こんにちは、こさか歯科クリニックです。
今回は、口腔内の乾燥、口呼吸についてのお話です。
⚫️口臭歯周病の原因になるドライマウス
唾液の量が減少し、口の中が乾きやすくなるドライマウス(口腔乾燥症)。唾液の量が減少すると、口内に細菌が繁殖しやすくなり、さまざまな口腔トラブルを引き起こす原因になります。
唾液量の不足により口内の殺菌作用が低下すると、それまで抑えられていた細菌が活発に繁殖し始めます。細菌が増加すると、細菌の活動によって発生する酸(乳酸)や毒素(エンドトキシン)も増加することになります。酸は歯の表面のエナメル質を溶解し、虫歯を発生させ、毒素は歯肉(歯周組織)に炎症をもたらし、歯周病を作る原因になります。
また、細菌が活発に活動することにより、臭いを発生させる代謝産物も多く生じ、口臭の原因にもなります。
ドライマウスはどんな人がなりやすいのでしょうか?
カフェインやアルコール、ニコチンの過剰摂取は、ドライマウスの原因になります。
これらの物質は高い利尿作用があり、体内に脱水症状を来します。脱水症状になると、唾液量が減少し、口腔乾燥を引き起こすというわけです。コーヒーなどのカフェインが多く含まれる嗜好品や、アルコールをよく摂取する方、喫煙習慣のある方は注意が必要です。
また、男女の比率でいうと、ドライマウスは、女性が多いのです。
とくに閉経後、女性のドライマウスは進行していきます。
女性は閉経後体内にあるエストロゲンの量が低下します。エストロゲンは、女性ホルモンの一種です。
エストロゲンが低下すると、唾液の量も減少することで知られています。
その他、無理なダイエットで水分や食物を過剰に制限することにより、水分摂取量が低下し、唾液の分泌が抑制されて、ドライマウスを引き起こすこともあります。
⚫️ドライマウスを予防するには
ドライマウスは、口の中が乾燥する症状です。ドライマウスを予防するには、口の中を乾燥させないようにすることが大切です。
それにはまず、「口呼吸」を止めること。ドライマウスの人のほとんどは、口で息をする「ロ呼吸」です。口がいつも開いていたり、唇や口の中がよく乾くという症状が見られます。噛み合わせが悪いと、口を閉じにくくなり、口呼吸になりやすくなります。
口呼吸は、ドライマウスだけでなく、イビキや睡眠時無呼吸症候群、アレルギーや膠原病、関節リウマチや身体のさまざまな疾患の原因になります。
口呼吸から鼻呼吸にすることで、口内の乾燥を防ぐことができ、さまざまな症状が観和されます。
あとは、唾液の分泌量がへらないように、適切な水分補給をすること。カフェインやアルコール、ニコチンなど、体内の水分を奪ってしまうような物質の過剰摂取は、避けるべきです。
⚫️口呼吸予防 【あいうべ体操】
口呼吸の改善には、「あいうべ体操」が効果的です。
「あいうべ体操」は、内科医の今井一彰氏が考案した、口呼吸を改善するための体操です。
「あいうべ体操」をしっかり継続している人は、自然に鼻で呼吸ができるようになります。
口を閉じて鼻で呼吸するためには、口の周りの筋肉と舌を突き出す筋肉を鍛える必要ごあります。また、筋肉のポンプ作用によっね、唾液の分泌が促されます。
あいうべ体操のうち、「あいう」は口の周りの筋肉の、「べ」は舌を突き出す筋肉のトレーニングです。
まず、口を楕円形にして、喉の奥が見えるまで大きく開き、「あ1」と言います。つぎに、前歯を出して、首の筋が浮き出るくらい口をグッと横に開いて、「いー」と言います。「う」は口を閉じる筋肉の体操で、唇を尖らせて前に突き出して、「うー」と言います。最後の「べ」では、舌の付け根が引っ張られるくらい、思い切り舌を前に突き出して、「ベー」と言いましょう。
【あいうべ体操手順】
①「あー」と口を大きく開く
②「いー」と口を大きく横に広げる
③「うー」と口を強く前に突き出す
④「べー」と舌を突き出して伸ばす
①〜④を、1セットとし、1日30セットを目安に毎日続ける
この体操は、真剣に行うとかなり疲れます。慣れるまでは、2〜3度に分けたほうが続けやすいでしょう。
また、「あいうべ体操」は、しゃべるときより口をしっかり、大きく動かす必要がありますが、無理は禁物です。
とくに顎関節症の人や顎を開けると痛むという場合は、回数を減らすか、「いー」「うー」のみを繰り返してみてください。「いー」「うー」の部分の体操は、関節に負担がかからないため、何回行っても大丈夫です。
唾液の分泌が増えることで免疫力が上がるので、いろんな病気の予防にもなります。
あいうべ体操で口呼吸を改善し、体そのものが強くなり、今まで飲んでいた薬を卒業したという人も少なくありません。
⚫️顎関節症や肩こり、頭痛などの原因になるブラキシズム
食いしばり、噛み締めにより噛み合わせの筋肉は過緊張し、筋肉痛状態になります。
顎の関節にも良くない影響が及んでしまうのです。
歯ぎしりがひどい。顎が痛む。慢性的な肩こりや頭痛がある。それは、歯の「ブラキシズム」によるものかもしれません。
Bruxism:ブラキシズムとは咀嚼筋(咬むための筋肉)が無意識に異常な動きをする異常運動のことです。口腔悪習癖と呼ばれている悪い癖のひとつにも分類され、言葉の語源はギリシや語のBrychein から得ています。
睡眠中の「歯ぎしり」や、強い力で必要以上に噛みしめてしまう「食いしばり」がこれに当たります。ブラキシズムは、歯の摩耗や折損、顎の関節の障害など重大なトラブルを引き起こします。
無意識下の異常運動には3つの要素があり、歯をすり合わせるグラインディング、食いしばるクレンチング、上下の歯をカチカチと小刻みに接触させるタッピングがあります。
朝起きると顎が疲れていたり、歯に負担がかかっていることがあります。これは睡眠中に過度の力が加わっているため起こる症状です。ブラキシズムは、噛み合わせの問題もありますが、
最も大きな原因は精神的ストレスであるとされています。つまり、誰でも起こり得る可能性があるということです。歯ぎしりやくいしばりの習慣が長期化すると、歯や顎にふたんがかかり、重症化します。
歯が折れる、割れる、抜けるほか、口があかない、顎が痛いなどの顎関節症は、その代表例です。ほかにも、頭痛、首や肩こり、腰痛、めまい、耳鳴りなどさまざまなな症状の原因になります。
歯が折れていても外からは見えませんよね。
歯根は接している歯はこのような状態で、歯茎の中で完全に割れているところには、
口腔内の良くない菌の感染が顎の骨に及びますので、
痛みや歯茎の腫れが生じることが多いです。
ブラキシズムは無意識で行われているので、夜間の歯ぎしりで、家族などに「歯ぎしりがすごい」「うるさい」などと指摘されたりする以外は、なかなか自覚することが難しいでしょう。
ブラキシズムの治療には、マウスピースやプレートなど防止装置を使用し歯の磨耗や就寝時の騒音を防ぐ対策療法がよく使われます。ほかにも、噛み合わせ治療や矯正治療、薬物療法もあります。
家族に夜間の歯ぎしりの騒音で指摘を受けている、顎が疲れたり痛むことごよくある、慢性的な肩こりや頭痛がある!そんな症状が見られる患者さんがいる場合には、ブラキシズムを疑ってみましょう。そして、重症化し生活に支障をきたす前に、早めに歯科医への受診を促して欲しいです。
⚫️舌と顎が大きく関わる睡眠時無呼吸症候群
「睡眠時無呼吸症候群」という病気が広く知られるようになってきました。睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、「睡眠中10秒以上の呼吸停止が1時間あたり5回以上。もしくは7時間以上の睡眠で30回以上起きること」と定義されています。
重篤の場合、心筋梗塞や脳梗塞などによる突発死、成長ホルモンの30%減少などの影響が明らかにされています。
ここで言う無呼吸の状態とは、いびきがやんでいるときで、定義では10秒以上となっていますが、通常20〜30秒くらい、ひどい場合には1分から2分近く続く人もいるようです。
また、30回どころか、ひと晩に100回も無呼吸を繰り返す場合もあります。
無呼吸というのはいわば窒息状態ですから、こんな長い間、無呼吸でいたら、苦しくないはずがありません。無呼吸のあとに爆発音のような大いびきをかくのは、酸素を体内に供給しようと、大きく空気を吸い込もうとするためで、激しくもがくような動きを伴なうこともしばしばです。
一般的に、睡眠時無呼吸症候群は、肥満体型の人がなりやすいと言われてきます。睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である上気道が閉塞するとこにより起こります。上気道は、鼻腔、アデノイド、口蓋扁桃、軟口蓋、舌根部で構成されています。上気道は首回りの脂肪の沈着により閉塞しやすくなります。ですので、痩せることが睡眠時無呼吸症候群を治す、予防する方法と考えている方も多いようです。しかし、欧米人の患者にはたしかに肥満体型の人は多いのですが、日本では痩せていると人でも睡眠時無呼吸症候群になるケースが多くみられています。
上気道が閉塞する原因は他にもあります。それは「舌」と「顎」です。噛み合わせが深い(過蓋咬合)状態だと、舌と歯列のバランスが悪くなり、舌は後退し、喉の方向に押し出されやすくなります。また、下顎が小さい(小下顎状症)と、口の中の容積ぎ小さくなり、舌は喉の方へ押し出されやすくなります。その結果、気道には狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となるのです。
また、出っ歯(上顎前突)、噛んだときに前歯に隙間がある(開咬)症状がらみられると、口は閉じにくくなり、口を開けたままでいることが多くなります。
口を開けたまま寝てします(口呼吸)と、重力の作用で下顎は後退し、舌は後ろ(喉の方向)に押し出されやすくなります。結果、気道は狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となります。
歯科医で行う治療としては、マウスピースを用いて行う方法が一般的です。寝ているときに装着し、舌や顎が後退するのを防ぎます。