軽にこちらからご相談ください。